従業員「いらっしゃいま…」

紬「あ、あの! 大人一枚!」

従業員「えっ…あの」

紬「一週間お願いします!」フシュンッ

鼻息荒く言いおうせる紬だったが、従業員は紬の格好を見て困った表情で話始めた。

従業員「未成年の方は保護者同伴じゃないと…」

紬「(未成年は泊まれないなんて知らなかった…。けど何としても寝床を確保しないとっ)」

紬「私は未成年じゃ(ry」

従業員「それ桜ヶ丘高の制服ですよね?」

紬「し、しまったぁ!」


斎藤「(お嬢様ァァァァァァ)」

──────

紬「ホテルは未成年だけじゃ泊まれないものなのね…また一つ勉強になったわ! お父様達は偉大ね…」


斎藤「(さて、どうするんですかお嬢様)」



紬「着替えは持って来てるからどこかで着替えてもう一回チャレンジよ!」フシュンッ



斎藤「(嗚呼、お嬢様がどんどんズル賢(ry じゃない賢く…!)」


別のホテル───

紬「(なるべく大人っぽいの選んだからバレないはず…!)」

「おい…あれどこの令嬢だ?」

「美しい…」

支配人「こんな薄汚いホテルに一輪の花が!」


斎藤「(さすが琴吹財閥のお嬢様…まるで今からパーティーに向かうような…ってなんでそんなドレス持って来たんですかお嬢様!!)」


紬「よろしくて?」

従業員「は、はいっ!」

紬「一週間、泊まりたいのだけど」

従業員「一週間、しゅ、宿泊ですね! ここにお、お名前と住所と年齢と電話番号を…」

紬「ええ。(歳はごまかして二十歳にしとこっと)」サラサラサラ

従業員「え~と、一週間になると35000円になります。先払いでお願いします!」

紬「えっ…?」


斎藤「(泊まるのは意外と高いんですよお嬢様)」


従業員「あ、あの…」

紬「(今手持ちが一万円しかないから…二日しか泊まれない…。)」

紬「あの、やっぱり二日…」

従業員「二日…に致しますか?」

紬「(待って! そうするとこの先無一文で過ごすことになるわ! ご飯とかも頼れないから買わないと…)」

紬「い、一泊でお願いするわ」

従業員「? 一泊でいいんですか? わかりました。5000円になります。こちらが鍵になりますので。333号室です」

紬「はい…」



斎藤「(初日はこれで何とかなったか…。でも明日以降どうしますか、お嬢様?)」


ホテル──────

紬「333号室…333号室…あった! ここだわ!」

鍵を入れガチャリと回し開ける。中の広さは約6畳半といったところだろうか。
部屋にはテレビ、ベッド、ポット、ドライヤーなどがあるだけで閑散としている。

紬「うんしょ…と」

担いでいる荷物を床に下ろし、ベッドに俯せなる紬。

紬「クンクン……知らない匂い。」

紬「後6日も大丈夫かしら…私…」

紬「唯ちゃん…澪ちゃん…りっちゃん…梓ちゃん…」

紬「私負けないからっ!」

紬「だから…むにゃむにゃ……」

紬「くぅ……」

対面のビル 屋上───


斎藤「お嬢様!寝る前に歯を磨かがないと! お嬢様ーっ!」


────

prrr prrr

紬「ん…何かしら…」

部屋についている電話で覚醒を促された紬。虚ろながらそれを取ると、眠そうな声で「もしもし」と答えた。

従業員『おはようございます。下の食堂で朝御飯が用意されてますので、よろしかったらどうぞ』

紬「あ、ありがとうございます」

従業員『では』

ガチャリ

ぐぅ~…

紬「そう言えば昨日のお昼から何も食べてなかったわ…お腹減った」

手早く準備を整え部屋を出る。

隣の人「ふぁ~…」

紬「あっ、おはようございます! あなたも今から朝御飯ですか?」

隣の人「えっ、そうだけど」

紬「良かったら一緒に行きませんか!」

隣の人「べ、別にいいけど…」

紬「じゃあ行きましょう!(お隣さんとは仲良くしなきゃいけないんだよね! 後から何か持ってった方がいいかしら?)」

隣の人「……」

