梓「あっ・・・」

唯「あずにゃん、あったかい・・・」

梓「すっ、すいません・・・なっ、なんていうか、ぜんぜん小さいですけど・・・」

唯「そんなことないよ・・・あずにゃん」

唯先輩が頬を寄せてくる。唯先輩の右手は私のブレザーの中

薄暗い公園で人の気配はないけど、こんなとこ誰かに見られたら。

唯「どうしたの?あずにゃん、浮かない顔して」

梓「い、いえ・・・なんでもないです。ゆ、唯先輩、もういちど・・・」
言い終えるより先に唯先輩の唇が私の唇に重なってくる。

梓「な、なんか、見透かされてるみたいですね」

唯「えへへ、あずにゃんのことならわかるよ」

梓「わ、私、あの、ゆ、唯先輩のもさわってみたいな、って・・・」

唯「あずにゃんてばぁ・・・赤くなってるよ」

梓「へ?へ、そ、そんな・・・」

唯「もう、照れちゃって。いいよ、あずにゃん」

梓「・・・そっ、それじゃあ・・・」


律「なぁ、澪。最近、唯と梓、なんか変じゃないか?」
遠くから聞こえて来る声。私と唯先輩は慌てて木陰に隠れた。

澪「そうか?よくわからないけど、どこらへんが?」

律「どこらへんがって言われると困るんだけど。あいつら最近、仲よすぎじゃないか?」

澪「うーん、それは前からじゃないか?」

律「いや、唯は前からだけど。梓が唯をぜんぜん拒否しなくなったつーか」

澪「考えすぎだろ。梓もいい加減慣れたっていうか・・・拒否するの面倒臭くなったんだろ」

律「そうかなー」

二人の話し声が遠ざかっていく

唯「はぁーっ、びっくりした・・・」

梓「私もです。心臓が飛び出るかと」

唯「はぁーっ、帰ろうか。今度からは場所を考えないと」

梓「そ、そうですね・・・」

唯「肩を落としてどうしたの?あずにゃん。今度さわらせてあげるから」

梓「そっ、そんなんじゃ・・・」

唯「・・・」

梓「も、もういち・・・んっ」

また見透かされてる。


……

唯「旅行?」

憂「うん、お父さんとお母さんが12月イタリアに行くからついて行こうかなって。お姉ちゃんも行くでしょ?久しぶりに家族4人で行こうよ!」

唯「う、うーん・・・」

憂「やっぱり、受験勉強忙しい?」

唯「そうだねえ・・・」

憂「じゃ、じゃあ私も行かない。ごめんね、お姉ちゃん。やっぱり大事な時期だもんね」

唯「イタリア行きたいって言ってなかった?。私はいいから行ってきなよ憂!」

憂「う、ううん。いいの。やっぱりお姉ちゃんと家に居る」


純「あずさーどうしたの?ボーッとして」

梓「あ、え?な、なんでもない」

純「ちょっとー、なんかあたしの胸ばっか見てない?」

更衣室。3時間目は体育。

梓「み、見てないって」

純「梓の胸はぜんぜん成長しないね」

梓「・・・やっぱり。そうかな」

純「えっえっ?やだなー、気にしてた?な、なんかいつもと違うよ梓。ね、ねえ?憂」

憂「う、うん。梓ちゃん体調でも悪いの?」

梓「はぁ・・・」

純「こ、今度は憂の胸見てるし」

梓「いいなあ・・・」

憂「あっ、梓ちゃんも着痩せするタイプだし結構あると思うよ?」

純「そうかなあ?」

憂「ちょっ、ちょっと純ちゃん!」

純「ごめんごめん、ひょっとして梓、彼氏でもできた?」

梓「はぁ・・・」




(数ヶ月前)

