律「さてと」
カチッカチッシュボ
律「すうぅ・・・ふぅ」
律「じゃあな、澪。また来るから」
律「会社に行く前に得意先寄っていかないと・・・ん?」
唯「あ!りっちゃん!やっぱり来てたんだー!」
律「おぉ唯!久しぶり!」
唯「何々?りっちゃんタバコなんて吸っちゃって。似合わなーい」
律「うるさーい!専業主婦と違ってこっちは色々ストレスが溜まるんだぞ」
唯「やっぱり違うね~楽器の営業マンは」
律「まぁね。でもまさか唯が主婦なんてなあ。ちゃんと家事とかできてんの?」
唯「もう!いくら私だって高校生のときとは違うんだよ!最近卵焼きを作れるようになったんだからね!」
律「他には?」
唯「へ!?うーんと、目玉焼きとかゆで卵とか・・・」
律「ダメだこりゃ・・・」
唯「ま、まぁまぁそんなことより!ムギちゃんは?」
律「ムギは来れるかわからないって。仕事忙しいみたい」
唯「そっかぁ、せっかくだからみんなで揃いたかったね」
律「うん・・・」
唯「ぁ・・・ほらほら!りっちゃん今から仕事じゃないの?急がないと!」
律「そうだった。じゃあ、また今度な」
唯「うん、またね」
唯「さて、お花の水を替えて・・・っと」
唯(澪ちゃん、私達は相変わらず元気です。これからも見守っててね)
唯「よし!さぁ家に帰って一ヶ月ぶりに掃除するぞ~」
……
会社
律「はい、その件でしたら後日直接伺いたいと思ってまして。ええ、ええ、わかりました。ではそのように調整します」
律「はい、失礼いたします」
律「ふぅ・・・なんでこう次から次へと仕事が」
後輩「先輩・・・」
律「うん?どしたー?」
後輩「すみません・・・これ・・・」
律「あちゃー・・・これはこうしろって言ったじゃん」
後輩「すみません・・・」
律「私に謝っても仕方ないでしょ。先方に直接謝らないと」
後輩「は、はい」
律「・・・」
律「仕方ないか・・・ほら、私も一緒に行ってあげるから。すぐに準備準備!」
後輩「あ、ありがとうございます!」
律「はぁ疲れた・・・うわもう7時!?まだ山ほど仕事が残ってるのに・・・」
律「お?メールが着てる」
紬『りっちゃん、お久しぶりです。お元気ですか?』
律「おおう!ムギか!」
紬『今日は澪ちゃんの命日だから無理言って半休をもらったの。さっきお墓参りに行ってきました』
紬『それで、せっかくだから、今晩唯ちゃんと三人で飲みに行きませんか?返信待ってます』
律「行きたい・・・行きたいけど仕事が・・・!うああああ・・・」
後輩「先輩、どうかしたんですか?」
律「うぅ・・・今昔のバンド仲間から飲みに行こうって誘われたんだけど・・・お断りメールを送ろうと・・・」
後輩「なんでです?せっかくだから行けばいいじゃないですか!昔の仲間に会う機会なんて、そうそうないですよ」
律「そうしたいのは山々だけど仕事がねぇ・・・この通り今日も終電コースですよ・・・」
後輩「・・・」
後輩「先輩、その仕事僕に預けてくれませんか?」
律「へ?」
後輩「その仕事、僕にやらせてください」
律「いやいや、あんたの処理能力だったら終電どころか徹夜コースだよ」
後輩「わかってます」
後輩「先輩にはいつも助けてもらってるから・・・先輩が困ってる時くらい力になりたいんですよ!」
律「うーむ・・・」
律「じゃあお願いしちゃおっかな!」
後輩「任せてください!先輩は大船に乗ったつもりで飲みに行ってくださいよ!」
律「あんたの場合、泥舟になりかねないんだけど」
後輩「そりゃないっすよ先ぱ~い」
律「嘘嘘wじゃあこれとこれ、頼むよ」
後輩「はい!よ~し!やるぞ~!」
律(ありがとね、後輩君)
律「メールメールっと」
律『OKだよ~ん。場所は○○だよね?すぐに行きます!』
律「おっしゃあ!今日は浴びるほど飲むぞ~!」
律「じゃあ後輩君!後はまかせた!」
後輩「どんとこいです!」
……
唯「あ~りっちゃんこっちこっち!」
律「おお!ごっめ~ん!遅れた!」
紬「いいのいいの。私こそ急に誘ってごめんなさい」
律「大丈夫大丈夫。仕事もなんとかなったからさ。それより早く入ろうよ!もうお腹ぺこぺこ」
紬「そうね、行きましょうか」
律「乾杯…って日でもないわな」
唯「ま、まぁまぁ暗くならずに。せっかくだから楽しく飲もうよ!乾ぱ~い」
律「おーい!それは私の役目だろー!」
唯「え~、りっちゃん乾杯って日じゃないって言ってたじゃ~ん」
律「それは言葉のあやだよ!空気よめよな~」
紬「今のは唯ちゃんが悪いわね」
唯「乾杯って言っただけでこの仕打ち…ひどい…」
紬「今日でちょうど10年ね」
律「だな。時がたつのは早いもんだよ」
唯「りっちゃん親父くさ~い」
律「なんだと!いつまでも子供っぽい唯には言われたくねぇ!」
唯「うんうん、その元気があってこそのりっちゃんだね!」
紬「フフ、二人を見てると高校時代を思い出すわ」
紬「澪ちゃんのことも」
紬「澪ちゃん…」
律「忘れられねえよ…」
唯「うん…」
律「うぅ…グス…」
唯「また、すぐ泣くんだから。はい、お鼻」
律「あんがと…」ズビー!
