でも、これからもおしっこの問題を解決しようとしたら。

 それは、案外あっさりと解決してしまうのかもしれません。

 ボンドで全身くっつけたような私たちは、すでに私の肉をはぎながら剥がれ始めています。

 憂がおしっこの問題を治そうとするのを、私の立場では止めることができません。

 それなら、憂をつなぎとめるために私に何ができるのでしょう。

唯「……言うしかないかな」

 正直、自覚はしていました。

 昔から何度も見ている夢と、その中で飲む憂のおしっこ。

 なぜ夢を見るのか。なぜおしっこをおいしいと思うのか。

 考えてみれば、おぼろげでも答えは見えるような気がします。

 でも、ぼやけているうちはごまかせました。

 けれど、さっき憂のおしっこを飲んだ、その感想。

 まずいけどおいしいあの味は、現実すらも夢のように変えてしまう私の気持ちのせいです。


 だって、そんな。

 毎日キスをしていたら、情もうつってしまいます。

 まずいおしっこだって、飲みたいと思ってしまいます。

 本当に飲んでしまっても、おいしく思えてしまいます。

 おしっこがおいしく感じる。

 そんなの、その人のことが好きじゃなかったらありえません。

 はっきりと、おぼろをかける霧が去り、私の気持ちが見えました。

唯「わたし……憂のこと、好きなんだね」

 壁にかかったシャワーノズルを掴みます。

 手掛かりがなければ、立っていられそうにありません。

唯「あいしてるんだ……」

 ついに私は、認めてしまいました。

 いままでおしっこにすげかえていたこの愛は、

 やっぱりというか、憂に向けられていた愛情だったのです。

唯「……」

 きゅ、とシャワーを止めました。

 椅子にお尻を置き、ぼんやりと天井を見上げます。

 蒸発したお湯が結露して、たくさん張りついています。

 背中の方で、水道がずっと流れている音がします。

 ぐちゃぐちゃと水を揉む音もしています。

 憂が、おしっこのかかった私の服を洗濯してくれているのでしょう。

 ほんの1枚で洗濯機を回すのは水道代のむだなんだと思います。

憂『お姉ちゃん?』

 シャワーが止まったのに気付いたらしく、憂が声をかけてきます。

憂『あがんないの?』

唯「……ほら、裸だしさ」

 ふだんは憂に言われることを、私が言います。

憂『そう? わたし、外に出てようか? 風邪ひいちゃうといけないし』

唯「いいよ。洗濯してて」

 すこし語気を強めて、憂に言いました。

憂『う、うん。わかったけど……ごめん、急ぐね』

唯「ていねいにやってよー」

憂『丁寧にもできるもんっ』

 扉の向こうで、憂はちょっと誇らしげです。

 私は目を閉じ、憂が洗濯する音に耳を傾けます。

 憂が、おしっこで汚れた服を一生懸命握っている音。

唯「……」

 胸の奥がうずいてきます。

 私はほんとうに、憂と、憂のおしっこと、

 憂におしっこの世話をされるのが大好きみたいです。

 もっと、この音を聴いていたい。

憂『う、ん……よしっ』

 やがて満足そうに憂が言います。

憂『じゃあお姉ちゃん、私ほしてくるから、あがっていいよ』

唯「うん。ありがとね」

 至福の時間も終わりです。

 風邪をひいてしまいかねないので、

 私は憂が去った後、さっさと体を拭いて服を着直しました。

 もうおしっこの臭いはどこにもありません。

 口もゆすいでしまいました。

唯「……さて、と」

 憂に告白をすることはもう決めました。

 あとは、いつやるかが問題です。

 いまは少なくとも、おしっこを飲んだという最悪の印象のはずですから、

 しばらく機会を待つべきだと思います。

唯「かといって、時間もないよね……」

 狙うべきタイミングは、憂がぼーっと私のことを考えているとき。

 つまり、トイレの中でキスするときや、

 さっきのように憂を感じさせて、えっちな気持ちに流されそうなときです。

唯「……次の憂のトイレを待たないとね」

 次に憂がおしっこをするのは夕方ぐらいでしょう。

 中学と高校で離れた時、憂は夕方までおしっこを我慢できるようにならなければなりませんでした。

 その習慣が今も残って、おしっこの時間ともいえるものが憂の体にはできあがっているみたいです。

