ピョンピョン ピョピョピョン

私はあずうさ。
よく猫と間違えられるウサギです。

唯「あっ、あずにゃんだあ!」

よく猫と間違える人その一。
唯先輩です。

唯「今日も可愛いねえ、あずにゃん!」スリスリ

梓「あずにゃんじゃ……!」

ないです、をいつも言えません。
なぜなら唯先輩に頬ずりされると身体中の力が抜けてしまうから。

唯「あずにゃん、猫耳つけて、猫耳!」

梓「い、いやですよ!」

ウサギ耳の上から、唯先輩は猫耳をつけようとします。
私はあずうさだから一応抵抗してみるけど、
唯先輩に「可愛い」と言って抱き締められるのは満更でもなかったりするから
結局猫耳をつけられたりします。
たまにですけどね。

ピョンピョン ピョピョピョン

私はあずうさ。
練習熱心で真面目なウサギです。

澪「今日も楽器の練習をしているのか、偉いな梓」

誰よりも頼れる、澪先輩がやってきました。

澪「ウサギが楽器……なんだかいい詞が書けそうな気がするよ」

私をあずうさだと認めてくれる、数少ない人でもあります。
ただ、乙女チックな歌詞しか書けないのがタマニキズです。

梓「いい歌詞が書けるといいですね!」

澪「ありがとう、梓」サワサワ

私が言うと、澪先輩はいつも嬉しそうに私の頭を撫でてくれます。
その手つきが優しくて、私は時々眠ってしまいそうになるくらいです。

澪「そうだ、梓」

澪先輩は私を撫でながら、
突然思いついたように自分の背中に手を伸ばしました。
楽器ケースを手にとると、
澪先輩はかっこいいベースを取り出します。

澪「今日は二人でセッションしようか」

嬉しくて嬉しくて、
思わず耳を大きく揺らしてしまいました。
長い私の耳が澪先輩の顔にバシンと当たっても、澪先輩は「大丈夫」だと
言ってくれました。
痛そうに目に涙を溜めていましたが。

澪「それじゃあふわふわ時間な」

音楽が私たちの周りに流れ始めます。
ピョンピョンピョ―ンと身体が弾みます。
澪先輩とのセッションの時間はとても楽しいです。

ピョンピョン ピョピョピョン

私はあずうさ。
ウサギだけどとても甘い物が大好きです。

紬「梓ちゃん、元気だった?」

あ、沢庵みたいな眉毛が特徴的なムギ先輩です。

紬「よいしょっと」

ムギ先輩は、私を見つけると必ず抱っこします。
足が宙ぶらりんになるけれど、怖くはありません。
ムギ先輩の腕の中は心地いいから。

紬「今日は梓ちゃんのために色々なお菓子を持ってきたのよ」

ムギ先輩の持って来るお菓子はどれもとても美味しいです。
だから私は、ウサギだけどムギ先輩のお菓子は
全部ぺロリと平らげてしまいます。
得に、たい焼きはたまりません。

梓「ありがとうございます、ムギ先輩!」

紬「ふふふ、皆でわけっこして食べてね」

大きなザルに入れられたお菓子の山が、私の前に置かれました。
私が早速食べようとして、
ムギ先輩に抱っこされたままだと気付きました。
ムギ先輩は私のことをまだ離してくれそうにありません。

