公園───


気づけばあの公園に来ていた。
あの時と同じ夕日で、けれどあの時とは違って私の中には色々変化があった。

紬「影は伸びないし、ホテルは一泊5000円前後、未成年だけじゃ泊まれなくて…隣の人はいい人で、バイキングは食べ放題」

紬「コンビニはオアシスで、でもちゃんとものを買わないと睨まれちゃう。スーパーに入るとわくわくして…憂ちゃんはとっても優しい」

紬「いっぱいいっぱいいろんなことを知れた……これが試練…何だかわかった気がする」

紬「寝床探さなきゃ…。学校…は入ったら怒られそう…。コンビニは寝れないし…あら?」

紬の目に飛び込んで来たのはドーム型の遊具。
小さい子供が中に入って遊んだりする遊具だ


紬「あれだわ!」

ゆっくり近づくと、腰を屈めおずおずと入って行く。

紬「中はちょっと狭いけど…寝るスペースはありそう! 今日はここにしましょう」

荷物を詰めている鞄を枕代わりにして寝てみる。

紬「足がちょっと外に出ちゃうけど寝れそう。鞄が枕にちょうどいいわぁ」

紬「風もいい具合で入って来て暑くないし。公園ってステキね~…」

紬「水道もあるから歯を磨いたり顔を洗ったりも出来るわね。お風呂は近くに銭湯があった筈だから…ご飯を切り詰めて行こう。明後日は唯ちゃん達と遊ぶ約束してるから臭いと怪しまれちゃうしね~女の子ですものね~」

もぞもぞ

紬「」モグモグ

紬「焼きそばパン…冷たい」モグモグ



夜────

紬「夜だと夏でも寒いのね…」

紬「…こうして制服をお布団代わりにしてっと…ちょっとは暖かくなったわ!」


紬「……」


ヒュ~ゥ~


紬「寂しい……」


紬「ううん…駄目駄目! こんなことでめげてちゃ! まだ二日目、まだまだ先は長いわ!」


紬「……冷たい風の中、ともえは公園のベンチで死体を見つけた」

紬「犯人はきっとあの人に違いない。そう思ったのも束の間! 後ろから来る影に気づかずともえは…!」


紬「……澪ちゃんがいたらなぁ」

ヒュ~ゥ~


紬「寝よう…」


ミーンミンミンミーン……

暑い…ここはどこだろう。

蝉の声がサウンドしてる…。
それに子供の声もする…。
まるで公園に来てるみたい。
公園? 公園……。

紬「」ガバッ

子供「うわっ生きてる!!!」
子供「沢庵ゾンビだーッ! 逃げろー!!!」
子供「きゃあ~」

紬「た、沢庵ゾンビ……」ガーン

ミーンミンミンミーン……

紬「それにしても暑いわぁ…」

ミーンミンミンミーン……

紬「そうだった…昨日は公園で寝たんだった…。」

紬「汗かいて気持ち悪い…何とかしなきゃ」


─────

紬「冷たくて気持ちいい~」

タオルを水に濡らし、それで顔などを拭く。

紬「(基地に戻って体も拭こっと!)」

餌をもらった野良猫のようにそそくさとドーム型の遊具に戻り、、、

紬「誰もいないよね…?」キョロキョロ



斎藤「(お嬢様……、……大きくなられて)」


─────

体も拭き終わり着替えも済み、さあどうしようかと思案する。

紬「またコンビニかしら…う~んでもあそこだと立ち読みしか出来ないし…。夏休みの勉強をそろそろ手をつけなきゃ。涼しくて勉強が出来てお金がいらない夢の様な場所…」


斎藤「(このままでは普通に一週間乗り切ってしまいそうだ…。お嬢様の適応能力を甘く見ていた。ここはちょっと助け船&本当のミッション内容に気づいてもらう為に…)」ピポパ

