唯「唯先輩でしたー……なんて」

梓「……う」

梓「あ、ちょ、ちょっとすいません、トイレいってきます」

唯「あずにゃん……」

律「なぁ唯……」

唯「な、なにかな」

澪「なんか、私たちのほうが恥ずかしい……」

紬「唯ちゃんの話きいた後だとなおさら……」

唯「う、うん……ごめん」

律「唯の出会ったキャワイイ泣き虫な天使って梓だったんだな」

唯「み、みたいだね……うへぇ、どうしよ」

澪「あー暑いっ! 窓あける」

紬「私はいま感動しているわ。素敵よ唯ちゃん!」

唯「こ、このあと戻ってきたあずにゃんとどう顔をあわせたらいいのかわかりません!」

律「ん……んー。それはだねぇ……」

澪「いつもどおり、は無理か」

紬「じゃあもういっそ!」

唯「いっそ……いっそ……」

律「そうそう、この際……ってなんでやねーん! ……アハハ」

澪「律、おデコだしなさい」

律「ほんとごめ、アイタっ!」

唯「……ふふっ……わかった」

紬「梓ちゃん、きっといまでも唯ちゃんのこと好きよ?」

唯「ムギちゃんありがとう。でも大丈夫、私逃げないよ」

律「おっしゃあ! そうと決まれば、梓はやくもどってこーい!」

澪「どきどきする……あ、私たち席外したほうがいい?」

唯「ここにいて? 二人だとまた黙りこんじゃうかもしれないし……」

律「以外とぴゅあでシャイだからなー」

紬「でもそれがいいとこよね?」

唯「あずにゃん……」


ガチャ

梓「お、お待たせしました……」

唯「おかえり」

梓「……」

唯「……」

律「おいっ!」

澪「しっ!」

紬「……」ハラハラ

梓「……」

唯「……」

律「……おいおい」

梓「あの、唯先輩」

唯「うん」

梓「すいませんでした!」

唯「えっ!?」

梓「唯先輩ご本人だとは露知らず、勝手にしゃべくり散らかして!」

唯「いや、その、違っ」

梓「ホントごめんなさい! もうあの日のことは忘れます! だからその」

唯「あずにゃん!」

梓「いままでどおり仲良くしてくださいっ!」

唯「……あずにゃん」

ギュウ

梓「あっ……」

唯「聞いて? 私の初恋」

梓「……えっと……い、いやです」

唯「どうして?」

梓「私の初恋は唯先輩なのに……なのにそんな唯先輩の初恋話をきくなんて」

梓「きっと……心が張り裂けます」

唯「遡ること、67、8年くらい前かな?」

梓「……」

唯「私はとっても可愛い天使に出会いました」

梓「……」


唯「ちっちゃくて、泣き虫で、ちょっとおこりんぼで、でも笑顔がとっても可愛い天使です」

梓「……」

唯「その天使、私の初恋の天使。当時の顔はあまり思い出せないけれど」

唯「長い時を経て今再び、私の腕の中にいます」

梓「!」

唯「わくわく動物ランド、楽しかったよね? あずにゃん」

梓「あっ……あっ……」

唯「あれ、泣き虫はあの時から治ってないの?」

梓「唯先輩……唯先輩……グス」

唯「グス……また会いたいと思ってた。ずっとずっと」

梓「私もです……私も思ってました」

唯「たった数時間一緒にいただけなのに、なんでかな、忘れられなかった」

梓「はい……そうなんです」

唯「でもこうしてまた会えたんだよ? おっきくなったねあずにゃん」

梓「……うぅ……グス、まだこんなに、差があるじゃないですか」

唯「またよしよししてあげよっか?」

梓「け、結構です……もうあの時とはちがいますから」

唯「天使なのはかわりないよ?」

梓「恥ずかしいこと言わないでください」

唯「あずにゃ~ん」スリスリ

梓「あ……そっかぁ」

唯「ん? 何?」

梓「あのですね、唯先輩抱きしめられると、どうしてこんなに落ち着くんだろうってずっと考えてたんですよ」

唯「へぇー」

梓「今わかりました。きっと、あの時の温もりをずっと私の体が覚えていたんですね」

唯「……私もね、ここであずにゃんを最初に抱きしめたとき、なんだかすっごく懐かしい感じがしてたんだ」

梓「えへへ、なんなんでしょうね」

唯「きっと私の抱き心地メモリーにしっかりと刻まれてたんだろうね」

梓「あは、なんですかそれ」

唯「もっと刻んでいい?」

梓「もうっ、特別ですよ」

唯「あたりまえだよ! あずにゃんは特別!」

ギュウウ

梓「うっ、くるしいですって! そんなに強く抱かなくてもどこへも行きません」