 おそらく、あんなことがあった後では、

 憂もひとりでおしっこをするトレーニングを続けようとは言わないはずです。

 夕方の自然なトイレまで待つでしょう。

 ドライヤーで髪を乾かし終えて、私は部屋に戻ることにしました。

 どんな言葉で告白するか考えながら、お昼ごはんを待とうと思います。


――――

 ご飯のあとは、マンガを読んでだらだらと過ごしていました。

 結局告白のせりふは思い浮かばず、マンガを参考にしようと思ったのですが、

 どれもなんだかクサすぎるような気がしました。

 ぼーっとマンガを1巻から最終巻まで読んだところで、ドアがノックされます。

 急いだリズムで、とととん、と。

憂「お姉ちゃん……いい?」

唯「うい? いいよ、どうしたの?」

 そう答えましたが、憂は部屋に入ってきません。

 その代わり、上擦った声でこう言いました。

憂「と、といれ……!」

 私は慌ててベッドから飛び降ります。

 思わず何もないところでつまずきながら、走ってドアを開けました。


 涙目で顔を真っ赤にした憂が、おまたを押さえて立っています。

 息を弾ませる身体から熱が発せられているのが、触れないでもわかりました。

唯「ほら、早くいくよ」

憂「ご、ごめんね……」

 ふらついている憂に肩を貸し、トイレに運び込んで座らせます。

憂「んしょ」

 するっ、と憂がズボンとパンツをいっぺんに脱ぎます。

 その瞬間、強い匂いが私の鼻まで昇ってきました。

 おぼえのある匂いです。

唯「……うーいー?」

 私は憂の顔に近付き、にやけて歯を見せました。

 対照に憂は、恥ずかしそうに目を泳がせます。

憂「えっと、ごめんね……もしかしたらひとりでできるかもって思ったんだけど」

唯「だめじゃん、私に黙ってそんなの」

憂「メールしたもん。呼んだら来てねっていうのと、おしっこでないから来てっていう」

唯「……そうだっけ?」

 そういえば1通目のメールには微妙に覚えがある気がします。

唯「マンガがちょうど面白いところでさ」

憂「もうっ」

 憂はぷうっと頬をふくらませます。

唯「それじゃあ……けっきょく、おしっこは出なかったんだ」

憂「うん……」

 喜ばしいことです。

 まだ私が憂に必要とされているということでしょう。

唯「とにかく、いつも通り出しちゃおうか」

憂「うん。おねがいお姉ちゃん……ん」

唯「……ちゅ」

 ほんのりとくちづけをしてから、また離して口を開きます。

唯「うい、しーしー」

憂「しーしー……」

 薄く息をもらした憂のくちびるを塞ぎます。

憂「んんっ……」

 そして、憂がぴくりと震えて、

憂「っ……ん、くっ?」

 何も聞こえませんでした。

 ちゅっとくちびるが離れ、憂が不安げに肩をゆすりました。

唯「……出ないの?」

 まさかと思いつつ、訊いてみます。

憂「……」

 憂は小さく頷いて、おそれをなしたような表情で私を見ています。

 私も内臓が冷えていくのを感じました。

憂「ど、どうしよ、出ないよ……おしっこ」

唯「おお落ち着いてうい、きっと……もう一回やってみよ!」

憂「う、うん。しーしー、しーしー……」

唯「しーしーだよ、憂」

 焦った口調で言ってから、キスをします。

 やっぱり何も聞こえません。

憂「ぷぁっ……やっぱり出ないぃ」

 どうすればいいのでしょう。

 憂が自由におしっこできるようになるのも寂しいですが、

 まったくおしっこできないのは大問題です。

 キス以外でどうやって、憂におしっこさせられるでしょうか。

唯「……そうだ」

 その方法なら、今日見つけたばかりではないですか。


 私は床に膝をついて、憂のあそこまで顔を下げました。

憂「あ、ちょっと、お姉ちゃん?」

唯「ちょっと試すだけだから、憂……いいよね?」

憂「んん……」

 憂が頷きました。

 私は舌をたっぷり唾で濡らすと、おしっこの穴をつつきます。

憂「はっ、はっ……」

 憂がぴくりと震えますが、まだおしっこは出ないようです。

 そういえば、と私は二本指を立てました。

唯「ん」

 指を口に突っ込んで唾をつけてから、あそこの穴にあてがいます。

 さっきまで憂が自分でしていたおかげで、少し潤滑液が残っていました。

