澪「なんで私が…!こんな…!うぐっ」
律「…」
澪「つら、ヒグッ辛いよ律ぅ…ぅ…」
ギュッ
律「辛かったな。澪はいっつも一人で抱え込むから…今から私達も一緒だ」
澪「律…律!律ぅ!うあああぁあぁぁぁあ」
律「でな~唯の奴、澪の分までお菓子食べるもんだから2週間で3キロも太ったんだぞ」
澪「はは、相変わらずだな」
唯「ちょ、りっちゃんひど~い!2.8キロだよ~!」
律「いや~変わんないから」
唯「まったく!りっちゃんは乙女心ってものを何ひとつわかってないね!」
律「あの~私も一応乙女なんですが」
澪「そろそろ面会時間終りだ」
律「そっか、長居しちゃったな」
紬「それじゃあ澪ちゃん、また来るわね」
澪「うん。待ってる」
律「あぁそうそう、看護師さんたちに謝っといてな。うちら騒ぎすぎちゃったから」
唯「主にりっちゃんが」
律「そんなことを言うのはこの口か、このやろ!」ギュウ!
唯「あだだだ!ギブ!ギブ!」
澪「フフ、アハハハ!」
律「澪…」
唯「澪ちゃん…」
律「よーし、オラオラここか!ここがいいのか!」
唯「あひぃ~」
律「私トイレ寄っていくから」
紬「うん、ロビーで待ってるわね」
紬「っと、やっぱり私もトイレ行っておこう…唯ちゃんは?」
唯「私はいいやぁ」
紬「そう、じゃあここで待っててね」
唯「ほいほい」
紬「トイレトイレ」
「グスッ」
紬「?」
「う…なんで澪が…ううぅ…」
紬(りっちゃん…)
律「クソックソッ…澪が何をしたってんだよ…こんなのってひどすぎるよ」
律「澪…澪…う、うわあああああん!」
……
律「おまたへ~」
紬(りっちゃん…)
唯「遅いよりっちゃん。便秘?」
律「おま、そういうこというな!」ギュウ!
唯「ま、また…!ギブギブ!」
紬(りっちゃん、私達に悟られまいとして…)
学校
律「文化祭まであと一ヶ月です!」
唯「モグモグ」
律「残念ながら澪の復帰は望めません」
唯「ふぁべーふふおふんぼ?モグモグ」
律「待ってやるからとりあえずマドレーヌを飲み込んでから喋ってくれ」
唯「ふぃふぁほふはふぁはびゃ!モグモグ」
律「落ち着け」
唯「うん…それでベースどうするの?一ヶ月しかないって…初心者を入れてもどうにもならないよ…」
律「それなんだけど…さわちゃんにベースをやってもらおうと思う」
紬「さわ子先生に?」
律「うん、先生なら一ヶ月も練習すれば澪並にはなると思うんだ」
唯「そだね!それが一番確実かも!」
律「よし!そうと決まれば交渉開始だ!」
律「山中さわ子、生徒だけでなく先生たちからも人気がある」
さわ子「あのう!」
律「その人気はファンクラブができるほどである」
さわ子「ちょっと!」
唯「せんせ~」
紬「先生、私達のライブにベースとして出ていただけませんか?」
さわ子「え、えええ!?」
さわ子「顧問自らステージに立つって…前代未聞すぎるわ!」
紬「私達、先生しか頼る人がいないんです…」
さわ子「そう言われても…。そもそも私ギタ」
律「澪並のベースを弾けるのは先生しかいないんです!」
さわ子「だからギt」
唯「先生のベース大好きです!お願いです!」
さわ子「あーもうわかったわよ!」
唯「先生!それじゃあ!」
さわ子「出ます。出るけど条件があるわ」
律「条件?」
さわ子「条件は澪ちゃんに見せても恥ずかしくない演奏をすること。いいわね?」
律「先生…!はい!」
さわ子「そうと決まればさっそく練習よ!ついてらっしゃい!」
唯「ラジャー!」
律「ノリノリだぁ」
紬「良かったね、りっちゃん」
律「うん、私達が頑張ってる姿を見ればきっと澪の病気だって治る。絶対に」
紬「りっちゃん…」
ジャガジャガジャーン
律「って感じのオリジナルなんですけど」
さわ子「うーん、色々言いたいことはあるけど…とりあえずボーカルはいないの?」
律紬唯「あ」
さわ子「もしかして、歌詞もまだ?」
律「忘れてた~…」
さわ子「あんたたち!それで学園祭に出るつもりだったの!」
唯「怒られたぁ…」
……
律「というわけで歌詞書いてくれよ」
澪「わ、私が?」
律「うん、澪はライブに出られないだろ?せめてこういう形で参加してもらおうと思ってさ」
澪「でも…私歌詞なんて」
律「いいからいいから!期待してるよん!」
澪「もう…わかったよ。頑張ってみる」
……
唯「澪ちゃーん!歌詞できたって?」
澪「う、うん。まあ」
律「見せて見せて」
澪「え!?もう?」
律「もうって。そのためにみんなで病院にきたんだぞ」
澪「ま、まだ心の準備が」
律「いいから早く見せろー!」
君を見てるといつもハート ドキドキ
揺れる想いはマシュマロみたいに ふわふわ
律「お、おおお…痒い…」
澪「ダメ…かな?」
律「ちょっと…イメージと違うかな~?」
澪「やっぱり…ダメ?」ウル
律「いやいや!頑張ったのはわかるぞ!じゃあ、ちょっとだけ歌詞変えようか。なあ唯?」
唯「すごくいい…」
律「マジで!?」
唯「私はすごく好きだよこの歌詞!」
澪「ホントに!?」
