憂「はい、ちょっと緊急事態なので借りてきました」
澪「借りてきたって誰に!?」
憂「ああ、そこら辺からです」
澪「そこら辺!?」
憂「まあいいじゃないですか」
まあいいって・・・いいのか!?
憂「話を続けますよ?」
憂「澪さんは3種の神器って知ってますか?」
澪「3種の神器?」
憂「はい、八咫鏡(やたのかがみ)・八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)・天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)これ等は支配者の象徴を意味します」
憂「私達はそれを応用します、つまり手鏡、勾玉、剣を3種の神器に見立てこれらを定まった場所に置き一時的にここを支配し私達の『神域』とする、様はここで儀式っていったほうがいいのかな?それを行い神様を呼んでお願いし、元の世界に戻してもらうんですよ」
澪「な、なるほど・・・」
憂「すいません、少し話を戻しますね、さっき私は神様はしがらみとして人の体に跡をつくるって言いましたよね、それを律さんに
当てはめてみるとします」
澪「黒髪、眼」
憂「そう、そして澪さんが感じた縛られるような感覚」
憂「それが示す生き物、神様、律さんが願った神様の正体とは」
澪「うん・・・」
わずかな物音もしない空間で次の言葉が深夜の寂寞の空に響く
渡鴉。
澪「カラス?」
憂「はい、古来より鴉は神通力を用い慧眼の眼を持って様々な神話にも登場し、そのしっとりと濡れた様な黒色から人間
の美しい髪にも例えられていたそうです、鴉の濡れ羽色小耳に挟んだ事くらいはあるでしょう」
憂「そうした経緯により律さんの髪が鴉の影響で黒くなり、慧眼、畢竟物事を見通す眼を持った律さんに澪さんが違和感を覚え、神通力で無意識に澪さ
んの動きを縛った」
澪「それで律に変化が・・・で、でもカラスって神様なの?それに神っていうより使い魔ってイメージがあるような」
憂「イヌイットやネイティブアメリカンの創世神話では神に近い位置づけとなっているそうです、人々の為に太陽を盗んだり、
生活指導を行ったりと自然の摂理を乱してでも人の側に立つ任侠な姿として・・・様は人が神として認めればそれは神な
んです」
澪「そ、そうなn」
もはや驚く事しかできない私の様子を見て憂ちゃんが困ったような様子を見せた
その時この静かな空間に突然聞きなれた声が耳へと入る
律「おーい!!」
憂「あ、律さん!」
律「澪!憂ちゃん!」
タタタタタ
律「・・・・・・そ、それ」
澪「ん?」
律「う、うわー!!・・・・ななななその剣みたいなのは何だ?!」
私と同じ反応だ・・まあ当然の反応だよな
憂「あ・・・澪さん私まだ準備が残ってるので説明お願いします」
澪「あ、う、うん」
準備というものはあらかたできてるように見えるけどもしかして憂ちゃん説明面倒臭くて・・・逃げた?
澪「まぁいいか・・・律驚かないで聞いてくれ・・・」
・・・
律「はああああああああああああああああああああああ!?」
律「冗談だろ?冗談だよな?」
澪「信じられないのは分かるけど、どうやら冗談じゃないっぽいぞ」
律「に、にわかには信じられないけど、まあ憂ちゃんだしなあ、へぁ~・・・、すごいなあ、この世界の仕組みと言い憂ちゃんよ
くそんな事知ってるなあ」
澪「そうだな、なんでこんな事知って」
あれ?
・・・何でこんな事知ってるんだ?
そもそも何で憂ちゃんはこの世界の仕組みを知ろうと思ったんだ?知ったんだ?
憂ちゃんはこの世界の仕組みをこの眼で見足で調べ頭で考え感じた結果と言っていた、という事は
、私より先に改変した世界に気付きその眼で改変してきた世界を見て調べてきたという事になるな・・・
だけど改変した世界に人は順応し、世界が改変した事にすら気付かないはずだ
でも憂ちゃんは世界が改変している事に気付いた、だからこの世界の仕組みを知ろうと思ったし知った
じゃあなぜ憂ちゃんは世界が改変していた事実に気付いたんだ?
うーん、何か、他に何かないか?いままで会話してきた中、解ってきた中で判断材料が・・・
・・・
・・・
そうだ、あの言葉・・・
『憂ちゃんも私と同じでこの世界に飛ばされたのか?』
『飛ばされる・・・?成る程言い得て妙ですね、私も澪さんと同じですよ』
『澪さんと同じ』・・・この言葉・・・あの時はなんとなく受け取っていたけど深い意味があるんじゃないか?
私は律の影響でこの改変した世界へと入り込み、律が私を順応させなかったからおかしいと思いこの世界が改変している
事に気付けた
だったら
私より前に私と同じように憂ちゃんも誰かの影響で誰かが改変した世界へ順応せずに入り込まされていた?・・・可能性はある・・・
そうか、澪さんと同じというのは私と同じ立場、境遇という意味の同じだったんだ、だから私は今まで違和感を感じていた
でも・・・だれだ?誰が憂ちゃんを順応させずに何らかの願いを願い世界を改変させた?
