梓「これ……何ですか?」

紬「日本人形よ」

律「にしても大きいな、梓と同じぐらいあるんじゃないかー?」ニヤリ

梓「な、私はちっちゃくないです!律先輩だって人のこと言えるほどじゃないですよ!」

律「う……まぁ、そうだけどさ」

唯「可愛いね、このお人形さん!」

澪「私は日本人形ってだけでイワクがありそうでなんか怖いな……」

律「澪は怖がりだなー、ほれ、何もないって!」ポン

人形「コンニチハ」

律「ぎゃあああああああああ!」

紬「これはただの日本人形じゃなくて、中にロボットが入っててご挨拶とかできるのよ♪」

律「お、驚かせやがって……」

梓「……ぷっ」

律「な、中野ぉおおおおお!」


唯「こんにちはー」

人形「コンニチハ」

梓「なんか……不気味ですね」

澪「な、なんでこんな悪趣味なものが軽音部に……?」

紬「たまたま家に置いてたのを見かけて、面白そうだから持ってきちゃった♪」

澪「いいのか?仕事の関係の物じゃないのか?」

紬「お人形屋さんの取引先からのお土産だそうよ、お父様も別に興味ないみたいだし」

唯「こんなに可愛いのにもったいない!この子は今日からウチの部員にしてあげよう!」

梓「ただでさえスッポンモドキが部員なのに……また変な部員が増えちゃうんですか?」ハァ

律「じゃあ入部記念にとりあえず……ネコミミとメイド服と……」ガサゴソ

梓「日本人形なのにメイド服ですか!?」

律「お!梓の服サイズほぼぴったり!」

梓「……腑に落ちない」

律「髪を結んで……はい、梓完成!」

梓「な!私日本人形じゃないです!」

唯「でも本当にあずにゃんみたーい、じゃあキミは今日からあずにゃん2号だね!」

梓「……あずにゃん2号は既にいるんですけど」ボソッ

唯「?」

梓「な、なんでもないです!」

紬「でも良かったわ、気に入ってもらえて♪」

澪「メイド服着てると不思議と怖くないな」

律「じゃあ早速演奏を聞かせてやろう!」

梓「珍しく乗り気ですね、今度から毎日部員を増やしましょうか」

律「やめてー!」

唯「じゃあこれから演奏するから聞いていってね、あずにゃん2号!」

人形「……」

ジャンジャカジャーン♪

唯「ふう、今日は演奏がはかどるぜ」

律「なんじゃそら」

梓「でも確かに今日は唯先輩調子良かったですね」

唯「でしょでしょー」

澪「これがみんなのいい刺激になればいいんだけどな」

紬「多分みんな明日にはお人形で遊んでるわね♪」

澪「だろうな」

紬「じゃあお人形さんは部室に置いておきましょうか」

唯「私持って帰りたーい!」

律「流石に大きすぎるだろ……」

唯「ムギちゃーん」

紬「そうね……じゃあ明日唯ちゃんの家に連れて行きましょう♪」

唯「やったー!」

律「良かったなー、唯」

唯「うん!」

梓「……そんなに嬉しいものかなぁ」

唯「じゃあね、あずにゃん2号!寂しくなったらトンちゃんに言ってね!」

人形「サヨウナラ」

律「亀と人形が話してる図とかシュールだな……」

澪「独りでに話す日本人形……」ガクガク

梓「何勝手に想像して怯えてるんですか……」

紬「じゃあ電源をオフにして……と」ポチッ

 律「電源なんてあるんだなー」

  紬「ちなみにソーラー電池だそうよ」

   梓「へー」

人形「……」


その日、天気予報は大きく外れ、晩から大雨が降り始めた

酷い雷に怯える者、無駄にテンションが上がってしまった者、普段と変わらぬ者……

それぞれが平凡な夜を過ごしていた

そのころ軽音部の部室では……

ぴしゃーんごろごろ!

人形「……」

ぴしゃーん!ばちばち!

