~どようび・ひらさわけ!~

唯「でしょ~? だからね、ねっ。私とお付き合いしよ、あずにゃんっ」

梓「いえ、お断りします」プイ

唯「にゃんでーえ!?」ガビーン

唯「今、言ったばっかしだよね! 私達なら素敵なカップルになれるって!?」

梓「妹が友人兼後輩と勉強してる部屋に突然乗り込んできて、変なメモ読ませてうっとりした挙げ句に逆ギレするような、非常識な方とはお付き合い出来ません」プイス

憂「ま、まぁまぁ梓ちゃん。お姉ちゃんも悪気があったわけじゃないんだし……」アセアセ

梓「あれば余計に駄目でしょ!? 偶然ふたりきりになった時とかならわかるけど、憂の目の前で! しかも勉強中なのに!」ププイス

唯「……そっか、ふたりきりだったら告白OKしてくれたんだ……」クスン

梓「そういう意味で受け取られるとは思いませんでした」

憂「あ、じゃあ私、ちょっとお買い物に行ってくるね?」アセッ

唯「さっすが憂! 気が利くぅ!」イェイ!

梓「憂も変な気の遣い方しないでよ……そんな不自然な真似してまで唯先輩と私をくっつけたいの?」

憂「えっ? まぁ、その……お姉ちゃん、前々から私に相談してたし……『今日こそキメるよ!』って燃えてたし?」ポ

梓「ああ……はいはい。私はアリジゴクの巣にのこのこ入り込んじゃった哀れな獲物ってわけか」ガク

唯「こんなに可愛い憂をアリジゴクとは失礼な!」

梓「罠を張った事実は否定しないんですね」

唯「えう!? あ、わっ、あのね、別にあずにゃんをうちに呼んで欲しいなぁ~とか、折角だからお泊まりして欲しいなぁとか……言っただけだよ! 罠なんて考えてないよ!?」アワワ

梓「……憂?」ジロ

憂「おっ、お姉ちゃんの気持ちにどう応えるかは、梓ちゃんが決めることだから! 確かに一緒に勉強しようって誘ったのは私だし、週末だしご両親も不在なら泊まりに来やすいかなって!」アセッ

梓「……はあ。いいよ、もう。別に勉強会自体は悪いことじゃないし、唯先輩と合わせてギターの練習が出来ていいな、って私も思ったから」

唯「あ! そっか、早くギター弾きたくてトゲトゲしてるんだね! じゃ、すぐ準備を……」

梓「見てわかりませんか? 私達、ものすごく真面目に勉強してるんですけど」ジトー

唯「……しません、はい」ガク

憂「もお、お姉ちゃんったら……それこそ、ギターの練習中にどうにかこうにかすればいいのに……」ハァ

唯「おお! さすが憂、それいっただきぃ!」イェイ!