憂ちゃんの近くにいる人物、平沢唯、田井中律、秋山澪、琴吹紬、中野梓、鈴木純、真鍋和この中の誰かか?
いやまだ他に候補はまだまだいる・・・
誰がこの世界より前に世界を改変していた!?
律「澪?」
澪「あ・・・いや何でもない」
本人に聞いてみるのが手っ取り早い・・・か?
澪「憂ちゃん、ちょっといい?」
憂「はい?何ですか?」
澪「憂ちゃんは何でこの世界の仕組みを知っていたんだ?」
憂「以前説明しましたよね、この眼で見足で調べ頭で考え感じた結果だと」
澪「そういう意味じゃない、なぜこの世界の仕組みに気付いたんだ?改変した世界に順応しているならこの世界の仕組みには気付かないはずだ」
憂「ああ・・・なるほどそういう意味ですか」
憂「・・・別に減るものでもないし、知りたいというのなら教えますよ」
律「何?何の話?」
澪「しっ!」
律「何か私の扱いさっきからこんなのばっかりじゃね!?」
憂「どこから話しましょうか、そうですね、あれは私が中学3年正になったくらいの時」
憂「ある日私が家に帰ると、両親がケンカしていたんです、私の両親は仲が良く普段あまりケンカしない人達だったのでその時は慌てて止め、事なきを得たんですが・・・その翌日も翌々日もケンカをしていたんです」
憂「さすがにおかしいと思いますよね、それでなぜケンカをしているのか聞いたんです、でも二人とも誤魔化して何も教えてくれなかった」
憂「それから数日立ってもケンカは終わらなかった、しかしそんなある日両親はパッタリとケンカをしなくなった、私もお姉ちゃんもそれを喜んでいたんですが、本当はそれは喜べるものではなかった」
憂「両親がケンカをしなくなってからしばらくして夜中にトイレに行きたくなってリビングに降りたら両親がこんなやり取りをしていたんです」
『唯は私が連れて行くからな』
『憂は私と一緒に住む、これでいいわよね?』
『ああ』
憂「この時の私の驚き様はなかった、もう両親の溝は埋めれない所までいってしまっていた、それは離婚という形になりお父さんがお姉ちゃんを連れて行き、お母さんが私を連れて行く、そうなっていた」
憂「真実を知った私はお姉ちゃんにそれを伝え、両親を説得にかかった、それこそ死に物狂いでね」
憂「何度も泣いて説得した、しかしそれは受け入れられなかった、そして・・・そうする内に逆に私達が説得を受けるようになってきた、私はお姉ちゃんと離れるのは絶対に嫌だし、お姉ちゃんもそうだったと思います、頑なに断り続けた」
憂「しかしその内、業を煮やした両親は暴力で私達を脅すようになってきた、あれは・・・痛かったな・・・へへ・・・」
憂「でも私はそれでもめげませんでした、しかしお姉ちゃんは殴られる私を見て、心が折れてしまった、憂が殴られるのはもう耐えられない・・・だからお父さんについていくって」
憂「私は泣いて嫌がりました、それを見てしばらく迷っていたお姉ちゃんでしたが自分の胸を強く叩くと両親の説得を諦めないと言ってくれました」
憂「そうやって平行線で月日が立っていく中その内お姉ちゃんは私が殴られるのは自分が両親に従わないから・・・自分がワガママだからだと思い始めた」
憂「もちろん私はそんなお姉ちゃんを否定し続けました・・・が状況は更に悪化する事になる・・・想いに板ばさみになったお姉ちゃんは思い詰める様になり心が壊れそうになったんです・・・」
憂「だから」
憂「お姉ちゃんは願った、家族が仲良く暮らせますようにと、アレに」
憂「びっくりしました、お姉ちゃんの部屋が騒がしいと思って行ってみたら、アレがお姉ちゃんをジっと見てお姉ちゃんの眼球に手を伸ばしていたんですから、それを見た私は直感的にそれがとんでもないような事をしようとしていると思った」
憂「まあ、後から分かったんですが、それは痕を残そうとしていたんですよね、でも当時それを知らない私は、恐怖感に煽られながらもお姉ちゃんとソレの前に飛び出し、お姉ちゃんを庇い、こう 願った 」
憂「お姉ちゃんに何かするつもりなら私が罰でも何でも全部代わりに受けますって」
憂「すると驚く事にソレは私の願いを叶えた、でも・・・」
憂「お姉ちゃんの願いと混同する事にもなった」
憂「そしてその結果、お姉ちゃんによって創られた家族が仲良く暮らせる世界に私は順応させられないままいつしか嫌いになった両親とずっと一緒に住む事によって罰を与えられた」
憂「そして例えこの先どんな改変が起ころうと私を順応させられない運命を与えた、両親と一緒に住むという罰を受け続ける為に」
澪「だ、だから律が改変した世界で前の記憶がのこったままだったのか・・・」