憂「きゃ、ふうぅぅん」

 トイレの蓋が、憂の起こす地震でガタガタといっています。

唯「うい……んちゅ」

 指を上向きに曲げて、ぐりぐりと押します。

 あそこにキスをして、おしっこの穴に当てた舌を

 陸に上がった魚が跳ねるみたいに上下に激しく動かします。

憂「はあぁっ、かっ、くひぃっ!! あ、ひいうっ!」

 与えているこちらが興奮してしまうほどのいやらしさで憂がよがります。

 すこしそれを続けますが、どうしてかおしっこは出てきません。

 すっかりこれでおしっこが出ると思っていた私は、どんどん焦ります。

唯「ん、ふっ、ふっ……うい、おしっこ出して……」

憂「んあああぁっ! く、んんん……で、ないいぃ」

 あきらめずにおしっこの穴を舐め続けて、指で尿道を刺激し続けます。

唯「ほら憂、しーしー! べろ、んっちゅ……」

憂「し、しーし……んっ! つ……かはっ!! はああぁう!!」

 ぷしっ、と舌に振動が伝わりました。

憂「あああぁぁっ……はあああ……」

 あそこが指をきゅううっとしめつけてきます。

 口の中におしっこの味が、舌への刺激とともになだれこんできます。

唯「んっ、ふぃ……く、くっ」

 また私はそれを、喉を鳴らして飲みほしていきます。

 待望のおしっこは、やっぱり私の苦手なしょっぱい味でありながら、

 大好きな憂の味でした。

 口の中に注がれるあたたかな液体を舌で叩いたりしながら、

 しあわせいっぱいな気持ちで飲んでいきます。

 憂の手が、無意識かはわかりませんが私の頭を撫でています。

 ありえないことですが、おしっこを飲んでいることを憂に褒められているような気分になって、

 私はぐんぐんと空の上まで高揚していくようでした。

 このままだと私、言っちゃうな。

 遠くでそんな声がしました。

憂「ふうぅぅ……」

 おしっこが止まり、憂が長い吐息をつきます。

 私はまたおしっこの穴を舐めて吸って、きれいにしてあげました。

 もちろん最後の一滴まで楽しむという目的もありましたが。

憂「……おねえちゃん、また飲んだの?」

 憂の声が頭上から降ってきました。

 その手はまだ、私の頭をくしくしと撫でています。

唯「飲みました……」

 最初から最後の一滴までぜんぶ飲みました。

 言わなくてもわかるでしょうに、どうして訊くのでしょう。

 私はちょっとみじめな気持ちでした。

憂「……えっと、訊いていい?」

 憂はしばらく舌でくちびるを濡らしてから言いました。

唯「……なにを?」

憂「その……どうして飲めるのかなって」

唯「……」

 やっぱり、憂と私のおしっこに対する感覚は違うのでしょう。

 でも、その質問はある意味でチャンスと言えました。

 私の気持ちを、包み隠すことなく憂に伝えられるチャンスです。

唯「……すきだから」

憂「え?」

 私は立ちあがってから、倒れ込むような格好で憂の肩に抱き着きました。

唯「憂が好きだから……おしっこだっておいしく飲めちゃうんだよ」

憂「え、えっと。……え?」

唯「ずっと憂のこと好きだった。……この意味、わかるよね?」

憂「あ、え……と。うん、けど」

 抱き着かれた憂はしどろもどろです。

 でも、顔を真っ赤にしているのか、嫌悪で真っ青にしているのか、

 憂と左耳どうしをくっつけあっている私には見えません。


 熱いのは、えっちなことした後だから。

 期待しないように、言い聞かせます。

憂「好きって……恋、ってこと……?」

唯「うん。そう、恋だよ」

 なんとなく自分とは縁遠いように思っていた言葉でした。

 でも本当は、人よりもけっこう恋してたのだと憂の言葉で気付かされます。

憂「え、と……あ……」

 憂の手が私の頭に当たったかと思うと、すぐ横に逃げていきました。

 涙を拭ったんだと思います。

憂「ほんと、に?」

唯「うい。私、二回も……」

憂「そ、そっか。そうだったね。えへへ……」

 ついで、鼻をすする音。笑いながら憂は泣いているみたいです。

憂「お、おねえちゃん……あのね、その。怒らないでね?」

唯「うん、怒らないよ」


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