紬「」じ~

隣の人「えっと…」

紬「」じ~

隣の人「あの~」

紬「あっ、はい! 何ですか?」

隣の人「バイキングだから、ほら、そこにあるお皿で好きなやつを取ればいいんだよ」

紬「好きなやつをとっていいんですか!?」キラキラ

隣の人「そ、そりゃバイキングですから…」

紬「一人何個までですか?」

隣の人「何個でも。食べ放題のバイキングだから」

紬「食べ放題!!? そんなことしたらお店潰れちゃいませんか!?」

隣の人「みんなそんなに食べれないから…」

紬「あっ、それもですね」

隣の人「(変わった子だな…)」

紬「これが食べ放題なんて信じられないわ! 今度唯ちゃん達も連れて来ないと!」

隣の人「え~とこれ泊まった人は無料だけど普通に食べるなら結構高いんだ」

紬「そうなんですか?」

隣の人「うん。だからこのバイキング目当てのついでに泊まるって人もいるよ。ホテル側もそれが狙いだろうね」

紬「じゃあ今度唯ちゃん達と泊まりに来なきゃっ!」

隣の人「えっと、君この辺りの人なの?」

紬「はい! 桜ヶ丘町です!」

隣の人「それなら泊まらなくても直接バイキングに行った方がさすがに安いよ。というか…なんで泊まってるの?」

紬「試練です!(ここでいっぱい食べてお昼代を浮かさなきゃ!)」モグモグ

隣の人「(変わった子だな~)」


食後────

紬「隣の人もいい人だしここに泊まって良かったわぁ。夜になったらもっと安いホテル探さなきゃ! 一泊1000円ぐらいでご飯つきのホテルないかしら…」

prrr prrr

紬「またホテルの人からお電話かしら。次はデザートかな? …さっきちょっと食べ過ぎたからデザートは…。勿体無いけど断らなきゃ」

紬「もしもし。すいませんデザートは遠慮(ry」

従業員『12時にチェックアウトなのでよろしくお願いしますね』

紬「チェックアウト?」

従業員『はい。うちは12時には出てもらうような形にしてますので。よろしくお願いしますね』

ガチャリ

紬「……一泊って泊まった時間から24時間じゃないのね…」


コンコンッ

隣の人「ん? シーツの回収かな?」

隣の人「開いてますよ~」

ガチャリ

紬「あのっ…」

隣の人「えっ、あ、さっきの。どうしたの?(男の一人部屋に来るか普通…)」

紬「私…もうチェックアウトしなくちゃいけなくて…」

隣の人「そうなんだ…」

紬「だからっ! 私…!!」

隣の人「(まさかこのシチュエーションは告白とか!? いやいやまてあり得ない…こんな可愛い子が俺なんかに)」

紬「最後にどうしても渡したいものがあって…!」

隣の人「う、うん(アドレスか電話番号クルー!?)」

紬「これっ!」

隣の人「……鶴?」

紬「そう! 鶴です! 一生懸命折りました!」

隣の人「…またなんで鶴?」

紬「お隣さんには贈り物とかしなくちゃいけないって知ってるんですけど…その…渡すものがなくて」

隣の人「へ?」

紬「だからせめて気持ちを込めて折った鶴だけでも!」ググイッ

真剣な表情で鶴を押し出す紬。

隣の人「(隣の人にもの配るってそれマンションとかの話じゃ…。でもここでもらわないわけにもなぁ…)」

隣の人「わかったよ、ありがとう」

紬「喜んでもらって良かった♪」

隣の人「(暖かい子だな…)」



斎藤「しまった、寝ていた。あれ? いないっ! お嬢様!? お嬢様!!! お嬢様ァァァァァァ!」



二日目───

紬「お金は後5000円…さっきホテルを回ってみたけど…どこも5000円ぐらいするのね~。カプセルホテル?ってところが唯一安かったけど…」

紬「カプセルホテルって何のカプセルかしら?タイムカプセル?」


斎藤「(お嬢様ご無事で何よりです! カプセルホテルというの小さい筒状の部屋のことですよ!初体験の人がカプセルホテルに泊まると大体鬱になるそうですからやめておいた方がいいです!)」

