川の轟音だけが聞こえる中、ムギ先輩が話し始めました。

紬「梓ちゃん、それじゃあ私行くね…」

梓「えっ!?行くってどこにですか?」

紬「うん…公園のトイレにでも非難しようと思う…」

梓「駄目ですよ!危険ですよ!」

紬「でも…他に行くとこないから…」

梓「だったら、うちに来ませんか?」

紬「駄目!それだけは駄目!梓ちゃんに迷惑掛かっちゃう…」

梓「迷惑だなんて…迷惑だなんて思ってません!」

紬「梓ちゃんが迷惑じゃないかもしれないけど、梓ちゃんの両親が迷惑だと思ってたら困る…」

梓「そんな事無いです!そんな事思う親なら、私は家出します!だから、うちに来てください!ムギ先輩!」

紬「でも…」

梓「駄目です!じゃあ、行きますよ!ムギ先輩!」

そうして私はムギ先輩の荷物を持つと、私の家に向かって歩き始めました。

その後ろをムギ先輩は黙って着いてきます。


そして私の家の前に着きました。後ろを見るとムギ先輩はオドオドとしてる。

梓「ムギ先輩!入りますよ!」

私は家のドアを開けました。

お母さんが血相を変えて玄関にやってきました。

梓母「梓!心配したのよ!ニュースで川が増水してるとか言っているし」

梓「ごめんなさい。あのお母さん?」

梓母「何?」

梓「友達連れてきたの」

梓母「ん?あっ、この前の紬ちゃん」

梓「うん。泊めてあげて良いかな?」

梓母「何言ってるの!早く入って。もう二人とも雨でビチョビチョ」

紬「おじゃまします…」

梓母「入って入って!まあこんなに濡れちゃって!」

紬「すいません…」

梓母「良いのよ!梓、タオル持ってきて」

梓「うん!ムギ先輩、ちょっと待ってて下さいね」

紬「うん…」

そうして、どうにかこうにかムギ先輩を家に入れる事が出来ました。

雨で冷え切ったムギ先輩にお風呂を勧めて私はお母さんと話しました。

梓「あのね、、、お母さん…」

梓母「ん?なに?」

梓「ムギ先輩の事なんだけど…」

梓母「良いわよ!居てもらっても」

梓「えっ!?怒ならないの?」

梓母「怒こる理由なんて無いわよ!それに、なんとなく理由も分かるしね」

そうだ…ムギ先輩のお父さんの会社が無くなってしばらくしてから、大々的にニュースでやってたっけ…

梓母「それに、梓は心配なんでしょ?紬ちゃんの事」

梓「うん…」

梓母「良いわよ。居てもらっても」

梓「あ、ありがとうお母さん!」

その時でした。ムギ先輩がお風呂から上がってきました。

梓「ムギ先輩!喜んで下さい!ずっとうちにいても良いですよ!」

紬「えっ!?駄目だよ…」

梓「お母さんが居ても良いっていってくれたんです!だから、ずっと居て下さい!」

紬「でも…でも…」

梓母「紬ちゃん。良いのよ、居てもらっても。困ったときはお互い様だし。
それに駄目って言ったら、梓が何するか分からないし…ふふふっ」

紬「あの…あの…ホントに良いんですか?迷惑じゃないんですか?」

梓母「うーん…じゃあ、紬ちゃんが大人になったら少しずつで良いから返してくれたらそれで良いわ…」

紬「あの、なんて言ったら良いのか…ありがとうございます…」

私はムギ先輩に抱きつきました。もうどこにも行かないで下さい…

そんな気持ちで一杯でした…

梓母「じゃあ、梓は早くお風呂に入ってきなさい!」

梓「うん!」

私は急いでお風呂に入ってきました。お風呂から出てリビングに行くとムギ先輩はなんだか堅くなってソファーに座っています。

梓「ムギ先輩?なんだかガチガチですよ?」

紬「だって…私…」

梓「リラックスですよ!じゃあ、私の部屋に行きましょうか?」

紬「うん…」

私の部屋に行くと、ベットの下にお布団が敷いてありました。

多分、お母さんが敷いてくれたんだろう。

梓「今日からここがムギ先輩の蒲団です」

紬「うん…梓ちゃん…ホントに良いの?私、梓ちゃんの家にいて…」

