唯「…どこいくの?」

唯ちゃんが小さく呟くのとほぼ同時に、目的のお店が見つかりました。

紬「あ! あったわ!」

唯憂『わあ~~~~…』

紬「ここは駄菓子屋さんよ」エヘン

以前律ちゃんに連れてきて貰った駄菓子屋さん…その時のワクワクした思いを二人に感じて欲しくて連れてきました。
二人は雑然と並べられた駄菓子に興味深々です

憂「これ何ですか?」

紬「えっとね…水飴よ」

憂「水飴」

紬「やってみる?」

紬「んとね…割り箸を…こう」
グニグニグニグニ…

紬「にょーん と」
ニョーーーーーン

憂「ふわあ…んしょ…」
グニ グ  ニ グ ニ

憂「…うまくできない」

紬「ちょっと難しいかしら~」

憂「わあっ! おねえちゃんすごーい!!」

唯「ん ん ん ん ……」
グニグニグニグニグニ

唯「んーーーーーっ!!!」
ニョーーーーーーン!

紬「ほんと!唯ちゃん上手ぅ~」パチパチパチ

唯「………///」テレテレ

トロー

憂「あ! 垂れちゃう!」

唯「あ…」

紬「唯ちゃん!パクって!」

唯「!」パク

紬「…おいしい?」

唯「…うん あまい…」

紬「ふふふ 良かった!」

トテテ…
唯「…これ 食べたい…」

憂「キレイな色だね」

紬「んっと あんず飴ね ちょっとすっぱいかもしれないわ…平気?」

唯「…うん…平気…」コクコク

紬「…はい! あんず飴で~す」

憂「わあ ありがとう!」

唯「……ぁ ぁりが…と…」

紬(………)

憂「?ムギおねえさん?」

紬「…あ!ごめんなさい ぼ~っとしちゃって」

憂「?」

紬「じゃあ!いっせいのせで食べようか」

憂「うん」

唯「……」コク

紬「…せーの…」パク
唯「……」パク
憂「……」パク

唯憂『~~~~*』

紬「あらあら~ 二人とも大丈夫?」

憂「うん すっぱいけどおいしい」

唯「……うん…おいし…」

紬「うふ よかった」

紬「うふ ほらほら~」べー

憂「わ まっか」

唯「…ういも」

憂「おねえちゃんもだよ」

紬唯憂『…………』

紬憂『………ぷ あははは』

唯「……えへへ…」

紬「あ 初めて笑ってくれたね」


それから公園に戻って、鬼ごっこです。

紬「よ~し、捕まえちゃうぞ~」

憂「きゃー♪」タタタ

唯「……にげる」タタタ

紬(……唯ちゃんは…)

