唯「和ちゃーん」

和「あら唯。おはよう。今日は早いのね」

唯「ちょっとじっとしててね~」

和「?」

唯「ちょーっとだけだからねー……すぐ終わるよー痛くないよー……」ズイ

和「わっ、ちょっと何?」サッ

唯「あ、もう!動いちゃダメだよ!」

和「なんなの?私の顔になにかついてる?」

唯「つけようとしてます」フンス

和「やめなさい」

唯「大丈夫大丈夫~」ズイズイ

和「その手に持ってるの何?」サッ

唯「世界が違って見える魔法の道具だよ~」フフフ

和「そうなんだ。早く学校行きましょう」スタスタ

唯「あー!待ってよ和ちゃーん!」


教室

律「なるほど、和にコンタクトか。面白そーだな」

唯「ね、いいと思うでしょ?」

紬「うん、似合うと思う!」

澪「いや、だからっていきなりぶちこもうとするなよ……」

唯「でへへ……。でも和ちゃん絶対可愛くなるよ!だからコンタクト入れてみてよ~」

和「間に合ってるわ」

唯「そう言わずにさぁ~ここはひとつ自分を変えてみないかねお嬢さん」

和「今の自分で満足してるから」

律「まぁまぁ和。よく言うじゃん?ものは試し!」

唯「女は度胸!」

紬「犯人は私!」

和「ありがとう。でも私この眼鏡気に入ってるの」

澪「かわいいよなその眼鏡。私も欲しいくらいだ」

律「ええー?だってそれ逆さまじゃん」

澪「そういうデザインなんだよ」

紬「あ、もしかしてその眼鏡をつけてると全部逆さまに見えるとか~」

和「いいえ、遠くの物が見やすくなるだけよ」

唯「も~!眼鏡の話はいいよ。ねー和ちゃん、コンタクトつけてみてよー」

律「そうだー!つけろつけろー!」

和「さ、授業始まるわよ」

律「む……無視かい……」

唯「和ちゃんしどい……」

澪「ていうかそのコンタクト、唯が勝手に買ってきたんだろ?ちゃんと和に合ってるのか?」

唯「私は和ちゃんの幼馴染みだよ~?視力くらい知ってるよ。0.5だよね?」

和「0.2よ」

唯「ありゃ」

澪(和、けっこう目悪いな……)

キーンコーンカーンコーン


昼休み

唯「ねえ和ちゃん、やっぱり眼鏡って不便でしょ?耳とか痒くなるでしょ?」

和「またその話?そんな事ないわよ」

律「ほら、朝起きた時とかに、あわわ!眼鏡眼鏡~!ってなるだろ?」

澪「律や唯じゃないんだからあるわけないだろ」

和「それはたまにあるわね」

澪「……」

紬「それで、あっ!頭にかけたままでした~!とか?」

和「それはないわ」

律「でもコンタクトならそんな事にはならないぜ!」

唯「そうそう!騙されたと思ってさ~つけてみてよ!」

澪「いや、コンタクトはコンタクトでそういうの多そうじゃないか?落として探してる人よくいるじゃん」

紬「それでみんなで探してたら誰かが踏んじゃうのね?」

律「ええいうるさい余計な事を言うでない」

唯「ほらみてっ!洗浄液!洗うの楽しいよー?ワクワクだよー?」

和「どっちにしろコンタクトにする気はないわ。ほら、次移動教室だしもう行きましょう」ガタッ

律(くっ、手強いな……)

唯(私は諦めないよ和ちゃん)


