唯「ムギちゃんっておいしそうだよね~」

紬「え?」

澪「何言ってんだコイツ」

梓「さすがの私のそれは引くわ」

律「唯、お前は知らないのかもしれないが人間は食べちゃいけないんだぞ」

唯「むー、私だってそれくらい知ってるよ」プンス-3

唯「ほら、ムギちゃんってお肌も白いしぷにぷにふかふかしててマシュマロみたいでしょ?」

澪「人を食べ物に例えるのってどうなんだ……なんとなくわかるけど」

唯「でしょ?だから食べてみたらおいしそうじゃない?」

律「なんでそこで食べてみようって発想になるんだよ」

梓「普通そんな考え思いつきませんよ」

唯「うう……絶対おいしいと思うんだけどなあ……」

唯「ねえムギちゃん、ちょっとだけ食べてみてもいい?」

紬「えっと……ごめんね」ペコリ

唯「がーん、断られたー」ションボリ

梓「当たり前ですよ。OKもらえるとでも思ってたんですか」

澪「ほら、そんな馬鹿なこと言ってないで練習するぞ」

唯「いいもん!じゃあせめてムギちゃんに抱きついてそのふかふかぼでーを堪能してやるー!」ダキッ

紬「あらあら」

唯「ぎゅー」ギュー

梓「まるで赤ちゃんみたいですね」クスッ

澪「ムギも大変だな、こんな甘えんぼな子どもに抱きつかれて」

紬「ううん、私一度唯ちゃんに思いっきり抱きつかれてみたいって思ってたから」ヨシヨシ

唯「……はっ!ムギちゃんってすごくいい香りがする!」スンスン

律「どんな香り?」

唯「なんて言うか……すごくいい香り!ショートケーキみたい!」

澪「ショートケーキって……、全くそんなわけ……」

梓「あ!本当です!ムギ先輩からとっても甘い香りがします!」スンスン

律「おお!?本当だ!すげえ!!」スンスン

澪「わ、私も!」スンスン

紬「ちょ、ちょっと///」

澪「本当だ、とってもいい香り……」スンスン

律「ムギがおいしそう、っていうのも今ならわかる気がするよ」スンスン

紬「もう…///」

唯「でしょ?それにムギちゃんってぷにぷにしててとっても触り心地がいいんだよー」フ

律「ふむふむ……、おお!本当だ!」プニプニ

梓「すっごく柔らかいです……」サワサワ

澪「ぷにぷに…」ナデナデ

紬「…」


紬の家

紬「……ご馳走様」カチャ

斎藤「お嬢様、まだ半分以上残っていますが……」

紬「うん、なんだかお腹一杯になっちゃった。悪いけどもう下げてくれる?」

斎藤「……承知致しました」


紬の部屋

紬「ふう……」ガチャ バタン

紬「……唯ちゃんたち、プニプニしてるーって言ってた時にみんな私のお腹を触ってた…」

紬「確かに最近はよくまみ食いをしちゃうけど……」プニプニ

紬「うっ……思ってたよりこれは……」

紬「もしかしてケーキの香りもつまみ食いをし過ぎのせいかしら……」スンスン

紬「……このままじゃ絶対に駄目!このままじゃ太り過ぎて豚さんみたいになっちゃう!」

紬「甘いものは我慢して、たくさん運動もして……」

紬「絶対元の体重にもどるぞー!」オー!


放課後

律「ムギー、今日のお菓子何ー?」ガチャ

澪「部室に入るなりいきなりお菓子の話かお前は」

紬「ごめんね、今日はお菓子持ってきてないの……」

律「えー!?」

紬(みんなごめんね、でもお菓子があると我慢できなくてついつい食べてしまうから……)

唯「大丈夫だよ!今日は私がケーキを持ってきました!」フンス

紬「え」

律「お、唯にしては用意が良いな!」

唯「えへへ~、昨日家で憂が作ってくれてね~」

唯「食べきれない分は軽音部のみなさんでどうぞって持たせてくれたんだよ~」

澪「本当によくできた妹だな」

律「憂ちゃんくれ」

唯「ダメー、代わりにケーキあげるね」ハイ


律「うめえうめえ」ムシャムシャ

梓「さすが憂の手作りですね、とってもおいしいです」ムグムグ

澪「だな」モグモグ

唯「はいムギちゃんもどうぞ!」

紬「ええと……」

唯「ムギちゃんにはいつもお菓子持ってきてもらってるから、お礼に一番大きいのあげるね!」

紬「あの…唯ちゃん、悪いけど私……」

唯「食べてくれないの……?」グスッ

紬「う、ううん!そんなことないわ!いただきます!」モグモグ

唯「まだまだたくさんあるからいっぱい食べてね!」


紬(結局勧められるまま3つも食べちゃった……)ケプ-3

紬(うう……、体重計に乗るのが怖いなぁ……)