prrr prrr

紬「あら、斎藤からだわ」

紬「もしもし」

斎藤『お嬢様、お久しぶりでございます』

紬「前置きはいいわ。どうせどこかで監視してるのでしょう? 用件はなに? まだ規約は破ってないと思うのだけれど」

斎藤『はい。お嬢様は立派に『頼らずに』お過ごしになられてますね』

紬「言い方が嫌みね。何か言いたいことでもあるの?」

斎藤『お嬢様、ホテルにお泊まりになった時、あなたは泊まる対価に何をしましたか?』

紬「何を? お金を払って…それから…」

斎藤『そうです。対価にお金を払いました。それは頼る、とは違います。だから試練は継続中なわけです』

紬「何が言いたいのかしら?」

斎藤『お嬢様は今まで皆さんに払い続けたのではありませんか? その対価はいつ帰って来るんでしょうか?』

紬「軽音部のことを言っているなら怒るわよ?」

斎藤『お嬢様。この試練をただの一人で強く生き抜く為のものと思わないでください』

紬「どういうこと?」

斎藤『これ以上は自分で考えてください。くれぐれも誰も『頼らない』ようお願い致します。』

紬「ちょっと! 斎藤!」

斎藤『お嬢様にとって友達言うものはなんなのか、考えてみてください。後勉強をなさるなら図書館へ行ってはどうですか?』

ガチャリ、プーップー

紬「あぁもうっ! 斎藤ったらしっかり見てるし聞いてるし…。」

紬「私にとってみんなは…」

ミーンミンミンミーン……

紬「図書館行こう…」



図書館───

紬「涼しくて勉強が出来てお金がかからない……図書館って最高な所ね!」

紬「よいしょ、よいしょ」

紬「今日はここが閉まるまで勉強しよう!」フシュンッ

紬「」カキカキ
紬「」カキカキ
紬「」カキカキ
紬「」ぐぅ~…

紬「そう言えば朝御飯もお昼ご飯も食べてなかったわ…。となればスーパーで何か買って来なくっちゃ!」

スーパー───

紬「…おかしいわ! 昨日はこれ88円だったのに! 今日は128円…。……。……。株価かしら?」


斎藤「(そんな急に変動しませんよお嬢様!!!)」



図書館────

紬「夕方からじゃないと割引されないのね…知らなかったわ。お昼はおにぎりだけにして夕方安くなってからいっぱい買おっと」

紬「ご飯ご飯♪」

係員「すみません…こちらの方で飲食は禁止となってますので…。あちらの方に専用の場所があるのでそこでお願いします」

紬「ご、ごめんなさいっ」

紬「(ご飯食べるのだけでも一苦労ね…。今まで私がどれだけ恵まれていたかわかって来た気がするわ…。)」

食事コーナー───

紬「気をとり直していただきます♪」

和「あ、ムギ、お茶入る?」

紬「あ、お願いしていいかしら」

和「はいどうぞ」

紬「」ゴクゴク…
紬「ぷはぁっ! 生き返るー」

和「何かムギ変わった?」

紬「そ、そんなことないわ! 私はいつも通りぇえぇぇ和ちゃん!?」

和「今気付いたんだ…」

────

和「で、私も朝からここで勉強してて今お昼ご飯食べるとこなのよ。家でクーラーつけっぱなしでやるよりはいいかなって思って」

紬「そうだったの~。奇遇ね」

和「あれ? ムギ、お昼それだけ?」

紬「そ、そうなの! ダイエット中なの!」

和「ダイエットねぇ。ムギはそんなことしなくても十分痩せてると思うけど」

紬「そんなことないわっ! 見えないとこにお肉が……!」

和「そ、そうなんだ…。まあ無理し過ぎない程度に頑張って」

紬「頑張る! 和ちゃんは凄くスラッとしてて羨ましいわぁ」

和「そんなことないわよ。私も最近ちょっと太っちゃったかなって思ってたり…」

紬「」じ~

和「な、なに?」

紬「う~ん…いつもと変わらないような…」

和「ムギと一緒で見えないところが…ってやつよ」

紬「見えないのに太っている…恐怖よね!」

和「見えないからこそどう対処していいか…乙女の悩みよね」

紬「ふふ、和ちゃんが乙女って台詞」

和「似合わないのはわかってるわよ!」


それから和ちゃんと勉強することになりました。

和「ムギ、ここちょっと教えてくれない?」

紬「どこどこ? あっ、そこはね! こうやって…」

和「あっ、そっか…。ありがとう、ムギ」

紬「どういたしまて♪」

和「ムギはほんと頭いいよね」

紬「和ちゃん程じゃないわよ~」

和「私文系だからどうしても理数系がね…。ムギは得意よね。」

紬「どっちかと言えばね」

和「こうやって自分が苦手なところを教え合える友達がいると捗っていいわね」

紬「友達…。」

和「…ごめん、嫌だった?」

紬「えっ?」

和「ムギとあんまり話したこともないのに勝手に友達だなんて言っちゃって。唯が仲がいいからつい…ね」

紬「ううん、そんなことないわ。和ちゃんは私にとっても大切な友達よ」

和「…ありがとう。何か改めて言われると照れるわね」