梓「おばあちゃん、喜んでましたね」

唯「あずにゃんのおかげだよ。ありがとう」

梓「ちょ、ちょっと抱きつかないでくださいよ」

唯「あずにゃん。ちょっとお話してこうよ」

二人で練習した河原だった。

梓「え、もう遅いですし・・・」

唯「えぇ~じゃあ5分だけ、ね?あずにゃん」

唯「なにを話そっか?あずにゃん」

梓「なにって・・・先輩が言い出したんじゃないですか。なにもないなら帰りますよ」

唯「あーずにゃん」

梓「もう」

唯「あずにゃんの髪いいにおい」

梓「そ、そうですか・・・ちょっと嗅がないでくださいよ」

唯「シャンプーなに使ってんの?」

梓「ふ、普通のやつですよ。それより唯先輩、そろそろ離してくださいよ」

唯「あずにゃんのケチ。じゃあじゃあ、手、繋ぐ?」

梓「え、え?」

唯「いいじゃん。はい」

梓「な、なんか照れますけど・・・」

唯「・・・あずにゃんの手、小さい」

梓「もう!何度もさわったことあるじゃないですか」

唯「だって、こんな風にちゃんと繋いだことなかったよね」

梓「そ、そうですね。逆に照れます」

唯「そう言わずに、もっとこっち来なよ、あずにゃん」

梓「はっ、はい・・・」

唯「あずにゃんて好きな男の子とかいるの?」

梓「どうしたんですか?突然」

唯「私、もう高3だけど、ぜんぜん恋愛とかわからないんだよ。あずにゃん」

梓「なんか、唯先輩らしからぬ真面目な話ですね」

唯「うーん、私って変なんなのかなあ・・・」

梓「そんなことないと思いますよ。私も、その、なんていうか、そういうのよくわから
ないですし・・・」

唯「憂とかはあるのかなあ・・・」

梓「どうですかね・・・私は聞いたことないですけど」

唯「そっかあ」

梓「あ、でも、純とかはドラマに出てる俳優が好きとか言ってましたよ」

唯「おお!さすが純ちゃんはおませだなあ」

梓「おませって・・・私たちが遅れてるだけですよ」

唯「ねぇ、あずにゃん。いつか、その・・・彼氏とかできたらキスとかするんだよね?」

梓「なっ、何の話ですか?そ、そりゃ、恋人同士だったらそういう事もすると思いますけど・・・」

唯「私、心配なんだよ。ちゃんとできるか」

梓「何言ってるんですか、唯先輩。そういう心配は彼氏ができてからしてください」

唯「う~ん。でも、不安だし。あずにゃん練習してみない?」

梓「あ?へ?むっ、無理ですよ。わ、私、女ですよ!」

唯「う~ん、やっぱり無理か」

梓「無理に決まってるじゃないですか!それより唯先輩、顔近いです」

唯「ただの練習だよ」

梓「むっ、無理です」

唯「ちぇっ、あずにゃんはつれないんだから」

梓「・・・」

唯「どうしたの?あずにゃん。赤くなってるよ」

梓「それは・・・唯先輩が変なこと言い出すから!」

唯「ただの練習だって」

梓「練習?」

唯「そう。あずにゃんだって将来彼氏ができたら、緊張せずにできるの?」

梓「だ、大丈夫ですよ・・・」

唯「私が相手でもそんな緊張してるのに?」

梓「なっ、なんか唯先輩に指摘されると悔しいですね。たっ、ただの練習ですもんね?」

唯「そうだよ、あずにゃん。ただの練習なんだから、力を抜いて」

梓「で、わ、私はどうすれば・・・」

唯「そうだなぁ・・・私が映画で見たのは目をつぶってた」

梓「そ、それじゃあ・・・目をつぶったらいいですか?」

唯「うん、あずにゃんは目を閉じて。体を私にまかせなさい!」

梓「な、なんか不安だなあ・・・こ、こうですか?」

唯「じゃ、じゃあ、いくよ」

梓「はっ、はい・・・」

唯「ちょっとあずにゃん、首が仰け反ってる」

梓「ゆ、唯先輩!緊張するからはや・・・んっ、」

唯「・・・・・・」

梓「・・・・・・」

唯「あずにゃん」

梓「す、すいません・・・へんなあじしませんでしたか?」

唯「大丈夫だよ。とっても柔らかかったよ」

梓「そ、そうですか・・・な、ならよかったですけど」

唯「ねぇ、あずにゃんはどんな感じがした」

梓「あ、えっと・・・緊張でよく・・・」

唯「もう一回、目をつぶって」

梓「え、は・・・はい」

唯「キスするよ?」

梓「も、もう、今更訊かなくていいから早くしてくださいよ」

唯「あずにゃん・・・」

梓「んっ・・・ゆ・・先輩・・ぁ」



(現在)

唯「どうしたの?あずにゃん」

梓「いえ・・・ちょっと前のことを思い出してて」

唯「なんのこと?」

梓「唯先輩と、その・・・初めてキスした時のことです」

唯「エヘヘ・・・どうしたの?あずにゃん、急に」

梓「ここに、この河原に来ると・・・あの時のことを思い出すっていうか」

唯「あずにゃんてばあ~」

梓「思い出の場所ですから。唯先輩との初キスの場所」

唯「ほれ、もっとこっちへおいで」

  唯先輩の肩にもたれかかる。とても落ち着く。


梓「私、唯先輩ともっとたくさん思い出作りたいです」

唯「私もだよ。あずにゃん。あ、そういえば、来週の土曜と日曜なんだけど」

梓「ああ、憂がイタリアへ旅行に行くんですよね。で、唯先輩は受験勉強で残るんですよね?私、何か食べ物差し入れしますよ」

唯「ほんと?あずにゃん大好き!」

梓「わ、私も大好きです・・・」

唯「土曜日、泊まる?」

梓「え、え、でも・・・」

唯「だめ?あずにゃんが来てくれないと寂しくて勉強が手につかないよ」

梓「そ、そういうことなら、し、仕方ないですよね?」

唯「うふふ、そうだよ。あずにゃん」


(土曜日)

