律「部長やめる!」

突然部室の中に声を荒げながらも震えた律の声が響いた

澪「はあ?」

梓「律先輩今何て・・・?」

律「部長やめる!」

紬「・・・えっとりっちゃんまた冗談だよね?」

律「冗談じゃない・・・部活も、もう出ない、帰るよ」

梓「え・・・?」

スッ--・・・

澪「律!ちょ、ちょっと待てよ」

律「・・・・・・」

ガチャ

唯「おいーっす、ごめんね、遅れちゃった」

律「唯・・・」

唯「あれ、りっちゃん鞄もってどこ行くの?」

律「どこでもいいだろ、そこどいてくれよ」

唯「え?う、うん」

澪「待てって、律、どういう事だよ!」

律に理由を問いただそうとする、その時だった、口を開いた瞬間体に違和感を覚え、自分の体が自分の物ではない感覚に陥り思わず
しゃがみ込んでしまった

澪「ッ!」

唯「?」

律「澪?」

澪「--ッ!!」

律がこちらへと向き直る、すると自分の体が自分の物へ戻っていく感覚を取り戻し息を吐く

澪「・・・ぁ・・・いや・・・」

・・・何だ今の--。

律「・・・じゃあもう行くから・・・」

扉が閉まっていく中、律のか細い足と遠ざかっていく足元だけが私の中に響いていた

バタン

澪紬梓「律(りっちゃん(律先輩!」

唯「・・・・・・」

唯「えっとこれはどういう事?」

梓「唯先輩、律先輩がぁ!律先輩がぁ!!」

唯「あずにゃん落ち着いて、それだけじゃよく分からないよ、りっちゃんがどうしたの?」

梓「いきなり部長やめるって、もう私どうしたらいいか」

唯「えー?また?いつぞやのドラムの時みたいに冗談でしょ?」

澪「いや、あいつのあの様子尋常じゃなかった・・・」

そうだ、あいつのあんな様子滅多にみるもんじゃない・・・

唯「まじ?」

澪「うん」

唯「・・・・・・」

唯「ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええ!?」

紬「うぅ・・・りっちゃん・・・何で?りっちゃん・・・ひっく」

唯「で、で電話!電話しよう」

澪「それが・・・今してるんだけど出てくれないんだ・・・」

梓「律先輩・・・どうして?私がいつも生意気な事いってるからですか?うぅ・・・」

澪「ちょっと待て、梓考えすぎだ」

唯「そうだよ、あずにゃん考えすぎだよ、何か他に事情があるんだよ、ね?だから自分を責めないの」

ダキッ

梓「うぅぅ・・・唯しぇんぱい・・・ふぇ~ん・・・」

澪「・・・私ちょっと律の家行って来るよ、事情を聞いてくる」

唯「じゃあみんなで行こうよ」

澪「ありがとう、でも全員でいくと話せる物も話せないと思うんだ、気恥ずかしさっていうかそういうのあるだろ?だから私一人で行って来るよ」

紬「で、でも!」

澪「みんなが律を心配する気持ちよく分かるよ、ありがとう、でも今は律の為だと思ってその気持ちは待つ事に使ってくれないか?」

唯紬梓「・・・・・・」

唯「・・・わかった」

紬「唯ちゃん!?」

唯「まあまあ、むぎちゃん、ここは付き合いの長い澪ちゃんにまかせましょうぜ、ずっと一緒にいた澪ちゃんには私達に分からないものが分かるかもしれない・・・悔しいけどね」

それを聞いたむぎは少し考える素振りを見せると自分に言い聞かすように頷いた後こう言った

紬「・・・・・・わかったわ」

澪「むぎありがとう、じゃあ行って来るよ」

一体どうしちゃったんだよ律・・・

バタン

紬「心配だわ・・・」

唯「・・・・・・」

・・・

ピンポーン

澪「りつー?」

澪「出ないな、帰ってないのか?」

うーん、どうしよう、寒いけど少しまってようかな?
壁によりかかり、両手を口の前に持っていき白い吐息を包む

そういえば、律を呼び止めた時体に違和感が走った、あれは一体何だったんだろう?
金縛り?みたいな・・・疲れてるのかな

・・・20分後・・・

さすがに凍るぞッ!まだ帰ってこないのか?