梓「どうにかこうにかって……はあ。やっぱり練習はひとりですることにします」プイ

唯「うっ、うう~……憂、あずにゃんが冷たいよぉ」ダウー

憂「梓ちゃんがうちにきてて、気がはやるのはわかるけど、思ったことをすぐ口に出しちゃ駄目だよ? お姉ちゃん」

梓「……憂は唯先輩に甘すぎると思うんだよね」

憂「え~? そうかな、割と梓ちゃんも甘いと思うけどな」ニコ

梓「むむっ……別に、そんなことないから」プイス

唯「あのー……せめて、私もここで勉強させてくれないかな? 同じ家の中なのに、あずにゃんと離れ離れは結構寂しいよ……」ショボン

梓「離れ離れって……大袈裟な」

唯「うー……」ムー

梓「……仕方ないです。唯先輩が自分から勉強するって言い出したんですから、ちゃんと真面目にやってくださいね?」

唯「うんっ! ありがと、あずにゃん! 教科書とノート持ってくるね~♪」タタタ

憂「……真面目に……かぁ」

梓「…………」

憂「やっぱり、梓ちゃんも甘いよね」ニコー

梓「……言われると思ったけどね」ハァ


~そのご!~

唯「む~う~……」

憂「…………」カリカリ

梓「…………」カリカリ

憂「……ん、よし。次は……」ピラッ

唯「…………」ドヨーン

梓「あれ……憂。試験の範囲ここまでだっけ?」

憂「ん……うん、そうだよ。早いね、梓ちゃん」カリカリカリ

梓「一応、並は並なりに普段から勉強してるからね……あ、ジュース頂戴」

憂「はい」

梓「ありがと」トポトポ

唯「…………」

梓「はぁーあ。まだ範囲の半分も出来てないよー」ゴキュ

憂「まだまだ日数あるし、このペースなら間に合うんじゃないかな?」カリカリ

唯「あー! もー! どうしてそんな淡々と勉強ばっかしてられるのかな!?」クワッ

梓「んにゃっ!?」ビクゥ

憂「勉強は淡々とするものだよ、お姉ちゃん。でも……そろそろ少し休憩してもいいかも?」チラッ

梓「……ああ、なるほど。そういうあしらい方をすればいいってことなんだ」ハァ

唯「私なんて全然進んでないのに! 一問目から無理難題吹っかけられて絶望したよ!」

梓「あの……教科書の例題に無理難題ってのはないんじゃ? それに、唯先輩がノート広げてからまだ30分くらいしか……」

憂「まぁまぁ、梓ちゃん。お姉ちゃんはスロースターターだから」ニコニコ

梓「エンジンかかる前に試験期間が終わっちゃいそうだけどね」タラリ

唯「んむー。さすがにあずにゃん達に勉強教わるわけにいかないし、でも誰か呼んだら折角の告白チャンスが……」

梓「とりあえず悩むのは勉強だけにしときませんか。あと本人を目の前にしてそういうこと口走らないでください」

唯「うにゅー」ベター

憂「……ね、梓ちゃん」クイクイ

梓「ん?」

憂「すぐにお姉ちゃんのエンジンかけてみる?」ボソッ

梓「そんなこと……出来るの?」ボソソ

憂「うん。休憩の後でメモ渡すから、それ読めばきっとびっくりだよ?」ボソボソ

梓「さっきみたいなのは嫌だからね」ボソ

憂「わかってる」ボソッ

唯「うーいー。休憩なら、アイス頂戴。あーいーすー」グデーン

憂「えへへ。今日はケーキ用意してあるんだけど、お姉ちゃんはアイスでいいの?」

唯「なぬ! ケーキとな!?」ガバッ

憂「イチゴショートだよ。飲み物は紅茶でいい?」ニコッ

唯「うんっ! よろしく!」

憂「食べたら勉強頑張ろうね? 梓ちゃんにいいとこ見せないと」ニコー

唯「うんうん! むしろあずにゃんから告白されるくらい先輩らしいとこ見せるよ!」

梓(この手綱さばき、さすがと言うしか……憂、恐ろしい子!)


~きゅうけい!~

唯「おーいしー! んむんむ、やっぱアイスもいいけどケーキもいいよね!」ホワーン

梓「んもむもむ……ごめんね、これ高かったでしょ。お夕飯の材料分もあるし、少し出すよ」モグモグ

憂「いいよいいよ、無理言って来てもらったのは私の方だし。それにひとり分増えたって、作る手間も量も大して変わらないし」

梓「でも……」

憂「ほんとは作ろうと思ってたんだけど、今年はイチゴが高くって……」

梓「……ごめん、そう言われたら作るのと買うのとどっちが高いのかわかんない」

憂「うん、だからお金のことは気にしなくていいよ。それに、プロのケーキの方が美味しいでしょ?」モグモグ

唯「憂の腕もプロ級だと思うよ!」モグモグ

梓「……ああもう。ほっぺにクリーム付いてますよ、唯先輩」フキフキ

唯「んぅ……んー♪」ニュムー

憂「…………」ニコ

梓「……はっ」

憂「甘いね、梓ちゃん?」ニコニコ

梓「う、うん……甘くて美味しいよね、このケーキ……」モグ

唯「うんっ! 美味しーねっ♪」ニパー


~またべんきょう!~

唯「さて! 姉として先輩として、勉強なんか楽勝ってところを見せ付けて差し上げますかね!」フンス

梓「はぁ……」

憂「梓ちゃん、梓ちゃん」スッ

梓「ん……ああ、さっき言ってたメモ? これ読むだけなの?」ボソ

憂「うん。対お姉ちゃん用音響兵器・あずにゃんバージョンだよ。一言一句同じでなくてもいいから、梓ちゃんの読みやすいように」ボソソ

梓「ん……うん、まぁこのくらいなら……ええっと、唯先輩?」コホン

唯「んう? 何だね、あずにゃん君」

梓「私達も来年は同じような出題範囲なわけですし……わからないとこをスマートに教えてくれる先輩がいたら、きっと『素敵』とか言っちゃいますう」…ウ?

唯「ぬおお!? そっ、そおだよね、そんな先輩がいたら素敵だよね! うん、私頑張るから! 『素敵』って言ってね!」フンス!

梓「ちょ……『ますう』って何!? 明らかに媚びてて変でしょお!?」ボソボソ

憂「だから一言一句同じでなくてもいい、って言ったんだけど……まぁ、見てて。怖いくらい集中するから」ボソッ

唯「とりあえず! この教科書をやっつけちゃおう!」バッ

憂「…………」ニッコリ

梓「…………」

唯「ええと、確かこっちのページの公式が……」カリカリカリ

梓「……マジで? 唯先輩の思考回路ってどんな仕組みになってるの?」ボソ

憂「私も未だに理解出来てないんだー」ボソソニコー

唯「ほうら出来た、次! やだなぁ、同じ公式使う問題じゃーん」ピラッ

梓「……早っ。すごいけど、独り言がうるさいレベルだね」ボソッ

憂「そこはまぁ、梓ちゃんにアピールしてるんだよ。多分」ボソボソ

唯「らくしょー! んでんでんで、次はぁ……手強そうですなぁ! でも確かこの形は、このページに公式が……」カリカリ

梓「…………」

唯「これがこっち、んで上と下がこう。んで……あれ?」

憂「もいっこ移せばカッコを作って公式の通りになるよ」

唯「あ、そっか! これを潰せば、こうなって……こお! ほら出来た!」

梓「……憂? 今の助言は一体?」ボソ

憂「え? 見てたら何となく」ボソッ

梓「さいですか……はぁ。全く、この姉妹は……」ハァ


~そのご!~

唯「終わったでござるよ!」ババン!

