プール───

唯「それ~りっちゃん」バシャバシャ

律「やったなぁ!? くらえっ!」バシャバシャバシャ

唯「わぁっ! 側面攻撃とは卑怯な!」

律「ごめんあそばせっ~」



梓「憂~日焼け止め塗ってくれない?」

憂「うんいいよ」

梓「日焼け体質な自分が憎いよ」

憂「うふふ」



純「澪先輩! ウォータースライダー乗りましょう!」

澪「えっ、でも怖いし…」

純「私と一緒なら大丈夫ですよ! さあっ!」

澪「う、うん……」



紬「みんな楽しそう」

一人パラソルの下でみんなを眺める紬。

紬「自然よね…。みんながお互いわかり合えてるからこそああやって……」

斎藤「ちょっと難しく考え過ぎじゃないですか? お嬢様」

紬「斎藤…」

斎藤「お飲みものどうぞ。今で約半分が過ぎた記念です」

紬「ありがとう。あなたってもっと真面目な人だと思ってたわ」

斎藤「真面目なつもりですけどね」

紬「プールで海パン一丁で女のコに近づく執事なんて聞いたことがないわ」

斎藤「必要とあればそうするだけですよ。私はお嬢様を監視するのが仕事ですから」

紬「そうだったわね」

紬「それでさっきの続きだけれど…」

斎藤「はい。お嬢様は物事に興味があるあまりそれを難しく考え過ぎじゃないか、と思うわけです。特に人付き合いなど」

紬「……」

斎藤「人にはいろんな人がいます。自分の有利益の為に他人に付き合う人や、何となく気付いたら付き合ってた人、中には自分より相手が大切だと云う人もいるでしょう」

紬「私は……」

斎藤「理由は人それぞれですから。それに相手と自分の思いが合致している付き合いなんてそうそうありません」

紬「そうなの…?」

斎藤「私の価値観ですからわかりかねますがね。ただ…そういうのもひっくるめて、友達って奴じゃないですかね」

紬「……」

斎藤「なろうと思うものじゃないんですよ。友達なんてものは。見てください。皆さん楽しそうにしてるじゃないですか」

斎藤「それでいいんです。楽しいのに理由なんていらないんですから」

紬「理由なんて……いらない」

斎藤「では、私はプールの監視員の仕事があるのでこの辺で」

紬「斎藤…!」

斎藤「はい」

紬「ありがとう。何だかわかった気がするわ。ここ数日で、色々と」

斎藤「さようで。ですがまだ試練は終わっていません。くれぐれも頼らないようお願いしますよ」

紬「えぇ。」


それからいっぱいいっぱい遊んだ。
みんなが笑うたび、私も嬉しくて、みんなもそうだといいなって思った。
みんなの考えてることはわからないけど、私が思ってることはわかる。
だから……。

電車内─────

くぅ……くぅ……

紬「みんな疲れたのね。憂ちゃんまで寝ちゃうなんて」

澪「だな」

対面の席には澪と律、紬の横には唯が座っているが唯と律は既に夢の中に旅立っており、律は澪に、唯は紬の肩に身を預けている状態だ。
通路を挟んで向こうの席では梓、憂、純が似たような光景を作っている。

