唯「ある高校に、廃部寸前の軽音部がありました。そこへひとりの女の子が入部して、ギターの人になって、めでたしめで……たし、じゃなくって」
梓「どっかで聞いたことがあるような、とっても身近に感じる話ですね」
唯「次の年、そこへとっても可愛らしい新入部員がやってきました。ギターの人は、その子にひと目惚れしてしまったのです」
梓「……ん」ドキドキ
唯「その子はギターがとっても上手で、気真面目な性格で……私に弾き方を教えてくれたり、叱ってくれたりして……でも、態度は冷たくっても、抱っこはさせてくれるのです」
梓「それ、もう自分語りになってますよね? 思い出ボムですよね?」
唯「そう、何ということでしょう。私がひと目惚れしたその新入部員のギターの人とは! あずにゃんだったのです!」ギュウ
梓「う、うう……やっぱりストレートすぎです……も、もうちょっと、雰囲気を大事にですね」ドキドキ
唯「……ごめんね。私、こういうのよくわかんないから……思ってることを、素直に言うしかないんじゃないかなって」フニフニ
梓「ん、んっ……わ、私だって、ステージの唯先輩にひと目惚れだったんですっ……なのに、実際に会ってみると、いい加減でだらしなくて、ひとりじゃ告白ひとつまともに出来ないしっ」ハウー
唯「ごめん、あずにゃん。遠回しに言われてもわかんない……私が勘違いしないように、はっきり言ってくれるかな?」
梓「……私! 告白される側が、その……いいな、って……だから」ウル
唯「……あずにゃん?」
梓「だから……私からは、絶対に言いません! もう、私の勘違いじゃないって確信しちゃってるんですけど……言いませんからね!」プイス
唯「そっか、うん……女の子だもんね。本当は私も告白されたかったんだけど、折角のチャンスをフイにしたくないし……」
梓「……告白、出来るんですか。言えるんですか。憂にセッティング頼んでたくせに」
唯「うん、憂に助けてもらわないと、こうやってあずにゃんを抱っこ出来なかったよね……私、ひとりじゃ何も出来ない駄目な子なんだよ」ギュー
梓「んっ……い、今のは、言いすぎました」キュ
唯「でもね? その、私っ……あずにゃんのこと、本当に、好き。大好きだよ。好きで好きで堪らないの」ギュ
梓「……ふぁ……」ポヤーン
唯「え、えっとね、お返事は後でもいいよ。あずにゃんが嫌だって言ったら、私はきっぱり諦めるし」
唯「この気持ちは忘れられそうにないけど……学校でも部活でも気まずくならないように、ちゃんと、『唯先輩』でいるから」
梓「そんな、演技で誤魔化せる程度の気持ちなんです?」ギュッ
唯「……ううん。でも、誤魔化さないと、あずにゃんを困らせちゃうから」グス
梓「……私の好きな『唯先輩』は、そんな演技は出来ない、不器用な人ですよ?」
唯「ふぇ?」
梓「演技なんか出来なくって、だから感情を素直に表に出しちゃって……だから、だから……こうやって抱っこされてる時は、とっても幸せなんです」
唯「あ、あずにゃん、それって……?」
梓「ぅん……そんでもって、鈍感なんです。自分から告白してくれたくせに、笑っちゃうくらい鈍感なんです」ギュー
唯「うっ、うん……鈍感で、不器用で、演技が下手で……でも。私、世界の誰よりもあずにゃんのことが好きだよ。それだけは自信ある」
梓「だと思ったから、逃げずに抱っこされたままでいるんです……大事にしてくれないと、私、すぐすねちゃいますからね?」
唯「うん……鈍感だって言われないように、一生懸命頑張ってあずにゃんを幸せにする。たまにはすねた顔も見せて欲しいけどね」スリスリ
梓「んっ……そっ、そーゆーのは、意地悪っていうんですよ」カアッ
唯「あずにゃん、好き……大好き」チュゥ
梓「んふ、ふ……ふあ……」チュ
唯「え、えへへっ。何か、あずにゃんに嫌われそうで、怖くて……これ以上は出来ないかなあ」テレテレ
梓「わっ、私も、お風呂に入ってないのに、これ以上されると……」テレッ
唯「え? お風呂?」
梓「え?」
唯「私、大人のキスのこと言ったつもりだったんだけど……あれ? もしかして、もっとえろっちぃことしてもよかった……のかな?」テレレ
梓「はわっ……い、いいえ! 大人のキスまでで! でも、お夕飯をいただいて、歯を磨いた後でお願いします!」アタフタ
唯「うっ……うん。お願いされちゃったからには、その期待に応えないとね!」フンス!
