紬「こんばんはー」

梓「むむむむムギ先輩!?」

澪「…………」カァ

梓「みみみみみみ澪先輩まで!?」

律「わりーな、試すような真似しちゃって」

梓「ど、どういうことです!!」

律「見ての通りでーっす」

梓「じゃ、じゃあさっきの律先輩の」

律「うん、嘘☆」

律「でも気づいただろ? 自分の気持ち」

梓「むぐぐ……」

紬「本人たちがよければ、いいんじゃないかしら?」

澪「わ、私にはよくわからないけど。梓がそうしたいなら応援するぞ」

律「どーんといってがっしゃーんばらばら」

梓「何の効果音ですか!」

律「ようし! それじゃあ軽音部一同で梓の恋を応援するぞー!」

紬「あの、盛り上がってるところ悪いんだけどちょっとりっちゃん借りるね?」

律「ん、どしたの?」

……

紬「梓ちゃん、唯ちゃんからもらった薬が原因かもしれないの」ボソ

律「え、どういうこと?」

紬「実はあの薬……」

………………

紬「お父さん、話があるんだけど」

紬父「どうした紬。新しいお船が欲しいのか?」

紬「もしかして、いつも私に渡してるクスリ、なんか変なもの入ってる?」

紬父「いや、違うんだ紬。これは紬のためを思ってグループの総力を挙げてだな」

紬「 何 が 入 っ て る の ? 」

紬父「そ、それはだな……」

紬「言い訳するお父さんなんて嫌いになるよ」

紬父「父さんは言い訳しないぞ! じ、実はだな……」

………………


紬「人によっては同性愛に目覚めてしまう薬らしいの」

律「ぬわぁんだってえええええええ!?」

紬「お父さん、私が変な男に引っかからないように、って……」

律「そりゃまた立派なお父様だね」

紬「だから薬が切れたら梓ちゃんも元に戻るはずよ。たぶん……唯ちゃんも薬が原因なんだと思う」

律「そうなの!?」

紬「私以外への副作用は未知数だって、お父様が」

律「だ、大丈夫かな。唯」

紬「今日の分まで薬を渡しちゃったから様子見するしかないんだけど……」

紬「もし唯ちゃん達に何かあったら私が責任取る……今のところ私に薬を絶った影響は無いわ」

物 梓 陰「……えっ」

梓(あんまり聞き取れなかったけど……薬が原因ってこと?)

梓(あ、早く戻らないと)

