憂「いくよおっ、お姉ちゃん」

 憂が軽く膝を曲げました。

 私は目を閉じ、舌を出し、憂のおしっこを受け止めるために顔を上げました。

 背筋がぞくぞくします。今か今かと、舌が震えます。

 お風呂場の空気はとても寒いのに、汗ばむような感じです。

憂「はっ、うう……おねえちゃんんっ!!」

 憂がうわずった声で私を呼んだ瞬間、おでこに熱いものがかかりました。

 肩にしぶきを飛ばしながら、私の顔に広がり、滑りおりていきます。

唯「あ、はああぁ……」

 いつも浴びているシャワーと同じくらいの温度。

 肌を流れる感覚も同じなのに。

 どうして憂のおしっこの匂いがしているだけで、舌に味が伝わるだけで、

 こんなにも気持ちよくなってしまうのでしょう。

唯「ういぃ……ふ、」

 おしっこのかかる位置がだんだん上がってきて、髪の中に入ってきました。

 ふわふわ浮いていた髪が、おしっこにべっとり濡れていきます。

 憂のおしっこが私の頭を包み込んで、撫でられているような感覚です。

 体を、敏感な部分も含めて、いくつもの指先が伝っていくように、おしっこが流れ落ちます。

唯「んん、いい、いいよぉ……」

 あたたかくて、まずいのに美味しくて、くさくてもいい匂いで、

 こうして私をやさしく包み込んでくれる。

 憂は、おしっこまで憂でした。

 ふと、股の間が熱くなってきます。

 膝の裏までじんわりと熱がやってきたとき、ようやく自分が失禁していることに気付きました。

 ごめんね、憂。かけてあげるって言ったのに。

 わたし、もらしちゃった。

 そう言おうと思っても、口を開ければおしっこが入りこんできて、

 私はそれを味わい飲みこむために喋ることができなくなります。

 仕方ないですね。

憂「ふ、ふ……」

 おしっこが弱まって、止まります。

 体中がおしっこにまみれていました。

憂「はぁっ……は、はあ……」

 目を開けた瞬間、憂が崩れ落ちてきました。

 ぼーっとしてはいましたが、腕を広げてどうにか抱きとめます。

憂「あ、おねえちゃ……ん、んん……」

唯「だいじょーぶ、憂?」

憂「……えへへ」

 憂がほっぺたを、私の頭にぐしぐしとこすりつけます。

 なんだか、すごく上機嫌みたいです。

憂「あむー」

 すこし降りて来たかと思えば、私の前髪を口に入れてもしゃもしゃ噛み始めました。

 私としても気持ちが分からないほどではないですが、憂の行動はなかなか変態チックです。

唯「ん、ういー……」

 こんなエッチな憂に、おしっこをもらしてしまったことを言ったらどうなるのでしょう。

 私はヒヤヒヤしながら脇腹をつついて、憂の意識をこちらに向けます。

憂「……ん、らに、おねえひゃん」

 私の髪を口から出して、憂はろれつの回らない声で言います。

 髪が舌に絡んでしまったのでしょうか、右手をしきりに口もとにやっています。

 憂が気を取られている今がチャンスです。

唯「……あのね、いいにくいんだけど」

唯「おしっこ……もう、もれちゃった」

憂「……」

唯「……ごめんね?」

 憂は黙って、おしっこまみれの私をぎゅっと抱きしめました。

 怒られるかなあ、と内心どきどきします。

憂「……いいよ」

 小さく憂は言いました。

 ああ、やっぱり怒っています。

憂「おしっこぐらい、毎日出るもん……」

唯「……ほんとにごめんね」

憂「……」

 憂はやっと私の目線の高さまで降りてきました。

 頬を伝うのは、汗かおしっこか。

憂「お姉ちゃん」

唯「はい」

憂「明日……おしっこ禁止ね」

唯「うぐ……はいぃ」

 正直つらいですが、自分勝手におしっこをした罰でしょう。

 憂のおしっこが私のために出されるように、

 私のおしっこも極力憂のために出すべきなのです。

 それなのに、憂にかけてあげると言ったあげく勝手におもらしです。

 トイレのしつけぐらいに思ったほうがいいかもしれません。

 それに、明日と言っても一日中ではないでしょうし、

 たくさん溜めたおしっこを憂に飲んでもらえると思えば苦にはならないと思います。

憂「ん、よしよし。それじゃ、そろそろ流そっか」

唯「えっ、もう? もっとこのままでいたいよ」

憂「めっ。かぶれちゃうから」

 私はもうしばらく憂のおしっこに包まれていたかったのですが、

 憂は厳しく言って私から離れました。

 確かに、憂と抱き合ってくっついていた部分は、

 すこしピリピリした感覚を与えるようになっていました。

 そろそろ流さないと、お肌が荒れてしまうかもしれません。

 憂はきゅっきゅっと蛇口をひねってシャワーを出しました。

 頭からお湯をかけられます。

 一気におしっこの匂いが薄まって、夢から覚めるようです。

 洗われる野良犬の気持ちでした。

 体についていたおしっこも流れ落ちていきます。

憂「んーしょ……」

 憂の指が髪をすいて、おしっこをすすいでいきます。

 シャンプーをとって、憂が私の髪を泡立て始めます。

唯「……」

