ギュ

梓「えっ?」

唯「焦らなくていいよ。これからたくさんたくさん思い出が生まれるから」

梓「唯先輩……」

唯「いいんだよ、色あせてしまっても。だって、きっとそのために出会ったんだよ」

梓「あっ……」

唯「私たちは大丈夫。一緒にいる限り、消えてしまうことはないから」

梓「……そう、ですね」

唯「だから目一杯たのしもう?」

唯「いつかうやむやな記憶になってしまっても、楽しかったことだけは思い出せるように」

唯「ふたりで笑って懐かしめるように……」

梓「はい……」

唯「ほら、行こっ! まだまだたくさんのアトラクションが私たちをまってるよ!」

梓「はい! 私、たくさん楽しんで帰ります! 唯先輩といーっぱい素敵な思い出つくります!」

唯「そうだよ! 私もあずにゃんと一緒に楽しみたい!」

梓「はい! だから、離してくださいいい加減恥ずかしいです」

唯「え"ぇ~~!?」

梓「すいません人目は結構きにするタイプなんで……」

唯「そんな~」

梓「抱きしめるのはまた……あとでお願いします」

唯「あずにゃん……うん! またいっぱい抱きしめてあげる」

梓「ほどほどで」

……

唯「あずにゃんさん……」

梓「唯先輩……」

唯「どきどきするね……」

梓「私、泣いてませんか?」

唯「無理、顔みる余裕ない」

梓「あぁ、もう目前に。秒読み開始です」

唯「大丈夫。何があってもいっしょだよ」

梓「……はい、だからしっかり前のレバーもってください」

唯「いやああああ助けてえええ!! あずにゃん私もう帰るー!!」

梓「勝手に帰ればいいじゃなあああああああああっ!!」

ガコンガコン ゴオオオオ

律「ぷぷーアイツら叫びすぎー」

紬「まさか二人とおんなじタイミングでコレに乗るなんてね」

澪「   」

律「んでなんで気絶するくせに乗るんだよぉ!」

澪「   」

紬「失禁してないだけマシかも……」

律「それシャレになんねぇ」


唯「よっこらせ、あー怖かった」

梓「もう、唯先輩怖がりすぎですよ」

唯「あずにゃんだって叫んでたじゃん」

梓「あれはー……ノリです」

唯「ほんとー?」

梓「あ、律先輩たち!」

律「よーっす、たまたまお前らの後ろに乗り合わせてた」

紬「えーん怖かったー!」

梓「全然そうは見えませんけど!」

唯「澪ちゃんは……?」

澪「   」

律「おい澪」ユッサユッサ

澪「あ、律!」

唯「すごーい! 澪ちゃんなんだかんだで乗れたんだね!」

律「気絶ですんで良かった」

澪「そ、そうだな」

梓「いやいや、気絶とか普通に危なすぎるでしょ」

澪「気絶じゃない! 外界との遮断だ! 怖いものは自動でシャットアウト!」

律「便利な能力だなー」

紬「唯ちゃんたちはどうだった?」

唯「あずにゃんのツインテールが結構邪魔くさかったよ!」

梓「そんなこといわないでください!」

澪「あぁ……すっごい髪の毛乱れてる……」

律「よーし次いくぞ次ー!」

紬「おー!」


唯「私たちはどうする?」

梓「また少し疲れたんで、なにかゆっくりできる乗り物ないですかね」

唯「んーあるにはあるけど」

律「じゃあなー! まった後で-!」

澪「おい、今日どんだけ走るんだ!」

紬「うふふふー帰りのバスは5時だから忘れないでねー」


梓「で、何があるんですか?」

梓「コーヒーカップとか? あ、スワンボートもありましたね」

唯「違う違う、あれだよ」スッ

梓「あれって。あぁ、観覧車ですか……観覧車」

唯「……」

梓「いいんじゃないですか?」

唯「でしょ?」

梓「あ、でも……」


唯「ねぇあずにゃん。デートで、ふたりきりで観覧車といったらさ……」

梓「で、ですよね。もはや定番の……あれを」

唯「てっぺんまで上がったら? だよね」

梓「そ、そうなります……ね」

唯「じゃあ乗る?」

梓「乗ったら、唯先輩と……するってことですよね」