人形「……」ピクッ

トンちゃん「……!」ササッ

「私は……」


……

唯「昨日は酷い雨だったねー」

律「雷ってなんかテンション上がるよなー」

澪「男の子か!」

律「そういう澪しゃんはビクビク震えてたんでしょう?」ニヤニヤ

澪「そ、それは……」

唯「どうなのー?」ニヤニヤ

紬「どうだったの?」ニヤニヤ

澪「あぅ……」


律「しっかし今日はよく晴れたもんだ」

唯「雨降って地固まる、って言うしね」

澪「関係ないだろ」

澪「でも雨が降った日の後は空気中の埃が無くなって空気が澄んでるから私は好きだな」

紬「虹とかもできるし、雨は上がった後が素敵よね」

律「地面ぐしゃぐしゃだけどな」

唯「あれ?今あずにゃんが走ってなかった?」

律「ん、見てなかった、ちょっと追っかけてみるか!」

澪「おいやめろよ、梓だって忙しいんだろ」

紬「そうよ、後で理由でも聞きましょう」

唯「うん、そうだね」

律「ありゃー、唯の同意得られなかったか―」


……

梓「でね、その人形が……」

純「あはは、憂のお姉さんらしいね!」

憂「……?」

梓「憂、どうしたの?」

憂「……なんか今、梓ちゃんみたいな人がいた様な気がして」

純「憂ー、怖いこと言わない!」

梓「もしかして……ドッペルゲンガー?」

純「……見たら死ぬ奴?」

憂「大変!どうにかしないと!」

梓「どうにかって……きっと見間違いだよ」

憂「だといいんだけど……」


きーんこーんかーんこーん

唯「ふあー、やっとお昼だぁ」グー

律「お前はお菓子食ってただろ」

唯「でも減るものは減るんだよぅ」

紬「……そうだ!今日はあずにゃん2号ちゃんと一緒に食べましょう♪」

唯「うん、さんせー!」

律「部室行くのめんどくさくないか?」

澪「私も行こうかな」

律「えー……まぁいっか」

唯「あ、あずにゃん!」ダキッ

梓「……!」ビクッ

唯「あずにゃん、どうかしたの?」

梓「こ、こんにちは……」

律「?」

澪「そういえば今日の朝、梓が走ってたって唯が言ってたけど……」

梓「……」ブンブン

紬「何か急いでるの?」

梓「!」コクコク

唯「そっか、じゃあまたねー」

梓「さようなら……」ダダダッ

澪「……さようなら?」


唯「あずにゃん2ごー!ご飯食べに来たよー!」ガチャ

唯「……あれ?いない」

紬「盗まれた!?」

澪「律、鍵ちゃんと掛けたか!?」

律「わ、私!?ちゃんと掛けたよ!」

唯「となるとあとはさわちゃんか……」

律「……梓じゃないか?」

唯「なんで!?りっちゃんは部長なのに部員を疑うの!?」

澪「唯も顧問疑っただろ」

律「だって梓今日変だっただろ」

紬「確かに」

律「きっと朝に壊したかなんかで埋めてきたんだよ!」

律「それで今日挙動不審だったのも、走ってたのも説明つくだろ?」

澪「信じたくないけど……辻褄は合うな」

唯「私は信じないよ!あずにゃんに電話して直接聞くもん!」

律「あいつが口を割るかどうか……」



憂「でね、お姉ちゃんが牛乳溢しちゃって……」

純「あー、それでモップね」

ぶぃーん、ぶぃーん

梓「あ、唯先輩から電話!ちょっと待っててね」

唯『あずにゃん!あずにゃんは犯人じゃないよね!?』

梓「はぁ?」

澪『おい、いきなりじゃ分からないだろ!』

唯『あ、そっか』

梓「どうしたんですか?」

唯『あずにゃん2号がどっか行っちゃったの!あずにゃん知らない?』

梓「私は知りませんけど……」

唯『そっか、良かった―!』

梓「待ってください!犯人って……その犯人のことですか?」

唯『うん』

梓「なんで私が?」

唯『りっちゃんたちがさっき廊下で会ったあずにゃんがキョドーフシンだからうんぬんって聞かなくて……』

梓「?」

梓「会いましたっけ?」

唯『え!?』

梓「私は別にみなさんに会ってないし、挙動不審に思われるようなこともしてませんよ?」

唯『嘘……でも確かに……』

梓「……ドッペル……ゲンガー」

唯『と、とにかく一度切るね!』プツン

梓「……」

純「どったん?」

梓「ドッペルゲンガー……やっぱりいるかもしれない……」

憂「!?」


……

唯「というわけで、あずにゃんは犯人じゃないみたいです!」フンス

律「いやいや、明らかに梓しらを切ってるだろ!」

唯「きっとあずにゃんのニセモノがあずにゃんのフリをして評判を落とそうとしてるんだよ!」

律「偽ライダーじゃあるまいし……」

紬「さっきよく見てなかったけど、目がつり上がってたり靴が尖ってたりしたのかしら♪」キラキラ

澪「ムギ……それも違うと思うぞ」

律「まぁいいや、犯人と人形探しは後にしてご飯食べるぞ」

唯「あ、そういえばお腹ぺこぺこ……」グーギュルルル


放課後

唯「あずにゃんまだ来てないね」

律「やっぱりあいつが……」

澪「こら、もういいだろ」

紬「りっちゃんは自分が疑われて怒ってるだけ、よね?」

律「……」ブー

がちゃ

梓「……!」

唯「あ、あずにゃん!」

梓「!」バタン

澪「逃げた……?」

律「やーっぱ怪しい!どう見てもあいつだろ!」

紬「待って!お昼の話で怒られるんじゃないかと思ってるだけかもしれない!」

唯「私追いかける!」

澪「あ、唯!」

紬「行っちゃった……」


梓「こんにちはー」ガチャ

律「おい梓!さっきのはどういう……」

梓「!?」

澪「待て律……梓、なんでさっき出ていったんだ?」

梓「え?何のことですか?」

律「またそれで逃げようと……」

紬「まぁまぁ……」

唯「あずにゃん捕まえてきたよー!」ガチャ

梓?「……!」アセアセ

梓「な……っ!?」

梓?「……」

唯「……あれ?」

律澪紬「……」

梓?「!」ダダダッ

唯「あ、待って……」

律「追え―!あいつがルパンだー!」

唯「あ、あいあいさー!」


梓「……」

純『……見たら死ぬ奴?』

梓「私……死ぬの?」

澪「あ、梓が二人……」

紬「だ、大丈夫よ梓ちゃん、澪ちゃん!きっと唯ちゃんが間違えて連れてきちゃったのよ!」

澪「世界には同じ顔の人間が3人はいるって言うし……そうとしか説明が……」

梓「今までそんな子見たことも聞いたこともありませんよ!」

紬「……」


……

憂「あれ?梓ちゃん、部活は?」

梓?「きょ、今日は唯先輩調子良かったですね……」

憂「?」

梓?「……」ダダダッ

憂「あ、梓ちゃん?」

唯「はぁ……はぁ……」

憂「お姉ちゃん!どうしたの!?」

唯「あ、あずにゃんのニセモノが……」ゼェゼェ

憂「も、もしかしてさっきのって……」

憂「私が探すからお姉ちゃんは休んでて!」

唯「す、すまんねぇ憂……捕まえたら部室に連れてきてね……」

憂(探さなきゃ!絶対に梓ちゃんを殺させはしない!)

唯「気を付けてねー……」

憂「任せて!」


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