茜「……さわこ先生ってかくれんぼとか得意なんですね」

梓「えっ!?なんでピンクの人がここに……?」

さわ「私って可愛い女の子を見る目だけは確かなのよね。平沢姉妹の入れ替わりをひと目で見抜けるのも私くらいだし」

茜「唯先輩と憂の区別くらい私にだってすぐできますよ。だって私は……唯先輩のことが大好きですから」

さわ「ふーん。そういうことか。ま、いいわ。生徒同士の問題に教師が大人面して首つっこむのも野暮だし」スタスタスタ

梓「……え?さわこ先生もう行っちゃうんですか?」

さわ「うん。あとは2人で適当に解決してちょうだい。私は一足先にムギちゃんの別荘でお風呂にでも入ってるから」

梓「……行っちゃった」

茜「そんなに私と2人きりで話をするのが怖い?」

梓「そ、そんなことありません!部外者のくせに偉そうにしないでくださいっ!」

茜「あのさ。敬語止めてくれないかな?同級生なんだし。まぁ私はバイトであんまり学校出れないから『あっち』では私のこと知らなくて当然だけどね」

梓「……『あっち』?」

茜「それに『こっち』では私も正式な軽音部の一員なんだから外者とか言われるとちょっとツライかも」

梓「……『こっち』?」


茜「梓ちゃんさ~……………………」

梓「?」




茜「タイムリープしてない?」


梓「……ど、どうしてそれを!?あ、さっき私と先生の話を盗み聞きして……!」

茜「ううん、違うよ。梓ちゃんと先生の話を盗み聞きする前から気づいてた。厳密には今朝の時点でね」

梓「…………」

茜「今朝の私を見た時の梓ちゃんの態度で分かったよ。ああ梓ちゃんも私みたいにタイムリープしてきたんだなって」

梓「わ、私と同じって……それじゃまさか……」

茜「そうだよ。私も三ヶ月前にこの過去へタイムリープしてきたんだ。部屋に現れた悪魔さんの魔法でね」

梓「あ、悪魔……?」

茜「梓ちゃんの時は悪魔さんじゃなかったの?まぁ確かにデビちゃんって何か悪魔っぽいあだ名だけど」

梓「……私の時は天使さんだった」

茜「ふーん。やっぱりあだ名のせいかな?でも私このデビちゃんって気に入ってるんだ。唯先輩が付けてくれたあだ名だし」

梓「…………」

茜「だって『あずにゃん』よりはシャレてると思わない?」クスクス

梓「……どうして、タイムリープしようと思ったの?」

茜「もうだいたい想像ついてるでしょ?私ね、うらやましかったんだ。梓ちゃんのことが」

梓「それじゃ、あっちの未来で軽音部に入ればよかったのに……」

茜「あっちの未来で私が屋上で空を見上げながら歌ってる唯先輩を見つけたのは2年生の春だった」

梓「…………」

茜「その頃にはもう軽音部は一見さんお断りみたいな感じで途中から入部できるような雰囲気じゃなかった」

梓(……そういえば純にもそんなこと言われたっけ)

茜「それにお目当ての唯先輩の隣はもう梓ちゃんで埋まっちゃってたしね」

梓「…………」

茜「私は唯先輩が卒業するまでの間ずっと影で軽音部を見つめてた。その思いは唯先輩が卒業した次の日には後悔に変わって爆発した」

梓「……それで、タイムリープを?」

茜「なんで雰囲気なんか無視して、あの時1歩踏み出さなかったんだろうって1人で泣いてる部屋に悪魔さんが現れたんだ」

梓(私の時とほとんど同じだ……)