澪「……暗くて怖い」

梓「澪先輩知ってます? この公園の砂場では毎夜いじめられていた生徒たちの怨念が集まって遊んでるっていうはな」

澪「ひいいいいいいいいいいいいい!!」

律「待たせたなー」

律「えーと、梓」

梓「はい」

律「その、私達のほうで唯の気持ちとかそことなく調べてみるから。またわかったらメールするわ」

梓「でも、私は今からでも……心の準備はできてます!」

紬「梓ちゃん」

梓「は、はい」

紬「こういうところで焦ったらダメよ。落ち着いて、じっくり行きましょ?」

梓「そうかもしれませんけど……」ムスッ

澪「早く帰ろうよ、律う……」ブルブル

律「そういうことだ! 急いては事を仕損じるってやつだ!」

梓「律先輩ことわざ知ってたんですね」クス

律「なにおう! 私はやればできる子なんだからな!!」

澪「早く帰りたい……」

紬「それじゃあ、時間も遅いし帰りましょうか」

梓「その、今日はありがとうございました!」

律「気にすんなっての。それじゃあまた明日ー」

澪「……ばいばい」

紬「ばいばーい」

梓「…………」

梓「」テクテク

梓「やっぱあのクスリだったのかな……」

梓「……なんか唯先輩の声が聞きたいなぁ」

梓「まだ……起きてるよね?」

梓「」prガチャ

唯「どしたのあずにゃん!」

梓「ど、どうしてそんなに元気なんですか! もう夜の11時です!」

唯「あ、あずにゃんが電話かけてきたのにぃ……」

梓「それはそうですけど……」

唯「あずにゃんは今どうしてるのー?」

梓「外、歩いてます」

唯「そんな危ないよ!」

梓「っ?」ビクッ

唯「どこにいるの?」

梓「い、いつもの橋のところです」

唯「じゃあそこで待ってて! そこなら近いから送ってくから!!」

梓「え、ちょ、唯先輩!?」ツーツー

梓「…………なんか雰囲気がぜんぜん違ってたなあ」


……

………

紬「たぶん……唯ちゃんも薬が原因なんだと思う」

紬「今日の分まで薬を渡しちゃったから様子見するしかないんだけど……」

今日の分まで。

梓(私がクスリのせいだったとしたら……)

梓(当然、唯先輩にもそうなる可能性って、あるよね)

梓(……勝手にくる唯先輩が悪いんだよ)

梓(もう、どうにでもなっちゃ…)唯「あーずにゃーん!!」ダキッ

唯「まあまあ、とにかくあずにゃんをちゃんと送っていくよ」

梓「私は先輩の方が心配です!」

唯「はい、手」

梓「え」

唯「ここの道は暗いから夜は気をつけなきゃ駄目だよ?」

梓「……はい」ギュッ

梓「その先輩」

唯「なにあずにゃん?」

梓「土手で少しお話しません?」

唯「夜遊びはダメだよー」

梓「少しだけですから」

唯「もう、しょうがないなあ」

梓(立場がいつもと逆になってる……)

唯「おー、星が綺麗だね」

梓「そうですね」

唯「綺麗だねぇ……」

梓「唯先輩」

唯「なに?」

梓「その、単刀直入に言います。私、唯先輩のことが……」

唯「わかってるよ、あずにゃん」

梓「!」カァッ

唯「言わなくてもそんなのお見通しだよ」

唯「あずにゃんは顔にいっつも出てるもん」

梓「え、いや、あの」

唯「私なりにね。考えてみたの」

唯「適当にごまかすこともできると思うけど、そんなことしたくないし」

唯「それこそあずにゃんに失礼だからね」

梓「唯先輩……」

唯「だから贈るよ。これが私からの、あずにゃんへのメッセージ」


そう言ってギターを構える唯。
アンプに繋いでいないはずなのに甘く太い音。
そう梓に聞こえたのは、夜が見せた幻想か。

少し戸惑うようなストロークはしかし力強く。
そして唯の声があたりに響く。




大切なもの、気づいたら奪ってた。
ダメだね、私。わかってあげれなくて。
もやもやする心は全部ここに置いていこう

…………

………

……


唯「~♪」

梓「先輩……」ウルッ

唯「題して、「チョコレートアイスにごめんなさい!」でしたー」

梓「えっ」

唯「これでもう怒るの無しね!」ビシィ

梓「……」ワナワナ

唯「あはは、あずにゃんってばおもしろーい」ケタケタ

梓「な、何をふざけてるんですか! 私は真面目に……ッ!?」

唯「ごめんね。あずにゃん」ギュッ

梓「……」

唯「でも、なんか悩んでる顔してたから、明るくなってほしいな。って」

梓「……先輩はバカです」

唯「うん、バカだよ」

梓「……大馬鹿です」

唯「うん、大馬鹿」


梓「その、先輩」

唯「なにあずにゃん?」

梓「先輩に弾き語りしてほしいです」

唯「しょうがないなあ、特別ね? 何の曲がいい?」

梓「先輩に任せます」

唯「うーん……それじゃあ、私の恋はホッチキス」

…………

………

……


唯「届かなーい、ララまた明日……」

梓「」スーッ、スーッ

唯「ありゃ、寝ちゃってる」

唯「あずにゃん、風邪引くよー」ユサユサ

梓「」スーッスーッ

唯「どうしよう、私も帰れないよ……」

唯「……ヒックシ」


次の日!