紬「そうだね///」

和「さて、勉強に戻ろっか」

紬「うん」

────

和「」カキカキ

紬「」カキカキ

和「」カキカキ

紬「」チラッ

和「」カキカキ

紬「」カキカキ

和「」カキカキ

紬「」チラッ

和「……(何か見られてるわね)」

紬「(友達…。私は和ちゃんのわからないところを、和ちゃんは私のわからないところを教えあってる…対価を払い合ってるから友達…。でもそれは何か違う気がする…)」

───

和「うーーん、もう5時ね。私はそろそろ帰るけど…」

紬「じゃあ一緒に帰りましょうか」

和「そ。じゃあ帰りましょう」

───

紬「和ちゃんの家って唯ちゃん家に近いの?」

和「まあまあね。歩いて5分ってところかしら」

紬「へぇ~!」

紬「やっぱり幼なじみだからよく遊びに行ったり来たりしたの?!」

和「それはもうね。憂と二人で来たり私が行ったり、小学校の時は毎日どちらかの家で遊んでたわ」

紬「そうなんだぁ~いいなぁ~」

和「まあ最近じゃそれもほとんどなくなったけどね」

紬「やっぱり私達が唯ちゃんを独占してるから…?」オソルオソル

和「う~んそれもあるけど」

紬「あるんだ……」

和「冗談よ。やっぱり私が生徒会で忙しいし、唯は唯で軽音部に入ってるんだからそうなるのは当たり前なのよ」

紬「でも…和ちゃんは寂しくない?」

和「ちょっとだけ寂しいけどね。でも唯にあなた達みたいないい友達が出来て嬉しいって気持ちの方が強いわね。唯を通して私も仲良くなれたし。」

紬「そうね。……今でも唯ちゃんが一番の友達?」

和「友達に一番とかってつけるつもりはないけど、やっぱり唯は特別かしら」

紬「やっぱり!?」

和「心配って意味で特別ね」

紬「ふふ、な~んだ」

紬「……。ねぇ和ちゃん。友達って何かしら?」

和「どうしたの? 急に」

紬「ここ二、三日一人でいて…ずっと考えてたの」

和「夏休み入ってから唯達と会ってないんだ? それでもう寂しくなってそんなこと考えてるの?」

紬「うぅ…」

和「そうね~…私と唯の場合支え合い、かな」

紬「支え合い…?」

和「そう。私が唯を支えて、唯も私を支えてくれる。そんな関係じゃないかな、友達って。」

紬「唯ちゃんが和ちゃんを支えて……る?」

和「やっぱりそう思うわよね。確かに唯は見た目ああだけれど…内面とかで凄く支えられたりすることはたくさんあったわ。」

和「唯の何気ない言葉や仕草で私の心がね、凄く暖かくなるの。一緒にいて楽しくて、幸せで…唯を見てるとそんな気持ちにならない?」

紬「なるなる! 唯ちゃん空間よね!」

和「だから昔から世話焼きながらも一緒にいたのは…やっぱり私も唯に支えられてたからだと思うの」

紬「そうなんだ…」

支え合い…。

私…みんなをちゃんと支えられてるかしら…。


───

和ちゃんと別れてからずっと…これまでみんなと過ごして来た思い出を振り返っている。

紬「私は…お菓子を持って来て…」

それから何かした?

紬「何かした…? みんなを支えるようなこと…した?」

唯ちゃんは明るい雰囲気で、居るだけで場を暖かく出来る。
あの笑顔を見ただけで救われる気がして、辛い日だって勝手に慰められちゃう。
りっちゃんもそう。普段はお調子者だけど、みんなのことを誰よりも気を遣ってくれてて。
澪ちゃんや梓ちゃんは軽音部が脇にブレない為に、上手くブレーキになってる。
澪ちゃんは怖がりで恥ずかしがりだけど、軽音部の誰かが困ったりしてたら練習より優先して解決しようとしてくれる。
私のちょっとした態度にも気づいてくれてた。

なのに私は…なに?

お菓子を持って来て…
心配されて…
外から見守ってるつもりだけど…唯ちゃんみたいな明るさもなく、りっちゃんみたいな積極性もない。
澪ちゃんみたいに気づけない、梓ちゃんみたいにブレーキ役にもなれない。

私は…軽音部を、みんなを、全く支えてなんていなかったんじゃないだろうか

頭がぐらぐらするのは暑いせいだけじゃない。私は一人になって初めて気づかされたのだから。

紬「」トボトボ

友達というものは、外貨何かじゃ埋まらない。
私は何もないから、無意識に自分が、いえ、家柄が持っているそれで一生懸命埋めようとしていたんだわ。

でも、今じゃそんな家柄もない。

私はただの紬。

紬「私は…一人だったんだわ…」

みんなに囲まれて、それで勘違いして。

紬「うぅっ」

くしゃりと目の前が歪む。本当に軽音部のみんながどう思ってるかなんてわかりもしないのに。
嫌なことばかり考えて涙が止まらない。

紬「私なんて! 私なんて…!」

何もない、何も知らない自分が憎かった。


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