……

律「夏だね~」

唯「暑いね~」

律「夏休み間近はこう気分が高揚するよな」

律「海、山、夏祭り、花火」

唯「アイス、すいか、かき氷、リンゴ飴」

律「リンゴ飴だけなんだか夏とは違うくない?」

唯「しりとりだったんだよ、りっちゃん」

律「……おおっ! 本当だ」

澪「何くだらないこと言ってるんだよ、私たちは受験生だからそんな遊んでばっかりもいられないぞ」

紬「そうね、夏を制するものは受験を制す!」

律「とは言っても、高校生最後の夏休みだしな~」

唯「遊びたいよね~」

和「そんなこと言って、勉強もしないで遊びすぎて結果留年になんてならないようにね」

紬「来年も高3の夏を迎えちゃうかも」

律「それはそれで」

澪「良くないだろっ!!」

律「いいじゃん、少しくらい夏を満喫しようとしても~」

唯「そうだよ、今年の夏は今年しか来ないんだよ!」

紬「そう言われちゃうと、そんな気もするわ」

澪「おいおい、ムギまで……」

律「澪だって、夏にはお前の大好きな高校野球があるだろ~」

和「へ~、意外だったわね。澪が野球好きだなんて」

唯「どっちかって言うと、スポーツ見るのはりっちゃんって感じだよね」

律「まぁ、私も見るけどさ~。けどこいつのはプレイを見るんじゃなくて感動したいだけなんだよ」

澪「ち、ちゃんと野球の部分も見るってば、その結果感動してるだけだって」

律「だって、プロ野球は全然見ないじゃん」

澪「そ、それは……」

紬「でも、澪ちゃんの気持ちもわかるかも」

唯「だよね~、同じ年頃の人があんなにも一生懸命に野球してる姿ってけっこうグッとくるよね」

澪「だ、だろ? そんな必死な姿を見るのが好きなんだよ」

和「確かに、負けたら終わりっていうのが更に必死にさせるわよね。
  3年間の頑張りが、たった一球で消し飛んじゃうこともあるし」

澪「白球に想いを込めて……。ああ、白いボールのファンタジー……」

紬「澪ちゃん浸っちゃってる……」

律「こうなったら中々帰ってこないからな~……」

姫子「相変わらずだね~軽音部」

律「そういえば、姫子はソフトボール部だろ? インターハイの県予選はどうだったんだ?」

姫子「力及ばず、準決勝で敗退」

和「でも凄いじゃない、県でベスト4でしょ?」

姫子「まぁね。でも来年はきっと全国へ行ってくれると思うよ」

紬「2年生が凄いの?」

姫子「ええ、今年の成績だって2年が頑張ってくれたから準決勝まで行けたようなもんだし」

唯「へ~、ウチと同じだね! 軽音部もあずにゃんが一番頑張ってるし!」

律「褒められたもんじゃないだろ」

紬「私たちも、もっと頑張らなきゃね」

和「ところで……澪はあのままでいいの?」

澪「恋のバックホーム、失恋ゲッツー、あなたに届け愛のホームラン。ふ、ふふふ……」ブツブツ

律「……」


さわ子「はいは~い、帰りのホームルーム始めるわよ~」

澪「恋のライバルに牽制球、あなたの心にヒット・エンド・ラブ」ブツブツ

律「ほれ、澪、戻って来い」

澪「はっ!?」

さわ子「ほら、秋山さん。席に着いてね」

澪「す、すみません……」

さわ子「明日から夏休みだけど、皆浮ついてちゃ駄目よ」

さわ子「そこで、そんな浮ついた気持ちを正すために、夏休みはこのクラスの皆で野球をしたいと思います!」

律「野球?」

さわ子「そう、2学期始まってすぐに球技大会があるでしょ?」

さわ子「今年は屋外競技が野球とテニス、室内競技がバレーボールと卓球」

澪「じゃあ、私卓球がいいな。チームプレーとか苦手だし」

律「根暗な澪さんらしい考えですこと、あえてテニスを選ばないあたりも」

澪「だ、だって……」

さわ子「ダメよ、秋山さんはこの3年2組で唯一のサウスポーなんだから」

さわ子「野球ほど、左が重宝されるスポーツもなくってよ」

澪「でも、野球なんてやったことないし……」

さわ子「だから練習するんじゃないの」

澪「ええー……」

唯「面白そう! 私も野球がいい!」

唯「和ちゃんも野球するよね?」

和「ええ。構わないわ」

唯「だよね~。小学生の時は男の子に混じって野球してたもんね」

律「そうなのか?」

和「昔の話よ。小学生のとき自分は男じゃないかって思ってたし」

唯「そうそう、カッコよかったもんね~」

和「だから地元のリトルで野球やってたのよ」

和「ま、今は私ほど女らしい女なんていないと思ってるけどね」

律「何を言ってるんだ……」

さわ子「それは心強いわね。経験者歓迎よ」

さわ子「と、いうことで、立花さんももちろん参加よね?」

姫子「まぁ、構いませんけど」

さわ子「うんうん、我が桜高ソフトボール部を久しぶりの県ベスト4に押し上げたメンバーがいれば百人力ね!」