律「あれ?ムギ、ほっぺにクリームついてるぞ?」

紬「え?嘘?どこに?」

唯「あ、本当だ。ちょっと待ってね、今とったげる」

紬「うん、ありが……」

唯「ぺろぺろ」

梓「ちょっと唯先輩!?何やってるんですか!?」

唯「むぐむぐ」

澪「今度はムギのほっぺたに噛みついてるし!?」

律「こら唯!ムギから離れろって!」グイー

唯「むぐむぐむぐ……ぷはーっ!」

律「やっと離れた……」ゼエゼエ

澪「で、なんで唯はムギに噛みついたんだ?」

唯「ごめんね、なんかムギちゃんのほっぺた見てたらおいしそうでつい……」

梓「だからってやりすぎですよ!」

唯「うう……ムギちゃん、本当にごめんね……」グスッ

紬「…」ボー

律「ムギ?」

紬「え!?あ、いいのよ!全然気にしてないから!」アセアセ


律「しかしおいしそうって理由で人のほっぺた舐めるか、普通?」

唯「で、でもムギちゃんのほっぺたは確かに甘かったよ!?」

梓「何のフォローですか……。あと甘いのはきっとムギ先輩じゃなくてクリームですよ」

唯「いや、あの上品な甘さはムギちゃん本来の甘さだよ。こればっかりは自信を持って断言できるよ!」フンス

澪「何言ってんだコイツ」

紬(もしかして唯ちゃん、昨日私を食べたいって言ってたのって本気だったのかしら……)

紬(だとしたら……)

唯「? なんで席離すの?」


紬の家

紬「…ご馳走様。斎藤、下げて頂戴」カチャ

斎藤「お嬢様、殆ど食事に手を付けていないようですが……」

紬「いいから」

斎藤「ですがお嬢様……」

紬「いいから!」

斎藤「……承知致しました」


紬「……ごめんね斎藤、我儘ばかり言って」

紬「…」グゥー

紬「お腹空いたなぁ……。やっぱり我慢しないで全部食べとけばよかったなぁ……」

紬「……ううん、だめよ!ここで食べてしまったら唯ちゃんの思う壺だわ!」

紬「昔お母様から聞いたことがあるわ……。子供にお菓子をいっぱい食べさせて、太った子ども食べる魔女のお話……」

紬「きっと唯ちゃんも私にお菓子をたくさん食べさせて、もっと太らせてから食べようとしているのよ!」バァーン!

紬「……さすがに本気で食べるわけないと思うけど、私だってこれ以上太るのは嫌だし……」

紬「と、とにかく!きれいに痩せて唯ちゃんを見返してやるんだから!」フンス-3



翌日

律「え?今日からしばらくお菓子を持って来れないって……」

紬「うん…、実はしばらく家にお客さんが泊まりに来る事になって……」

紬「余ってるお菓子はその方にお出しすることになったの……本当にごめんなさい!」ペコリ

梓「ま、まあそういう事情なら仕方ないですよね!」

澪「そ、そうだよな!たまにはティータイム無しで練習するのもいいんじゃないか?」

律「お前らすごく残念そうだな」

唯「大丈夫だよ!今日も私がケーキを持ってきたから」フンス

澪「でかしたぞ唯に憂ちゃん!よくやった!」

梓「ばんざーい!ばんざーい!」

律「お前ら喜びすぎだろ」

唯「今日はチーズケーキなんだよ~♪」

澪梓「うめえうめえ」モグモグムシャムシャ

律「お前ら食い過ぎ」

唯「はい、ムギちゃんもどうぞ!」

紬「(うっ、おいしそう……でも)ごめんなさい、私お客さんに挨拶しないといけないからもう帰らないと……」

唯「そうなんだ…、じゃあ箱も持ってきたから帰ってからでも……」

紬「えーっと……私急いでいるから!ごめんなさい!」ダッ

唯「あ、ムギちゃん!」

紬(唯ちゃん、本当にごめんなさい……)

……

紬(……あれから2週間が経ちましたが、相変わらず私が部活を休んで、唯ちゃんがケーキを持ってくる生活が続いています)

紬(1週間くらい前から唯ちゃんが私に前にも増してケーキ勧めてくるようになりましたが、それ以外は変わりはありません)

紬(あ、あと私事ですが体重がちょっぴり減りました。えっへん)

紬(これも毎日の食事制限と運動のおかげです)

紬(部活を休むのは辛いですけど、あのおいしそうなケーキの魔の手から逃れるためです。仕方ないです)

紬(目標体重まであと少しなので、もうちょっと頑張りたいと思います!)