 おしっこをかけてもらうのは気持ちいいし、贅沢でいいのですが、

 後から思い直すとやっぱりもったいない気がします。

 結局、こうして大半は流れてしまうのですから。

 それに、我慢してたくさん出してもらっても、飲むのが大変であまり味を楽しめません。

 これからは頻繁に少量のおしっこを飲ませてもらうようにするのがベストかもしれません。

 あとで憂と相談しましょう。

憂「かゆいところはありませんかー」

唯「だいじょうぶでーす。憂も平気?」

憂「うん、私もいちおう流しておいたから」

唯「そかそか……」


――――

 おたがいの体をしっかり洗って、かぶれないようにした後、

 一緒にバスタブにつかります。

 後ろから憂を抱きしめながら、ゆっくり体を温めます。

唯「……ういー、まだ怒ってる?」

憂「ん? ……おこってないよっ」

 憂がわざとらしく口を尖らせました。

唯「怒ってるの忘れてたでしょ、いま」

 にやけてしまいながら、ぎゅうぎゅうと憂を抱く手に力を込めました。

憂「むーっ。くるしい!」

唯「えへへ、ごめんごめん」

 まだ少しだけ怒っているみたいです。

 憂にしては怒りが長引いていますが、その理由が

 私のおしっこを浴びれなかったからだということを思うと嬉しくなってしまいます。


唯「ういー、またおしっこ飲ませてね」

 憂のおなかをぷにぷに触りながら、耳もとで言います。

憂「んー……今さらだけど、体に悪くないかな?」

唯「……ほんとに今さら。大丈夫だよ、昨日あれだけ飲んだのに、今日は私調子いいくらいだもん」

 調子がいいというのはちょっと強がりですが、実際私の体調に悪影響はなさそうです。

唯「憂だって、今日2回も最大我慢のおしっこ飲んでるんだよ?」

憂「ん、そういえば……体は何ともないや」

唯「もともと体の中にあるものだもん、飲んで体が悪くなるはずないよ」

憂「そんな理屈かなあ」

唯「……」

 不安げに言う憂の首筋に、くちびるを這わせます。

唯「いいじゃん……憂はさ、もしおしっこを飲むのが体に悪かったとしても」

唯「お姉ちゃんのおしっこ飲まないで、がまんできるの?」

憂「……できません」

 素直でいい子です。

 よしよし、と頭を撫でてあげました。

唯「私も憂のおしっこ飲めないなんてイヤだから……細かいことを気にするのはやめよう?」

憂「そうだね。ごめん……」

 本当は細かいことなどではないのですが、

 それは憂がいちいち気に病むようなことではありません。

唯「……ふーっ」

憂「あったかいねぇ」

唯「ん。憂のおしっこのほうがあったかいよ」

憂「……お姉ちゃんのおしっこはもっとあったかいんだろうなあ」

唯「……ごめんなさい」

 おしっこのことで怒っている憂はかわいいけれど、

 そろそろ機嫌を直してほしいです。

唯「まだ怒ってる? 憂」

憂「……怒ってる」

唯「お風呂上がったらいっぱいお水飲んで、おしっこしてあげるから」

憂「ほんとに!?」

唯「……うん、ほんとに」

 簡単に釣れました。

憂「やった。えへへ、ありがとお姉ちゃんっ!」

 機嫌が悪いふりをしていたのは、本当におしっこを浴びたい一心だったみたいです。

 すごく楽しみにしていただろうに、憂にはちょっと悪いことをしてしまったかもしれません。

唯「……ごめんね、憂におしっこかけてもらうの、すごく気持ちよかったから」

唯「ぼーっとして、おしっこ出ちゃった」

憂「ううん、良いよ。私も気持ちよくなってたし……」

唯「ね、倒れてきたもんね」

 憂と話していると、だんだんのぼせるような感じになってきました。

 少し長い時間つかりすぎたかもしれません。

唯「そろそろあがろっか」

憂「そうだね。ちょっとのぼせちゃった」

 ぬるめのシャワーを浴びてから、お風呂場を出ます。

 大きなバスタオルで憂を抱きしめながらもみくちゃにしてあげました。

唯「じゃあ私、お水飲んでくるよ」

憂「うん、飲みすぎないでね?」

 髪を乾かす憂の後ろを通り、私はキッチンに向かいます。

 ドライヤーの風は熱くカラッと乾いて、気持ちのいいものでした。

唯「うい、今日は飲むだけ? 髪乾かしてるってことは」

憂「そだね。いまからまた体洗い直すのは大変だし」

 えへ、と笑った憂に手を振って、脱衣所をあとにします。

唯「ふぅー」

 戸棚からグラスをとり、水道から水を出します。

 よく磨かれたシンクを打つ水の音。

唯「すぅー……ふぅっ」

 私は深呼吸をしてから、グラスに水を注いでいきます。

 おしっこを口の中に出されるような音がします。

 グラスを持つ右手に、なまぬるい水の温度が伝わります。

唯「……」

 それはひどく不快な温度の水でした。

 憂のおしっこのようにあったかいわけではなく、

 りんごジュースのように冷たいわけでもありません。

 ですが、私はグラスを口につけ、

 ただ憂のために、

 そのなまぬるさを一気に飲み干しました。


  おしまい






最終更新:2011年01月17日 02:48