紬「ご飯のことも考えないといけないし…ホテルはもう無理かしら。どこで寝よう…」ウロウロ

紬「暑いわぁ…涼めるところ…」

ピーポーン

ありがとうございました~

紬「!」キュピーン


コンビニ───

紬「りっちゃんがコンビニは避暑地だ! って言ってたのがわかるわ~。まさしくオアシスね! ここに住めればいいのに~」

紬「本でも立ち読みしましょ」

紬「(立ち読みなんて悪い子だわ私! でも生きるためだもんね!)」

コンビニ店員「(あの子可愛いな~)」


数時間後───

紬「腕が…。立ち読みって体力いるのね…」

紬「そろそろ日も落ちて涼しくなったことだし出て寝場所を…」

コンビニ店員「じ~」

紬「……」

コンビニ店員「じ~」

紬「(見られてる!? そ、そうよね…あれだけ本を読んで無断で立ち去ろうなんていけないことだわ…。何か買わなきゃ…!)」

紬「あっ、駄菓子売ってる! これにしよう」

コンビニ店員「(可愛いなぁ~和むわぁ)」

紬「美味しい♪」はむはむ


斎藤「(コンビニで三時間立ち読みとは……やりますねお嬢様)」


紬「あっ…50円も使っちゃった」

紬「後4950円で6日だから…一日825円かぁ。一食だと300円も使えないわね…」

紬「今日の夜ご飯何にしよう…。今日は朝御飯とお昼ご飯代は浮いたから夜ご飯に825円そのまま使えるけど…ううん。今日300円にして明日からの分に回しましょう。節約しなきゃ!」


スーパー────

紬「凄いわ! パンが59円!おにぎり88円! 飲み物78円! ここは天国!?」


斎藤「(スーパーに目覚めましたねお嬢様。普段高い買い物ばかりしているとスーパーなどで安過ぎて目移りしてしまうものです)」


紬「澪ちゃんの好きな焼きそばパンもある~。30%引きで95円、これにしましょ! 後はパックの午後の紅茶250ml! 78円! しめて173円! 安過ぎてバチが当たりそう!」

憂「あれ? 紬さん?」

紬「あ、憂ちゃん。お買い物かしら?」

憂「はい。夕御飯の買い物で」

紬「そう、今日のご飯はなぁに?」

憂「お姉ちゃんが好きなハンバーグです」

紬「唯ちゃんハンバーグ大好きだもんね! 憂ちゃんのハンバーグ食べてみたいわぁ~」

斎藤「(平沢憂、危険度★★★★★ まず間違いなくお嬢様を誘うはず…不味いな)」


憂「良かったら紬さんも一緒にどうですか? お姉ちゃんも喜びます」



斎藤「(この場合聞かれてる為、うんと言った瞬間ミッション失敗…。お嬢様…っ!)」



紬「……気持ちはありがとう、憂ちゃん。でも私にはご飯あるから」

憂「ご飯って…」

憂は紬が手に持っている焼きそばパンを見て、言いづらそうに目をしばたかせてる。

紬「ごめんね憂ちゃん。でも私にはどうしてもやらなきゃ駄目なことがあるから…行けないの」

憂「紬さん…」



斎藤「(……)」ツゥ───

斎藤「(はっ! お嬢様のあまりの志しの高さに涙が……。この人なら大丈夫だろう……この先の琴吹家を担っていける。そう確信した…。任務完…じゃない。それはダミー任務だったな。本当の任務はお嬢様が軽音楽部のご友学とどのような関係であるかを主人に見せるためだった!)」


憂「わかりました。けど…ちゃんと野菜もとってくださいね」

紬「うん、わかったわ。」よしよし

憂「…///」


────

憂「じゃあ私こっちなので」

紬「えぇ。このことは唯ちゃんには内緒にしててね」

憂「はい…。」

心配しながらも言ったことは守ります、といったニュアンスのはい、だった。

憂は紬に手を振りながらゆっくり、ゆっくり帰って行った。

紬「ほんとに憂ちゃんはいい妹ね。唯ちゃんが羨ましい…。」


紬「どこに泊まろうかな…」トボトボ




斎藤「(お嬢様…)」


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