律「私たちは、こいつから逃げてたんだよ!」
?「お兄ちゃんを、返して!!」
澪「万事休すか……」
律「そうだ、ムギ!写影機だ!」
紬「……」
律「……ムギ?」
紬「かわいい♪」
澪「あ、おい!」
梓「ち、近づいたら危ないですよ、ムギ先輩!」
紬「私がお兄ちゃんよ!」
?「…………?」
紬「ああ、堪らないわ!いいわ、その表情」 パシャパシャ
?「いやぁ……」
梓「ムギ先輩、夢中でシャッターきってますね」
澪「なんだかあのお化けがかわいそうに思えてきた」
律「そうだな……」
紬「りっちゃんレフ板!レフ板ないの!?」
バタン……
律「ふぃー、なんとか脱出できたな」
紬「私はもっと撮影したかったわ……」 ションボリ
澪「お化けの方が逃げて行っちゃったからな」
梓「あはは……」
ムギ先輩おそるべしです。
律「当初の目的を忘れるなよぉ?唯と憂ちゃんを探すんだ」
紬「そうね、ごめんなさい」
澪「よし、それじゃあ向こうへ行ってみよう」
梓「はいです、澪隊長」
律「頼りにしてるぜ、澪隊長」
澪「ああ!行くぞ、みんな!」
ガサガサ……
澪「おひぃ!?」
やっぱり怖いものは怖いみたいです。
─────
私は声に導かれるまま、奥へ、村の奥へと進んだ。
そこに私の大好きな人がいるような気がしたから……
唯「うん、ここが怪しいな!」
村の一番奥にはとっても大きなお屋敷がデデン!と構えていた。
たぶん村長さんのお屋敷じゃないだろうか?
唯「このお屋敷の奥から憂の声がする……今から行くからね、憂!」
唯「……あれ!?」 ガチャガチャ
行き勇んだはいいものの、どうやら玄関の扉には鍵がかかってるみたいだった。
さすがにアクション映画みたいに鍵を壊して入るなんて芸当はできない。
裏口がないかフラフラあたりを歩いていると、少し離れた所にそれらしき扉を見つけた。
唯「こっちは……、うん、鍵はかかってないね」
重く、少しさび付いた扉をゆっくりと開ける。
どうやら地下に続いてるみたい。カビの臭いが鼻腔を刺激した。
ピチョンピチョンと水が滴る音が聞こえた。
映画とかだとこういうときって必ず出るんだよね……
そんなことを考えながら地下道を歩いていると、目の前に井戸が現れた。
唯「……」
たぶん期待を裏切ってはくれないと思う。もちろん悪い意味で。
案の定、長い髪を垂らした女性が井戸の中から這い上がってきた。
た、たしか映画で見たことあるな……
唯「えっと、さ、さだなんとかさんですよね……」
さだなんとか「……」
唯「さだ……、さだえさん?」
さだえ?「おぉおおおおお……」
どうやら違ったみたいだ。
唯「ふぅ、びっくりしたよぉ」
意外にもさだえさんは追ってはこなかった。
地縛霊なのかな?
唯「……」
安心した私はそっと目を閉じて、憂の声を聞こうと集中する。
うん、憂の声がどんどん近くなってる。ここにいるのは間違いないみたいだ。
唯「……憂、今行くからね」
呼吸を整え、私は歩きだす。
大好きな妹に会うために。
─────
梓「わぁ……さっきのお屋敷もそうでしたけど、ここが一番大きいみたいですね」
私たちは村の一番奥の大きな大きなお屋敷の前にやってきてました。
おそらくここがラストダンジョンだそうです(律先輩曰く)
紬「たぶんこの村を取り仕切っている家だと思うわ」
澪「……」 ガタガタブルブル
律「みーお!いつまでブルってんだよ!きっとここに唯たちがいるぜ?気合入れろ!」
澪「わ、分かってるよ!これは武者震いだ!!」
紬「うふふ、頼もしいわ」
私は少し不安です。
玄関は鍵が閉まっていたので裏口からお邪魔することにしました。
この村にきてから泥棒みたいなことしてるけど、しょうがないよね、うん。
律「さっき井戸があったけど、期待に反してなんもでなかったなー」
紬「そうね、私は絶対あそこから貞○が出ると思ったわ!」
律「私も思った!」
澪「あーあー!何も聞こえないぞー!」
こんな調子で話してるからですね。
ギィ……
律「お、この部屋いかにもって感じだな。ここから隠し通路の臭いがするぞ!」
澪「どんな臭いだよ……」
どうやらこの部屋は仏間のようです。何十本、何百本もの蝋燭が私たちを照らしていました。
