私は厭な夢を見た

私と憂は学校にいて、何やら楽しい話に花を咲かせていた

その会話が途切れた瞬間……

ぼんっ!と大きな音がする

一瞬何のことやらさっぱりわからなかったが、目の前の光景が私を強制的に現実へ戻す

憂の頭が爆発した……


~~

純「きゃあああああああ!」ガバッ

純「夢……」

純「夢かぁ~、良かったぁ!」

ジリリリリリリ!

純「へへーん、言われなくても起きてますよー!」

純「んー、にしても嫌な夢だった……」

純「ん、でも夢で死んだ人は長生きするって言うよね……じゃあ良い夢だったのかな?」

純「ま、いっか」


朝食を済ませ、40分間で支度をし、元気な声でいってきます

これが私の朝だ

悪夢のおかげで早起きすっきり良い目覚め

なんだ、良いことも多いじゃんと私は考える

マイナス思考は私には似合わない、プラス思考で生きていれば良いことばかりだ

登校中は運悪く誰にも会わなかったが、これもみんなに会う楽しみをチャージしてるのだろう

純「おはよー憂!」

憂「あ、純ちゃんおはよう」

梓「あれ、純今日は朝からテンション高くない?」

純「ああ、悪夢を見たからね」

梓「はぁ?頭が爆発してるだけじゃ飽き足らずさらにおかしくなったの?」

純「梓、それ言いすぎ!」

憂「そうだよー、純ちゃんに失礼だよ」

梓「いいじゃん、純だし」

純「意味分からん!」プリプリ

憂「で、純ちゃんどうして悪夢見て機嫌がいいの?」

純「おお、聞いてくれたか、流石憂!梓とはレベルが違う!」

梓「……」

純「実はね、憂が爆発する夢を見たんだよ」

梓「……!あんた最低だよ!」バンッ

純「はい?」

梓「憂が爆発して喜んでたんでしょ!?頭湧いてるどころが人類の害だよ!」

純「ち、違うって……」

純「夢で死んだ人って、現実だと長生きするって言うからさ、憂は長生きできるね、って」

憂「……あ、ありがとう」

純「はははー、流石に長生きできるって言っても気分悪いか―」

梓「それに憂に爆発は禁句でしょ」

憂「そ、そんな、私は覚えてないんだからいいんだよ」

梓「でも……」


梓が神経質なのには理由がある

過去に私達3人で買い物をしていた時、突然爆発が起こった

振りかえると憂はおらず、焦げ跡が地面に残っているだけだった

梓は泣き叫び、心を閉ざし、私もぼんやりとした日常を送るしかなかった

でも本当は憂は爆発の衝撃で記憶を失っていて、放浪をつづけていただけ、というハッピーな結末を迎えた

私もそうじゃないかなー、と思っていたフシがあり、きっと信じていたから助かったのだと思うようにしている

……そういえばあの日も変な夢を見ていたような

梓「じゃあ私軽音部行くね」

憂「またねー」

純「じゃーねー」

憂「あれ?純ちゃんは今日ジャズ研ないの?」

純「うん、今日ジャズ研の部室工事なんだって、今日知ったよ!」

憂「あはは、本当は聞き流してただけじゃない?」

純「う……きっとそう……」


一瞬、厭な風が吹いた

ただの冬の風ではない、心の中から凍えさせるような風

……この風景、この時間帯、この状況

あまりにもあの夢と似ている……

話を途切れさせてはいけない!そして早く別のところに移動しないと!

憂「……純ちゃん?どうしたの急に変な顔して……」

純「いやー別に何でもないよー!それより軽音部のライブすごかったよねー!」

憂「あ、クリスマスの?……って純ちゃん、どこ行くの?」

純「んー、帰りながら話そうよ!ほら、寒いし!」

憂「……変な純ちゃん」

憂との他愛ない話は校舎を出るまで持たせ続けた

クリスマスライブで澪先輩が強烈な歌詞の歌を歌い、観客を引かせていたが
あれはあの曲の元々の歌詞だったらしい、唯先輩情報では

あと、最近は律先輩は澪先輩にたいして構ってあげてなくて澪先輩が凹み気味らしい
唯先輩情報では

あれ?憂の会話のソースが唯先輩だけだし、なんだか軽音部の話しかしてないぞ?