憂「はい、後頻繁に痛むこの眼もそれの跡ですけどね、色覚が失われてて、目薬しないと充血しちゃうんですよ」
澪「そんな・・・そんな事って・・・」
--悲しすぎるじゃないか。
澪「・・・憂ちゃん・・・助けてあげられなくてごめん・・・」
憂「いえ、同情はいりません、あの時は中学3年の時でしたし私はこれでいいと思っています、今のお姉ちゃん幸せそうですし、それになによりお姉ちゃんとずっと一緒にいられるなら・・・」
律「憂ちゃん・・・」
憂「つまりこれらの出来事が、私がこの世界の仕組みに気付き、調べようと思ったキッカケです」
『可能性を持つ事自体が可能性を殺している、受け売りですけど私もそう思う!だからそんな かもしれないなんて私は要らない、願いに頼る事は悪くはない!』
『どんな理由であれ自分が関係し発生した罰は受けなくてはならない!』
この言葉を吐いたのはそういう経緯だったからなのか・・・
澪「ごめん憂ちゃん、変な事聞いて・・・辛かったよな・・・ごべんね・・・憂ぢゃん・・・」
憂「なんで澪さんが泣くんですか?気になさらないで結構ですよ」
澪「でも・・・こうざせてくれ」
ダキッ
憂「・・・あ、ちょ」
律「ひっく、私もいるぞー!」
ダキッ
憂「もう・・・」
律「あっだかあっだかー!」
澪「あっだかあっだかー!」
憂「・・・ありがとう・・・ございます・・・ぐす・・・」
憂「あ、あれ?おかじいな・・・」
憂「自分ではあれがらづよぐなったづもりな”のに、なんで?」ポロポロ
澪「憂ぢゃん・・・」
憂「ぢがう!私・・・私は・・・」
律「泣きだい時はないだ方が・・・ひっく・・・いいんだよ・・・」
憂「!」
憂「うっ・・・うっ・・・」
憂「ふぇ~ん・・・わだし、強ぐならなきゃっで・・・ひっく」
憂「子供はよわい”がら・・・むずがしい言葉一杯覚えで使っで・・・少しでも大人みだいにかっごだけでも強ぐならなきゃっで・・」
憂「お姉ぢゃんにもうめいわぐ・・・かけないよう”にっで・・・」
憂「私、わだしは・・・」
律澪「憂ぢゃ~ん!」
憂「ひっく・・・ずず・・・ひっく・・・」
澪「そっか、憂ちゃんは辛くても唯が改変した世界で生きていく事を選んだんだね」
憂「はい!お姉ちゃんと一緒ですから~えへへ~!あっ、そこまず右手で水筒持って水で左手清めて下さいね!」
澪「おっと、分かった」
律「確かに唯が改変する前の世界、改変後の世界、どちらがいいか分からないもんな」
憂「私間違ってるんですかね・・・」
澪「分からない・・・けど・・・さっき憂ちゃんは涙を流していた、涙が出るという事はそれほど真剣に考えた結果って事だろ?
、だったらそれで、いいんじゃないかな?どっちが合ってるか解らない時は憂ちゃんが決める、それでいいと思うよ?」
憂「むぅ・・・それ私の真似ですね?」
澪「バレたか!」
憂「もぅ・・・澪さんったら!」
律「ふふ」
憂「何笑ってるんですか!めっですよ!次同じ要領で右手を清めてその後口の中も清めてくださいねっ!」
律澪「うん!」
憂「うん・・・禊は終わりましたね」
律「よしじゃあそろそろ私が改変する前の世界へ戻るか澪!」
澪「ああ、あ、でも私達が世界を元に戻す事で、唯が改変する前の世界に戻ったりしないよね?」
憂「大丈夫です!改変は重なっていくものですから、今回はその重なっている中の律さんの願いだけを消すだけです、他の
人の願いは消えません!」
憂「後、願いが消えたら、ちゃんと神様がつけた痕も消えますから律さん心配しないでくださいね♪」
律「それはありがたい!」
澪「そっか、良かった」
律「じゃあ早速その儀式とやらをはじめよう」
憂「はーい!あと、そうだ、澪さんは儀式中ずっと眼閉じていた方がいいかもしれません」
澪「何で?」
憂「えっとそのあんまり見慣れない物が出てくるので・・・」
ああ、そっか、そんなの見たら私気絶しちゃうかもしれないな
澪「分かった、そうするよ」
憂「じゃあ始めます、ちょっと待っててくださいね」
憂「えーっと・・・」
澪「律」
律「んあ?」
澪「好きだよ」
律「なな、なんだいきなり・・・//」
澪「何でも、かな!」
律「へ、変なやつだな!」
律「・・・・・・」
律「・・・なぁ澪、元の世界に戻ったらしっかり私を叱ってやってくれよな?」
澪「ああ、約束するよ」
律「そっか、ありがとう」
律「澪大好きだよ」
澪「え・・・//」
憂「こーら!神の御前ですよ、私語は禁止ですっ!もー!」
律「おっと怒られちゃったな」
最終更新:2011年01月19日 03:24