そんなこんなで夏休みも中盤を過ぎ…
律「私たちもなかなか様になってきたな」
唯「そうだね!」
和「ほんと、みるみるうちに上手くなっていくわよね」
澪「だいたい、私たちは軽音部員なのに、バンドの練習もほったらかしで」
唯「バントの練習は欠かさずやってるけどね」
律「おっ、唯ウマいこと言うなぁ」
唯「えへへ~」
澪「お前ら……」
紬「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ」
澪「球技大会終わったら学祭もあるってのに……」
律「それが終わったらバンドの練習もするって」
澪「本当は私だってイヤイヤ野球やってるんだから……」
さわ子「そんなっ!? 澪ちゃん!!」
唯「さわちゃんいつの間に!?」
さわ子「やっぱり、澪ちゃんは気がのらないわよね……」
さわ子「ごめんね。無理矢理やらせたみたいで」
澪(みたいじゃなくて、やらされたんですけど……)
さわ子「みんなの思い出になればって提案はしたけど」
さわ子「私の思い上がりだったようね」
紬「さわ子先生……」
さわ子「ごめんね。こんなんじゃ担任失格よね」
律「そんなことないぜ、さわちゃん!」
唯「そうだよ! 私たちさわちゃんが先生で良かったって思ってるよ!」
さわ子「あなた達……。でも澪ちゃんには嫌われてるみたい」ウルウル
澪「うぅ……」
律「澪っ! さわちゃんは私たちのことを考えてやってくれてるんだ!」
澪「わかったよ! やるよ! けど終わったら絶対バンド練習だからな!」
紬「よかった。これでまた一段と団結することができたわ」
和「でも、少しは勉強もした方がいいんじゃ……」
唯律「し~~~~~~っ」
澪「もしかして、夏休みの宿題も全然やってないのか?」
律「宿題なんて最後の3日間が勝負だろ?」
澪「もっと余裕を持ってやれって毎年言ってるだろ」
律「はいはい、澪は小学校の時から夏休みが始まると同時に宿題し始めるような奴だったからな」
唯「和ちゃんと同じだね。正直言って信じられないよ」
律「どうせもう澪は終わってるんだろ? だったら私も終わったに等しい!
何故なら、澪のを写させてもらうからっ!」
唯「あ、ズルイよりっちゃん! 私もっ!」
澪「……」
翌日 平沢家
澪「と、言うわけで、今日は練習が休みなので勉強をしたいと思います!」
唯律「は~い」
和「まぁ、学生の本分だからね」
紬「ちょっと、野球に重点を置き過ぎちゃったかもね。さすがに」
和「私は皆が集まりそうな日に合わせて練習に参加してたけど、あなた達は?」
澪「私は週に4日くらい……かな」
紬「私は家だから暇があればちょくちょくやってたわ」
唯律「私たちはほぼ毎日!」
和「それは上手くもなる訳だわ……」
澪「少しは勉強しろよ……」
・ ・ ・ ・ ・
律「澪~、ここ教えて~」
澪「さっきから聞いてばかりじゃないか。少しは自分で考えろよ」
唯「和ちゃ~ん」
和「はいはい、わかったからそんなにくっつかないで」
紬「皆~、お茶淹れたから飲む?」
律「じゃあ、ちょっと休憩するか」
唯「ふぁ~、なんか軽音部を思い出すね~」
律「ああ、このムギの淹れてくれた紅茶の匂いをかぐと記憶の奥底から蘇ってくるな」
澪「もうそんな過去のことになってしまったのか……」
和「そういえば、憂は今日いないのね」
唯「うん、なんか最近あずにゃん達とよく遊んでるらしいよ」
律「梓か~、もはやその名前も懐かしい」
澪「おいおい」
紬「ここのところ梓ちゃんとは全然会ってないもんね」
律「私たちはずっと野球の練習に出ずっぱりだったからなぁ~」
澪「梓はギターの練習を毎日欠かさずにやってるだろうにな」
唯「そしたら夏休み終わったら、あずにゃんにはギター教えてもらって
私からは野球を教えてあげよう」
和「梓ちゃんだって野球教えられても困るだけでしょ」
・ ・ ・ ・ ・
梓「クシュン!」
純「どうしたの梓? 風邪?」
梓「ううん、大丈夫」
憂「梓ちゃん行くよ~」カキン!!
梓「ほっ!」パシッ
憂「わぁ~! 上手い上手い。もう立派なショートストップって感じだよ梓ちゃん」
梓「えへへ、そうかな。よし! もいっちょこ~い!」
憂(ちょっと強めに……)カキン!!
梓 ササッ!! パシッ!!