唯「……うん」

梓「……乗ります」

唯「うん! 私も乗りたい」

梓「別に唯先輩としたいとかそういうんじゃなくてですね」

唯「うんうん、わかってるわかってる」

梓「休憩には、ちょうどいいかなって」

唯「そうだねーあずにゃんの言うとおり!」

梓「ばかにしてません!?」

唯「べっつにぃ~」

梓「とりあえず向かいましょう」

唯「……やっとだ」ボソ

梓「え?」

唯「んーん! なんでもない! いこっ!」


……


唯「徐々にあがってきたねー」

梓「まだ半分ものぼってませんけど、結構高いですね」

唯「怖い?」

梓「いえ」

唯「あ、ほら向こう、さっき見た噴水広場!」

梓「やっぱり何も思い出しませんでした?」

唯「残念ながらねー」

梓「あれ、噴水が……見てください唯先輩!」

唯「おぉ!?」

梓「いっぱい吹き上がってて綺麗ですねー……あっ」

唯「あずにゃん……やっぱり噴水だよ」

梓「はい、なんとなくそんなような!」

唯「絶対噴水だよ! 私たち! あそこで出会った!」

梓「わかるんですか!」

唯「3時ぴったりになったら、ほら、あそこ12箇所からピューっと噴き出すの!」

梓「えぇ、見えてます」

唯「そっか、だからわからなかったんだ」

梓「私も思い出しました」

唯「うん、あずにゃんにきれーだねぇーって」

梓「言ってくれましたね」

唯「あの時、どうやって泣きやますか必死だったんだー」

梓「それはどうもご迷惑おかけしました……」

唯「噴水がタイミング良かったから、あずにゃん喜んで笑ってくれて……」

梓「はい。ほんとに、綺麗でした」

唯「あ、止まっちゃった……」

梓「唯先輩」

唯「なぁに?」

梓「鮮明でした、思い出」

唯「そう? えへへ、良かった良かった」

梓「できれば間近でみたかったですけど」

唯「それは仕方ないねー」

梓「そ、そういえば」

唯「ん?」

梓「あ、あと何分くらいでてっぺんですかね」

唯「あずにゃんったらやらしーの! カウントダウンしてるなんて」

梓「うっ」

唯「そんなに楽しみなんだ? てっぺんの……えへへ」

梓「ち、ちがいます! 心の準備をですね」




唯「ふーん、じゃああと3分くらい? 確か一周15分くらいって書いてたよね」

梓「3分……3分後には私……あぁっ」

唯「まだしてもいないのに顔真っ赤だよ?」

梓「ゆ、唯先輩こそ! 真っ赤です」

唯「う、うわー人が豆粒みたいだよー……」

梓「ごまかさないでください!」

唯「あとニ分」

梓「!」ドキッ



律「さぁーて唯と梓が乗ってるゴンドラはどれかなー」

澪「や、やめろぉ……のぞき見なんて」

律「あーそっかぁ! いまごろムチュチューな展開かもしれませんしねー!」

澪「うっ、だからやめろって……」

律「あれか? それともあっちかー? おおーう、上のほうはもうよく見えないな」

紬「たぶんあの水色のゴンドラじゃないかしら」

律「え? あの一番上の?」

澪「良く見えない……」

律「なんだよー澪も興味しんしんじゃん!」

澪「……唯、梓」




唯「ねぇあずにゃん」

梓「はい……」

唯「もうてっぺんだよ」

梓「そうですね……」

唯「いい眺め。ほんとに世界に私たち二人だけしかいないみたい」

梓「はい」

唯「空に浮かんでるよ」

梓「唯先輩……」

唯「おいで?」

梓「はい、あの……目、つぶっていいですか?」

唯「うん。いいよ」

梓「……大好きです」

唯「言葉はもういらないよ」

梓「んっ……――――

――――――

――――

――


唯「……」

梓「……」

唯「あっというまだったねー」

梓「そんなもんじゃないですか?」

唯「さて、私のファーストキッスはいかがだったでしょうか」

梓「……そうですね」

唯「……どきどき、わくわく」

梓「短くてよくわからなかったので」