梓「あ、の、唯先輩……そんなに身構えなくても……」アセ
唯「……んへー。わかってるよ、ちゃんとギターの練習もするよ。でも……今夜はちょっと夜更かししちゃうかもね?」ニマー
梓「はう……ん、んんっ……駄目、ですよ……キスまでですからね、本当にそれ以上は駄目ですからね……?」ドキドキドキ
憂「おねーちゃーん! 梓ちゃーん! ご飯出来たよー!」
唯「う……」
梓「い……」
唯「残念、だね」
梓「でも、楽しみ……ですね」
唯「うん……あずにゃん、ご飯の前に、軽くもいっかいだけ……」ンー
梓「も、もお、唯先輩は……ちょっとくらい我慢してくださいよっ」チウッ
唯「んっ♪」チュー
梓「……はぁ。ほ、ほら、憂が待ってますよ」
唯「うん。憂のご飯は美味しいよぉ~♪」ギュ
梓「あ……手……」ギュッ
唯「行こ、あずにゃん?」ニコ
梓「は、はいっ……」ギュ
~おゆうはん!~
憂「お代わりあるから、沢山食べてね!」ニコニコ
唯「うん! 今日も美味しそー!」
梓「あのっ、唯先輩……手、離してくれないと、お箸が持てないですよ……」ドキドキ
憂「スプーンとフォーク持ってこようか?」ニコニコ
梓「うわあ!? そっ、そうじゃなくって!」バッ
唯「ううっ……束の間のお別れだよ、あずにゃぁん……食べ終わったらまた繋ごうね」
梓「とりあえず勉強は今日の目標まで終わらせたし、あとはお風呂とギターの練習じゃないんですか」
憂「お風呂はいつでも入れるようにしておくから、気にしないでいいよ~?」ニコニコ
梓「……何かものすごく嬉しそうだね、憂」
憂「え? そうかな?」ニコー
唯「さあ、あずにゃん! 冷めないうちにいただきます!」
梓「え、あ、はい。い、いただきます……」
憂「お赤飯炊こうと思ったんだけど、時間がなかったから……ごめんね」
梓「いや、わかってて言ってるんだろうけど……お赤飯関係ないから。炊かなくていいから」ウイー
憂「あ、うん。何か嬉しくって……梓ちゃん。不束者ですが、お姉ちゃんをよろしくお願いします」ペコリ
梓「それも何か違うと思うけど……まあ、私も、真剣に考えてるもん……はむっ」モグモグ
唯「あぅーん♪ 憂が作ってくれるご飯、今日も美味しーい♪」モグモグモグ
憂「あれ、お代わり早いね、お姉ちゃん。嬉しいと食が進むのかな?」ヒョイ
梓「……うん。私が作るより、ずっと美味しい……憂には敵わないな」モグモグ
憂「そんなことないと思うよ? 例えば、だけど……お姉ちゃんが梓ちゃんのおうちにお泊まりに行ったら、もっと美味しそうな顔するんじゃないかな」ボソ
梓「えっ?」
憂「お姉ちゃん、私に遠慮してるんだよ。いつもはもっとはっちゃけるもん」プイス
梓「憂……」
憂「……私でよければ、いつでもお料理教えてあげるから……ん、うん……改めて、お姉ちゃんをよろしくお願いします」ペコリ
梓「……うん。ここに並んでるメニューぐらいは作れないと、唯先輩、すぐに飽きちゃうもんね」
憂「後でレシピあげるね……さ、私達も食べよ?」グス
梓「うん……」
~おゆうはんのあと!~
唯「はー、お腹一杯。憂、ご馳走様だよ!」マンプク
憂「ふふっ、お粗末様」カチャカチャ
梓「私もご馳走様。美味しかったよ、憂」
憂「うん、梓ちゃんも沢山食べてくれてありがとう、作った甲斐があったよ」ニコー
唯「ああ、何かもうしやわせすぎて、ずーっとこのままでいたいぐらい。テストのことなんか忘れてさ」
梓「それは学生として一番忘れちゃいけないことだと思いますが!」クワッ
憂「お姉ちゃん……私、いくら何でも『ダブル平沢』とか呼ばれたくないよ……」ウルッ
唯「あ、『ダブり』と『ダブル』をかけてるんだね。うまい、座布団一枚っ」ピッ
梓「毎日毎日、クラス中から『先輩の方の平沢さん』とか、『先輩じゃない方の平沢さん』って申し訳なさそうに呼ばれるんですよ……憂が可哀想すぎませんか?」ジト
唯「いやあ……そう具体的に言われると、クるねぇ。うん。留年だけはしないように頑張るよ」アセアセ
憂「もし危なかったら私が代わりにテスト受けるから!」グッ
唯「おおっ!」タノモシー
