むかーしむかし。

 お正月のころ、親戚の家に向かう車の中でのことでした。

憂「っ……うぅ」

 15キロの渋滞で、車は全く動かないのに、

 憂が不穏にもじもじし始めました。

唯「憂?」

憂「お、お姉ちゃん……」

 心配になって声をかけると、憂は泣きそうな顔で私を見つめます。

憂「もう、限界……」

 みなまで言わなくてもわかります。

 おまたを両手でおさえて、腰を座席にこすりつけるその姿。

 憂はどうやら、おしっこの我慢が限界にきているようです。

唯「お母さん、憂が……おしっこって」

 助手席のお母さんに助けを求めます。

母「えぇっ? 今は……」

 お母さんが窓の外を見て、困った顔を返します。

母「次のパーキングまで、1.2キロあるわよ。……憂、我慢できる?」

憂「む、むりぃ……」

 なにせ、100メートル進むのに5分はかかっています。

 1200わる100かける5は60。つまりトイレに行くまで1時間も待たねばなりません。

唯「……」

 いつもの学校までは1キロ。

 登校時間は30分程度のはずです。

 走れば、もっと早くなる。私は決断していました。

唯「憂、車おりて、歩いてパーキングまで行こう!」

憂「ええっ!?」


 大きく驚いた後、憂はびくっとして顔を赤くします。

母「そうね。このままじゃもらしちゃうわよ」

憂「うぅ……」

 憂がうめきます。苦しそうで、今すぐに助けてあげたくなります。

母「おりるわよ、憂」

唯「えっ、ちょっと」

 お母さんが憂を連れていこうとしました。

 それはずるいよ、お母さん。

唯「憂は私が連れてくよ!」

母「へぇ?」

 ドアを開けようとしていたお母さんが、首をひねります。

 へぇ、じゃないよ。

 歩いていくのを考えたのは私なんですから、

 私に連れてかせてくれるべきでしょう。

母「でも、危ないから」

唯「危なくないよ。車だって止まってるし」

 お母さんと軽く口論になります。

 お腹がムカムカしてきました。

父「いいじゃないか」

 ところで、ハンドルから手を離して暇そうなお父さんが言いました。

父「唯も春から中学生なんだし、トイレくらいなぁ?」

唯「うんっうん! 連れてけるよ!」

母「……そうね」

 お母さんも渋々という感じで頷きました。

 ああ、大好きお父さん!