梓「もう!またその話ですか?良いです!居て下さい!私、ムギ先輩みたいなお姉ちゃんが欲しかったんです」

紬「梓ちゃん…ありがとう…」

梓「ムギ先輩、今日は一緒に寝ませんか?」

紬「うん…」

私とムギ先輩は私のベットで一緒に寝る事にした。

私はベットに入るとムギ先輩に抱きました。

紬「梓ちゃん?」

梓「ムギ先輩、どこにも行っちゃ嫌ですよ?」

紬「うん…安心して、どこにも行かないから…」

そうして私達は一緒に眠りました。

ムギ先輩は私の家にいることになりました。

ムギ先輩は最初こそ緊張していましたが、段々とお母さんやお父さんとも仲良くなっていきました。

けいおん部にも来るようになり、昔のムギ先輩のように元気になっていきました。


そうして、年が明け…段々と暖かくなり、ムギ先輩達の卒業式がやってきました。

梓「今日は卒業式ですね!ムギ先輩!」

紬「うん…ありがとうね、これも梓ちゃんのおかげだよ」

梓「そんな事無いですよ!卒業できるのはムギ先輩がちゃんと勉強とかしたからです!
私は、唯先輩が卒業できる事の方が不思議です!」

紬「もう、梓ちゃんたら。唯ちゃんに言いつけちゃうぞ!」

梓「あーっ、駄目です!秘密にしといて下さい」

紬「うん!」

梓「へへへっ」

リビングに行くと、お母さんとお父さんがいました。

梓母「おめでとう、紬ちゃん!」

梓父「おめでとう」

紬「あ、あの…なんて言ったら良いのか…ありがとうございます」

ムギ先輩は両親の言葉で泣きそうになりました。

梓「ムギ先輩?泣いちゃ駄目ですよ!泪は卒業式まで取っておかないと!」

梓母「そうよ?今泣いちゃったら、卒業式の時に流す泪なくなっちゃうわよ?」

紬「はい…ありがとうございます…」

そうして、私達はみんなで朝食を取りました。

そして私達は、卒業式が行われる学校へと向かいました。

梓「あーあ、こうやってムギ先輩と学校に行くのは今日で最後なのか…」

紬「そうだね…ありがとね…梓ちゃん…」

梓「もう、また暗い顔してますよ?今日は卒業式なんですよ!お祝いなんですよ!」

紬「うん、、、そうだね」

梓「だから、暗い顔したムギ先輩なんて見たくないです!」

紬「ごめんね…」

梓「あの…ムギ先輩…」

紬「何?梓ちゃん」

梓「その、手繋いでも良いですか?」

紬「うん、、、良いよ」

私はムギ先輩と手を繋ぎました…ムギ先輩の手はとっても温かい…

私はずっとずっとムギ先輩と一緒にいたいと思いました。


学校に着き、ムギ先輩と別れました。

そうして、時間は過ぎて卒業式が始まりました。

私は先輩達と過ごしたけいおん部での2年間と、ムギ先輩と一緒に暮らした半年間の事を思い出し泣きそうになりました。

卒業式が終わり、私達は教室へと戻りました。

純「梓はけいおん部に行くの?」

梓「うん!ムギ先輩と帰りたいし」

純「先輩達も卒業かぁ・・・会えなくなるんだね・・・」

卒業式が終わっても私はムギ先輩と一緒の家に帰り、ずっと一緒だ

なんだか優越感を感じる。


純「じゃあ、私、ジャズ研に行くわ!」

梓「じゃあね、純!」

私はけいおん部の部室へ向かう事にした。

家に帰ったら、ムギ先輩の卒業パーティーをしよう・・・

ムギ先輩とはずっと一緒だ・・・なんだか、心が躍るのが分かる。

私はけいおん部の部室の前に着き、呼吸を整えるために大きく深呼吸をして。

そして、部室のドアを開けます。


梓「みなさん!卒業おめでとうございます!!」

でも、、、そこには、、、

あれ??ムギ先輩の姿がない・・・いつもの席にムギ先輩がいない・・・

梓「あ・・・あの、、、ムギ先輩は・・・?」

律「ムギなんだけど・・・なんだか用事があるとかでな・・・」

意味が分からない・・・用事って何?ムギ先輩の用事って何?