澪「あれ、今日唯学校来なかったな」

律「根堀葉堀聞き出そうと思ったのになー」

紬「あ……憂ちゃん」

憂「こんにちは」

律「おっす、唯学校来てないんだけど、どうしたの?」

憂「それが、お姉ちゃん風邪引いちゃって……熱が40度もあって」

律「だ、大丈夫なのか!?」

憂「お医者さんは心配は無いって言ってるけどお姉ちゃんすっごい苦しそうで……」ウルウル

澪「どこで風邪菌もらったんだろうな、唯」

憂「そういえば梓ちゃんも今日風邪でお休みみたいで……」

紬「あらあら……」


一週間後!

唯「おはよー!!」

律「やっと帰ってきたなこのヤロー」グリグリ

唯「痛い、痛いよりっちゃん」

澪「心配したんだぞ」

紬「無事でなによりだわ」

唯「えへへ、放課後のお菓子が楽しみだよー」

律「全く相変わらずだな」


梓「……はあ」

憂「どうしたの梓ちゃん?」

梓「風邪引いた夜に何かあったような気がするんだけど……思い出せなくて」

憂「きっと、もうろうとしてたんだよ。無理に思い出しちゃ駄目だよ」

梓「うん……」

梓(なんかすっごい大事なことだった気がする)


放課後!

唯「ぐむむむむ」

澪「どうしたんだ唯?」

唯「……ギー太から音がでない」

澪「どれ……って、これは!」

梓「どうしたんですか?……って!」

唯「なに、二人ともどうしたの?」

梓「ネックが……」

澪「反ってる……」

梓「逆反りしすぎて弦がフレットに触れちゃってます!」

澪「自分で直せないこともないが……リペアに出した方がいいな」

唯「えー!」ガーン


数日後!

唯「そうだムギちゃん、あのお薬ってもうないの?」

紬「ごめんね唯ちゃん。もう開発中止したって」

唯「あれ飲んでたら調子良かったのにー……」

梓「薬に頼るなんてダメです!」

唯「た、頼ってないよ。気分をハイにするための……」

梓「それじゃあドラッグと一緒じゃないですか!」

紬「」ドキ

律「ほれ唯、これ弾いてみて」参考動画(2:40辺りから):http://www.youtube.com/watch?v=TAdgrlwdTjc

唯「」ピロピロピロリロロレレピベキッ

唯「ゆ、指痛いー!」

律「おー戻った戻った」

唯「ところで最近作曲ができなくなったんだよねー……」

律「まあいんじゃね?」

紬「別に唯ちゃんがすごい作曲できなくても、唯ちゃんは大事な仲間なんだから」

澪「そうだぞ、気にすること無い」

唯「えへへ、ムギちゃんありがとう」テレ

梓「あの、こんなフレーズ思いついたんですけど」

澪「へえ、いいじゃないか。今までにない曲だ」

唯「切ない乙女の曲だね! あずにゃんも大人になったねぇ~」

梓「か、からかわないでください!」

唯(初めて聞くけど、初めて聞いた感じがしないな……)

梓「唯先輩、ギターの練習しましょう!」

唯「えー、お茶しようよー」

律「あと一杯だけ!

紬「はい、梓ちゃんもどうぞ」

梓「……もう」

紬「今日はチョコレートアイスよ」

唯「わーいやった!」

澪「すごいおいしそうだ」

律「いっただっきまーす!」

梓(……チョコレートアイス)


梓(!)ピコン

梓「先輩、ひらめいたんですけど、さっきの曲のタイトルは……」

梓「      」

律「なんだそのセンス!?」

唯「いい、いいよあずにゃんそれ」キラキラ

澪「いいんじゃないかな?」

紬「可愛くてとっても梓ちゃんらしいと思うわ♪」

唯「次の文化祭でその曲絶対やろうよ!」

梓「……はい!!」

END