律「特にあの日のことはな…」
……
10年前
律「ここ変えるか?」
澪「うーん、どうだろ」
ジャガジャガ
唯「あいた!」
律「どしたー?」
唯「指の皮剥けちゃった」
律「うわ、痛々しー」
唯「血が~澪ちゃんも見て~」
澪「」フラ
律「おいおい、そこまでかよ。大丈夫か?」
澪「あ、うん…なんか…」フラ
唯「あー!澪ちゃん鼻血鼻血!」
澪「へ?」ポタポタ
澪「」ドサッ
律「え?」
唯「なに?」
澪「」ドクドク
律「澪!」
唯「澪ちゃん!」
律「せ、先生呼んでくる!唯はなんとかしてて!」
唯「ええええ…な、なんとかって言われても…」
唯「澪ちゃん、大丈夫かな?」
律「救急車まで呼んで…えらい騒ぎになったな」
紬「ちょっと心配ですね…鼻血を出して倒れるって…」
唯「鼻血を出して倒れると何かあるの?」
紬「いえ…きっと杞憂です。後でみんなでお見舞いに行こう」
唯「そだね~。あ!」
律「どうした!?」
唯「指の皮剥けてたの忘れてた…」
律「お前ってやつは…」
澪「う…ぅん…」
澪母「澪!目が覚めた?あんた大丈夫なの?」
澪「お母さん?大丈夫って何が?」
澪母「あんた学校で鼻血出して倒れたのよ!」
澪「あ、あぁ。そうだったんだ…」
母「目が覚めたら精密検査をするって。看護師さん呼んでくるわね」
澪「精密…検査…」
医師「率直に申しますと…白血病です」
澪、母「え…?」
医師「心配になるのも無理はありません。ですが白血病は不治の病というわけではない。ただ闘病生活は厳しいかもしれませんが…」
澪(私が白血病?嘘だよ。なんで?なんで私が?死ぬの?)
医師「ふぅ…とにかく闘病は大変辛いものになります。特に薬の副作用は女の子にとって耐え難いものでしょう。」
母「そんな…澪が…なんで」
医師「これは試練だと思って受け入れる他ありません。辛いでしょうが頑張りましょう。私も最大限の手助けをするつもりです」
……
唯「白血病ぉ!?」
紬「やっぱり…」
律「嘘だろ…」
唯「って何?」
さわ子「友達には黙っててって言われたけど、あなたたちには言っておいた方がいいと思ったの。お見舞いには行ったの?」
紬「何回も行ったんですけど、その度に寝てるからって澪ちゃんのお母さんに言われて…ずっと会ってないんです」
唯「ねぇねぇ、白血病ってなに?」
さわ子「すぐに病状がどうこうなるってわけではないみたいだから…副作用のせいかしら?」
律「副作用?」
さわ子「白血病のお薬は副作用で髪の毛とかが抜けちゃうのよ。だからみんなに見られたくないのかもしれないわね」
律「あいつ…そんなこと気にしやがって」
律「唯、ムギ!今から澪のとこに行くぞ!」
紬「そうね。ちゃんと澪ちゃんとお話したいわ」
唯「ね~、白血病って何~?」
病院
律「おばさん!澪に会わせて下さい!」
母「今寝てるから…」
律「じゃあここで待ちます!何時間でも!」
母「ほら…澪も初めての入院で気が滅入ってるから…ね?今日は帰って?」
律「むむ…澪ー!聞こえてるかー!」
紬「ちょっと!りっちゃん!」
唯「あわわ…病院では静かに」
律「澪ー!お前がなぁ!薬でどうこうなろうがそんなこと私達に関係ないんだよ!」
紬「りっちゃん…」
律「そんなことでなぁ!私とお前の友情が壊れると思ってんのかぁ!ふざけんなぁ!」
看護師「こら、何してるのあなたたち!ここは病院よ!」
律「聞いてんのかー!返事くらいしろー!ばーかばーか!」
紬「澪ちゃん!私からもお願い!顔を見せて!」
唯「普通の唯からもお願いぃ!」
病室
律『澪ー!返事くらいしろー!』
澪「もうやめて…帰ってよ…辛いんだよ…」
律『坊主頭がなんだってんだぁ!もし澪のことを笑う奴がいたらなぁ!私がそいつをボコボコにしてやるよ!』
澪「律…」
律『お前のことはなぁ!私が守ってやるよ!ウザいって言ってもやめないからな!澪の困った顔見るのが私の趣味なんだぁ!』
澪「…ぅぅぅ…律、律ぅ…」
看護師「いい加減にしなさいあなたたち!」
律「ハアハア…くそ…」
看護師「ここは病院なのよ!高校生にもなって…迷惑って言葉もわからないの!」
唯「うぅ…怒られた…」
医師「まぁまぁ、その辺で」
看護師「先生…でも…」
医師「高校生はこれくらい元気があったほうがいい。それに…澪ちゃんはいい友達を持ったね」
医師「そろそろ出てきたらどうだい?」
澪「…」
律「澪…」
紬唯「澪ちゃん!」
澪「みんな…」
律「お、起きてるならさっさと出てこいよな!心配しちゃったじゃん!」
澪「ありがとう律…」
律「なに?」
澪「なんでもない」
澪「私…髪が…」スッ
律「…」
紬「…」
唯「澪ちゃん!?そのあたmムゴゴゴゴ」
紬「唯ちゃんは黙ってて!」ヒソヒソ
律「ぁ、ああ。なん~だ!思ったより普通じゃん!全然気にすることないよ」
澪「長い髪…好きだったのに…!自慢の…私」
律「澪…」
最終更新:2010年01月28日 03:49