駄菓子屋さんで少しだけ見せてくれた笑顔は、公園で遊んでいる間、見せてくれませんでした。

…そして…


『…5時になりました。よい子の皆さんは
暗くなる前におうちに帰りましょう…』

公園に設置されたスピーカーからの音声が、児童の帰宅を促します。

紬「寒くなってきたね」

この時期だとこの時間、お日様は沈み、ぐっと気温が下がります。


紬「…そろそろ バイバイだね」

憂「…はい 今日はありがとうございました」ペコリ

丁寧にお辞儀をする憂ちゃん。その傍らでモジモジと何かいいたげな唯ちゃんです。

唯「………やだ」

紬「ん?」

唯「やだ…もっと あそぶ…」

そう言うと、今にも泣き出しそうな顔で私のスカートの裾を離してくれません。

紬「あらあら…」

憂「わがまま言っちゃダメだよ おねえちゃん…お父さんお母さんに怒られちゃうよ…」

唯「やだ!もっとあそぶの!」イヤイヤ

憂「おねえちゃん…あ…」

…雪が降ってきました…

憂ちゃんが声を上げ、見上げた空から白い雪が降ってきました。

唯「…ゆき……は…はっくしょん!」

私は唯ちゃん目線の高さにかがみ、優しく抱きしめます。

ギュッ
唯「あ…」

紬「抱きしめてあげると…どちらも幸せな気分になるの…あったかい?」

唯「…うん」

いつもあなたがしている事よ…そう思いながら優しく抱きしめます。

紬「…風邪ひいてお熱出ちゃうから…今日はもう帰りましょ…ね?」

唯「う ぐす…や…やぁだ…」グス

紬「…また会えるから…その時は…また遊びましょう」

唯「…ほんとに…グスン…また…うぐ…会える…?」グスグス

紬「うん!きっと」ニコ

唯「………わかた」コクコク

少し考えて唯ちゃんは頷いてくれました

…きっと会えるわ。


途中のコンビニで少し大きめの傘を買って3人で入ります。
憂ちゃんと色々な話をしましたが、唯ちゃんは何もしゃべってくれません…

紬「あ この角曲がればおうちかな」

憂「えっ…ムギおねえさん おうち知ってるんの?」

紬「ムギおねえさんは何でも知ってるの~」

これが夢でも…不思議な現実でも…もうすぐお別れです…

唯「へぐ…い いっちゃやあ だあぁ」

紬「…さっきも言ったけど、きっとまた会えるから…」

唯「あ あじだ?」ヒクエグ

紬「うーん…いつかは分からないけど、必ず会えるわ」

唯「ひぐ…………」

紬「きっと……約束するわ」

じっと私の目を見つめる唯ちゃん…涙を溜めたその瞳は街灯の灯りを受けて、キラキラしていました。

唯「…わかた…」グス

ギュッ
私はもう一度唯ちゃんの小さな身体を抱きしめます。

紬「…ムギおねえさんのお友達にもね、唯ちゃんているのよ」

唯「……」

紬「その子はいつも笑顔で…がんばりやさんで…暖かくて…優しくて…」

唯「……」グス

紬「そんな唯ちゃんが私大好きなの…とても大切なお友達よ」

唯「……ゆいも…」

紬「ん?」

唯「…ゆいもそうするから…だから…」

紬「……」

唯「ムギおねえさんの大切な友達に…してくれる?」グス

ギュッ
紬「もちろん!約束!」ニコ

いじらしくて…思わず目頭が熱くなります…でも泣いちゃいけない

紬「ほらほら~唯ちゃん 笑って」

唯「(グシグシ)…うん!」ニコ

傘は憂ちゃんが持っていたのでお互いにうっすらと雪が積もり、辺りは一層冷え込んでいたけど…
心が暖かくなるような…
一番の笑顔でした

紬「じゃあね 唯ちゃん 憂ちゃん」


憂「色々ごちそうさまでした」ペコ

唯「ぜったいだよ!ぜったいまた会おうね!」

軽く頭を下げる憂ちゃん。
ぶんぶん手を振る唯ちゃん。
角を曲がる二人の姿を見送りながら…雪が振り続ける路上で1人手を振ります。

紬「…1人になっちゃった…どうしようかな…」

誰かと一緒というのはとても暖かくて…優しくて…だから途端に1人になるととても寂しくなります。

紬「…家に行ってみようかしら?…でも過去の世界なら幼少期の私がいるはずだから…」

そんな事を考えながら、とりあえず駅へ向かいます。

「家に行けば何とかなる」

そう決めた私は閑散としたホームで電車を待ちます。


程なくして、
乗り慣れたカラーリングの車両がすべりこんで来ました。

紬「…あら?」

この時間の割にほぼお客さんが乗っていない事に違和感を覚えながら、座席に腰かけます。

紬「ふう…」

紬「…小さい唯ちゃんと…憂ちゃんと会って…遊んで…」ウトウト

紬「…ふふ…」

今日の出来事を思い返すと、自然と笑みがこぼれます…でも…
あの子は…唯ちゃんは…
あの後笑ってくれるかしら…
切なくて…
少しだけ涙がこぼれました。

…そして、また夢の中へ

紬「夢の中で…また夢をみるのかしら?…それとも…」


「……ん……ちゃん……て!…」

紬「……ん……うん?」

唯「あっ!ムギちゃん起きた!エヘヘおはよう」

紬「…唯ちゃん?あら?」

そこは見慣れた音楽室でした。そして見慣れた大切な人達の顔…

唯「ムギちゃん平気?怖い夢でも見たの?」

律「なんだ?自分の人生が逆転する夢でも見たのか?」

とても楽しい…ちょっとだけ悲しい夢だったような気がするけど…
思いだせません
…でも…なぜか私は泣いていました…

紬「ごめんね律ちゃん…どんな夢だったか…よく覚えてないの」

唯「はい!使って!」

いうと唯ちゃんはハンカチを差し出してくれました。

紬「ありがとう……あ…」

唯「ん?どうしたのかな?古いハンカチだけど汚くないよね?」

紬「ううん 違うの …ただこのハンカチを見た時…すごく不安で…でも嬉しくなって…なんでだろ…」

唯「そっかー…でもきっといい事なんだよ!」ニコ

紬「…クス…そうね」

律「よっし!ムギも起きた事だしお茶にするべ!」

梓「はあ…練習しましょうよ…」

紬「うふふ 梓ちゃんも 美味しい紅茶いれるから~♪」

梓「は はい」

澪「なんだ?起きたと思ったら随分ご機嫌だな」

紬「うん!なんかね!大切な人との約束をお互いがちゃんと守れたような気がするの!こんな素敵な事ないもの~」

澪「??」


やっぱり夢の中のお話は思い出せないけど…
私は夢の中で出会った誰かと
約束をお互い守って…
それぞれが笑って過ごしている…

そんな気がします。

唯「ムギちゃんの煎れた紅茶は今日も至極の味だね♪」ニコ

紬「うふ ありがとう」ニコ


終わり