山の里ぉ~ 山の里ぉに到着です
唯 「着いたよ! あずにゃん」
梓 「はい」
唯 「あそこにトイレがあるよ 走ろっ」
梓 「はっ、はい」
唯 「あずにゃん、頑張れ」
唯 「間に合ってよかったね」
梓 「よかったです」
唯 「静かな駅だね」
梓 「ここ、無人駅です」
ぐぅ~
唯 「おなかすいたね」
梓 「駅の外におそば屋さんが見えます」
唯 「あそこで、食べよっか」
梓 「はい」
唯 「あっ、でももう財布からっぽだ……」
梓 「大丈夫です。あずさ、お金持ってますよ」
唯 「ほんとに!」
梓 「はい、お兄ちゃんみたいに無駄遣いしませんから」
唯 「いくら持ってるの?」
梓 「100円玉5枚です。うまい棒いっぱい買えます」
唯 「あずにゃん、うまい棒好きだもんね」
梓 「はい」
唯 「となりのコンビニで小さいお弁当買おっか」
唯 「駅で食べるお弁当、おいしいね」
梓 「はい。おいしいです」
唯 「あずにゃん、いっぱい食べていいからね」
梓 「タマゴ焼きおいしい」
唯 「うん」
梓 「お兄ちゃんには梅干しあげます」
唯 「あずにゃん、梅干しきらいなの?」
梓 「そっ、そんなことないですよ!」
唯 「じゃあ、梅干しいただきまーす」
にゃあ
梓 「ネコです」
唯 「野らかなぁ」
にゃ~ん
唯 「そっか、おなかすいてるんだ」
梓 「分けてあげましょう」
唯 「あずにゃん、優しいね」
唯 「ごちそうさま~♪」
梓 「ごちそうさまでした」
1番線に電車が参りま~す
唯 「電車、来たよ」
梓 「にゃんこ、ばいばい」
にゃあ~
ガタンゴトン ゴトンガタン
梓 「パパの駅はまだですか?」
唯 「う~ん……もうちょっとかな」
梓 「もうちょっとってどのくらいですか?」
唯 「次の次の次くらいの駅だよ」
梓 「つぎのつぎのつぎ」
唯 「そうだよ」
ガタンゴトン ゴトンガタン
ガタンゴトン ゴトンガタン
梓 「あずさ、気になってることがあります」
唯 「どうしたの? あずにゃん」
梓 「宇宙はどこまで続いてるんですか?」
唯 「さあ、どこまでなんだろうねぇ」
梓 「お布団に入るとそれが心配で眠れないんです」
唯 「あずにゃんが、心配しなくていいんだよ♪」
ガタンゴトン ゴトンガタン
ガタンゴトン ゴトンガタン
梓 「もうひとつ、気になってることがあります」
唯 「なに? あずにゃん」
梓 「みんな、死んだらどうなるんですか?」
唯 「さあ……どうなるんだろうね」
ゴーゴーゴー
唯 「あっ、最後のトンネルに入ったよ」
梓 「すごいです。 真っ暗です!」
ゴーゴーゴー
梓 「電燈が弓矢みたいに飛んでいきます」
唯 「ほんとだ、面白いね」
梓 「窓にあずさたちの顔映ってます」
唯 「窓に映ってるわたしたち、仲良しさんだね」
梓 「はい――でもトンネル長いです」
唯 「5分くらいだったかな」
梓 「トンネル、ほんとに出口あるんですか?」
唯 「だいじょうぶ♪ もうすぐだよ」
梓 「トンネル抜けました!」
ガタンゴトン ゴトンガタン
唯 「ねっ」
次はしおみ町、しおみ町ぃ~ 終点です
唯 「着いたよ、あずにゃん」
梓 「長かったですね」
唯 「あずにゃん、ドアとホームの間、空いてるから気をつけてね」
梓 「はい――さっちゃんはねっ♪ さっちこってゆ~んだ ほんとはねっ♪」
唯 (あずにゃん、ご機嫌だなぁ)
梓 「だけどちっちゃいか~ら ふふんふ ふん ふんふん……」
唯 (歌詞覚えてないんだ……かわいい)
唯 「改札通るから切符持った?」
梓 「はい」
唯 「……あれっ!?」
梓 「どうしたんですか」
唯 「わたしの切符がない!」
梓 「どうしよう、どうしよう」
