土曜日


梓「ハァ……ついに明日だ」

梓「唯先輩と初デート……」

梓「あの場所へもう一度……」

梓「なんだか胸がキュンキュンしちゃう」

梓「私そんなに乙女ちっくじゃないはずなのにな」

梓「何着ていけばいいのかな。唯先輩は絶対絶対可愛い服着てくるよね」

梓「……いつものシャツだったらどうしよう」

梓「あ、それと持ち物準備しなきゃ」

梓「アトラクションに乗るからあんまりごちゃごちゃ持っていったら邪魔だよね」

梓「水筒とか……いるかな?」

梓「そういえばお昼はどうするんだろう。レストラン? たしかあったはず」

梓「あ、でもリニューアルしてるならどうなんだろう」

梓「メールで聞いて……もう寝ちゃったかな」

梓「さっきおやすみなさい送ったばっかりだしね」

梓「服はこれでいいや、よし寝よ」モゾモゾ

梓「……」

梓「……」

梓「……眠れない」

梓「……唯先輩寝坊するかも」

梓「モーニングコールしないとね」

梓「その前に私がちゃんと起きなきゃ」

梓「おやすみ、唯先輩……」


日曜日

律「やっと着いたー!! ハァーつっかれたー!」

澪「もたれかかって寝てただけだろ! うわぁ私の服、よだれの跡ついてるし!」

梓「シャトルバスなんてあるんですね」

唯「うぇ~あずにゃ~ん……」

梓「だ、大丈夫ですか……」

律「やれやれ、せっかくのデートでこれかよ」

澪「唯、酔い止め飲んでこなかったのか?」

紬「ど、どうしようお医者様呼んだほうが」

唯「ダメダメ! そこまでしなくていいって!」

梓「あ、ちょっとマシになりました?」

唯「う、うぇ~あずにゃ~ん……」

律「バス酔いを理由に甘えてるだけなんじゃないのか?」

梓「なんかそんな気もしてきました。さぁ立ってください行きますよ」

澪「ここが唯と梓の思い出の場所か……なんかいいな」

律「お、でっかい観覧車あるじゃん!」

紬「うん! ジェットコースターもすっごく怖くて素敵なの!」

澪「私はメリーゴーランドとかでいい……」

律「よーしこっち三人は澪の恐怖症克服の旅だ!」

澪「絶対いやだからな!」

紬「じゃあそういうことで唯ちゃんと梓ちゃんは二人で回ってね?」

梓「お気遣いありがとうございます」

唯「うぃ~了解。でお昼はどうするー?」

律「んじゃ昼どきになったらメールで!」

澪「怖いのヤダ怖いのヤダ怖いのヤダ」

紬「これ、渡しとくね。優待券。フリーパスだから目一杯楽しんできて!」

唯「さんきゅーべりまっち!」

梓「本当にありがとうございます。嬉しいです」

律「よっしゃぁ! 早速突撃だー!」

澪「お、おいいきなり走るなっ!」

紬「じゃあね~! りっちゃんまってー!」


唯「……いこっか?」

梓「はい!」


唯「あ、手つないでいい?」

梓「え?」

唯「まだバス酔いが……」

梓「そうですか、なら仕方ないですね。まだふらふらしてますもんね?」 

唯「そそ、そゆこと!」

梓「はい、どうぞ。あ、荷物も持ちましょうか?」

唯「それはいいよー。はいじゃあお手手つなぎましょう」

ギュ

梓「~♪」

唯「あれー? なんだか嬉しそうだね」

梓「い、いえっ! そんなことないです??」

唯「何で聞くの?」

梓「さぁ……」

唯「まぁいいや、れっつごー!」

……

唯「あずにゃんや」

梓「はい」

唯「中の記憶ある?」

梓「えっと、あんまり覚えてないですね」

唯「どこで出会ったんだっけ」

梓「さぁ……? どこでしたっけ」

唯「ま、そのウチ思い出すよね」

梓「だといいですけど」

唯「「なんか乗ろ!」

梓「私最初はメリーゴーランドがいいです」

唯「お、いいねぇ! 一緒に乗ろうよ」

梓「はい!」

唯「当時はたしか馬じゃなくていろんな動物だったよねー」

梓「そんなような……その辺あやふやです」

……

唯「どうして思い出せないんだろー」

梓「そりゃもう何年も前のことですし、仕方ないですよ」

唯「あずにゃんの笑顔はずっと覚えてたのになー」

梓「うっ、そういうのは心のなかにしまっておいて下さい」

唯「……それはそうと、この馬遅いね?」

梓「遅いですね」

唯「それに二人乗りだと狭いね?」

梓「あんまりくっつかないでください」

唯「えーん落ちちゃうよー」

梓「そんな危ない設計なわけないじゃないですか」

唯「おや?」

唯「あの3つ前の馬にのってるの澪ちゃんだよね?」

梓「そうですね」

唯「なんか楽しそうだね?」

