律「ま、まぁさっきの話でいかに私たちお姉ちゃんが偉大であるかがわかったな!」

梓「正直言って、その話はもうどうでもいいですけどね」

律「奇遇だな、実は私も……」

澪「飽きんなよ」

紬「でも幼馴染って羨ましいわ」

梓「和先輩は憂の幼い頃のことも良く知ってるんですか?」

和「そうね、なんだかんだ言って、本当の兄弟と同じくらい付き合い長いわ」

唯「そう言われればそうだよね~」

紬「だとしたら、和ちゃんが長女で唯ちゃんが次女」

梓「で、憂が三女ってことですね」

律「しっかり者の長女、自由奔放な次女、少し苦労性な三女」

澪「そう考えると唯のその性格もピッタリと当てはまるな」

唯「そっか! 私も自分が長女ってなんだか違和感あったんだよね」

唯「私は次女だったんだ!」

和「こらこら、本気にしないの」

唯「和お姉ちゃん!」

和「こら、唯! 急に抱きついてこない」

唯「お姉ちゃ~ん、勉強教えて~」

梓「なんだか大変ですね」

和「普段とあまり違わないけどね」

澪「確かに」

和「まぁ、私はむしろお母さん目線で唯をいつも見てるけど」

律「あぁ、どっちかっていうとそんな感じだな」

紬「でも兄弟がいるってどういう感じなのかしら?」

梓「ああ、それは気になりますね」

澪「私も、もしお姉ちゃんやお兄ちゃんがいたらどうかなって考えることはあるよ」

和「あら、まだその可能性はあるんじゃない?」

澪「えっ?」

和「さすがに兄や姉は難しいけど、弟や妹だったらまだ両親にがんばってもらえば……」

律「す、ストップ和!!」

梓「あまり女子高生が口に出すことじゃありませんよ!」

紬「でも、私が生まれた時には父はすでに40代だったから……」

和「そう……それじゃあ種的に難しいかもしれないわね……」

澪「おい! なんか危険な会話のラリーが始まってるぞ!」

唯「コウノトリさんに頼めばいいんだよ」

律「その発言もちょっとどうかと思うけど、なんだか安心したよ」

唯「夕食のときにお父さんとお母さんの前でそんな話をすればもっと効果的かもよ」ニヤッ

澪「あれっ?」

律「と、とにかく、確かに兄弟がいたほうが賑やかになるだろう」

律「でも、9割方はウザイ対象だからな」

梓「あぁ、やっぱりそういうもんなんですかね」

唯「私は憂がいなかったらたぶん死んじゃうと思うけど」

律「お前は特別だ。私だって憂ちゃんなら欲しい。でもだいたいの場合は喧嘩が絶えないだろうな」

澪「それは姉の方に問題があるんじゃないか?」

律「な、なにっ!」

澪「もし、優しいお姉ちゃんやお兄ちゃんだったら私ならきっと甘えたくなるだろうな」

唯「和お姉ちゃんみたいにね!」

和「あんたのお姉ちゃんになった覚えはないけどね」

唯「ああ~ん……そんなこと言って~」

和「はいはい」

紬「澪ちゃんは妹や弟は欲しいとは思わないの?」

澪「う~ん……、結構身近な存在で世話を焼かなきゃいけないやつがいるから」

澪「きっと妹がいたらこんなんだろうなってその点は想像できるからな」

律「なに? それって私のこと?」

澪「他にどう聞こえる?」

律「ええ~、私が妹かよ」

梓「ピッタリです」

律「そうは言うけど、私だって澪のその頼りないところは妹的な……」

律(……っと、ちょっと待てよ)

律(何も姉であることで得するってわけでもないしな)

律(なによりも……)

唯「和お姉ちゃ~ん」

和「もうやめさないって」

律(甘えた方が結構面白いかも)


澪「ほら、梓だってこう言ってることだし、世間的に見たら私の方がお姉さんっぽい……」

律「澪お姉ちゃん」

澪「……え」

律「澪お姉ちゃんの可愛い妹りっちゃんでちゅ」

澪「うわっ、想像以上にきもっ……」

律「りっちゃんは寂しがりだから、澪お姉ちゃんに甘えちゃうんでちゅ」

澪「離れろ! くっつくな!!」

律「澪お姉ちゃんのおっぱいがほちいでちゅ」

澪「おい! や、やめ……!」

律「帰りにアイスが食べたいでちゅ」

澪「わかった買ってやる、買ってやるから!」

律「澪お姉ちゃんは優しいでちゅ」

澪「こ、こいつは……」


唯「和お姉ちゃ~ん」

和「はぁ……」


律「澪お姉ちゃん、りっちゃんは甘えたい年頃なんでちゅ」

澪「もうやめよう、な? 謝るから」



梓「なんかすごいことになってきてるなぁ……」

紬 チラッ チラッ

梓(そしてムギ先輩が何かを求めるように私に視線を送ってくる……)

梓(無理もないか……。ムギ先輩こういうスキンシップ好きそうだし)

梓(仕方ない、ここは私がムギ先輩の為に一肌脱ごう!)