純「あのさぁ、たまには私達だけの話とかってないのかなぁ……」

憂「私達だけの話かぁ……私あんまり面白いことないからなぁ……」

純「ああ、そんな真剣に考えなくてもいいよ!」

憂「そうだなぁ……純ちゃんって誰にも言えない秘密ってある?」

純「え、それ言っちゃったら誰にも言えない秘密じゃないじゃん」

憂「内容は教えてくれなくてもいいよ」

純「んー、あるね!」

憂「私もあるよ」

純「おう、おそろいだね」

憂「そうだね」

純「で、その秘密というのは?」

憂「ヒ・ミ・ツ♪」

純「ですよねー」

憂「純ちゃんが言ってくれたら私も言うよ?」

純「だから言ったら誰にも言えない秘密じゃないってば!」

憂「あはは、そうだね……あ!」

純「どうしたの?」

憂「教室に忘れ物しちゃった……」

純「じゃ、じゃあ私はこれで……」

憂「待ってよー、純ちゃんも一緒に来てよ」

純「えー!ヤだよ」

憂「お願い!」ジー

純「……」

その顔は卑怯ですよ、憂さん

……まぁ、会話さえ途切れさせなければ大丈夫だよね

純「……と思ってみたものの」

憂「?」

純「会話が続かない……」

憂「きっと毎日会ってるからだよー」

純「そうよね、今時の女子高生が友達との会話を長引かせようとして、続かないわけありませんよね……」

憂「今日の純ちゃんやっぱり変だよ?」

純「悪夢のせいだよきっと」

憂「ふふ、悪夢見て良かったとか言ってたのは誰?」

純「わたしです」

純「きっとあれだ、続けようと思うから変に意識していかんのだ、自然に自然に……」

憂「純ちゃん、もう教室ついたよ?」

純「あ、は、はい!」

憂「?」

純「で、なんで私がついてこなきゃいけなかったの?」

憂「実は純ちゃんにプレゼントがあって……」

純「プレゼント!ただでくれるの!?」

憂「あは、食い付き過ぎ……」

憂「これ、お父さんたちが旅行で買ってきてくれたお土産のカンガルージャーキー!」

純「カンガルー……?」

憂「オーストラリアで売ってたらしいよ!すごいよね!」

純「まぁすごいっちゃすごいっスけど……」

憂「早速食べてみて!」キラキラ

純「……!?」

カンガルージャーキー……得体のしれないうえに喉がものすごく渇きそうな物体……

いや、それ以前に物を食べたら会話が続きようがない!

ど、どうしよう……

憂「……」ニコニコ

た、食べないわけにはいかないよね……

純「い、いただきまーす……」

純「おいひー!」モグモグ

憂「そう?良かった!」

純「あふはにはあえないふぉ?(梓にはあげないの?)」

憂「梓ちゃんにはお姉ちゃんから渡すんだー」

純「ほっはー(そっかー)」

憂「それより……食べながら話すのはお行儀悪いよ?」

純「!」

その言葉を聞いて喉にジャーキーが詰まる!

上手く話せない……

純「……あ……ごほっ……ごほっ!」

そしてその時は訪れた……

ぼんっ!

強烈な音が教室に響く

誰もいない教室は普段より音が反響した

普段はこんな音はしないけど……

目の前には見たくもない人影がある

頭は……ない

眼を背けようにも、体が言うことを聞かない

純「う……う……い……?」

無理やり声をひねり出して、友人の安否を確認する

……声は聞こえない


純「憂!憂ぃいいいいいいいいい!」

一度口が動くと、金縛りが解けたように自由に動くことができた

私は憂の物と思わしき体を抱き上げる

純「ウソでしょ!トリックなんでしょ!ねぇ憂!」

純「ま、また記憶喪失になって帰ってくるんだよね!ねぇ、聞いてんの!?」

純「いや……いやあああああああ!」

私は憂の死体を抱えて誰もいない、火薬の臭いの充満した部屋に座り込む

ただ茫然と、憂の体を見つめていた

綺麗に首から上だけが無くなった憂

いったいどうして

突然死ぬにしても心臓発作とかが常識の範囲内でしょうが!