梓「ええー……」

憂「お疲れ様、お姉ちゃん。私達はもう少しかかるから、もし行き詰まってたら教えてね?」ニコー

唯「まーかせて!」フンス!

梓「納得いかない……こんな、クラッシュしても絶対に壊れないクルマでローリングスタートして世界ラリー選手権を戦うみたいな……」ペラッ

憂「夏休みの宿題なんか、いつもこの調子で片付けてたんだよ。さすがに私も習ってないところは教えてあげられないから」ボソ

梓「もしそうだったら唯先輩が完全に駄目人間になってるじゃない……」ボソソ

唯「ふふん♪ んーん♪ んぅ~ぅ? どしたのあずにゃん、その問題わかんないの?」ホワワ

梓「いっ、いえ……もう少し自分で考えてみます」

唯「そっか。でも、わかんなかったらいつでも言ってね。去年やったとこだから、きっとよゆーで教えてあげられるよ!」

梓「はい、お気持ちだけどうもです」カリカリカリ

憂「…………」チラッ

梓「……チラ見しないでよ、憂」ボソッカリカリ

唯「んふっふーん♪」

梓「……夢の中へ?」

唯「んふっふー♪」

梓「夢の中……に行ってみたいとは思いませんから!」クワッ

唯「ええー……私、夢の中のあずにゃんとは結構いい感じなのになあ」タハー

梓「鼻歌、止めてもらえますか。気が散るので」

唯「んぅん……あずにゃんだってノってくれたくせにー」

梓「有名な歌だから無意識に反応しちゃっただけですっ」プイス

唯「えぇ~?」

憂「私もいつもこんな風に、真面目な空気を壊されちゃうんだよね~」ニコニコ

梓「唯先輩とはあんまり一緒に勉強したくないかも」

憂「え? でも、鼻歌ノリノリなお姉ちゃんって、可愛いと思わない?」ニコー

梓「…………」プイッカリカリカリ

唯「憂もあずにゃんを見習って、真面目にお勉強しないとね~♪」

憂「ええー……」


~おゆうはんまえ!~

憂「じゃ、そろそろご飯の仕度してくるね~」トタトタ

唯「今日も楽しみにしてるよ!」

梓「…………」

唯「……やっとふたりっきりになれたね、あずにゃんっ」ポッ

梓「そんな無理に雰囲気作ろうとしなくていいですから」プイス

唯「えー。あずにゃん、もしかして私のこと嫌い?」ズイ

梓「嫌いだったら口も聞きませんよ」プイ

唯「じゃあ、好きなんだ?」ニヘー

梓「それとこれとは話が別です」

唯「お話してくれる程度には、好きでいてくれてるんだ?」

梓「何の脈絡もなくいきなり用意してあったメモを読まされて告白扱いされた私としては、文句のひとつやふたつやみっつやよっつ……」フツフツ

唯「あ、あう……ごめん、あれは私も焦りすぎだったと思うよ……」

梓「全くもう、唯先輩は。今まではいつも誰かが助けてくれてたから、こういう大事なことも助けてもらおうと思ってたんですか」プクー

唯「……ほえ?」

梓「唯先輩は、憂が書いたメモの通りに告白されて満足なんですか。憂の用意した、思い通りになるお人形が欲しいだけなんですか」プクー

唯「満足しないよ!? あずにゃんは滅多に私の思い通りになってくれないし、そんなんじゃ、あずにゃんじゃないし!」

梓「あれ……私、たまに唯先輩の思い通りになってるってことですかね、それって」

唯「……え。いつも抱っこさせてくれてるよね?」キョトン

梓「あぁ……はい、それは諦めてるだけですから勘違いしないでください」ハー

唯「抱っこで思い出したんだけどさ」ウズウズ

梓「何かもう予想出来てますけど、一応聞きましょうか」

唯「今日のあずにゃん分を補給させてくれないかな?」

梓「やっぱり」ハァ

唯「……駄目?」ジトー

梓「……少しだけなら、いいですよ。すらすら例題解いてるとこ、ちょこっとだけ素敵でしたし」ボソ

唯「うん?」

梓「なっ、何でもないです! ちょっとだけ、憂が変に思わないくらいの間だけだったら補給させてあげないこともありません!」プイス

唯「うんっ! ありがとー、あずにゃんっ♪」ダキッ

梓「ん……」ホワ

唯「はふぅ……ずっと我慢してただけあって、また格別だねぇ」クンクン

梓「ちょ!? 匂いとか……嗅がないでください……」

唯「どおして? とってもいい匂いだよ、あずにゃんの髪……ん、すんすん……首……は違うね。香水か何か?」クンクン

梓「だ、だから、嗅がないでくださっ……んぅ……首のとこ、くすぐったいですよぉ」ギュ

唯「んー……あずにゃん、ちょっとだけ私の話聞いてくれる?」

梓「は、はい……」


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