和「幼稚園の頃の約束だし仕方ないわよね」

唯「幼稚園の頃・・・思い出せないや」

和「酷いわね」

唯「ご、ごめんよぅ・・・」

唯「ど、どんな約束だったっけ?」

和「将来の夢を絵に描くってことがあって・・・」

唯「あー!お菓子の家に住みたいってお菓子の家の絵を描いたんだよね!私にお菓子の家を建てろってか!」

和「それは唯、あなたの将来の夢だったでしょ」

唯「あぅぅ・・・」

和「私の夢は綺麗な花嫁さんだったからウェディングドレスの絵を描いたの」

唯「へー初耳だよそれ」

和「いや、あなたも横に居たわよ・・・」

唯「・・・・・・それでそれで?」

和「私、男の子っぽかったから周りの子達が『お前なんか花嫁になれねーよ』って」

唯「酷いなぁ~」

和「あなたも一緒になって笑ってたけどね・・・」

唯「ご、ごめんなさい・・・」

和「で、私泣いちゃったのよねぇ」

唯「の、和ちゃんも泣くことあるんだ・・・」ポカーン

和「・・・」

唯「・・・」

和「そしたら唯が泣いてる私にね、

  『和ちゃんが大人になって結婚出来なかったら私が和ちゃんのお嫁さんになってあげる!』

  って言い出したの」

唯「私がお嫁さんになるんだ・・・」

和「そこはお婿さんよねぇ・・・逆よねぇ・・・」

和「そいでね、周りが女同士だから結婚はできないよってチャカし始めたの」

唯「まぁ、そうなっちゃうね」

和「そしたら唯がムキになって

  『それなら将来モロッコで性転換して男になるからいいもん!』

  って言い返して・・・」

唯「ちょちょちょちょちょ和ちゃん」

和「なに?」

唯「・・・モロッコってなに」

和「国の名前よ。あなたそんなことも知らないの」

唯「それくらいは知ってるよ・・・(どこにあるかまでは分かんないけど)」

和「じゃあなんなのよ」

唯「ほんとに幼稚園のころの私、そんなこと言ったの・・・?」

和「・・・」

唯「・・・言わないよね、性転換とか」

和「・・・まあ、正直モロッコは私も言いすぎたわ」

唯「うそだよね」

和「嘘じゃない。ちょっと盛りすぎただけ」

唯「うそなんじゃん・・・」

和「嘘じゃない」

唯「えー・・・」

和「嘘じゃないもん」

唯「もんって。和ちゃんのキャラと違うよ・・・」


和「とにかくそんなこんなだったわけよ」

唯「自分がふりになると無理にごまかそうとする。

  和ちゃんはいつもそうだ・・・」

和「それでね・・・」

唯(無視かい)