誰に対してか分からない不平不満をひたすら叫ぶ

それが誰かに届いたのか、声が聞こえた

「心配しないで……」

純「だ、誰!?犯人!?」

憂「私だよ、憂だよ」

純「う、憂!死んだはずじゃ……!」

改めて憂を見ると、首から上が完全になくなっていたはずなのに、口が形成されていた

憂「純ちゃん、私ね、こういう体質なんだ」

ぼこぼこと憂の失われた部分から泡のようなものが吹き出し、鼻を、耳を、目を、頭を、髪を形成していく

憂「私は不死者、だから死なないんだよ」

純「あ、あは、あはは、やっぱ憂は長生きするんじゃん!」

憂「驚かないの?」

純「もう驚きすぎてどうでもいいって言うか……これも夢なんじゃないかってね」

憂「ふふ、夢じゃないよ」

純「……」ホッペウニー

純「……ホントだ」

憂「でも……私の秘密知っちゃったんだから、純ちゃんの秘密教えてよ?」

純「あ……」

これが憂の「誰にも言えない秘密」……

憂「お姉ちゃんとムギさんは知ってるけどね」

純「うーん、私の秘密っていうのは……」


私の秘密

それは正夢を見ること

いや、予知夢と言ったほうがかっこいいだろう

初めて見たのは小学生の時

遠足の前日に、変な夢を見た

私はテレビを見ている

テレビでは事故が報じられていた

私の小学校の名前、バスが衝突事故

そんな不吉なものが聞こえた気がした

朝目が覚めると39度の高熱で、遠足を休むことになった

悔しいが体がふらついて自分でも限界を感じていた

ベッドに横になっていたが、ふとあることに気がついた

家族は出かけていていないはずなのに、テレビの音が聞こえる

テレビを消し忘れて行ったんだ……

私は重い体を引きずりながらテレビの元へ向かった

そこからはお察しの通り、テレビでは夢と同じ事故が映っていた

それからも予知夢は続いたが、見た景色を変えようとしても、何かしらの力が働いて現実になってしまった

これが占い師が世界を変えられない理由なのかもしれない

憂「そっか、じゃあ私のも予知夢だったんだね」

友人は、すっかり爆発前と髪を上げていないことを除いて変わらない姿になっていた

純「うん、でもこんな形で解決するのは初めてだよ」

不死者という存在はある日突然人間が変異してしまうもので、それぞれ何か特殊能力があるらしい

憂の能力は自身を爆発させる能力……

不死者の性質上、死ぬことは無いので、生ける無限爆弾

兵器としては卑怯くさい代物だ

でも爆発すると本人は結構熱いらしいので、憂は嫌がっているようだ

憂「多分今回のは誤爆なんだと思う」

純「迷惑な体質だねー」

憂「迷惑かけないためにも……他の人にも言ったほうがいいのかな?」

純「その必要はないよ、だって……」

純「憂の「誰にも言えない秘密」でしょ!」

憂「そっか、私も純ちゃんの「誰にも言えない秘密」、知っちゃったもんね」

純「おそろいだね」

憂「私のはお姉ちゃんとムギさんが知ってるけどね」

純「う……」

異常事態を日常に隠すのは大して難しいことではなかった

梓「ねぇ憂、最近純と仲良くない?」

憂「え?純ちゃんとは元から仲良いよ?」

梓「そうじゃなくって……なんていうか……私の入れない領域ができてる気がするんだけど……」

純「梓は軽音部があるからねー、そのせいじゃない?」

梓「純にもジャズ研があるだろうに!」

純「あ、そうだっけ……」

憂「はは、純ちゃん……」

憂「あ、そうだ……今日、泊まらない?」

梓「え、何で?」

憂「今日ね、お姉ちゃんムギさんの家にお泊まりするんだって」

梓「私ソレ知らない……」

憂「あ、梓ちゃんもきっと呼ばれるよ!これから!」

純「ん?じゃあ泊まるのは私だけ?」

梓「私が呼ばれたら、ね……」

憂「だ、大丈夫だよー!」


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