唯「よしっ憂! 行くよ!」

憂「う、うん」

 ごそごそと、大きなコートを引っぱり、手袋をはめて外に出る準備です。

 ドアをぐいっと開けて、憂の手をとって外に出ます。

唯憂「いってきます!」

 きいんと冷たい空気と排気ガスの混ざった、寒いけど暖かい道路に立ちます。

 後ろでドアの閉まる音がしました。

 憂が閉めてくれたのでしょう。

 自分のことでいっぱいいっぱいだというのに、本当にいい子です。

唯「よし憂っ、急ぐよ!」

憂「うん!」

 道路の端まで行ってから、憂と一緒に駆けだします。

 パーキングエリアまでの距離を書いた看板の下をくぐったかと思うと、

 またすぐ次の看板が遠くに見えるようになりました。

 あと900メートルと書いてあります。

 なんだ、1.2キロなんてすぐじゃないか。

 口もとがにやけるのが分かります。

唯「……ぜぇっ、ぜえっ」

 ――そう思ったのも、つかのま。

 次の看板の下をくぐるころには、もう息が切れて足も痛んでいました。

 それでも、足を止めるわけにはいきません。

唯「大丈夫、うい?」

憂「うん、まだどうにか……」

 時折、憂を気遣いながら歩き続けます。

 足を止めそうな憂をひっぱって引きつけては、頭をなでてあげながら。

 でも、安心させすぎないようにして。

唯「ふぅ、ふぅ……やっと、あと300」

 頭がボーっとしてきますが、着実にトイレに近づいているという思いが

 後押しして、どうにか歩き続けられます。

唯「入口だよ、うい……」

 返事はありませんでしたが、憂の息がうれしそうに弾みました。

唯「……」

 耳をナイフですらっと引いているような寒さの中、

 どうにかパーキングエリアまでたどり着きます。

 憂もまだ、ここからトイレまで歩くぐらいの余裕は残っていそうです。

 間に合った……

 そんな想いを抱えながら、建物の方へ歩いていきますと、

憂「あ……」

 憂が、絶望した声を上げました。

 ずらりと、建物から続く女性の列。100人どころではなさそうです。

 トイレは大混雑でした。

唯「うい……先に入れてもらえないか、頼んでみよ」

憂「そ、だね……」

 だめもとですが、やらないよりましです。

 列の前あたりにいる、人のよさそうなおばさんに声をかけてみます。

唯「あの、すいません。妹がトイレ、もう限界みたいで、先に入れてもらえませんか?」

 おばさんは私たち2人を見おろして、眉を八の字に曲げました。

 「ごめんねぇ。おばちゃんも大変だし、後ろに待ってる人もたくさんいるから……」

唯「そうですか……ごめんなさい」

 おばさんの言うのももっともです。

 後ろで我慢している人たちもたくさんいるのですから、憂だけ特別ともいきません。

憂「お、お姉ちゃん、わたし……」

唯「……」

 とはいえ、今から並んでいては、憂は絶対におもらししてしまいます。

 何かないか、何かないか。

 私はアゴをなでて、周りを見渡し――ふと、自販機に目を留めました。

唯「……そうだ!」

憂「へ? ……ひゃっ!」

唯「おいでおいで、憂!」

 憂の手を引き、自販機まで連れていきます。

憂「お、お姉ちゃん、今ジュースの場合じゃないっ!」

唯「違う違う、ちょっと待ってね」

 ポケットからお財布を取り出し、100円玉を2枚投入します。

 少し迷って、最適のものを見つけ、背伸びしてボタンを押します。

 黄色いパッケージの大きなボトル缶が出てきました。

憂「ねぇー……」

唯「よし、こっちだよ!」

憂「ま、まってよお姉ちゃん!」

 それを両手で持ち、駆けだします。

 普段なら、炭酸が振れてしまうので絶対にやりませんが、今ばかりは関係ありません。


憂「おねえちゃーん……!」

 危なっかしい足どりで、憂がついてきます。

 建物の隙間に体を入れて、奥まで進みました。

 ここなら、人は来ないでしょう。

憂「ん、よしょ……どこ行くのぉ」

 半泣きで憂も到着しました。

 私は手に持ったボトル缶をぎゅっと開けて、蓋を外します。

 黄色い缶から、泡になったビタミンドリンクが勢いよく溢れてきます。

唯「おっとと……」

 私は腕をまわしてボトル缶を逆さにし、地面に炭酸ジュースを撒いてやります。

憂「ああっ、お姉ちゃんだめだよ、もったいない!」

 確かにもったいないけれど、ゆっくり飲み干す時間もないです。

 私は憂のほうに向き直りました。


 私は、空になったボトル缶の口を憂に向けました。

唯「……憂、ここにしちゃいなよ」

 ビタミンドリンクの甘い匂いが、背中から風にのってやってきます。

憂「……?」

 ぽかんとぬけた顔で、憂は私を見ています。

 なにしてるんでしょうか。

 こうしている間にも、憂の限界はどんどん近付いているのです。

唯「憂、ほらパンツ脱いで。おもらししたいの?」