放課後 音楽室

唯「和ちゃん、私のケーキあげる」 ニコニコ

律「ほれ、私のも食べていいぞ」ニコニコ

和「あの……」

唯「お願い和ちゃん、コンタクトつけて~!」

律「頼む!このとーりだっ!余命いくばくもない美少女の願いをどうか……!」

澪「やめろって。和も困ってるだろ」

和「悪いけどつける気はないわ。じゃあ私、そろそろ生徒会に……」モグモグゴクン

律「待て和!」ガシッ

和「何?」

律「今ケーキ食べたよな?まさかタダで食って帰ろうなんてそういうつもりじゃないだろうなぁ……?」ヒヒヒ

澪「おい律!」

和「どうすればいいの?」

律「ん~?コンタクトをつけてくれれば見逃してやらんこともないんだけどなぁ~。なあ唯?」ククク

唯「そうですなぁりっちゃん」フフフ

和「それは無理な相談ね。いくら出せばいいのかしら?」

律「そうだなぁ……。けっこう高いぜ?唯、これはどこのケーキだっけ?」ククク

唯「アメリカ王室のケーキでございやす。百万フランでございやす」フフフ

澪「唯は中学から社会の勉強やり直しなさい……」

和「ムギ、これいくらなの?」

紬「貰い物が余ってるのを持ってきてるだけだからタダよ」

律「あっ!バラすなよも~!」

紬「ご、ごめん……」

律「はー……いいか和。コンタクトをつけると眼鏡よりよく見えるようになるんだ」

和「らしいわね」

律「よく見えるということはだな」

律「教科書はよりわかりやすく!」

律「ケーキはさらに美味しそうに!」

律「田井中律は殊更可愛く!」

律「そう見えるようになるってことなんだぞ!いいことずくめじゃん!」

唯「私も可愛く見えるかなぁ」

和「大丈夫。二人とも今でも十分可愛いわ」

唯「わーい!」

律「あ、そ、そう……?へへへ……」

律「っていかんいかん。こうやって人をのせるのは和のいつもの手口じゃないか!」

唯「危うく騙されるところだったよ!」

和「じゃあそろそろ行っていいかしら?」

唯「えー!いいじゃんちょっとくらいつけてくれても~!」

律「減るもんじゃないだろ~!澪の体重みたいにさ!」

澪「おい!200グラム減ったんだぞ!」

紬(え……私100グラム増えたのに……)