紬「よしよし……」

唯「ん……」

澪「そうやってるとまるでママ…じゃないお母さんみたいだな」

紬「澪ちゃんもね」

律「ぐがぁ…ごぉ…」

澪「手がかかりそうな子だけどね」

紬「うふふ」

澪「……なぁ、ムギ。」

紬「なぁに澪ちゃん?」

澪「困ってることあったらさ…何でも話してよ。私、いや、私達…ずっとムギに甘えてたからさ」

紬「そんなことないわ。私なんて…」

澪「ううん。色々なことでムギにはお世話になったし、実際ムギがいなかったら今ある楽しい思い出がいくつ減ってたことか。だからさ…ちょっとでも恩返ししたいんだ」

紬「澪ちゃん…。ありがとう。その気持ちだけで嬉しいわ」

澪「ムギ……話して、くれないんだな」

紬「?」

次は~桜ヶ丘~桜ヶ丘~。
お降りの際は走らずにGO GO MANIACじゃなくてGO GO yukkuriを心掛けてください

唯「ふぇ?」

紬「ほら唯ちゃん。起きて、ついたわよ。みんなも起きて~」

澪「ムギ……」


駅前───

純「ふあ~よく寝た」

憂「楽しかったねお姉ちゃん」

唯「うん! でもお腹空いた~」

憂「帰ってすぐご飯作るから待っててね(紬さんも元気出たみたいだし、良かったぁ)」

梓「日焼けしなくてよかった…」

律「日焼けしなかった…。よーし明日は海なーっ!」

澪「ちょっとは勉、強、しろ」

ゴンッ

律「あいたぁっ」

紬「うふふ」

澪「……」

律「さ~て解散するか。私と澪とムギはこっちだから」

唯「私と憂とあずにゃんはこっちだね~」

純「私だけ一人なんて~! 死んじゃうううう」

梓「はいはい」

紬「私も今日はこっちなの。だから純ちゃん一緒に帰りましょう」

純「本当ですか!? やった!」

梓「良かったね、純」

律「今日は? ん?」

澪「(あの公園の方…今日もやっぱり…)」

紬「じゃあね、みんな」
唯「バイバイムギちゃん純ちゃん!」

純「唯先輩澪先輩律先輩に憂さよ~なら~」
梓「わ、私は!?」

純「全く梓ったら寂しがりなんだから。」

梓「ち、ちがう! そういう意味で言ったわけじゃ…」

純「じゃあね梓」ニコッ

梓「ふんっだ」

純「じゃあ行きましょうムギ先輩!」

紬「ええ」


澪「……の?」

律「ん? ど~した~澪」

澪「私達はそんなに頼りないの? ムギッ!」



紬「えっ…」

少し遠くに離れた紬にもはっきり聞こえるような大声が響いた。

律「澪?」

唯「ふぇ?」

事態がわかっていない他のメンバーはただ不思議がるしかなかった。

紬「澪ちゃん?」

澪「どうして頼ってくれないんだよ…。あんなところで寝泊まりする方がいいって言うのか…?」

紬「!? 知ってたんだ…」

澪「うん…。昨日たまたま見ちゃって…。家の人と何かあったのかなって……。本当は昨日声かけて泊めてあげようとしたけどムギから話してくれの待った方がいいかなって。ムギもあんなところ見られたって思ったら素直に応じてくれないかもだし…」

紬「澪ちゃん…」

律「澪、ムギ、説明してくれよ」

律が先程とは打って変わって真剣な表情になったことで、どれだけ心配してるかと言うことがわかる。

紬「(ここで話さなかったら余計心配かけちゃうわよね…。試練は頼っちゃ駄目だけど内容を話すなとは言われてないし…それにりっちゃんのこんな顔みたら話さないわけにいかないわよね)」

紬は「うん…」と小さく頷いた後、話始めた。

────

澪「そんなことが…」

律「金持ちってやつは何考えてんだか…」

唯「ムギちゃん大変だったんだねぇ……」うぅっ

憂「だからあの時焼きそばパンだけだったんですね……」

梓「それでこの日焼け……」

純「通りで髪がゴワゴワなわけだ……」

全てに合点がいった一同だが、だからと言って状況は変わらない。

紬「そういうことだから…後4日はあそこで寝泊まりしないといけないの」

唯「ダメダメッ! そんなことしてたらムギちゃんが野犬に襲われちゃう!」

律「それに変質者とかが嗅ぎ付けて…」

澪「そうだぞムギ! 私は許さないからなそんなこと!」

梓「そうです! 先輩が公園で寝泊まりしてるなんて知っててほっとけないですよ!」

憂「是非家に泊まってください!」

純「あずにゃん二号お貸しします!」

紬「みんな……ありがとう。でもね……誰も頼っちゃ駄目なの。だから……ね?」

唯「そんなぁ…」

律「頼るなってことは差し入れとかも駄目なのか?」

紬「多分…」

律「たぁ~! 今からムギの家に乗り込んで頭の堅い親父を退治しに」

澪「やめろ律。ムギに迷惑がかかるだろ」

律「けどぉ…。後4日も公園でムギが一人で寝てるなんて…私には耐えられない…!」

澪「その気持ちはみんな一緒だと思う。けど…もし約束を破ったらムギは勘当されちゃうんだ。もしそうなったらその先のこと…律は責任取れるのか?」

律「~ッ! でも! …納得いかないよ…」


純「落としたふりをして渡すっていう作戦はどうかな!?」

憂「それいいかも!」

梓「ムギ先輩にはちょっと失礼だけど…それなら落としたって言い訳も出来るしね」

紬「みんな気持ちは嬉しいけど…。」

律「駄目なのか?」

紬「これは私の家の問題だから……みんなを巻き込みたくないの。わかって」

澪「ムギ……」

紬「じゃあ、帰りましょう。純ちゃん」

純「えぇっ。でも……」

紬「ね?」

純「はい……。あずにゃん二号持って行きますから…寂しくないように」

紬「ありがとう純ちゃん」

二人が徐々に遠ざかって行く。

それをただ見送ることしか出来ない。

律「クソッ…なんでだよ…」

澪「律…。」

律「ムギにはいっぱいいっぱいもらってるものあるのに…こんな時に返せないなんて……何の為の友達だよ…!」

澪「……」

梓「律先輩…」

全員が意気消沈な中、たった一人だけは諦めきれずにいた。


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