梓「つ、紬お姉ちゃん……」

紬「……」ショボン…

梓(えっ!? 逆!? 私がお姉さん役ってこと!?)

梓(さすがにその発想はなかった!)

梓(っていうか私がお姉ちゃんは何かと無理がある気が……)

紬「お姉ちゃん……」

梓「!?」

紬「梓……お姉ちゃん」

梓「な、なんだい紬?」

紬「梓お姉さまっ!!」ギュッ!!

梓(こ、これはこれでっ!!)

紬「お姉さま」

梓「あはは、紬は甘えん坊さんだなぁ。もうすぐ大学生なのに恥ずかしくないのかい?」

紬「もう! お姉さまのイジワルっ!」

梓「冗談だよ、ほらおいで」

紬「嬉しいっ! お姉さまっ!」ダキッ!!

梓(ふぁぁぁぁぁっ!! なんだかすごくいい匂いがする)

梓(それに暖かくって柔らかくってふわふわだ)

梓(これ、柔軟剤使っただろ!!)







純「何やってんの? 梓……」

梓「!?」


梓「じ、純……いつからそこに……」

純「えっとね~、梓が『ムギ先輩いい香りだよ~クンカクンカ』ってことろからかな」

梓「ちょ!? それは口に出して言った覚えはない!」

純「あ、だったら心の中ではそう思ってたってことだ」

梓「……」

純「ところで先輩たちが抱き付き合ってる状況……なんなの?」

梓「え、ええっと……」

梓「って言うか、なんで純がここにいるの?」

純「梓がたまには一緒に帰ろうって誘ってくれたんじゃん」

梓「……そうでした」

純「それに……」

憂「やっほ~」

梓「なんで憂まで」

憂「今日は家にお母さん居るから夕食の支度しなくていいし
  たまには帰りに純ちゃんや梓ちゃんと寄り道して遊ぼうかなって思って」

純「私も部活も終わったし。で、梓迎えに来たらなんか抱き合ってるし」

純「本当に軽音部って変わってるよね」

梓「ふ、普段からこんなんじゃないよ!
  最近で一番おかしいのがたまたま今日だったってだけだから勘違いしないでね……」

唯「あ、憂~!」

律「おっ! 本物の妹様だ!」

憂「本物?」

紬「私たちさっきまで姉妹ごっこして遊んでたの」

憂「そうなんですか」

唯「実は私は次女で和ちゃんが長女だったんだよ!」

和「もう、くっつくのもいい加減にしてもらえないかしら? 憂からも何か言ってやりなさい」

憂「うわ~! 和ちゃんがお姉ちゃんになってくれたら私も嬉しいよ!」

和「……」

律「うむ、さすが本物の姉妹」

律「ところでそこのダスキンちゃんは……」

純「純です」

澪(よく自分のことだってわかったな……)

律「ごめんごめん、えっと、純ちゃんは兄弟はいるの?」

純「はい、ちょっと歳の離れた兄が2人いますけど」

純「いつも『純は可愛いな』って言ってよくお小遣いもくれます」

梓「ああ、なんか純はそうやって育ってきたって感じ」

律「なんとっ! ここにきて第三勢力の『妹』が登場だっ!」

梓「まださっきの一人っ子とお姉ちゃんの続きやるんですか!?」

紬「妹か……これは厳しい戦いになりそうね……」

純「なんです? それ」

律「いや~こっちにいるわがまま放題の一人っ子どもが私たちお姉ちゃんに対して宣戦を布告してきやがってさ」

純「は、はぁ……」

梓(さすがの純も呆れてる……)