憂「今日の夕食が冷蔵庫の上の段、下の段が明日の夕食だよ。お昼はコンビニで買ってきてね。それから―」

唯「大丈夫だよ。憂」

憂「でも・・・」

唯「ほら、もう行かないと飛行機の時間に間に合わないよ」

憂「な、なにかあったらすぐ電話してね。イタリアでも携帯大丈夫みたいだから」

唯「うん。いってらっしゃい」

憂「いってきます!おみやげ買ってくるからね」

父「じゃあ、あとはたのんだぞ」

唯「はーい」

母「じゃあね、いってきます」

唯「いってらっしゃーい!」


唯「これがあずにゃんの分のタオルで・・・あれ、歯ブラシはあずにゃん持ってくるのかなあ?」


唯「あ、もしもしあずにゃん?うん、歯ブラシはいる?うん、わかった。じゃあ寝巻は?うん、うん。わかった、じゃあ4時くらいね。うん、あずにゃん、楽しみだね。じゃあ、あとでね」


唯「あれ?布団はどうしよう?うーん、一緒のベットでいいよね。あずにゃん小さいし。枕はどうしよう・・・えーっと、枕、枕」

……

梓「着替え、着替えっと・・・うっ、どうしよう。どんな下着を持っていけば・・・って、べっ、別に見られるわけじゃないんだし、なに考えてるんだろ私ってば」


梓「あ、電話・・・・・・はっ、はい。あっ、唯先輩。は、歯ブラシですか?あ、はい、持って行きます。寝巻?ですか、はい、それも・・・はい、えーっとですね、4時くらいには唯先輩の家に行けると思います。はっ、はい。私もです。はい。あとで」


梓「でも待てよ・・・唯先輩が一緒にお風呂入ろうとか言い出したら・・・う、うーん、白?子供っぽいかな・・・水色?ピンク?どうしよう、なんかドキドキしてきた」


(夕方)

唯「あずにゃん遅いなあ」

ピンポーン

唯「おっ!あずにゃーん」

ガチャ

梓「あ、お、遅くなってすみません・・・唯先輩に食べてもらおうと思ってサンドイッチ作ってたら時間かかってしまって」

唯「わぁ、ありがとう!あずにゃん」

梓「ちょ・・・誰かに見られますよ」

唯「うーん、やっぱりあずにゃんいいにおい。さぁ上がって上がって」

梓「は、はい。お、お邪魔します・・・」


唯の部屋。

梓「あ、唯先輩。ちゃんと勉強してたんだ」

唯「うん、あずにゃんが来る前に終わらせようと思ったんだけど、ぜんぜん進まなかったんだよ」

梓「そ、そうですか・・・」

唯「あずにゃんがお泊りに来てくれるって考えたら集中できなかったんだよ」

梓「なっ、なに言ってるんですか。だ、駄目じゃないですかちゃんと勉強しないと」

唯「まあまあ、あずにゃん、コートかして」

梓「あっありがとうございます・・・どうしたんですか、今日の唯先輩気がききますね」

唯「え~いつもそうだよ~ここにかけとくね。あ、あずにゃんかわいい服着てる」

梓「そうですか・・・普段セーターとかあんま着ないんですけど、ってまた抱きつかないで下さいよ」

唯「だってかわいいんだもん。誰も見てないよ?」

梓「そ・・・そうですけど。抱きつくならちゃ、ちゃんと後ろからじゃなくて・・・」

唯「これでいい?」

梓「はっ、いや・・・ほんとにやられるとドキドキします」

唯「・・・あずにゃん」

梓「す、すみません。勉強の邪魔しに来た訳じゃないのに」

唯「・・・」

梓「・・・」

唯「こっち向いてよ、あずにゃん」

梓「はっ、恥ずかしいですよ・・・」

唯「今日のあずにゃんはなにあじかなあ」

梓「なっ、なんですかそれ・・・んっ」

唯「あれ?いちご味だ」

梓「あ、ああ・・・さ、さっき飴食べてたから、そ、そのせいかと・・・」

唯「ちゅっ」

梓「んっ、あっ・・・せん・・ぱい」

唯「あずにゃん、かわいい」

梓「ゆ、唯先輩もか、かわいいです」

唯「ほんと?」

梓「は、はい。唯先輩の顔も声も全部好きです」

唯「あずにゃん、よしよし」

梓「ちょっ、子供みたいにしないでくださいよ」


……

18:00

梓「唯先輩、唯先輩!ちょっと起きてくださいよ!」

唯「あ・・・アレ?あずにゃん、なんでウチに」

梓「ちょっと、何寝ぼけてるんですか?勉強中ですよ!」

唯「あ、そうだった・・・へへへ」

梓「さぁ、はやく問題集の続きをやってください。唯先輩には大学に合格してもらわないといけないんですから!」

唯「へ?なんで?あずにゃん、私が卒業しても寂しくないんだあ、うわあ~ん」

梓「さ、寂しいに決まってるじゃないですか・・・」

唯「じゃあ、私、もう一回三年生やろうかな。あずにゃんも、憂も純ちゃんもいるし、みんなで修学旅行行きたいね」

梓「もう!怒りますよ?」

唯「えへ・・・冗談冗談。ごめん、あずにゃん」

梓「唯先輩は受験に合格して、先に大学行っててください・・・一年後、私も必ず唯先輩と同じ大学に行きますから!」

唯「うん・・・はやくあずにゃんと一緒に大学行けるようになりたいなあ」

梓「だったら、はやく勉強してください」


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