律母「あら、澪ちゃん」

澪「え?あ!律のマ・・・お母さん!」

律母「ふふふ、変わらないわね、こんな所でどうしたのかしら?風邪ひいちゃうわよ?」

澪「いや、はは・・・・律に用事があるんですけど、まだ家に戻ってきてないみたいで」

律母「おかしいわね、さっき律に電話かけた時、家にいるって言ってたわよ」

澪「え?」

あいつ、居留守か!・・・・・・私が来てるのはカメラで見えてるはずだしつまりそんなに話したくない事なのか?うぅ、ちょっとショックだな・・・

律母「全く、澪ちゃん待たせるなんてあいつもいい度胸してるわね、ちょっと呼んでくるわ」

澪「あっ!ちょ」

澪「行っちゃった・・・」

律母「澪ちゃん」

澪「あ、どうでした?」

律母「それが律ねえ、体調悪いから、今は誰とも会いたくないって言ってるの」

澪「そうですか・・・」

どうしよう、無理やりあがるわけにもいかないしな

澪「わかりました、そんなに急いでる用事でもないので今日は帰ります、律にお大事にって伝えてもらってもいいですか?」

律母「ええ、ごめんなさいね」

バタン

澪「はぁ・・・唯とムギに啖呵きっておいてこの様か」

澪「帰ろう・・・」

・・・

澪「ただいまー!」

澪母「おかえりなさい、澪ちゃん」

澪「ママ!」

ダキッ

澪母「ん?もう澪ちゃんったらどうしたの?」

澪「何でもない、なんとなく・・・」

私は小さい頃から落ち込むとこうやって甘えてしまう、律と知り合ってからは律にそこはかとなく甘えていたけど律関係、もしくは律がいない時はこうやってママに甘えてしまうのだった

澪母「りっちゃんと何かあったの?」

澪「え、ちち、違う!」

ママは全てを見透かすような眼で苦笑しながら私を見つめてくる、やっぱりばれてるみたいだ

澪母「ふふ、そう、早く仲直りするのよ」

澪「だから違うってば!」

澪母「はいはい、じゃあご飯の用意するから、またね」

澪「全く・・・」

トントントン

律何で部長やめる何て言ったんだろう、軽音部もこないなんて、私そんなの絶対に嫌だ
それにみんなを引き込んでおいて、今更辞めるなんて無責任すぎる、そうだ、そんなの許されるはずがない、明日ガツンと言ってやろう

バタン

と、その前に返ってこないと思うけど律にメール送っておこうかな

澪「ん?唯とムギと梓からメールきてる」

受信ボックスを開く、内容はどれも似通った物、それぞれの想いを彷彿とさせ律を心配する文がズラリと並んでいた

澪「あいつみんなにこんな心配させてどういうつもりだ」

澪「色々あって律には会えなかった、ごめんっと・・・ふう、後は律にメール送ってと」

澪母「澪ちゃーん、お風呂はいっちゃいなさーい」

澪「はーい、さっさと入っちゃうか」

ここまでは普通だった、明日事情をよく聞いて解決する、それで・・・それで終わるはずだった


・・・翌日学校・・・

澪「おはよう」

唯紬「澪ちゃんおはよう!」

澪「律は?」

唯「へ?りっちゃん?まだ来てないみたいだよ」

紬「今日は一緒に来てないの?いつも一緒なのに」

澪「べ、別にいつも一緒ってわけじゃないよ、あいつ電話でなくて先に来たんだ」

律「おいーっす」

唯「あ!来たみたいだね、おーい、りっちゃん!」

律「おー唯どしたー?」

唯「愛しの姫君が王子様に用がおありのようですよー」

律「おー?澪殿でございますな?なーんだよ」

ちがうと言いながら律の声がするほうへと振り向く、だがそれを見た瞬間それが誰なのか一瞬分からなかった
なぜなら
それの髪色が真っ黒へと染まっていたから。

澪「あ・・・お前髪染直したのか?イメチェン?」

律「染める?何いってんだ、私は昔からこの色だろ」

澪「はあ??嘘つくなよ」

律「誰が?」

澪「律に決まってるだろ!」

紬「どうしたの?」

律「いや、なんか澪がさ、私が髪染めたかって訳わかんない事聞いて来るんだよ」

唯「えー?澪ちゃん何言ってるの、1年の時からりっちゃんはずっとこうだったじゃん」

澪「え?」

なんだ、みんな何いってるんだ?律はずっと茶髪だっただろ?それに昨日あんな事があったのにみんなのこの様子は?

澪「分かった、またみんなで私を担ごうとしてるんだろ?その手にはのらないからな」

唯律紬「?」

律「お前大丈夫か?」

唯「澪ちゃんこそ私達を担ごうとしてるんでしょ~?その手にはのらないと言わせてもらうよ!」

紬「澪ちゃんがそんな冗談いうなんて珍しいね」

澪「皆いい加減に」

律「はいはい、面白い面白い」

唯「同じネタは重厚な笑いをとれないのですよ澪ちゃん」

なんだ・・・皆のこの物言い・・・冗談・・・じゃない?