憂「し、したくないよっ。……けど、それもヤダ」

 憂はボトル缶を横目で睨んでいます。

憂「……そこに、おしっこするの?」

唯「うん」

 わずかに残っていたジュースが、ぱちゃりと揺れました。

唯「大丈夫だよ、憂。誰も見てないし、ほら」

 私はボトル缶を掲げます。

唯「透明じゃないから、中も見えないよ。憂がここにおしっこしたことは、お姉ちゃんにしかわからない」

 アルミでできたボトル缶を選んだのは、そういう理由でした。

唯「でも、おもらししたら皆に憂がおもらししたってばれちゃうよ? そんなのイヤでしょ?」

憂「う、うん……わかった、そこにおしっこする」

 憂が頷きました。

唯「うん、良い子」

 軽く頭をなでてあげて、私はしゃがみました。

唯「私があててあげるから。憂はおしっこするだけでいいからね?」

憂「……」

 憂はむくれたような顔をしてしゃがみこむと、スカートの中に手を入れました。

 私は耳をそばだて、誰か来たりしないか警戒を怠りません。

唯「大丈夫、誰も来てないよ」

憂「……ほんとだよね?」

唯「そんな嘘つかないもん」

憂「だね」

 意を決したように、憂はするっとパンツを膝まで下ろしました。

 あれ。すこし黄色くしみています。ちびったんでしょうか。

 私は首をぐいっと曲げて、憂の足の間をのぞき込みます。

憂「やっ……」

 憂がバッとおまたを手で隠してしまいます。

唯「うーい! 隠したら見えないよ?」

憂「見ちゃダメ!」

唯「見ないとこぼしちゃうよ? お姉ちゃんの服にかかったら」

憂「でもぉ!」

唯「……わかったよう」

 頭の中で想像図を広げながら、ボトルの口を憂のあそこに向けます。

 手袋をつけたままでは握りにくく、両手を憂のスカートの中に入れるために

 少し工夫しなければいけませんでした。

 太ももに足を開かせて憂をのっけて、肩に手を置いてもらって少し前のめりにさせます。

 こうすると、私が手を前に出していてもバランスがとりやすいのです。

 といっても、手元はまったく見えませんし、顔は息が触れ合うくらい近付いています。

 この近距離で、憂がおしっこをする。

 ボトルの口から外れたら、いったいどうなってしまうのでしょうか。

 ものすごく緊張します。

唯「よいしょ……」

 ボトル缶を前につきだしていきます

 そーっと、そーっと。

 ぐっと押す感触に当たった瞬間、

憂「ひゃあ!」

 憂が悲鳴を上げて、ぶるっと震えました。

 そして耳に届く、ぱしゃっと水が地面を打った音。

 寄りそい合ってあたたかい私たちの間に、何とも言えない匂いがたちこめてきます。

唯「か、かんいっぱつ……?」

 手袋に濡れた感触はありません。

 靴は分かりませんが、いずれ汚れるものでもありますから、かかっていても平気です。

唯「うい、ちゃんと当てるまで出しちゃだめだよ」

憂「ご、ごめんね。冷たくて、びっくりしちゃって」

唯「うーん……がまん、がまん」

憂「がまん、がまん……」

 つぶやきを返して、憂はこらえるような顔で目をとじます。

 その表情が一瞬「そのため」に見えて、うっかりまちがえてキスしそうになりました。

唯「……」

 今のはほんのご愛嬌です。

唯「あてるよ?」

 憂に訊くと、こくりと頷いてくれました。

 再びボトルの口を憂のあそこのあたりへくっつけます。

憂「っ」

 また憂はびくりと震えますが、今度はもれずに済んだようです。

 さっきのおしっこの匂いが、鼻をつきます。

唯「あたってる?」

憂「ううん、ちょっと下すぎ」

 憂に確かめながら、おしっこの出る位置を探ります。

憂「あ、そこ……かな?」

 憂が言ったところで、私は手を止めました。

唯「じゃあ……だして」

 さあ、憂のおしっこはボトル缶の中に入ってくれるのでしょうか。

 それとも私の手袋にひっかかってしみつくのでしょうか。

 緊張のときです。

憂「うん……んっ」

 憂がイキみます。

憂「ふ……」

 もう一度。憂がぷるぷると震えて可愛いです。

 けれど、問題のボトル缶のほうは至って静かです。

 本来なら、憂のおしっこが缶の底を打って、缶の中で響いて、ちゃぽちゃぽ聴こえるはずなのに。

 まさか、と思いましたが、やっぱり手袋が濡れていくような感じはしません。

憂「う……んん」

 とすると。考えにくいですが。

唯「うい……出ないの?」

 開いた憂の目は、涙ぐんでいました。

憂「うん……なんでかなあ」

唯「まだおしっこしたいよね?」

 憂はこくりと頷きます。前髪が軽くこすれました。

唯「……」

 やはり憂も緊張して、おしっこが引っ込んでしまったのでしょうか。

 かといって、ここで出しておかないわけにはいきません。

唯「……うい、しーしー」


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