澪「梓?」

嫌な予感がする・・・

唯「あずにゃん・・・落ち着いて!」

震えが止まらなくなる・・・

梓「す、すいません・・・私も用事が出来ました・・・失礼します・・・」

私は部室を飛び出すと走り出しました。

嫌だ・・・ムギ先輩がいなくなるなんて嫌だ・・・

ずっと一緒にいたい・・・ムギ先輩とずっと一緒に・・・

家までどうやって帰ってきたのか分からなかった。

家の前で呼吸を整えていると、膝は擦りむいてるしコートもドロドロだ。

私は家のドアを開けました。

梓「お母さん!ムギ先輩わ!」

梓母「紬ちゃん?さっき帰ってきて、ちょっと出かけるって!」

私は自分の部屋へと急いだ。ムギ先輩がうちに来てから一緒にすごした自分の部屋へ

部屋のドアを開けて、部屋の中を見渡すとムギ先輩の荷物が無くなっている・・・

やっぱり、私の嫌な予感が当たってしまった・・・

梓「嫌だよ・・・いなくならないでよ・・・ムギ先輩・・・」

泪が溢れ出す・・・心に大きな暗い空道が出来ていくのが分かる・・・

梓「嫌だよ・・・嫌だよ・・・ムギ先輩・・・ムギお姉ちゃん・・・」

私はずっとムギ先輩と一緒にいれると思っていました。

ムギ先輩みたいなお姉ちゃんが欲しかった・・・でも、、、もう、その夢は叶わない・・・

梓「えっ・・・ぐえっ・・・お姉ちゃん・・・」

私は泪で霞む目を机に向けると、可愛い封筒が目に入りました。

その封筒を手に取り中を見てみると手紙が入っていました。


『梓ちゃん・・・黙って出て行く事を許して下さい。梓ちゃんのおかげで無事に高校を卒業することが出来ました。

ホントに梓ちゃんと梓ちゃんのお母さん、お父さんになんてお礼を言ったら分かりません。

ずっと梓ちゃんと一緒にいたいけど、これ以上甘えるわけにはいかないと思って出て行く事にしました。

最後に梓ちゃんに会ったら決心が鈍りそうだったので、黙って出て行く事にしました。

本当にごめんなさい・・・

梓ちゃん、ホントに今までありがとうね。なんだか妹が出来たみたいでとっても嬉しかった』


ムギ先輩も私と同じ気持ちだったんだ・・・でも、居てくれないと・・・ずっと一緒に居てくれないと・・・

私は階段を下りて、急いで玄関へと向かいました。


玄関で靴を履いてるときです、お母さんが話し掛けてきました。

梓母「梓!紬ちゃんの気持ちも考えてあげなさい!」

私は振り返ります。

梓「でも、でも・・・嫌だよ・・・ずっと一緒にいたいよ・・・」

お母さんは深い溜息を一つ着きました。

梓母「今、紬ちゃんを追ったら梓の我が儘で紬ちゃんをただ困らせる事になるんだよ!」

梓「でも、でも、でも・・・」

私はお母さんの言葉で玄関で泣き崩れる事しかできませんでした・・・

ーおしまいー




ーエピローグー

私は高校3年生になりました。

桜が散る頃、私はお母さんとお父さんに呼ばれました。

梓「何?お父さん、お母さん・・・」

ムギ先輩がいなくなってから、私は両親と上手くいってない・・・

梓父「そこにちょっと座りなさい・・・」

梓「話す事なんて無い・・・」

梓母「良いから、座りなさい!」

私は渋々席に着く。

梓母「紬ちゃんの事なんだけどね」

えっ!?ムギ先輩の事??どういうこと?

梓「紬ちゃんなら、ちゃんと生活してるわよ」

えっ!?ホント?でも、どうして・・・?

梓母「梓、ごめんね。紬ちゃんはちゃんと働いて生活してるから」

梓「分かんない・・・どうして今更教えるのよ・・・」

梓母「だって、あの時に梓に言っても聞いてくれなかったでしょ?
ちゃんと話しても、紬ちゃん連れ戻したでしょ?」

確かに・・・私はムギ先輩とずっと一緒にいたかった・・・だから、ムギ先輩を見つけて連れ戻すつもりだった。

梓「うん・・・」

梓母「だからね、あの時は言わなかったの・・・ごめんね、梓」

梓「お母さん・・・」

その後、お母さんとお父さんからムギ先輩の話を聞いた。

家も借りて、ちゃんと働いて頑張ってる。

実は、ムギ先輩が借りた部屋の保証人にもなってるらしい・・・

梓「お母さん、ムギ先輩に会いたいよ・・・」

梓母「うーん、それは、紬ちゃんに任せましょう?ね?」

梓「でも・・・」

梓母「大丈夫!紬ちゃんはちゃんと梓に会いに来ると思うから。
ただ今は、生活するのに大変なんだと思うよ?
紬ちゃんに余裕が出来たら、必ず梓に最初に会いに来ると思うよ?ね?」

梓「うん・・・」

そうかもしれない・・・今、ムギ先輩に会ったら私はムギ先輩とまた一緒にいたくなる・・・

それはただ、ムギ先輩を困らせる事になる。

だから今は待とう・・・ムギ先輩が私に会いに来てくれるその日まで・・・

それまで、私は少しでも大人になるように頑張ろう・・・

次、ムギ先輩に会ったときは、新しいけいおん部の事とか唯先輩達の事とか一杯話そう・・・

ーほんとにおしまいー