梓「いや、憂……それは駄目でしょ。もしバレなくたって、唯先輩の為になんないし……」
唯「えー」
梓「いえ、そもそも学年違いますし……下手したら唯先輩が一学年下のテストで赤点取って、憂が留年ってことも充分考えられますよ?」
憂「……やっぱり応援だけにしとこうかな。梓ちゃんも、一杯応援してあげてね」ニコニコ
唯「あずにゃんの応援ですとな……?」ドキドキ
梓「……ふれー、ふれ-、唯先輩」ボウヨミッ
唯「おお! 不思議とやる気が出てきたよ!」ホワーン
梓「唯先輩の手綱取るの、意外に簡単なのかな」ボソ
憂「気分によってなかなか難しい時とか、何しても全然効果ない時もあるから。基本は飴と鞭だけど、色々試して行動パターンを把握してね」ボソソ
~おふろのじかん!~
唯「ね、ねぇ、あずにゃん……一緒に入らない?」モジモジ
梓「いっ、いきなり何てことをゆーんですか」ドキ
唯「憂に先に入ってもらってるから、その、ゆっくり出来るし……ふたりで湯船に浸かったら、お湯がざばーって減っちゃうけど、足せば大丈夫だし……」モジッ
梓「お湯の心配はしてませんっ!」クワッ
唯「ん……じゃ、じゃあ、どんな心配なのかな?」ドキドキ
梓「……えっちぃことされるんじゃないかって、そーゆー心配です」
唯「……しちゃ駄目なの?」
梓「告白した直後にキスまで済ませて、それ以上の何を望んでるんですかっ」クワッ
唯「抱っこやキス以上のえっちぃこともしたいです、はい!」ブッチャケ
梓「……別に一緒にお風呂入る必要ありませんよね? ていうか身の危険を感じるので、一緒は遠慮します」ドキドキ
唯「ええ~? だいじょぶだよ、変なことしないよ。危なくなんかないよ~?」
梓「だっ、だって……えっと……だ、だっ、だっ……」
唯「んうぅ?」
梓「抱っこは! 数えきれないくらいされましたけど! き、キスはっ……私、生まれて初めてだったんですからっ!」
唯「ええと……なるほどなるほど。つまりあずにゃんは、もっとキスしたいし、いちゃつきたいって言ってるんだね?」ニコー
梓「いえ、そうじゃなくってですね? まださっきのキスの感触も生々しく残ってるし、思い出すだけでも恥ずかしいのに、お互い裸になるとか絶対に無理ですっ!」ハワハワ
唯「もっぺんしよっか?」ダキッ
梓「にゃあ!? にゃ、にゃにゃにをですかっ」ワタワタワタ
唯「キス。子供の方の、だけど」
梓「あっ、ちょっと……もお、する気満々じゃないですかっ……こんなの、私、逃げられないですよぉ……」ドキドキ
唯「うん。逃がさないよ、あずにゃん……ちゅ、ちゅっ」チュチュッ
梓「うぅんっ、や、はぁぅ……どうしてほっぺなんですか……」ホワー
唯「あ。やっぱりお口がよかったんだ?」
梓「そーゆーことを言ってるんじゃなくって……その、無理矢理されると思った、から」カァァ
唯「無理矢理なんて、まだ出来ないよ。ついさっき恋人同士になったばっかりなのに」
梓「……『まだ』ですか。じゃあ、そのうちするつもりなんですね」
唯「する、かも。そーゆー雰囲気になった時とか……あずにゃんからおねだりされた時とかじゃないと、出来そうにないけど」テヘヘ
梓「そんなおねだりなんて、きっと私、相当おかしな気分になった時じゃないと言いませんよ?」プイ
唯「……私のおねだり、聞いてくれる? 別にえっちくないんだけど」ギュ
梓「一応、内容だけ伺っておきましょうか」
唯「私ね。あずにゃんに力一杯抱き締めてもらって、キスをたっくさんしてもらって、んで、んで……何度も『好き』って言って欲しいんだよ」ポッ
梓「……えっと。もうちょっと、難易度下げてもらえないですか? お付き合いし始めのカップルがすることじゃないですよねそれ」ドキドキ
唯「あ。想像してるでしょ、今。私があずにゃんにキスされるがままになってて、でもって……『好き』って言われる度に嬉しくてぞくぞくしちゃってるとこ」ポポッ
梓「どんだけ妄想魔なんですか私!? っていうか、そんな変態的な妄想がすらすら出てくるとか、唯先輩が普段何を考えてるか丸わかりですよ!?」ドキドキドキ