茜「あとは梓ちゃんも体験したんだから知ってるでしょ?でも悪魔は天使より優秀みたいだね。ちゃんと私が望んだ通りの4月に戻してくれたから」

梓「…………」

茜「こんなのズルだなって。すぐ帰らなきゃいけないのも分かってたけどいつの間にか夏になってた。唯先輩と軽音部に居るのがあんまり楽しくて」

梓「……これからどうするつもりなの?」

茜「そんな怖い顔で睨まないで。私と梓ちゃんはお互い様なんだよ?むしろ梓ちゃんの動機の方が贅沢でタチ悪いと思う」

梓「うっ……そ、それは……」

茜「ふふふ。まぁいいけどね。そのタチの悪い梓ちゃんがさっき暴れてくれたおかげで私も気づけたから」

梓「気づいたって……?」

茜「結局、今のこの状況は私にとってどんなに幸せだとしても『本物』ではないんだなってこと」

梓「本物の……未来」

茜「そう。私にとっての本物の未来はやっぱりあの退屈で唯先輩とも知り合ってない最低な未来なんだよね」

梓「そ、それじゃ……」

茜「うん。私は元の未来に帰るよ。あ、未来に帰るって言い方もなんかおかしいけど」クスクス

梓「……茜ちゃん」

茜「あ、やっと名前で呼んでくれたね!できれば本物の未来に戻っても仲良くしてほしいな」

梓「戻れるの……?本物の未来に……」

茜「天使さんは戻り方も教えてくれなかっの?悪魔よりよっぽどイジワルな天使だね。何か理由でもあるのかな?」

梓「……帰れる…あの未来に……帰れる…」

茜「ただ帰りたくなったら心の中で悪魔さんに呼びかければいいだけだよ。梓ちゃんの場合は天使さんかな」

梓「心の中の天使に呼びかける……?」

茜「うん。それじゃ私は別荘のベッドで悪魔さんを呼ぶからもう行くね。戻る時はまた眠くなっちゃうらしいから」

梓「茜ちゃん……教えてくれてありがとう。今日はヒドイこと言ってゴメン……」

茜「謝らなくちゃいけないのは私の方だよ。さっきスタジオで突き飛ばしたりしてゴメンね」

梓「あの時は私が混乱して唯先輩に乱暴しちゃったから……」

茜「ううん。梓ちゃんが唯先輩を傷つけようとしてたんじゃないことくらい分かってたんけどね……」

梓「……?」

茜「最後くらい唯先輩の前でカッコイイとこ見せたかったから」ニコッ

梓「……茜ちゃん」

茜「それじゃね、梓ちゃん。私にとっては最低な本物の未来で待ってる」スタスタスタ


〔夜の海辺〕

梓「……どうしよう。暗くなってきたし1人で居るのは怖いけど別荘に戻るのも気が引けるなぁ……」

天使「1人じゃないよん」

梓「………天使さん。出てきてくれたんですね?」

天使「あんだけ心の中でやかましく呼びかけられたらそりゃ、ね」

梓「……まさか、こんなことになるなんて思いませんでした」

天使「絶対に有り得ないと思ってた?」

梓「そりゃそうですよ!」

天使「なんで?」

梓「えっ」

天使「何を根拠にこんな最悪の状況が絶対に有り得ないなんて信じてたの?」

梓「そ、それは……」

天使「私、言ったよね?あの梓ちゃんが過ごした2年間は物凄く低い確率の上で成り立ってたって」

梓「…………」

天使「私があの2年間が変化することになるだろうけどいいのって聞いたら梓ちゃんはそれでもいいって言ったよね」

梓「…………」

天使「まぁ私も暇つぶしで始めた身だから偉そうに説教なんてできる立場じゃないけどね」

梓「………本当に暇つぶしだったんですか?」

天使「は?」

梓「もしかして天使さんは私に大切なことを教えるために……」

天使「……そんな天使みたいな考え方してたら世の中渡っていけないよ。んで戻るの?戻らないの?」

梓「……戻りたいです。戻してください…お願いします」

天使「んじゃ、ハイ戻した。あとはこっちに来た時みたいに眠くなるから寝て起きたら戻ってるよ」

梓「ありがとうございます……ありがとうございます……」

天使「お礼を言われるのも何か違う気がするな~。ま、いっか!」

梓「天使さんって他の誰かにもこういうことやったりしてるんですか?」

天使「いや~それが自分でも全然分かんないんだよね~。梓ちゃんと会う前の記憶自体があんまり無いんだ~」

梓「え?それって……」

天使「梓ちゃんにこの体験をさせるために生まれてきたとかそんなんだったら私カッコイイよね」

梓「……え?(あ、きた。あの時と同じ感覚……。頭がボッ~としてきた)」

天使「梓ちゃんの大好きな先輩達が卒業する時、先輩達が梓ちゃんに歌を送ったでしょ?」

梓「……は、はい」

天使「あの歌は先輩達が梓ちゃんを大切に思う気持ちを伝えるために生まれた曲だから」

天使「あの曲のタイトル……今の梓ちゃんならすぐに思い出せるんじゃないかな?」

梓「あの曲のタイトルは……私にとってこの世で一番大切な歌のタイトルは……」

天使「…………」

梓「……天使に……ふれた…よ」

天使「…………」ニコッ

梓(ああ……天使さんが消えていく…私の意識と一緒に…)