紬(…その時まで唯ちゃんがケーキを持ってきてくれてたらいいなあ……)


教室

和「ムギって何か悩みでもあるの?」

紬「え?どうして?」

和「どうしてって……最近なんだか疲れているみたいだし、最近部活に行ってないそうじゃない」

紬「えーっと、今家にお客さんが来てて、それで……」

和「まああなたが大丈夫って言うのならそれ以上は言わないけど……」

紬「心配掛けてごめんなさい…」

和「あ、あと唯があなたに用事があるそうよ」

紬「唯ちゃんが?」

和「放課後に音楽準備室に来てほしい、って。確かに伝えたわよ」

紬「…」


音楽準備室

紬「失礼しまーす……」ガチャ

唯「あ、ムギちゃんいらっしゃい」

紬「唯ちゃん、用事って何……?」

唯「…ムギちゃん、最近何かあったの?」

紬「え?」

唯「だってムギちゃん最近なんだかやつれてるし、部活にも全然来ないし……」

紬「それは…家にお客さんが来てるからで……」

唯「だからって毎日挨拶しないと、って直ぐ帰っちゃうのはおかしいよ!さすがに私だってわかるよ!」

唯「もしかして私が変なことしたからなの…?私がムギちゃんに噛みついたりしたから……」

紬「そんなこと…」

唯「そんなことあるよ!だってムギちゃんが部活に来なくなったのって私が噛みついた後からなんだもん!」

唯「あの後からムギちゃんなんだか疲れてるようだったし、私がケーキを勧めても避けてくし……」ポロポロ

唯「私が気持ち悪いことしたなら謝るから……ぐすっ、ムギちゃん…戻ってきてよぉ……」ポロポロ

紬「…心配掛けてごめんね。でもこれは本当に唯ちゃんのせいじゃないの。全部私の責任」

紬「これからはちゃんと部活に出るから……」

唯「ひっく……本当に?」

紬「ええ本当よ、琴吹家の全資産を賭けてもいいわ」

唯「そこまではしなくてもいいけど……じゃあ指切りしよ?」

唯紬「…ゆーびきった♪」

唯「ムギちゃん、指切りしたんだから明日から絶対に部活に来てね。絶対だよ!」

紬「もちろん!唯ちゃんとの約束だもん!」

唯「えへへ~、あっ、そうだ!」ゴソゴソ

紬「? どうしたの?」

唯「仲直りの証に……はい、これをどうぞ!」

紬「あら…これって……?」

唯「えへへ、形が悪くってごめんね。憂のじゃなくて私の手作りのケーキなんだ」

唯「いつもお菓子を持ってきてくれる優しいムギちゃんへのお礼です!」

唯「形は不格好かもしれないけど味は保証するよ!なんてったって憂に教わって作ったんだからね!」フンス

紬「…」ポロポロ

唯「わわわ!なんでムギちゃん泣いちゃうの!?」

紬「…ごめんね、ぐすっ、私、今まで友達にこんなに思ってもらったことなかったから……」ポロポロ

紬「それに私、こんなに唯ちゃんにとってもひどいことしてた……ぐすっ、本当にごめんね……」ポロポロ

唯「もう!よくわかんないけどそんなこと言って泣かないの!せっかくのケーキがおいしくなくなるよー!」

紬「ぐすん……えへへ、そうよね!」ニコッ

唯「うん!やっぱりムギちゃんはそうやって笑ってる方がムギちゃんらしいよ!」

紬「そ、そうかしら?///」


みなさんこんにちは、琴吹紬です

「ムギちゃんおいしそう事件」で一度は崩れかけた私と唯ちゃんの仲ですが

無事に誤解も解けて一件落着。今では2人は大の仲良しです!

唯「はいムギちゃん、あーん♪」

紬「あーん……やっぱり唯ちゃんのケーキはおいしいわ♪」モグモグ

唯「えへへ~」テレッ

それどころか2人でケーキの食べさせ合いっこまでしちゃいます!

紬「あのね、今日は私も自分でケーキを作ってみたの……」

唯「え、本当!食べたい食べたい!」キラキラ

紬「自信は無いんだけど……唯ちゃん、あーん」

唯「あーん…」ムグムグ

紬「…どうだった?」

唯「ムギちゃんおいしい!」

おしまい



最終更新:2011年01月20日 22:05