紬「私もこの部屋は何かありそうな気がするわ」
梓「そうですね。手分けして探してみましょう」
澪「仕方ないな」
律「よーし!ちゃっとと始めるぜぇい!」
梓「……あ」
律「む!出たか!?」
澪「ひぃ!」
梓「いえ、そうではなくてですね」
紬「……あら、これって」
梓「はい、隠し通階段見つけちゃいました」
律「な、なんだってー!?」
紬「正面からは影になっていてみつけにくわね」
澪「でも隠しってほどじゃないな」
律「つまらん……」
……もっと重要なことがあるように思います。
梓「この下に行ってみませんか?」
澪「こ、この下にか……」 ゴクリ
律「まぁ見るからに怪しさ爆発だもんな。行ってみようぜ」
紬「うん、私も賛成」
澪「うぅ……」 ガクガクブルブル
律「おいおい、ここにきてまた怖くなっちゃったのかぁ?」
澪「うううう、うるさい!」
律「安心しろ、何かあったら澪は私が守るからな!」
梓「私も微力ながら頑張りますです!」
紬「写影機もあるしわ♪」
澪「そ、そうだな!唯たちのためにもここで足踏みしてる場合じゃない……」
澪「行くぞ、みんな!唯と憂ちゃんを助けてみんなで帰るんだ!!」
「「おー!」」
澪「と、とりあえず律先頭な……」
律「っておい!!」
紬「うふふ♪」
すごく心配になってきました。
二つ並んでいる渡り廊下を超え、扉を開けると、そこには私たちが探していた人がいました。
おっちょこちょいで、甘えん坊で、私の大好きな先輩。
梓「唯先輩!」
唯「……あずにゃん、みんな」
律「この野郎、心配させんじゃねーよ!」
唯「ごめんね」
澪「無事でよかったよ」
唯「うん」
紬「さぁ、あとは憂ちゃんだけね!」
唯「そのことなんだけどね……」
梓「心当たりがあるんですか?」
唯「この先にいると思う」
律「なら話は早いな!憂ちゃん捜索隊、最後の大仕事だ!しまっていくぞ!!」
唯「りっちゃん!」
律「ど、どうした、唯?」
唯「私ね……、この先には1人で行こうと思うの」
澪「どうして……」
律「なんでだよ、なんでまた1人で行っちまうんだよ!?」
唯「……」
梓「唯先輩……」
唯「どうして憂がこの村に誘われたんだろうって、思ったことなかった?」
紬「それは……」
唯「私、分かったの。どうして憂がこの村に誘われたのか」
唯「憂の声が。ううん、もしかしたら憂じゃないかもしれない。私の心の中で囁く声が教えてくれたの」
そして、唯先輩はゆっくりと話始めました。
この村のこと。村が消えてしまったこと。『儀式』のこと。
この村の地下深くには、黄泉へと通じる大きな大きな穴があるのだそうです。
そして数十年に一度、そこから闇が噴出し、放っておけば村中が闇に包まれてしまう。
それを防ぐためにこの村では双子を生贄とし、これを封じる……
その儀式、紅贄祭が失敗して村は消えてしまったのだと、唯先輩は教えてくれました。
律「はは、本当かよ……」
律先輩がそう思うのも無理はないと思います。
でも……
唯「これが真実なんだよ……」
優しくて、元気いっぱいだったあの唯先輩が
寂しそうに、哀しそうに話してくれるのを聞いていると、本当のことなんだと思わずにはいられませんでした。
紬「で、でも、仮にそれが本当だったとしら、唯ちゃんはどうするの?」
澪「まさか失敗した儀式をやり直そうってんじゃないだろうな?」
律「そ、そんなわけないだろ!憂ちゃんを助けに行くんだよ、な!」
みんな一斉に唯先輩を見ます。
梓「憂を助けに行って、また戻ってきてくれるんですよね?」
唯「……うん」
姉が妹を殺す儀式、紅贄祭……
律「だー!やっぱり私たちも行くぜ!!」
澪「そうだ、みんなで憂ちゃんを助けに行こう!」
紬「そうよ、また一緒になれたんですもの。最後まで一緒よ」
梓「私も皆さんの意見に賛成です。さぁ、唯先輩」
私は唯先輩にスっと手を差し出しました。
この手を掴んでくれることを信じて……
唯「みんな……。私は……」
1 一緒には行けない
2 一緒には行けない
3 一緒には行けない
※BADENDあり
最終更新:2011年01月03日 00:14