純「おおっ! 華麗な守備! 梓はちっこいから小回りが効いていいねぇ」
梓「なに? 馬鹿にしてんの?」
憂「梓ちゃん、そんなことないよ。プロでもロッテに長年在籍してた小坂って選手も小さかったんだけど
その華麗な守備でファンを沸かせていたんだよ。梓ちゃんの守備はそれを彷彿させるよ」
純「そうそう、私もそれが言いたかったんだよ」
梓「本当に~?」
純「私も梓には負けてらんないよ。憂コーチお願いします!」
憂「それっ!」カキン!!
純「オーライ、オーライ……。ああっ!?」ポロッ
梓「全然だめじゃん」
純「まぁ、あのイチローだって最初から野球が上手かったわけでもないでしょうし」
憂「そうだね純ちゃん。その意気だよ」
純「もいっちょ、バッチコーイ!」
梓(っていうか、いつの間にか私自身も野球が楽しくなってきちゃってる……)
梓(こんなんで本当にいいのかな……?)
梓(先輩たちは今頃何してるだろう)
純「ああっ!?」ポロッ
・ ・ ・ ・ ・
律「ふぅ~、なんとか夏休みの宿題も終わりが見えてきたな」
唯「そうだね! 私たちが本気になればちょちょいのちょいだよ!」
和「ほとんど私と澪のを写してただけでしょ」
唯「えへへへ……」
紬「2人とも午前中からお疲れ様。はいケーキ」
律「さっすがムギ! 用意いいな!」
唯「んん~、美味しそ~♪」
紬「和ちゃんもお疲れ様」
和「ありがと、ムギも疲れたでしょ?」
紬「私は2組の幼馴染の動向を見せてもらって充電してたから、元気一杯よ!」
和「そう? 良くわからないけど、ムギが楽しんでたのならそれで」
澪「あ、あのさ……TVでも見ないか?」ソワソワ
唯「え? 別にいいけど、こんな昼間から何か面白いのやってる?」
律「あ、そっか。今日は甲子園で我が県の高校がベスト8を掛けてやる日だ」
和「そうね、ちょうど始まるころかしら?」
唯「じゃあ、皆で観よう!」
・ ・ ・ ・ ・
実況『さぁ、7回の表。守ります〇〇県の××高校2点リード
しかし2アウト満塁のピンチ。ここを凌ぐことが出来るかエースの△△』
律「こ、この場面は力が入るな……」
唯「そうだね……」
紬「なんとか抑えてほしいね……」
和「でも、相手も今日当たってる4番だから難しいでしょうね……」
澪「ああ……もう見てられないっ!!」ハラハラ
実況『△△……投げたっ!』
カキン!!
澪「ああっ!?」
実況『痛烈ッ!! 打球は右中間方向へ! センター追いつくか? ……破った~!!』
実況『3塁ランナー帰って一点差! 2塁ランナーも帰って同点だ~!』
紬「そんな……」
実況『そして1塁ランナーも……回った回った!』
律「刺せ! 刺せるぞ!!」
実況『バックホームは!? 間に合わない! ぎゃくて~ん!!
打ったバッターも3塁へ~! 走者一掃のタイムリースリーベース!!』
実況『ここまで踏ん張ってきたエース△△、ついに逆転を許してしまった~!!』
和「内野への中継でちょっと乱れたのが悔やまれるわね……」
澪「ううっ、ここまで頑張ってきたのに……可愛そう……」ウルウル
律「おいおい、まだ試合は終わったわけじゃないぞ」
和「そうね、一点差ならまだわからないわよ」
唯「う~ん……」
紬「どうしたの? 唯ちゃん」
唯「あのさ~『うちゅうかん』って何?」
律「右中間ってたらセンターとライトの間のことだよ」
唯「へ~……そこがうちゅうかんなのか……」
和「何よそんなに難しい顔して」
唯「そこってやっぱり凄いの?」
律「まぁ、さっきみたいに右中間に飛んだら3ベースヒットになったりするからな
凄いっちゃ~凄いのかも」
唯「そっか~さすが宇宙感。その名の通り計り知れないパワーが秘められているんだね……」
律「ん? そ、そうかな……」
唯「きっとブラックホール的な何かがあったりするんだろうね……」
カキン!!
和「あ、また打たれちゃったわ」
実況『この打球も右中間へ伸びていく~! ライトセンター見上げた! 入った~2ランホームラン!
甲子園の浜風を切り裂いて右中間スタンドへ突き刺しました! エース△△力尽きたか~!!』
唯「またもや宇宙感……恐ろしや……」
律「何言ってんだ?」
・ ・ ・ ・ ・
実況『さぁ、ついに9回裏2アウト。3点差をつけられてランナー無し
〇〇県代表××高校追い詰められた』
紬「これじゃあ、もう……」
実況『ここで代打が告げられました』
律「思い出代打か……」
和「まぁ、来年のチーム作りの為にも少しでも経験させとこうってなるわよね
この悔しさが強さに変わるのよ」
カキン!!