……

唯「目、まわった……」

梓「しっかりしてください、あんなスピードで……情けないです」

唯「ちょっとそこのベンチで休憩~」

梓「まだ全然時間経ってないんですけど」

唯「先が思いやられるね?」

梓「……はぁ」

唯「でもね、私は別に乗り物にのらなくてもあずにゃんと一緒にいれるだけで嬉しいよ?」

梓「……はいはい」

唯「えー、そこは照れてよー!」

梓「あんまりムード考えずぽんぽんそういうこと言うのやめてくれません?」

唯「申し訳ない! でもね、こう、真面目な空気だと私も恥ずかしいんだよ」

梓「そうなんですか?」

唯「乙女ですから!」

梓「唯先輩が乙女……うーん、なんだかなぁ」

唯「あ、自販機あるしジュース買ってくる!」

梓「いえ、お茶もってきてますから結構です」

唯「え? 持参?」

梓「え? 水筒ですけど」

唯「いまどき水筒? なんだか珍しいね、あずにゃん」

梓「えっ? あ! いや、違うんです!」

唯「なにが違うの?」

梓「なんか舞い上がってて……つい……」

唯「おでかけで水筒みたのなんてひさしぶりだー」

梓「す、水筒を馬鹿にしないでください!」

唯「おぉ怒った!」

梓「とにかく、はい、これ」

唯「今度はハンカチ?」

梓「敷くんでしょ? どうぞ! 使ってください」

唯「え?」

梓「わ、私……え?」

唯「なんだかずれてるねあずにゃんって」

梓「ずれてるんですか?」

唯「いやいや、品も趣もあっていいと思うよ!」

梓「そうですよね! あはは……」

唯「とりあえずあずにゃんの座るトコに敷いてあげる」

梓「えっと……ありがとうございます」

唯「ごめんねー私もハンカチもってくるつもりだったんだけど」

梓「これからは憂任せにしないでちゃんと自分で持ち物用意する癖つけてくださいよ」

唯「はーい」

梓「さ、お茶どうぞ」

唯「んぐんぐ、あずにゃんちのお茶の味だー!」

梓「当たり前です」

唯「おいしーね?」

梓「そうでしょうか?」

唯「飲み慣れたものでもなんだかこういう所で飲むと一層おいしく感じるよ」

梓「私も飲んでいいですか?」

唯「ほい」

梓「んぐんぐ、朝から何も飲んでなかったのでおいしいです」

唯「はい関節キッスー! やーい!!」

梓「いえ違うとこで飲みました。残念でしたね」

唯「えぇ~!? つまんなーい!」

梓「少し休んだら次いきましょうね?」

唯「つめたい子!」

梓「普通です。最近の私はちょっと甘かっただけなんです。」

唯「優しいあずにゃんがいいよー」

梓「……こんな私は嫌いですか?」

唯「えっと……好き!」

梓「私も甘えんぼな唯先輩はわりと好きです」

唯「わりと!?」

梓「さて、いきましょうか。もう酔いは醒めましたよね?」

唯「ひどいあずにゃん……これは帰ったらツンツンの刑だね」

梓「私そんなツンツンしてますかね」

唯「無自覚ツンツンだなんて……逆にいいね!」

梓「ハァ」

唯「よっこらせっと、さぁて何処から攻めようか。ふれあいゾーン?」

梓「それもいいですけど、私としては園内をぶらぶらしたいです」

唯「あー思い出探しねー」

梓「出会った場所だけはどうしても……」

唯「うん……わかった」

梓「ごめんなさい変なことに付きあわせて」

唯「いえ、どこまでもご一緒します姫」

梓「ふふ、なんですかそれ」

……

律「おーい唯、こっちー!」

唯「りっちゃーんおまたせ!」

澪「遅いぞ!」

梓「すいません唯先輩が道間違えて」

唯「えぇ!? 私のせいじゃないよー、あずにゃんが自身満々であっちっていうから」

梓「ちがいます! 私はあっちから来ましたっけ?って尋ねただけです」

澪「道案内でてるだろ……」

紬「それより、午前中はたくさん回れた?」

唯「うーんまぁまぁかな。ほとんどぶらぶらしてたから」

澪「こっちはどこも結構並んでてさ、律が駄々こねて大変だったよ」

律「空いてたバイキングに乗ろって言ったのに澪のやつがー!!」

紬「私上下さかさまになるのって初めて! 楽しかった!」

梓「なんか充実してたみたいですね」

唯「こっちも楽しかったよ? ね? あずにゃん」

律「先レストラン入ろうぜぃ!」

唯「私おなかぺこぺこー」

梓「澪先輩なにか怖いの乗りました?」

澪「う、うん……小さいほうのジェットコースター」

梓「あ、それ私たちも乗りました」

律「あんなの絶叫マシーンじゃなーい!」