唯 「どこかに落としたのかなぁ」
梓 「困った、困った」
唯 「大丈夫だよ! 駅員さんに説明すれば」
梓 「本当ですか」
唯 「たぶん……」
唯 「だから、そのぅ、ボクがどこかで切符落としたみたいで……」
駅員 「はぁ」 (弱ったなぁ)
唯 「その、だから、えーとボクは……」
駅員 (自分のことボクとか言って変な子だな)
唯 「だから、ボクはちゃんと切符は買ってて」
駅員 「できれば、料金を払ってくれないかな」
唯 「そんなぁ……」
梓 「お兄ちゃんをいじめるな!」
駅員 「 !? 」
梓 「お兄ちゃん、ちゃんと切符買いました! あずさ、知ってます!」
駅員 「お兄ちゃんって……別に疑ってるわけじゃ」
梓 「ウソです! お兄ちゃんをいじめるヤツ、悪者です!」
唯 「あずにゃん……」
駅員 「こっちは、料金を払えばいいって言ってるんだから」
梓 「いじめるな! えいっ! えいっ! えいっ!」
駅員 「痛っ、ちょっとおい」
唯 「あずにゃん、そんなことしちゃ……」
梓 「うあああああああああああああああああああああん」
駅員 (そんな大声で泣くなよ。うるさいなぁ)
梓 「ああああああああああああああああああああああああ」
梓 「ああああああああああああああああああああ」
駅員 「わっかたから、もう改札通っていいよ」
唯 「はい」
駅員 「今度同じことがあったら絶対、払ってもらうからね」
唯 「はい、ごめんなさい」
梓 「ああああああん うああああああああああああああ」
駅員 「絶対だからね」
唯 「あずにゃん……行こう……」
梓 「あああああああああああああああああああん」
唯 「よしよし」
…
梓 「ひくっ、ひぅ……ひぅっ」
唯 「もうすぐ着くよ。あずにゃん」
梓 「もう……ひくっ……すぐですか」
唯 「まだ、歩ける?」
梓 「へっちゃらです」
唯 「あの坂をのぼったらだよ」
梓 「坂の向こうに、パパがいるんですか?」
唯 「そうだよ」
梓 「坂、長いです。ずっと続いてます」
梓 「いち、にっ」
唯 「さん、しっ」
梓 「よいこらしょっ」
唯 「はあ~、もうちょっとだね♪」
梓 「はい――あっ! この匂い!」
テテテテテテッ
唯 「走ったら危ないよ♪」
梓 「海です!」
ザブ~ン ざぁざぁ
梓 「カモメもいます!」
唯 「あずにゃん、待ってよぉ」
梓 「お兄ちゃん、はやくっ、海ですよ!」
唯 「広いね」
梓 「波です! 誰もいません」
唯 「ちょっと、砂浜、歩こう」
梓 「足元、ざくさく言ってます」
唯 「裸足になると気持ちいよ」
梓 「くすぐったいです」
唯 「足の指に入ってくるね」
梓 「あそこに、ビン落ちてますよ」
唯 「あずにゃんは見つけるのうまいね」
梓 「緑のビン、きらきらきれいです」
唯 「疲れたね。ちょっと座ろう」
梓 「ひざで抱っこしてください」
唯 「ほらっ、おいで」
ザブ~ン ざぁざぁ
梓 「パパ、どこにいるんですか?」
唯 「きっと、あの海のずっとむこうだよ」
梓 「あの夕日が沈んでるところですか」
唯 「そうだよ」
梓 「遠いです」
唯 「だからビンに書類いれて送ってあげようね」
梓 「はい」
梓 「イヌの絵も折りツルも入れます」
ザブ~ン ざぁざぁ
梓 「じゃあね、ばいばい」
唯 「ばいばい」
梓 「ちゃんと届けてください、お願いです」
ザブ~ン ざぁざぁ
唯 「あずにゃん、こっちおいで」
梓 「ちょっと寒くなってきました」
唯 「でも、あずにゃんがいれば、わたしはあったかいよ」
梓 「お兄ちゃん、大好きです」
唯 「夕日……きれいだね」
~ 終わり ~
最終更新:2011年01月12日 20:59