唯「げほっ、ごほっ!実は私、和ちゃんがコンタクトつけないと死んでしまう病で……」

和「もう行くわね」スタスタ

唯「あう……なんでそんなに嫌なの……」グスン

律「……!」ピーン

律「……和。そうか、そういう事だったんだな」

和「何?」

律「どうしてそこまで頑なに断るんだ?」

和「え?」

律「コンタクトをつけたくない特別な理由があるんだろっ!」ビシィ

和「……」

律「はっはっは!図星みたいだな!」

澪「え、そうなのか?」

和「……」コク

律「どうだ、見たか私の名推理!伊達におでこ出してるわけじゃないんだぜ!」

唯「おおー!」

紬「凄いわりっちゃん!」パチパチ

唯「そっかあ、そうだったんだね和ちゃん」

和「……うん。ちょっと恥ずかしい話だから言わないでおいたんだけど……」

紬「和ちゃんの恥ずかしい話!?」ドキドキ

澪「で、その特別な理由って何だ?」

律「あぁ、それはだな……まだ和が中学の時……」

ルールルールールルルールールルー…♪

和『タカシくん、高校に行ったら私達離れ離れになっちゃうね……』

タカシくん『ああ、そうだな』

和『私寂しい……』

タカシくん『和、渡したいものがあるんだ』スッ

和『これは?』

タカシくん『このオッシャレでハイセンスな眼鏡を俺だと思って肌身離さずつけてくれ』

和『嬉しい!』ダキッ



紬「きゃ///」

律「という秘められた過去があったのだ!!」

和「違うわ」

律「あれ?」

唯「ていうかうちの中学にタカシくんなんていなかったよ」

律「あれえ?」

澪「思いつきでもよくもまぁ……」

和「適当な事言わないでもらえるかしら」

律「すみましぇん……」

唯「でもコンタクトにしたくない理由はあるんだよね?」

律「そ、そーだ!なんでそんなにコンタクトが嫌なんだよ!?」

和「……あんまり言いたくないわ……」

律「吐け!吐いて楽になれ!これ以上親御さんを悲しませるな!」ビカーッ

和「黙秘するわ」

紬「私カツ丼買ってくる!」タタッ

澪「やめろよ律!嫌がってるだろ!」グイッ

律「ぐえっ」


唯「和ちゃん、そんなに嫌なの?」

和「うん」

律「もう一度聞く。そんなに嫌なのか?」

和「うん。嫌よ」

唯「コンタクト似合うと思うんだけどなぁ」

和「ありがとう。でもやっぱりコンタクトは……」

律「うーん、そこまで嫌がられるとやっぱり理由が気になるなぁ」

さわ子「ふふふ、その理由、私が当ててあげよっか?」

律「はーいお約束の神出鬼没教師でーす」

さわ子「私も眼鏡っ娘だから、コンタクトにしたくない気持ちはよくわかるの」

唯「……眼鏡っ『娘』……?」

さわ子「ああん?」ギロリ

唯「な、なんでもないです 」

律「で、何なんだよその理由は。勿体ぶらないで教えてよ」

さわ子「それはね……」

唯「…」

律「…」

澪「…!」ゴクリ






さわ子「怖いのよ!!」

唯律澪「え?」


さわ子「目に直接何か入れるなんて考えられない!」

さわ子「コンタクトが眼球に近づいてくるあの恐怖!あの戦慄!」

さわ子「なにがcontactよ! なにが接触よ!」

さわ子「眼鏡のほうが百倍マシ!!痛くないし怖くないし知的に見えるしあとなんかフェチっぽいし!!」

さわ子「……という事よ」

律「なんだよ、期待して損した。そんなわけないだろ」

唯「和ちゃんに限ってそれはないよ~。ね?和ちゃん」

和「……」モジモジ

律「え、うそ、マジ?」

和「……マジよ」

律「ええええ?そんな理由かよ?澪じゃあるまいし」

さわ子「目に直接ぶちこむのよ?!正気の沙汰とは思えないわ!」

和「私もそう思います」

唯「そんなに怖いかなぁ?姫子ちゃんいつも普通に入れてるけど」

和「正直立花さんが入れてるのを見るたびに背筋がぞっとするわ」

澪「確かに……私もいざ自分が入れなきゃいけないってなったら怖いかも」

さわ子「真鍋さん……いや、和ちゃん!私達は絶対眼鏡スタイルを守り抜くわよ!」

和「はい」

唯「でもさわちゃんも見たくない?和ちゃんのコンタクト姿」

さわ子「あ、何?そういう話だったの?」

和「あの……先生?」

さわ子「真鍋さん、今すぐコンタクトにしなさい」

和「え……」

律「変わり身はえー!」

唯「大丈夫だよ和ちゃん。痛くないから」

和「いや、でも……ほら、そのコンタクトは0.2の私に合ってないみたいだし……」

さわ子「いつかイメチェンする時のために私がコンタクト持ってるわ。ちょうど0.2のをね」

澪(ほんと便利な人だな……)

さわこ「さぁ、りっちゃん、唯ちゃん!」

唯律「アイアイサー」ガシッ

和「えっ、ちょ、ちょっと!」

さわ子「さぁ~……新しい自分になるのよ~」ヒッヒッヒ

和「や、やめてください!唯と律も離して!」バタバタ

唯律「ヒッヒッヒ」

澪(ごめん和。私にはもうどうする事もできない)

ガチャ

梓「こんにちはー。すいません、遅くなりまし……」

和「やめて!本当にやめて!」ジタバタ

唯「すぐに終わるよ~」ヒッヒッヒ

律「痛くしないからさ~」ヒッヒッヒ

さわ子「生まれ変わるのよ~」ケケケケ

梓「……何やってるんですか?」

澪「あ……梓」

梓「あの、ムギ先輩は……?」

ガチャ

紬「カツ丼買ってきたわ!」ハァハァ

梓「……」


唯「さぁ入れるよぉ~」スゥー…

和「唯っ!やめてっ!やめなさいっ!!」

さわ子「大人しくしなさい!あなたがケーキ食べたから私のぶんなくなっちゃったじゃない!」

梓「このカツ丼おいしいですね」モグモグ

和「いやっ!怖い怖い怖い!!」ジタバタ

澪「うわ、こうして見るとやっぱりエグいな……」ビクビク

梓「コンタクトなんて慣れですけどね」モグモグ

紬「みんな楽しそうね~」

唯「でいやぁ!」

和「いやあぁ~…………!!」









スポ


律「入った!」

唯「わぁ、やっぱり似合うね~」

梓「見た目は裸眼と変わらないじゃないですか」モグモグ

さわ子「さぁ、どうかしら真鍋さん」

和「う……」パチクリ

唯「よく見えるようになった?」

和「うーん……」

和「!!」

和「……見え……る……。うん、よく見えるわ」

唯律「おおー!」パチパチ

澪「どんな感じなんだ?」


和「今までより視界がクリアになった感じよ。細かい部分までよく見えるわ」

唯「ほほぉ~」

和「唯と律って意外とニキビあったのね」

唯律「!?」

和「山中先生もけっこうお肌荒れてたんですね」

さわ子「な!?」






紬「……カツ丼食べる?」

唯律さわ子「いえ、油ものはちょっと……」




おしまい