紬「梓ちゃん、気持ちいいからずっと触ってたいわ~」

やっぱり満更でもなかったりするから、
私はしばらくこのままでいることにしました。
ちょっとしたふわふわ時間です。

ピョンピョン ピョピョピョン

私はあずうさ。
寂しいと死んでしまうウサギです。

梓「チャララン、チャラチャラ」

今日は雨です。
外には出られません。
外に出られないと、誰にも会えません。

だから私は、
寂しさを紛らわすためにギターを弾きます。

どこからかドラムを叩く音がするんじゃないかと耳を澄ませてみましたが、
聞こえるのは雨のリズムだけ。

梓「チャラチャラ、チャランラ」

いくらギターを弾いてみても、
寂しさは消えてくれません。
誰も来ないから、耳が垂れてきてしまいました。
だんだん力がなくなっていってしまいます。

梓「チャンラチャンラチャチャンラ」

うとうと
うとうと

肌寒くなってきた頃、
私はうとうとしはじめました。
眠くて眠くて仕方ありません。

梓「チャン、ラ、チャン、チャン」

今にも寂しさの深い深い穴に堕ちていきそうです。

うとうと
うとうと

だけどやっぱり、
誰も来てくれません。
雨の音が強くなっていきます。

梓「会いたいなあ……」

こんこん
こんこん

私は深い眠りの底に沈んでいきました。

タンタン タタタン

私はあずうさ。
寂しさのせいで死んでしまったウサギ……あれ?

どうやら私は生きているようです。
いつのまにか、温かな毛布が掛けられていました。

律「おうあずうさ。起きたか?」

梓「りつうさ先輩!」

なんと私の隣には、りつうさ先輩がいました。
さっきの音は、りつうさ先輩がスティックで床を叩いていた音のようです。

りつうさ先輩の髪は、雨で濡れているようでした。
そういえば、辺りはもう真っ暗です。

律「せっかく遊びに来てやったのに寝てたからさ」

梓「すいません……。でもあんな雨の中どうして?」

律「唯たちと会えなくて寂しがってるだろうなと思ったからな」

ピョンピョン

りつうさ先輩が私に近付いてきました。
小さな手で私の頭をぽんっとたたきます。

りつうさ先輩がいる場所から私のいる場所までは遠いはずなのに。
さっき耳を澄ませてもいつも聞こえるドラムの音が何も聞こえなかったのは、
りつうさ先輩が走ってくれていたからなのかも知れません。

りつうさ先輩のせいで赤い目がさらに赤くなってしまいそうになります。


律「ぴょっくしゅん!」

梓「わ、風邪引いたんじゃないですか!」

律「長く雨に打たれすぎたからなあ……」

りつうさ先輩が震えながら言いました。
私は慌てて自分にかけられていた毛布をりつうさ先輩にかけてあげました。

律「あずうさ、こっちに来て」

りつうさ先輩が呼びました。
何の警戒もせずに私がりつうさ先輩に近付くと、
りつうさ先輩は手を伸ばして私を捕まえました。
そのまま、ちょこんとりつうさ先輩の横に座らせられます。

律「あずうさも寒いだろ?」

そう言ってりつうさ先輩は毛布を半分わけてくれました。
でも一人用の毛布なので、ぴったりくっつかないと入れません。
りつうさ先輩の身体は雨に濡れて冷たいけど、不思議と温かくなりました。

律「あずうさが寂しがり屋でよかったよ」

梓「りつうさ先輩だってほんとは寂しがり屋のくせに」

律「なにー!」グリグリ

梓「いたいいたい」

りつうさ先輩といると、寂しい気持ちは一気に晴れていきました。
外でも、知らないうちに雨は止んでいました。

律「明日は晴れるといいな」

はい、と私は頷きました。
明日は皆さんにも、会えるといいな。


ピョンピョン ピョピョピョン

私はあずうさ。
よく猫に間違えられるウサギです。
でもそれもたまにはいいなと思います。
そして練習熱心で真面目なウサギです。
早くもっともっとギターが上手くなれればいいです。
甘い物も大好きです。
でも食べすぎには注意しなきゃです。
私は寂しいと死んでしまいます。
ウサギですから。

私には会えない寂しさで死んでしまいそうになるくらい
大好きな仲間がいます。
でも、死んでしまいそうなくらいの寂しさを、すぐに消してくれる
大切な仲間もいます。

すぐに猫耳をつけたがる唯先輩や、乙女チックがタマニキズな澪先輩や、
お菓子をくれるムギ先輩や……。
あぁ、あと不真面目で大雑把だけどほんとは優しくて、
寂しがり屋なりつうさ先輩も。

だから私は、
今日も死にそうになりながら生きています。


ピョンピョン ピョピョピョン

私はあずうさ。
ほら、今日も皆の声が聞こえてきました。











おしまい