さわ子「ほかに参加希望の人はいない?」

「野球とか難しそ~」

「やるならバレーボールの方がいいよね」

さわ子「……田井中さんはもちろん野球よね?」

律「ん? まぁ、昔は弟とやったりしたこともあったからいいけど」

紬「じゃあ私も」

さわ子「それじゃあ、軽音部は全員野球参加ということで」

澪「私もやっぱり人数に入ってるんですね……」

律「いいじゃん。それとも私たちと離れて一人寂しく卓球でもするのか?」

澪「ううっ……」

紬「やりましょう? 澪ちゃん」

唯「きっと一緒の方が楽しいよ~♪」

澪「……わかった。私も野球するよ」

さわ子「そうこなくっちゃね」

澪「でも、できるだけ目立たないポジションが……」

さわ子「じゃあ、秋山さんはピッチャーね」

澪「え……」

さわ子「左なんだから当然じゃない」

澪「ちょちょちょちょ!!」

さわ子「もちろん理由はそれだけじゃないわよ!」

律「何か澪の中に野球に関する隠された才能をさわちゃんは見抜いたと!?」

さわ子「秋山という苗字に可能性を感じるわ!!」

澪  ポカ~ン…

さわ子「で、真鍋さんがキャッチャーっと」

和「そうなんですか?」

さわ子「やっぱり、キャッチャーは理論派じゃないと」

和「はぁ……」

紬 ウズウズ…

唯「どうしたのムギちゃん?」

紬「あ、あの! 澪ちゃんがピッチャーならキャッチャーはりっちゃんがやるべきだと思います!!」

律「へ? なんで?」

紬「だって、よくバッテリーは夫婦だって言うじゃない?」

和「うん。よく聞くわね」

紬「だからよ!!」

律「でも、キャッチャーって難しそうだし……」

紬「いやよ!! 澪ちゃんが攻めてりっちゃんが受けてくれなきゃ!!」

律「……」

律「本当はもっと動きがあるポジションがいいんだけどなぁ~」

澪「わ……私が……ぴ、ぴ、ぴ、ピッチャ……」プス~

律「澪……」

律(そうだよな、あんな澪を支えてやるのが親友の役目だよな!)

律「よし! わかった! 私が澪をリードしてやる!!」

紬「ここに山田里中コンビを超えるバッテリーが誕生したわっ!!」

律「その代わり4番は私ね!!」

和「だったら私はセカンドがいいです」

さわ子「まぁ、仕方ないわね。でもなんでセカンドなの?」

和「リトルの時もずっとセカンドだったんです」

和「堅実な守備、目立たなくとも確かな仕事をする選手に憧れてて」

さわ子「阪神の和田豊みたいな?」

和「ああ、まさにドンピシャです。いぶし銀って呼ばれるのが夢ですね」

さわ子「渋いわね……」

さわ子「さて、これで6人ね」

さわ子「他に、誰か我こそはって子いない?」

 「・・・・・・」シ~ン

さわ子「うう~ん……」

曜子「はいっ! わ、私、全然運動とか出来ませんけど、やってみます!」

さわ子「佐々木さん! いいわよ! その意気買った!」

曜子(あ、秋山さんのピッチャー姿なんて今後見られないかもしれないし
    近くで見て目に焼き付けとかないとっ!!)

さわ子「ほら! まだまだ受付中よ!」

「見るだけならいいけど、やるってなるとね~」

「マネージャーならやってもいいよ~」

曜子「ま、マネージャーとかもありなんですか!?」

曜子(「秋山さん、はいタオル」 澪「ありがとう佐々木さん。必ず君にウイニングボールを届けるよ」
    「秋山さん……私、嬉しいっ!」ってこんな展開も……)ポワポワ

さわ子「いや、部活じゃないんだからマネージャーはいらないわ」

曜子「そ、そっか~」ショボーン

さわ子「な、なんでそんなに落ち込むの?」

曜子「いえ、別に……」

さわ子「あの……他に野球やりたい子いないの?」

「だってね~……」

「絶対難しそうだし……」

さわ子「そう……人数が集まらないんじゃ仕方ないわね」

さわ子「残念だけど、我がクラスは野球は不参加ってことで」

さわ子「だから、夏休み中に皆で集まって練習も無しね……」

律(はっ!? このままじゃ勉強漬けの夏休みになるやもしれん!)

律(なんとかして、人数を集めて練習。もといクラスの皆で遊びたいっ!)

律「い、いちごは野球に参加しないのか!?」

いちご「やだ、しんどそう……」

律「で、でもいちごってバトン部だろ? きっとそういった棒の類の扱いには慣れてるんじゃないかな~って」

いちご「……一緒にしないでよ」

律「私、いちごが華麗にバットでボールを打つ姿見てみたいな~」

いちご「……」

律(だ、駄目か……)

いちご「本当に」

律「へっ?」

いちご「本当に私の華麗なバット捌き、見てみたい?」

律「あ、ああ! もちろんだとも! なぁ唯!」

唯「うん! いちごちゃんだったらクルクルっと回してカッキーンだよ!」

律(わけわからん!)