澪「律本気か?」

律「本気って何だよ、あんまりしつこいのは好きじゃないよ」

澪「・・・・・・」

いや、在り得ない、律はこうやっていつも私をからかってきた、大方昨日の事が気まずくてふざけて
うやむやにして、なかった事にしようとしてるんだろう

唯とむぎが普通に振舞っているのは律と連絡を取り合って協力しているとみていい、この二人は暗い雰囲気を拒むからな、丸く収まればそれで良しといった所か

澪「おい律」

律「何ー?」

でも私は言っていい事と言っちゃいけない事を区別させる必要があると思う、あんな形で部長を辞めるなんて
みんなの信頼から逃げる行為なんて口にしちゃいけない

澪「昨日の部長を辞めるって件だけどな」

律「部長やめるの?」

澪「やめるの?ってお前がだな」

律「私がやめる?軽音部を?」

澪「え?」

律「え?私は軽音部やめねーよ」

澪「いやいやいやいやいや」

律「いやいやいやいやいやいや」

澪「ふざけてるのか?」

律「さっきからふざけてるのはお前だろ」

ちょっと待て、話しが噛み合っていない

律「大体軽音部の部長って澪じゃないか、お、お前部長辞めるのか?」




澪「はい?」



律「おい唯むぎ!大変だ!澪が部長やめるっていってる!」

唯紬「え?」

唯「部長やめるって何で!?まさか軽音部やめちゃうの!?澪ちゃん!」

紬「澪ちゃん・・・?嘘・・・よね?」

澪「え?」

紬「私そんなのやだ・・・澪ちゃん・・・うぅ・・・」

な、泣きそう!?

澪「いや、辞めない!辞めないから!」

紬「ほ、ほんとう?」

澪「本当本当」

紬「グス・・・良かったわぁ、そんな事になったら私学校辞めちゃってたかもしれないもの・・・」

律「おいおい」

紬「へへ、もしそうなったらそれくらいショックって事なの、でも澪ちゃんたちの悪い冗談はやめてほしいな?」

澪「はい、ごめんなさい・・・」

ガラッ

さわ子「ホームルーム始めるわよー!」

唯律紬「はーい」

ついあんな事言っちゃった、でもあのむぎの様子演技をしている様にはみえなかった、これは一体どういう事だ?

澪「席つかないと・・・」

そうだ!

・・・

澪「あのーさわ子先生」

さわ子「あら澪ちゃんどうしたのかしら?」

澪「私って軽音部の部長じゃないですよね?」

さわ子「月並みね、そういうのは唯ちゃんとりっちゃんで間に合ってるわよ」

澪「え?」

さわ子「ん?」

この反応・・・

澪「いえ、何でも・・・何でもありません」

さわ子「変な澪ちゃん、あなたが軽音部を復活させたんでしょ?」

澪「えええ!?」

さわ子「?」

澪「ちょっとその話詳しく!!隅から隅まで教えてください!」

さわ子「ええ、まあいいけど」

・・・部活時間・・・

梓「澪先輩暗い顔してどうしたんですか?」

澪「いや、はは・・・」

律「部長しっかりー!」

あれから分かった事
それは律が軽音部を創設した経緯が全て私がやった事になっている、軽音部に律を誘い、むぎを誘い、唯を引き入れる
やり方は違えど、結果的にはここに同じメンバーが集まり私が部長で、そして梓が入部した

なんだこれ・・・みんな私が部長で当然みたいな雰囲気だし、昨日の事なんてなかったように振舞うし

澪「記憶?世界が歪んでる?なんだこれまるで世界が変わってしまったような・・・」

梓「唯先輩、澪先輩どうしちゃったんですか?」

唯「さぁ?何か朝からおかしいんだよ」

梓「そうですか・・・澪先輩今日体調悪いとかだったら部活お休みしますか?」

澪「考えれば考える程訳分かんない、悪い夢にでも引っ張られてるのか私は」

梓「みーおーせーんぱーい?」

澪「へ、あ?練習!?よ、よーしやるかー!」

なぜか何ともいえなそうな顔で私を見つめている梓、やめて、そんな不審者をみるような顔で見ないでくれ

澪「ほらみんな用意用意!」

唯律「えー」

言うと思った、よく分かんないけど今は私は部長なんだ、いつもみたいに甘やかしてやらないぞ

澪「またお前らは!部長命令だ、早く用意しろ!」

唯「はぁ~い」

律「ぶーぶーぶー!」

紬「準備完了であります!」


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