天使「今度こそ本当にお別れだね梓ちゃん。でも私はいつでも梓ちゃんの心の中に居るよ…梓ちゃんがあの歌に込められた思いを忘れない限り、ね……」


♪なじんだ制服と上履き ホワイトボードの落書き
明日の入り口に置いていかなくちゃいけないのかな

でもね、会えたよ!すてきな天使に
卒業は終わりじゃない これからも仲間だから

一緒の写真たち おそろいのキーホルダー
いつまでも輝いてる ずっとその笑顔ありがとう♪

~~~~~~~~ ~~~~~~~~ ~~~~~~~~


〔学校〕

律「いや~なんだかんだで来てしまいましたな唯隊員!」

唯「いや~春休みなんて暇なだけですからな律隊員!」

澪「まったく。すぐに顔出したらカッコ悪いから当分は部室に行かないとか言ってたくせに……」

紬「あらあらまあまあ。澪ちゃん顔がニヤけてる~♪」

律「お?なんか部室の方から聞き慣れない音がするぞ?」

澪「本当だ。これ何の楽器だ?」

紬「たぶんだけど……ユーフォニアムじゃないかしら」

唯「UFOに会う?宇宙人さんの楽器なの?」

律「とにかく行ってみよっぜー!階段ダッシュだー!」ダダダダ

唯「あ、待ってよーりっちゃーん!」ダダダダ

澪「やれやれ。もう大学生だってのに何も変わらない奴らだな」

紬「あらあらまあまあ。澪ちゃん足踏みしてる~♪」

律「部室のドアに突撃―っ!」ガチャン

唯「ドッカーーーーン!」


梓「わぁ!ビックリした!なんか外が騒がしいと思ったら先輩達ですかもう!」

澪「久しぶり……ってほどでもないんだけどな」

紬「元気にしてたー?♪」

憂「みなさんお久しぶりです♪」

純「ども、軽音部のシド・ビシャスこと純でーっす☆」キラボシ

唯「ういういう~い~!(この純って子、誰だっけ)」

律「憂ちゃん久しぶり!(誰だっけこのモップみたいな子)」

紬「憂ちゃん元気そうね♪(私のティーセット使ってくれてるかな~)」

澪「憂ちゃんに純…ちゃん?久しぶりだな。2人とも軽音部に入ってくれるって言ってたもんな」

純「ちょっ!私が軽音部に入るって誰から聞いてたんスか?それどこ情報?どこ情報よー」

唯律紬澪(うっざ)


茜「あ、あはははは……」タジタジ

唯「おや?あずにゃんや。この、かわいこちゃんは誰だい」

茜(か、かわいこちゃん///)

梓「あ、はい。紹介します。この子は三浦茜ちゃんといって私達と同じ学年の新入部員です」

茜「よ、よろしくお願いします!担当楽器はユーフォニアムです!」

澪「おおっ!新入部員か!スゴイじゃないか!」

紬「さっきの音は茜ちゃんだったのね~♪」

律「軽音部伝説の元部長として大歓迎するぜい!」

純「ま、軽音部の看板は私だからどうでもいいんスけどね」ドヤ

唯「それじゃ~さっそく可愛い後輩の茜ちゃんにあだ名を付けてあげなくちゃね!」

茜(また唯先輩に可愛いって言われた///)

律「また変なあだ名付けるんじゃないだろうな~?」

純「ちょっ私も可愛い後輩なんスけど、あだ名は……?」

唯「う~ん」ジーッ

茜(見てる!唯先輩がメッチャ私を見てる///)ドキドキ

唯「あっ!なんかピンときた!これは完全にロックの神様からの啓示だよ!」

澪「本当か~?」

紬「どんなのかしら~♪」

律「どうせ『あかにゃん』とかだろ?」

憂「あだ名を閃いたお姉ちゃん可愛い!」

梓「あずにゃんを超えるあだ名なんてまず無いですね」

純「ちょっだから私のあだ名は……」

茜「ゆ、唯先輩……///」ドキドキ




唯「デビちゃん!今日から茜ちゃんのあだ名はデビちゃんです!」

おわり