唯「もう迷子にならないでねー」

梓「唯先輩が言えた口ですかソレ」

唯「私はどこへもいかないよー。えへへーあずにゃんあったかーい」

梓「暑いですって……アハハッ」

唯「あじゅにゃ~ん」

梓「……最初から首輪なんていらなかったんですね」

唯「え?」

梓「体はともかく、心はずっとずっと……私のこと……う、恥ずかしい」

唯「首輪~?」

梓「忘れてください」


唯「あ、そうだ!」

梓「なんです?」

唯「もう一度あの場所へいこうよ! 私たちの出会った場所!」

梓「あ、いいですね! 私も行きたいです!」

唯「デートだねー」

梓「そ、そうなりますよね……えへへ」

唯「また前みたいに手つなぐー?」

梓「それも……あり、かな」

律「いい雰囲気な中、突然ですまんが凶報だ」

唯「え?」

梓「あっ……いたんでしたね」

律「こらぁ! 勝手にふたりだけの国に行ってんじゃねー!」

梓「す、すいません……えへ」

唯「で、なに? きょうほうって? きょうほうってきょうほう?」

澪「悪い知らせって事」

唯「えっ悪い知らせ!?」

律「実はその動物ランド、二年くらい前に閉園してる」

唯「えっ?」

梓「あ……嘘……」

唯「えええええっ!?」

澪「知らなかったのか……」

律「いまは遊園地だっけ? 動物園?」

澪「忘れた」

梓「私たちの、思い出の場所が……グス」

律「な、なくな~。あたしらだって残念に思う」

澪「うぅ……カミサマは意地悪だ」

紬「そうね……」

唯「あずにゃん、元気だして?」

梓「はい……でも……」

唯「大丈夫だよ。だってね……」

唯「見た目や中身がいくら代わっても、私たちがそこで出会った運命はかわらないよ?」

唯「あずにゃんがここにいる。それだけで充分!」

梓「唯先輩……グス」

唯「これ以上望まないくらい幸せだよ!」

梓「……はい」

律「心配ないみたいだな」

澪「唯は強いな」

紬「もしもし? 斉藤? あのね――」

律「ん? 何電話してるんだ?」

紬「実はね。いい知らせもあるの!」

唯「きっぽうって奴?」

紬「うん!」

梓「なんですか?」

紬「そのわくわく動物ランドが閉園した後、ウチの系列がそこへテーマパークを建てたの」

梓「ムギ先輩の……」

紬「ごめんなさい」

唯「ムギちゃんが謝ることじゃないよ」

紬「でもね、居抜きに近い形だから動物とのふれあいスペースやお店はほとんどそのままで残ってるし」

紬「きっといま行っても懐かしいんじゃないかしら」

唯「そうなんだ……」

梓「完全に取り壊したわけではない、ということですか?」

紬「うん! リニューアルっていうのが一番近いかなぁ」

律「なんだそれ! すげー」

澪「良かったな! 唯、梓!」

唯「……そっか!」

梓「行きましょう!」

紬「それでね。特別優待券があるからぜひうけとってほしいの」

唯「ほんと!? いいの!?」

紬「もちろん! もともと渡すつもりだったしちょうど良かった!」

律「いいなー」

紬「もちろんりっちゃんと澪ちゃんもうけとってね?」

澪「い、いいのか? もらっちゃって」

紬「うん! よければ今度の日曜日なんてどうかしら?」

梓「天気もいいみたいですしね!」

唯「みんなで行こうよ!」

律「おっけー! でもな、お前らはちゃーんとデートすることー」

唯「わかってるよ!」

澪「デートか……すごいなぁ」

梓「楽しみです……」

紬「うふふ、楽しみー!」


唯「よーしテンションもあがってきたし練習ー……の前にお茶しよー?」

律「おいっ!」

澪「梓、これから唯と付き合っていくとなると……大変だな」

梓「いえ、扱いはもう慣れてますので」

律「お、言うねぇ」

梓「いざとなったら首輪……は要らないんでした」

紬「それじゃあ、紅茶いれていい?」

唯「いえーいティータイム最高ー初恋最高ーあずにゃん最高ー!」

梓「もう、ほんと昔から落ち着きないんですから……」

律「その発言、なんだか熟年夫婦みたいだな……」

澪「いいんじゃないか、梓に手綱にぎらせておけば安心だ」

唯「あずにゃ~ん、ケーキあーんさせっこしようねー」

梓「はいはい……」


お し ま い



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