去年の秋口、庭へ植えたアネモネが菊咲き
 春の訪れを私に告げる

「――とても綺麗ね」

 薫る風に吹かれ、あの日々を想うと
 それは自然と口からこぼれた言葉だった 

 ――軽音部の皆と離れ5年
 “再会”の期待を込め植えたアネモネ

 すら、と伸びた4輪の花たちは
 それぞれ与えられた色を持っている


 白色の花は唯ちゃん
 ――汚れを知らない白色
 雲のように自由で、何にでも楽しそうな唯ちゃん

 赤色の花はりっちゃん
 ――溢れ出る活気の赤色
 太陽のように明るくて、元気いっぱいなりっちゃん

 青色の花は澪ちゃん
 ――知的で爽やかな青色
 空のように澄んでいて、知的で清らかな澪ちゃん

 桃色の花は梓ちゃん
 ――可愛いく優しい桃色
 桜のように華やかで、少し子どもっぽい梓ちゃん


 春の風に揺られるアネモネは
 懐かしい日々を私に思い出させるよう、楽しげに踊る

「――みんな、元気かしら?」

 花たちとは反対に、少し寂しくこぼれた言葉

 本当は気付いている
 期待の裏にある薄れゆく希望
 枯れて散ってしまうこの花たちのように

 また皆に会いたい
 そんな私の想いもはかなく消える――


 私は毎年秋になるとアネモネを植える

 会えなくてもいい
 せめて春のひと時だけ、あの日々の想い揺られていたい

 そして

「――みんなの幸せを心から願っています」



 また風がアネモネを揺らす――



 おわり



 わいわい がやがや

律「んー、聞こえませんなー?」ニヤニヤ

澪「ない! 絶対にありえない!」

律「ひひっ、本当はもっとあたしに構ってほしいんだろー?」

澪「ば、バカッ! そんなわけ――」

 がばっ

律「素直になーれよっ」ぎゅう

澪「ひぃぃ、やめろよ律、皆見てるから!」

紬(りっちゃん、――今日も素晴らしいわ!)小ガッツポーズ

 『ふーん、はたしてそうかしらぁ?』

紬「…………?」


紬(?)

紬(――私に呼びかけてる?)

黒ムギ『まったくノロマなんだから、嫌になっちゃうわぁ』

紬「――え?」

黒ムギ『私よ、わーたーし! あなたのもう一人の人格よぅ!』

紬(もう一人の私?)

黒ムギ『ったくトロいのよ、何度も言わせないでちょうだいっ!』

黒ムギ『そぉんなことよりー、もっといいお話しましょうよぉ?』

紬「――状況が理解できないわ?」あせあせ

黒ムギ『あなたは私なの、だからあなたのことは何でもわかっちゃう♪』るんっ


 澪「こーら! 律、いい加減にしろっ、――あっっ」へなへな

 律「ん、ん? 言葉に説得力がありませんなぁ澪ちゅわーん♪」さわさわ


黒ムギ『本当は、あの二人に混ざりたいのよねぇ?』

紬「!」

黒ムギ『――だーかーら、あなたのことは全てお見通しだってぇ♪』ふふっ

黒ムギ『たまには、欲望に素直になってもいいんじゃないかしらぁ?』

紬(わ、わたし――)

 『――そうはさせないわ!』

黒ムギ『チッ――』

白ムギ『そのどうしようもない性格は直らないようね、ホント呆れるわ』

紬「あ、――あの?」

白ムギ『あら、申し送れたわね、私はあなたもう一人の人格よ』

白ムギ『ざっと説明するなら、
    私はあなたの理性を司る“天使”ってところね、左側の眉毛の精』

紬「――はぁ、」ポカーン

白ムギ『そしてあっちの黒い方が、
    右側の眉毛の精、欲望を司るしょうもないバカの“悪魔”――』

黒ムギ『う、うるさい、――この子は私が面倒見るんだからほっといてちょうだいっ』

白ムギ『そうはいかないわ! 一昨日の朝だってあなたのせいで学校に遅刻しかけて』

黒ムギ『し、し、知らないわよっ! この子だって賛同してそうなったんだからっ!』


 唯「あぁー! あずにゃんのケーキの方が大きいよぅ」

 梓「そ、そんなことないです! 唯先輩はすぐそうやって人の物に――」


白ムギ『――第一あなたみたいな人がいるから!』ああでもない

黒ムギ『何よ、あなたこそいっつも、いっつも、いぃーっつも邪魔ばっかりっ!』こうでもない


紬「――もう、二人ともいい加減にしてっ!」

唯・梓「!!」ビクッ

紬「あ、――あら?」

唯「う、う゛ぅ゛~」じわっ

梓「――すみません」しゅん

紬「あのね? 違うの、唯ちゃんと梓ちゃんのことじゃ――」


 黒ムギ『あ~あ、あぁ~あ、あなたが仕事しないからぁー?』やーいやーい

 白ムギ『なんですって!
     あなたが私達にちょっかいだしてこなければすんだ話しでしょ?』ガミガミ


紬「…………」ガシッ


白・黒『――うぐッ』

紬「…………」すたすたすた――

 ガチャ バタン

紬「天使さん、悪魔さん、お二人に大事なお話があります」にこっ

白ムギ『きいて、紬! 全てはこのバカ悪魔が――』

黒ムギ『なぁによっ! あなただって――』

紬「うふふ♪」ぎゅううううう

白・黒『ぎゃぁぁぁぁぁ、イタいぃっ!』

紬「あなた達のせいで、唯ちゃんに怖い思いをさせてしまいました」ニコニコ

紬「これ以上私の邪魔をしたいのなら
  二人そろってトンちゃんの水槽に沈めますからね?」ニコニコ

紬「――わかっていただけたかしら?」ギロリ


白・黒『…………!!』コクコクコクコク

 かちゃり パタン

紬「ん~、しゃらんらしゃらんら~♪」

唯「あぁ、――ムギちゃん、さっきはそのぅ」しゅん

紬「そんな、唯ちゃんは悪くないの!」


紬「それより、お茶のおかわりいかがかしら?」

唯「わぁーい! いつものムギちゃんだっ♪」むぎゅ

紬「あらあら♪」なでなで



紬(――私はこの“絶妙な距離”で十分満足だから♪)うふふっ


 おわり



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