澪「鈴木さん、あんまり相手しなくていいよ」

律「一人っ子は黙ってろ!」

澪「お前はさっきまで澪お姉ちゃんって抱きついてきてたのに……」

律「しかし妹である君たちがきてくれたことによって我々お姉ちゃんの勝ちは約束されたも同然だよ!」

紬「な、なんでそうなるの!? あくまで妹は第三の勢力!
  言うなれば中立だし、どちらに対しても敵になりうるんじゃ……!」

律「ふっふっふ、甘いなムギ。姉というのは妹弟がいてこその存在!
  その逆もまた然り! 姉の存在が妹の存在をも定義することになる」

律「姉と妹というのは切っても切れない縁なのだよっ!!
  よってここに姉妹同盟を締結することを宣言するっ!」

紬「くっ……!!」

梓「なんだか説得力あるんだかないんだかわかりませんが、勢いだけは認めざるを得ません!」

純「あ、でも私お姉ちゃんにするんだったら澪先輩がいいなぁ」

律「な、なにっ!?」

梓「そうだった、純はこうやって空気を読まないやつだった」

紬「くっくっく、さっそくその同盟関係に綻びができたようね」

澪「ムギが悪そうな笑い方をしてる……」

純「だって澪先輩カッコイイし。私の憧れだから」

澪「あ、ありがとう」

律「クソッ、ファンクラブにしたってどいつもこいつも澪の容姿に騙されやがって」

澪「いつ私が騙した?」

唯「りっちゃん! まだまだ最強の妹が残ってるよ!」

律「おお! そうだった! この子がいればお姉ちゃんはあと10年は戦える!」

唯「憂はもちろん私たちお姉ちゃんの味方だよね?」

憂「う~ん……」

唯「う、憂っ!?」

律「な、なんでだ憂ちゃん!」

唯「お姉ちゃんとして不足なことは重々承知しております!
  だけど憂に見捨てられたら私……私っ!!」

憂「そうじゃなくてね、私は皆さんにちゃんと良い部分があると思うんです」

憂「律さんは部長らしくポジティブな気持ちで皆さんを引っ張ってくれて
  澪さんは逆にネガティブな観点から冷静な判断をしてくれて」

憂「そんなお二人は幼馴染らしくとてもいいコンビネーションだと思いますし」

澪「憂ちゃん……」

憂「紬さんは皆さんが楽しく過ごすための土台を築いた縁の下の力持ち的存在
  お茶を美味しく淹れるのも実は結構大変なんですよ」

紬「そうやって想ってくれる人がいるってだけで嬉しいわ」

憂「梓ちゃんはそのまま軽音部の妹的存在だよね」

梓「先輩たちにも言われたけど、それって褒め言葉なの?」

憂「妹がしっかりするとお姉ちゃんもそれに釣られて引き締まるでしょ?」

憂「しっかり者の梓ちゃんが今の軽音部に刺激をあたえてるんだよ」

憂「山椒は小粒でもぴりりと辛いってね」

梓「まぁ、褒め言葉として受け止めておくよ」

憂「そしてお姉ちゃんは……」

唯「……」ゴクリ…

憂「私のお姉ちゃんだからっ!」

唯「う~い~!!」ダキッ

憂「お姉ちゃ~ん!!」ヒシッ

憂「そんな皆さんが今のこんな楽しい軽音部を形作ってるんです
  誰一人欠けてもきっとこんな素晴らしい部にはならないと思います!」

律「なんか唯だけ誤魔化した感が……」

澪「さすがの憂ちゃんでも唯のしっかりした部分を探すのは難しかったのかもな……」

和「それは違うわ」

紬「和ちゃん?」

和「憂にとっては自分のお姉ちゃんというのは唯以外に考えられないっていうことなのよ」キラリッ

澪「なに言ってんだこいつ」

純「あ、メガネカッコイイ!」

梓(もう和先輩を見る目が変わっちゃいそう……)

律「まぁ、憂ちゃんのおかげでこの姉一人っ子戦争もやっと終結を迎えることができたわけだ」

律「本当は軽音部でこうやっていがみ合うなんて下らないってことだってわかってたんだ……」

紬「私も……憎しみは憎しみしか産まないものね……」

澪「2人ともノリノリだったじゃないか」

唯「やっぱりみんな仲良しが一番だね!」

梓「もちろんです!」

和「あら? もうこんな時間よ。早く帰らないと生活指導の先生に怒られちゃうわ」

純「これからみなさんで遊びに行きませんか?」

憂「学校帰りに遊びにいくなんて久しぶりだから楽しみ♪」


   ガチャ

さわ子「こらこら、あなたたちまだこんなところでお喋りして。
     こんな時間まで残ってちゃ駄目よ!
     もうとっくに最終下校時刻過ぎちゃってるんだから」

律「おっと! ここで第四の勢力『独身』の登場だっ!」

唯「早く結婚しろ!」

紬「親が泣いてるぞ!」

さわ子「な、なにっ!?」

 おしまい