律「む、ムギはどう思う?」
紬「はぁ…」
律「超うっとりしてる!」
律「ムギも気にいったの?」
紬「はい…」
律「こういうのアリ?」
紬「うん…」
律「ほ、ホントに?」
紬「イエス…」
律「マジで?」
紬「どんとこいです…」
律「せっかく澪が頑張ってくれたし…これでいくかぁ」
唯「はぁ!良かったね澪ちゃん!」
澪「うん」
律「よーしそうと決まれば練習だ!」
唯「今日もぉ?澪ちゃん聞いてよ~最近毎日夜の11時まで練習なんだよ~」
澪「そんなにやってるのか!?」
律「澪に恥ずかしいところは見せられないからな。まっ、そういうわけで今日は帰るわ。じゃねっ」
学校
律「せんせ~歌詞できました!」
さわ子「どれどれ」
さわ子「お…おおぉ…破りたい…!」
さわ子「だ、ダメダメ。せっかく澪ちゃんが頑張ってくれたのに」
さわ子「それでボーカルは?」
律「うちらそんなに歌うまくないしな…さわちゃんやって?」
さわ子「それは無理ね」
律「なんでよ!?」
さわ子「澪ちゃんの穴を埋めるためのベースだったら喜んで引き受けるわ。でもボーカルとなると話は別よ。」
律「はぁ…」
さわ子「澪ちゃんがあなたたちのために書いた歌詞、あなたたちが歌わなくて誰が歌うの?」
紬「確かにそうですよね…せっかく澪ちゃんが具合悪くても頑張ってくれたのに」
唯「うん」
律「だな。危うく澪の気持ちを無駄にするところだった」
律「よっし!みんな!作戦会議だ!誰がボーカルやるか決めるぞぉ!」
唯「おー!」
さわ子(頑張りなさい、みんな)
……
病院
医師「あまり芳しくないね。微熱も続いているし」
澪「先生、明日は文化祭なんです。みんなの晴れ舞台だから…絶対に見に行きたいんです!」
医師「うーん…外は信じられないくらい沢山のウイルスがいるんだよ。まして体育館なんて」
澪「そんな…ちょっとだけでもいいんです…お願いします…」
医師「うーん…よし、わかった。なんとか外出許可が取れるように手配しよう」
澪「先生…!」
医師「ただ具合が悪い時はすぐに言うこと。軽音部の演奏が終わったらすぐに病院に戻ること。いいね?」
澪「はい!」
……
文化祭当日、病院
澪「それじゃあ先生、行ってくるね」
医師「ああ、気を付けてね。楽しんでおいで」
澪「ケホッ…ケホッ…うん」
医師「お母さん、何かあったらすぐに…」ヒソヒソ
母「はい…」
院長「医師君!なぜ彼女に外出許可を出したのかね!」
医師「今日は彼女にとって初めての文化祭なんです」
院長「文化祭だと?そんなことで許可したのか!彼女の容態は君が一番よく知っているだろう!もしものことがあったらどう責任を取るんだ!」
医師「約束しましたから」
院長「約束だと?」
医師「彼女と約束したんです。最大限の手助けをすると。今こそ…彼女が文化祭に行くことこそ最大の手助けになると思ったんです」
院長「馬鹿な…非常識すぎる…」
医師「医者がこんなことを言うべきではないですが…彼女達に賭けてみたくなったんです」
医師「きっと処方されたどんな薬よりも部活の仲間の笑顔こそが、彼女にとって一番の良薬になる」
院長「言いたいことはそれだけか?」
医師「ええ、言いたいことが言えてすっきりしました。私も彼女たちのおかげで何か大切なものがわかった気がします」
院長「もういい!貴様はクビだ!」
医師「もとより覚悟の上です。ただ」
院長「なんだ?まだ言いたいことがあるのか?」
医師「私には彼女を最後まで見届ける義務がある。その義務を果たしたら…喜んでこの病院を去りましょう」
院長「ふん、勝手にするがいい」
医師「ありがとうございます。では失礼します」
……
学校
律「いよいよだな」
唯「うん!澪ちゃん来てるかな?」
紬「メールでは特別に外出許可をもらったって言ってたわ。きっといるわよ」
さわ子「唯ちゃん、喉は大丈夫?」
唯「バッチリ!大丈夫!オールOK!」
律「よっしゃ!桜高軽音部、いっくぞー!」
体育館、客席
澪「こんなにお客さんが…すごい…」
澪「お母さん、律達大丈夫かな?失敗しないかな」
母「りっちゃんはしっかり者だから大丈夫よ」
澪「だといいけど」
母「親友のあんたが信じてあげないでどうするの」
澪「うん、そうだな。頑張れよ、みんな」
『次は軽音部によるバンド演奏です』
ざわざわ
「あにあれかわいー」
「あれ、先生じゃね?」
「がんばれよー」
律「んんっ!あ、あ、あー」
律「桜高軽音部です。えー今から演奏する曲はみなさんのためにやるわけではありません」
ざわ…
「なにどういうこと?」
「意味わかんね」
律「私達のバンドには今闘病中の子がいます。この曲は…その子のためだけに演奏したいと思います」
律(澪、私の声聞こえてるか)
律「それじゃあ、澪!聞いてください。曲はふわふわ時間。1・2・3・4」
澪「律…う、うぅ…」
母「ほら、りっちゃん達、あんたのためだけに演奏するって。ちゃんと聴いてあげな」
澪「うん…」
最終更新:2010年01月28日 03:50