いちご「……」

律(ああもう! 唯が変なこと言うから!)

いちご「そこまで言うのなら……やってあげなくもないけど……」

律「え? いいの!?」

いちご「……なに? 私のバット捌きが見たくないの?」

律「いや! めっちゃ見たい! わーい! 嬉しいな~!」

唯「やった~、いちごちゃんと一緒だ~!」

いちご「……ふん///」

律(あれ? いちごって、実は扱い易い?)

さわ子「いいわ! 若王子さんの秘めたる力が見れるかもね!」

さわ子「でも、あと一人足りないのよね~」

律「は、春子! お前は? その野性味溢れる眼光は野武士野球の申し子!」

さわ子「田井中さん古い言葉知ってるのね」

春子「確かに、体動かすのは好きだけどさぁ、あんまりやると腹が減るからなぁ~」

律「ムギっ!」

紬「春子ちゃん、練習終わったら、私が持ってくるケーキを好きなだけ食べてもらってもいいのよ?」

春子「やる」

律「よっしゃ~! これで人数確保~!」

さわ子「ギリギリ9人だから怪我人が出た時点でジ・エンドだけどね」

律「あ、そっか。控えに何人か欲しいのか……」

さわ子「出来ればもっと運動部の子に参加して欲しいんだけど……」

さわ子「瀧さんや佐藤さんなんかはかどう?」

アカネ「私はやるのならやっぱりバレーがいいので……」

エリ「私も~、ごめんねさわちゃん」

さわ子「そう……。バスケ部の子達は?」

信代「私はテニスがやりたいかな。スコートひらひらさせるのに憧れてたんだ」

潮「誰もあんたのそんな姿望んでないっての」

信代「へへへ、でも、野球よりはテニスかな」

慶子「だよね~」

さわ子「そっか、仕方ないわね。その辺はあなた達の意思を尊重するわ。無理強いはよくないしね」

澪(私のは無理強いじゃないと!?)

律「じゃあ、野球は中止……?」

さわ子「そんなことないわよ! そういう創設直後の弱小野球部みたいな展開も燃えるじゃない!」

律「そういうもんなの?」

和「でも2学期の行事を夏休み前に決めるなんて、先生相当気合入ってますね」

さわ子「私、初めての担任になったクラスだし、それにあなた達3年でしょ」

さわ子「だから練習も含めて思い出に残したいのよ……」

唯「さわちゃん……」

律「じゃあさわちゃんにも私たちにも思い出に残る球技大会にするか!!」

紬「うん! がんばりましょうね」

和「ふふっ。久しぶりに腕が鳴るわ」

「お~~~~!!」

さわ子(本当は某巨乳監督が出てる漫画に影響されて監督してみたくなったからなんだけど)

澪「あわわわわわわ……」

澪「ち、ちょっとみんな待って!」

律「なんだよ? この期に及んで無理なんて言うんじゃないだろうな」

澪「私たちは受験生だぞ! この夏休みは勉強漬けなんだから」

さわ子「だからよ! 秋山さん!」

澪「へっ?」

さわ子「みんなが勉強しなきゃいけないのは百も承知なの」

さわ子「だからこそ、無理にでもみんなで集まって体を動かす」

さわ子「たまには気分転換もしなきゃ、勉強ばっかりだったらパンクしちゃうわよ」

澪「それは、そうかもしれないけど……」

律「そうだぜ澪。何も毎日練習するわけじゃないだろうし」

唯「うんうん、気分転換も必要だよね」

澪「おまえたちは、勉強しなくていい理由が欲しいだけじゃないのか?」

唯「え、えへへへ……」

「でも、先生のいうことも一理あるんじゃない?」

「だよね、勉強漬けもいやだよね」

紬「澪ちゃんもやろう?」

澪「う、仕方ないか……」

さわ子「じゃあ早速、明日から練習ね」

さわ子「えっと、じゃあ集合は何時にしようかしら……」

和「あの、先生」

さわ子「何かしら? 真鍋さん」

和「学校で練習するんですか?」

さわ子「そうよ。ほかにどこがあるっていうの?」

和「でも、グラウンドも体育館も活動中の部活で埋まってると思いますけど……」

さわ子「えっ!? そうなの!?」

律「おいおい……」

唯「さわちゃんもどこか抜けたとこあるよね~」

澪「唯に言われちゃお終いだな。まぁ同意見だけど」

さわ子「……」

紬「よかったら、ウチの敷地内の施設を使ってもらってもかまいませんよ」

さわ子「本当!?」


紬「ええ。野球道具やバレーのネット、もちろんテニスコートや卓球の台、その他必要な物もこちらで用意します」

さわ子「持つべきものはお嬢様よね~」

姫子「ムギの家って本当にお金持ちなんだね」

いちご「……超セレブ」

さわ子「じゃあ、来れる人はムギちゃんちに集合っと」

紬「楽しみだわ~♪」


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