唯「そうだー! なんだーあのやる気のない速度はー!」

梓「唯先輩半べそでしたよね?」

唯「ちょっとあれは目にゴミがね……」

梓「……」

紬「私午後からは大きい方のりたーい!」

澪「ムリムリ無理! あれ、だって足宙ぶらりん」

律「じゃー澪だけ留守番してればいいじゃん? あたしらだけで楽しんでくるからー」

澪「うぅ……」

律「一人下のベンチでお留守番。あー悲しい。知らない人に絡まれたらどうしましょう」


澪「……ひどい」

唯「なんやかんやで乗ってしまう澪ちゃんでした!」

澪「絶対のらないからな!」

梓「唯先輩はのりますよね?」

唯「え?」

梓「乗らないんですか?」

唯「……」

梓「……乗りましょうよ」

唯「あずにゃん先輩がそういうなら」

律「あれ、唯ってこういうの苦手だっけ?」

梓「意外とこの人ビビリなんですよ」

唯「……」

梓「基本いくじなしですしね? シールの時とか」

唯「うえーんあずにゃんがいじめるよー」

澪「よしよし、恐怖は分かち合おう」

紬「席あいたみたい」

律「よーしあたし琴吹ランド名物のハンバーグにしよーっと!」

唯「私ムギちゃんランド名物のナポリタン!」

紬「そんな名前じゃないけど……ふふ」

梓「午後はまた別れて行動ですか?」

澪「それでいいかも。梓も唯と二人っきりがいいだろ?」

梓「それはそうですけど、なんか疲れるんですよ……振り回されっぱなしというか」

澪「苦労するだろうけど、まぁ惚れた弱みだし頑張れ」

梓「惚れ……うっ、違いますって……そんな」

律「なにが違うんだよぉ! あんなに涙ながして喜んでたくせに」

唯「えっあずにゃん私のこと嫌いなの? 好きって言ってくれたじゃん!」

澪「梓」

紬「梓ちゃん!」

梓「……なんですかこれ、圧力ですか」

唯「えへ~あずにゃんが困ってるとついね~」

梓「見ててください。いつか仕返ししますから」

唯「ツンツンで決着つける?」

澪「ひっ、あれはもう」

紬「結構です……」ブルブル

律「注文とるぞー」


……


唯「さてと、お腹いっぱい」

梓「律先輩たち元気ですねー」

唯「食べてすぐジェットコースター行くなんて気がしれないよ」

梓「あれ、案外まともなこと言いますね」

唯「あずにゃんの前でこれ以上醜態を晒すわけにはいかないからね!」

梓「お願いですからリバースだけはやめてくださいね……」

唯「一応トイレの場所かくにんしとかないと……」

梓「やめてくださいホントに!」

唯「じゃあまずはふれあいコーナー行こうよ」

梓「さっきちょっとだけ行ったじゃないですか」

唯「チラっと見ただけじゃん。ふれあいたいよ」

梓「んーちょっとだけないいいですよ」

唯「あの時のおっきいハムスターいるかなぁ」

梓「いるわけないでしょ……とっくに……」

唯「それ、なんだか寂しいね」

梓「わかってましたけどね。やっぱり思い出って美しいものです」

唯「鮮明じゃないけど、綺麗に保存されてるよね」

梓「ムギ先輩には悪いですけど、なんだかんだ言ってここはもはや別物です」

唯「うん。なんかピンとくる場所もないよね」

梓「月日が流れたんですから当然ですけど……」

唯「噴水……見たような」

梓「噴水ですか……ありましたっけ?」

唯「うーん地図みてみようよ」

梓「あ、たぶんこれですね」

唯「こんな真ん中だったっけなー」

梓「わかりません、とりあえず行ってみます?」

唯「ちょっとココからは遠いかも」

梓「じゃあ噴水行くついでにコレとコレまわりましょう」

唯「あー水がザップーンってやつね! 濡れ濡れのあずにゃん見れるかな?」

梓「濡れるんですかコレ?」

唯「しらない! 行こう行こう!」

梓「濡れるの嫌ですけど……」

唯「濡れたらお姉さんが拭いてあげる!」

梓「……わかりました」

唯「…………」

唯「ねぇあずにゃん、あんまり楽しくない?」

梓「え? いえっそんなことは」

唯「……そう」

梓「なんていうか、拍子抜けなだけです」

唯「拍子抜け? うん、そうかもね」

梓「もっとたくさんいろんなコト思い出せると、そう思ってました」

唯「うんうん」

梓「もっと果てしなく広かったような気もしますし」

唯「だね」

梓「あ、でもがっかりとは決していいません。いいとこです、賑やかですし」

梓「でも……私」


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