唯「えへ……考えたね? 今度こそ考えちゃったよね? 妄想の中の私は、どんな目であずにゃんのこと見てたかなぁ?」
梓「ん……と、とっても興奮してるような、とろんって潤んだ目で……上目遣いが可愛らしかったです……」ドキドキ
唯「そっかあ……今の私は、あずにゃんが押し倒したくなる程じゃないってゆーことかぁ」トホホ
梓「あっ、いえ、その……やっぱりお付き合い初日ですし! まだ現実味がないっていうか、キス以外はいつも通りですし!?」ワタワタ
唯「あー。うん、それもそうだよねえ。ごめんね、つい妄想が先走って、私達が健全なじょしこおせえだっていうのを忘れちゃってたよ……」ギュウ
梓「そう言うくせに、もっと強く抱っこしちゃうんですね、唯先輩は」ジー
唯「や、これは健全だし。きっと。あと、大人じゃないキスまでならしてもいいよね。きっと」ジー
梓「……はい、きっと。ちゃんとお互いの気持ちを合わせていけば、まぁ、そのうち自然な流れで健全じゃなくなるかもしれませんけどね。きっと」ンー
唯「……うん。私だけ焦って、あずにゃんに嫌われたくないもん……気を付ける、けど、とりあえず健全な範囲で……ちゅっ」チュー
梓「んぅ……ん、んっ……んむっ!?」レルッ
唯「はう、んぅぅ、ちゅう……ちゅむ」レロロ
梓「んふっ、ふぅ、ふぅっ……は、ぷは……し、舌っ! 唯先輩、大人じゃないキスって言ったのに、どおして舌入れてきたんですかっ」バッ
唯「い、いやー……妄想のこと話してたら、我慢が限界で……出来心でちょみっと入れちゃいました! ごめんなさい!」ドゲザッ
梓「私っ……私、もっと素敵な雰囲気で大人のキスしたかったのに! ファーストキス共々、こんな勢いに流されて初めてを奪われちゃうなんて!」
唯「あれれ。でも、ご飯の前に、大人のキスまでならいいって言ってたような……」
梓「あの時はあの時、今は今です! こんな、騙し討ちなんて酷いですよぉ……」グスッ
唯「あっ、あのね、あずにゃん!? ごめん、泣かないで、私が悪かったから! そんなに嫌がられるなんて思ってなかったから!」ワタワタ
唯「もおしない! あずにゃんが許してくれるまで我慢する! 抱き着くのも、キスも、あずにゃんの嫌なことしないから……ほんとにごめん」ガクリ
梓「ぐす……唯先輩の、馬鹿ぁ……」スンスン
唯「はい。私はあずにゃんが大好きなのに、嫌がることをしちゃう馬鹿です」ゲザー
梓「違いますよぉ……嫌じゃない、のに……ちゃんとしてくれないから、馬鹿って言ってるんです……」グスン
唯「……え?」
梓「今の、子供のキスって言ってたじゃないですか。だから私、いいって……心の準備出来てなかったのに、なのに、なのにぃ……」スンスン
憂「お風呂上がったよ! 次は梓ちゃん?」フキフキ
梓「あ……ぐすっ……う、うん。それじゃ唯先輩、お先に……」トタタタ
唯「はう……」ガックシ
憂「……お姉ちゃん。梓ちゃん、泣いてたけど……何したの? 場合によってはいくら私でも怒るよ?」ジー
唯「ううっ……憂ぃ……キスした時、勢いで思わずちょろっと舌入れちゃっただけだよ! 憂の教えてくれた恋愛対策がほとんど裏目に出てるよぉ」クスン
憂「気持ちはちょっとだけわかるようなわからないような、うーん……」
唯「だよね、だよねっ!? キスってすっごく気持ちーんだもん! 舌だって、わざとじゃなくて勝手に入っちゃったっていうかっ」ハウハウ
憂「……だって、私も聞きかじりの対男の子用だもん。対女の子用は、何ていうか……お姉ちゃん達を参考にこれからまとめようかな、って」テヘ
唯「全然駄目じゃんかー!」クワッ
憂「うん、でも、基本は同じだと思うよ? 恋愛っていうのは、お互いを好き合う気持ちが大事なんだし……くちゅん!」ブルブル
唯「あれ? 憂?」
憂「えへへぇ……出るタイミング見計らってたら、湯冷めしちゃったみたい。私はおコタであったまってから早めに寝ちゃう。あとはしっかりね、お姉ちゃん」ニコー
唯「……うん。助け船ありがとーね、憂」ニコ
最終更新:2011年01月10日 21:44