実況『打った、セカンドゴロ』
澪「ひっ!?」
律「どうしたんだよ澪、急に顔伏せちゃったりして。ただのセカンドゴロだぜ」
澪「う、うるさい……。私は次のシーンは見ない」
実況『セカンド慎重に送球。バッターランナーヘッドスライディング! アウトー! 試合終了!
××高校の夏が終わった~!』
唯「あ~、この飛び込み見ると終わったって感じだよね~」
律「風物詩って感じだよな~」
澪「ねぇ? 終わった? もうヘッドスライディング終わった?」
和「終わったわよ澪」
澪「そっか、負けて残念だったな」
律「なぁ、もしかして澪ってヘッスラ見るの恐いの?」
澪「うっ……」
紬「そうなの? 私は一生懸命なところが好きだけど」
澪「だ、だってさ~。たまにベースに顔打ち付けたりする人もいるだろ。
それにシャチホコみたいになったりする人も」
澪「それが痛そうで見るの恐いんだよ……」
和「まぁ、下手な人がやると無様な格好になっちゃうけど、最終打者がそうしたくなる気持ちもわかるでしょ?」
澪「でも、福本コーチだって律や唯がふざけてヘッドスライディングしてたときに怪我するからやめろって怒ってただろ」
唯「あのときは恐かったよ……」
澪「私も怪我するのは嫌だし、そんな場面を見るのも嫌なんだ。
それによっぽど上手い人じゃないと駆け抜けたほうが早いんだろ?
なんていうか……効率が悪いっていうか……」
和「そういう見方もあるでしょうけど、あの場面はやっぱり気持ちが前面に出ちゃうから仕方ないわよ」
律「そうそう、それに観客も最後のヘッスラには期待してるって」
澪「だ、だけどさ~……」
律「もう、澪はロマンってのがわかってないんだよ」
唯「あ、校歌終わったよ」
実況『両校がアルプスへ応援のお礼の挨拶へ行きます。泣き崩れているエース△△にチームメイトが駆け寄る』
澪「ううっ……この場面はいつ見ても泣けるよな」ウルウル
律「やっぱりお前プレイがどうこうじゃなくて感動したいだけだろ」
唯「ところで、甲子園の土って美味しいの?」
和「なんでそう思ったのよ……」
唯「いや~皆持って帰ってるからさ~」
紬「色からしてきな粉かもしれないわね」
唯「でも、試合が始まったときは黒くてココアパウダーみたいだったよ」
紬「そう言われれば……。試合途中で入れ替えるのかしら?」
律「ムギも唯のボケにそこまでつきあわなくてもいいんだぞ」
紬「えっ?」
律「えっ?」
澪「土に刻んだマイメモリー。思い出の味はちょっぴりビターなココアパウダー……」ブツブツ
和(やっぱり軽音部って唯にピッタリだわ)
・ ・ ・ ・ ・
律「さて高校野球も終わったことだし」
澪「そろそろ勉強の再開だな」
律「バッティングセンターにでも行くか!」
澪「なんでそうなる!!」
律「だって~、野球見てたらやりたくなっちゃったんだも~ん」
唯「私も! 今日こそはホームランが打てる気がする」
律「いや、それは無理だって」
唯「え~……」
紬「バッティングセンターって?」
律「あれ? ムギはバッティングセンター知らないの?」
紬「うん、ごめんなさい」
律「いいって。そっか~ムギはバッティングセンター行ったことないのか~」
唯「ホームランのボードに当てると景品が貰えるんだよ」
紬「すごいわ!」
和「もしかしたら、ムギだったら狙えるかもしれないわね」
律「よ~し、じゃあ行くか~!」
唯「お~!」
澪「ちょっと待て!」
律「なんだよ~」
澪「まだ少し宿題残ってるだろ」
律「だって~もう頭使うの疲れちゃったし~」
澪「お前はほとんど写してただけだろ!」
律「違うぜ! 丸写しだったらバレるから、それらしい間違いも忍ばさないと駄目だろ」
律「そのそれらしい間違いってのに頭を使うんだよ。見当違いな間違いだと怪しまれるからな!」
澪「変なところで機転をきかすな!」
和「まぁ、澪。もう宿題も終わったようなもんだし。今日はこの辺でいいんじゃない?」
澪「の、和まで」
和「それに……」
紬「唯ちゃん、私頑張る!」
唯「ムギちゃん、景品たくさん取ったらちょっとちょうだいね!」
和「ムギがすごくやる気になってるし」
澪「で、でも……」
律「じゃあ、澪だけもう帰ったら~?」
澪「ううっ……それは嫌だ……」
律「じゃあ、けって~い!」
唯「やった~!」
最終更新:2011年01月28日 03:09