唯「えぇ!?」

梓「だから、もう一周……しませんか……?」

唯「……おぉ!?」

梓「あっ、や、やっぱいいです! 下着いたらすぐ降りましょう」

唯「ノーノー! 喜んでもう一周お供いたします!」

梓「うっ」

唯「でもさーそれってさ、もっかいてっぺんついたらさー」

梓「……」

唯「また、していいってことでしょ?」

梓「あぅ……はい」

唯「んーということはあずにゃんと二回目のちゅーするまであと10分ってとこかー」

梓「もうっ! そういうのやめてください!」

唯「てかてっぺん以外じゃダメ?」

梓「だ、ダメです!」

唯「どうしてー?」

梓「だって……一番上じゃないと、見えちゃうじゃないですか!」

唯「あ、そっかそっか! ごめんね。あずにゃん恥ずかしがり屋さんだもんね」

梓「唯先輩も……意外とウブですよ」

唯「でも先輩ですからー! こういうときは頑張ってリードしなくちゃ!」

梓「それは、ありがとうございます……」


唯「えへへー次のデートはどこにしよっかー」

梓「もう次のこと考えてるんですか?」

唯「うん! 毎日でもしたいよー! だってデートだよー?」

梓「じゃあ次は……バス無しでいけるとこにしましょう」

唯「りょ、了解です!」


……


律「で、こんな時間までずっと二人でグルグルしてたってのかー!!」

澪「いったい何周したんだ……」

紬「あらあらあらあら」

梓「すいません……」

唯「だってあずにゃんが何度もふがぁもがっ!」

律「んぁ?」

梓「なんでもありません! ほんと!」

唯「ふがぁ、もう! なにすんの!」

梓「何いいだすんですか! バカですか!」

唯「にゃにぃ~?」

澪「あの、もう帰るけど唯はバス大丈夫か?」

唯「あ、それは大丈夫大丈夫! 帰りは寝るから」

澪「そっか」

唯「あずにゃんの膝でね!」

梓「しりません!」

唯「ツンツン!」

梓「ひゃあっ! つんつんはダメです!」

唯「ツンツンツン! ほら乗るよーちゃんと枕になってねー」

梓「うぅ、私だって疲れてるんですから……」

唯「そっか、じゃあ一緒に寝よ!」

梓「それなら……いいですけど」

律「くぁ~、今朝とは見違えるほどおアツくなってますなー」

澪「なぁ、こんなこと聞いていいのかわからないけど」

唯「なんだい澪ちゃん!」

澪「観覧車で……その、済ませたのかなって……」

梓「!」ボン

唯「うん! えっとねー何回だっけ」

梓「なぁー! 言わないって約束したじゃないですか!!」

紬「あら、素敵なことじゃない」

澪「そ、そうか……したんだ……何回も……」

律「なんで澪が赤くなってるんだよー」

澪「だってぇ……」

梓「もう、唯先輩はおとなしく寝ててください」

唯「うーい、よっこらせっと」ゴロン

梓「……やっぱり膝なんですね。結局私寝れないじゃないですか」

唯「あずにゃんのお膝きもちー」

梓「……」

唯「ねぇあずにゃん」

梓「はい」

唯「なんだか人生の意味がわかった気がするよ」

梓「はい?」

唯「私ね、きっとあずにゃんに出会うためにあの日迷子になったんだー」

梓「……」

唯「運命だよね?」

梓「そう、かもしれませんね」

唯「えへへーあずにゃんもそう? 私に見つけてもらうために迷子になったの?」

梓「……えぇ。そうですよきっと」

唯「そっかぁ。嬉しいな」

梓「このまま唯先輩とずっとずっと一緒にいれたらいいですね」

唯「うんどんなときでもずっと横にいるからね」

梓「はい。約束しましたよ」

唯「あ、もう眠たいや……今日は疲れたな」

梓「いろいろありましたから」

唯「うーっん……あずにゃん」

梓「はい?」

唯「手握ってー」

梓「はい」

ギュ

唯「着くころにはあずにゃん分、充電おわってるといいなー……」

唯「……」

唯「zzz」

梓「おやすみなさい、唯先輩」



お し ま い