和「結局のところ唯は言い負かされて半泣きになっちゃったんだけど」

唯「そうなんだ」

和「自分だって泣いてるのに、それでもまだ『泣かないで、和ちゃん』って

  『私が絶対お嫁さんになるから』って」

唯「・・・・・・」

和「その時の唯、普段と違ってかっこよかった」

唯「のどかちゃん・・・」

和「私はあなたに手を握られながら『あの涙ぺろぺろしたいなあ』とか思ったものよ」

唯「ちょちょちょちょちょ」

和「なにかしら」

唯「い、いま何か不適切な発言が混じらなかった?」

和「『唯の体液をくまなくなめとりたいなあ』のこと?」

唯「それじゃないけど、もっと悪くなってるよ・・・」

和「唯、どうしてちょっとずつ後退してくの」

唯「和ちゃんがだんだん近づいてくるからだよ」

和「そうかしら」

唯「そうだよ・・・」

和「まあ、良いわ。とにかく、そういう約束があったの」

唯「そっか・・・」

和「やっぱり思い出せない?」

唯「うう・・・ごめんね、和ちゃん」

和「いいわよ、別に。唯が覚えてなくても、私は覚えてられたのだし」

和「すこし、残念なだけ」

唯「・・・ごめんね」

和「いいってば」

唯「うん」

和「そういう訳だから、さあ、唯」

唯「和ちゃん?」

和「どうしたの」

唯「どうして急に両腕を広げたの・・・」

和「何故わからないの」

唯「わからないよ」

和「ハグだけど」

唯「はぐ?」

和「ぎゅっとして。私はウエルカムなんだから、早く」

唯「あ、そっか・・・」

唯「行くよ」

唯「・・・やっぱなんか恥ずかしい」

和「早くしなさい」

唯「はい」ぎゅっ

和「ゆい・・・」

唯「和ちゃん・・・」

和「ん・・・あ、ふ、ああ!」

唯「・・・」スッ

和「無言で離れないでよ」

唯「だって、なんか変な声出すんだもん」

和「はあ・・・まあ良いわ。じゃあ、改めてよろしくね、唯」

唯「・・・?」

和「よろしく」

唯「なにを?」

和「これからの私の、いえ、二人の人生に決まってるじゃない」

唯「ちょっと和ちゃんが何言ってるのかわからないよ」

和「あなた、今まで私の話をちゃんと聞いてたの?」

唯「うん」

和「約束、したでしょう」

唯「うん・・・、まだ思い出せないけど」

和「そしてあなたは私を、抱いた」

唯「和ちゃんがしろっていうから・・・」

和「じゃあ分かるでしょ。これはもう事実上の結婚ということじゃない」

唯「ぜんぜんわからないよ」

和「なんでよ。何がわからないのよ!」

唯「なんにもわからないよ!なんでぎゅってしただけでそういうことになるのさ!」

和「今まで軽い気持ちで私を抱いてたの?」

唯「えっ・・・」

和「遊びで私の身体を使っていたのかって訊いてるのよ」

唯「ちょ、ちょっと落ち着いてよ」

和「ひどい・・・ひどいわ、唯・・・」

唯「落ち着いてってば。

  むしろ和ちゃんがそんなに重い気持ちで私を受け止めてたことにびっくりだよ・・・」

唯「まず普通ハグと結婚は結びつかないと思うんだけどぉ・・・」

唯「そんなら私、あずにゃんとかとも結婚しなくちゃいけないし・・・」

和「浮気してたのね。あの泥棒猫・・・」

唯「あずにゃんを悪く言わないでよ」

和「だって、唯をとられるなんて、くやしくって・・・ぐすっ」

唯「だからそういうんじゃないって。

  だいたい、憂はどうなっちゃうの・・・よくぎゅってしあってるのに」

和「近親相姦・・・!?」ワナワナ

唯「何度も言うけど、ハグってそういうものじゃないんだって!

  なんで和ちゃんわからないの!」

和「わかってるわよ、なにもかも。私以外にも女がいたってことでしょ、

  あっはっは、それなのに私・・・唯の一番だと思ってた・・・とんだピエロだったってことね」

唯「なにもわかってないよ!外人さんはハグなんて挨拶代わりなんだよ?」

和「それは外人の話でしょう。あなた何人なの」

唯「に、日本人だけど・・・」

和「なら話がちがうじゃない。へ理屈でごまかそうとするのはよして」

唯「どっちかっていうと和ちゃんの方がへ理屈っぽいんじゃないかな・・・」

和「・・・・・・わかった、わかったわよ」

唯「のどかちゃん、泣いてる・・・」

和「泣いてなんてない」

唯「でも・・・」

和「ほっといて。・・・百歩譲って、ハグについてはそういうことにしといてあげるわ」

唯「うん・・・和ちゃんは人に譲ることを覚えたほうがいいと思うよ」

和「でも結婚はしてくれるわね」

唯「なんでさ」

和「私、結婚式は教会でって決めてるの。私が白のドレスで、唯が黒のタキシードで」

唯「なんでさ」

和「だって、あなたタキシード似合いそうじゃない」

唯「そういうことを聞いてるんじゃないよ!なんで結婚することになってんのさ!」

和「はあ・・・いい、唯?」

唯「うん。いや、よくないけど」

和「昔、幼稚園の時にね、将来の夢を絵に描くってことがあって」

唯「聞いたよ、その話はもう!」

和「唯ったら『私、将来のどかちゃんと結婚するー!』って大きな声で」

唯「だからその話はもう・・・いや、聞いてないよ!

  さっきからだいぶ変わってるよその話!」

和「私は本当はアイドルと結婚したかったんだけど、唯が

  『のどかちゃんじゃなきゃやだ!』って駄々をこねるもんだから仕方なく・・・」

唯「つごうよく事実を捻じ曲げないでよ・・・」

和「あなた、覚えてるの?」

唯「いや、覚えてないけどー・・・」

和「ならどうして事実と違うってはっきり言えるの?」

唯「覚えてないけどそれは絶対に違う気がするんだ」

和「唯の気なんて天気予報より当てにならないわよ。

  言うなれば金田一耕助の等々力警部が言う『よし、わかった!』くらい当てにならないわ」

唯「うう・・・よくわかんないけどひどい言われようだってことだけはわかる」

和「唯のために分かりやすく言うと、唯はばかだってこと」

唯「ひどい言われようだ」

和「ばかなんだから唯はよけいなこと考えないでいいの」

唯「和ちゃん、ほんとは私のこときらいなの・・・?」

和「好きよ。愛してるわ」

唯「じゃあ、なんでそんなひどいこと言うの・・・」

和「よくあるじゃない。小学生が好きな子にいたずらしたくなるってやつ」

唯「うん・・・」

和「あれよ。私は唯が好きだからひどいことを言っても許されるの」

唯「和ちゃん、小学生なの?」

和「・・・高校生だけど」

唯「じゃあ話がちがうじゃん。いいかげん大人になってよ・・・」

和「ごめん・・・」

唯「変なところで子どもっぽいよね・・・」

和「ごめんなさい。小指でもなんでも詰めるから嫌いにならないで、唯」

唯「重いよ、のどかちゃん!私そこまで怒ってないって!」

和「じゃあ・・・切腹する。それでいいでしょ」

唯「しなくていいって。なんでさっきより重くなってるのさ。のどかちゃんが死んじゃうよ・・・」

和「私のこと嫌いにならない・・・?」

唯「ならないから」

和「よかった・・・じゃあ結婚」

唯「しないよ?」

和「えっ・・・ど、どうして」

唯「なんで意外そうな顔してるのさ。むしろどうしてこの流れで結婚できると思っちゃったの?」

和「私のこときらいなの?」

唯「のどかちゃんのこと、きらいじゃないよ」

和「好きなの?」

唯「うん・・・」

和「なら結婚・・・」

唯「しないって」

和「なんでよ!言ってることめちゃくちゃじゃないの、唯のばか!男前!ミュージシャン!」

唯「悪口言わないでよ・・・・・・悪口?」


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