?「…うぅ……うぅ」

律「ちっくしょー!どっからでもかかってこいってんだ!」

澪「怖くない!怖くない!」

?「返してよぉ!」

律「な、壁ん中からだとー!?」

澪「律危ない!」 バッ

律「澪ぉ!」

澪「あぁああああ!」

律「くそー!りっちゃんフラッシュを喰らえ!」 ペカペカ

?「ひぃう!」 ササッ

律「澪、大丈夫か!?なんであんな危ない真似したんだ!」

澪「か、身体が勝手に動いたんだ……」

律「ばっか野郎!私のことより自分の心配をしろってんだ」 ギュ

澪「それに、私は隊長だからな」

律「ああ、おまえは頼りになる隊長だよ。……立てるか?」

澪「あ、ああ……」

?「うう……うう……」

律「くそ、また来るぞ!今のうちに逃げちまおう」

澪「懐中電灯で怯ませるのが精一杯だからな」

?「お兄ちゃん……」

律「行くぞ、澪!」

澪「ああ!」

私たちは手を取り、走った。ほのかに照らされる暗い道を……



─────

梓「この家も荒れ放題ですね」

紬「床がところどころ抜けているから気をつけてね、梓ちゃん」

梓「はいです」

紬「それにしても、このお屋敷はお人形さんがいっぱいあるわね」

梓「……」

桐生家はお人形さんを作るお家だったのでしょうか、いたるところに日本人形が置いてありました。
中にはロープで吊るされて、まるでその……首を吊っているような気味が悪いものもあったり……

紬「梓ちゃん?」

梓「は、はい。大丈夫です、大丈夫……」

ギシ……ギシ……

梓「この板を踏みしめる音、変な雰囲気出ちゃいますよね」

紬「(どっちの意味で!どっちの意味で!)」

梓「寝ているときギシギシ音がして、それが足音みたいに聞こえて怖くて眠れないこともありました」

紬「たしか熱膨張が関係しているんじゃなかったかしら?」

梓「そうなんですか?」

紬「……あら?」

梓「わっぷ!」

ムギ先輩が急に止まるものだから、その背中に思いっきり顔をぶつけてしまいました。

梓「ど、どうしたんですか、ムギ先輩」

紬「……あれ」

先輩が指さす方には、丁度7~8歳ぐらいの子供がいました。……お人形さん?

紬「人形……よね」

梓「みたいです」

ふと後ろを振り返ると、まったく同じ容姿のお人形さんがいました。
さっきまであんなものなかったのに……

梓「む、ムギ先輩後ろ……」

紬「あら、囲まれちゃったみたい♪」

梓「非常事態じゃないですか!?」

そんなやりとりをしていると……

ガシャン……ガシャン……

ゆっくりと、間接を軋ませ、木の床を軋ませ、人形がこっちに向かって歩いてきました。

梓「ムギ先輩、ど、どうするんですか!?」

紬「落ち着いて!ここは冷静になって作戦を練りましょう」

梓「作戦を練るにも、もうそこまで来ていますよ!」

紬「よし、それなら……!」


1 背中合わせよ!

2 梓ちゃん、おとりになって!

3 どうでもいい


※1



紬「背中合わせよ!」

梓「はいです!」

紬「……」

梓「つ、次は?」

紬「この台詞、一度言ってみたかったのー♪」

梓「えぇ!?」

人形はもう目の前です!これは大ピンチではないでしょうか……

紬「そうだ、写影機!これならどう!?」

ムギ先輩が夢中でシャッターを切ります。

梓「ムギ先輩!」

目の前の人形が、私の首に手をかけようとした寸前、私はムギ先輩に引っ張られる形で
その手から逃れることができました。

紬「逃げるわよ、梓ちゃん。走って!」

梓「ムギ先輩、もう一体のお人形は?」

紬「ひるんで壁の中に逃げて行ったわ。ここは狭いし、一旦ひいたほうがいいと思うの」

ふと後ろに目をやると、二体の人形が不気味な音をたたて追ってきていました。

梓「追ってきてますよ!」

紬「みたいね。でも足が遅いみたいだから、なんとか振り切れるんじゃないかしら」

ムギ先輩の言う通り人形の足は遅く、私たちとの距離はみるみるひらいていきました。

紬「ふぅ……梓ちゃん、大丈夫だった?」

梓「な、なんとか……」

こんなに思いっきり走ったのはいつ以来でしょうか。
私たちはなんとかお人形を振り切ることができたみたいです。

紬「ここにいる限り油断できないわね」

梓「唯先輩と憂、無事でしょうか……」

紬「きっと大丈夫よ。唯ちゃんもやるときはやっちゃう女の子なのよ」

梓「あはは、そうですね。憂は唯先輩以上にしっかりしていますし」

紬「うふふ」

梓「一番心配なのは律先輩、澪先輩コンビですね。幽霊相手に漫才してそうです」

紬「わぁ、素敵ね♪」

梓「しちゃだめですよ!?」

紬「えー」

ムギ先輩ってこういうキャラだったかな……

紬「息も整ったことだし、そろそろ行きましょう」

梓「りょーかいです。でもこれからどうしますか?一通り見て周りましたけど、手がかりすらないです」

紬「そうね……。ここには来ていないのかもしれないわ」

梓「律先輩と澪先輩も気になります」

紬「2人は丸腰ですものね」

梓「……」

紬「……よぉし、決めたわ!」


1 もっと入念にこのお屋敷を捜索しましょう!

2 りっちゃんたちと合流よ!

3 ちょっと漫才してくる

※1



紬「もっと入念にこのお屋敷を捜索しましょう!」

梓「りょーかいです!」

紬「実はね、少し気になったお部屋があるの」

梓「そうなんですか?」

紬「ほら、左右にひな壇があったところ」

梓「ああ、あそこの……」

紬「もう一度行って調べてみましょう」

そうして、私たちはまた人形のお部屋に向かうことにしたのです。

梓「うーん、とくに変わったところはないようですけど」

紬「……」

お部屋につくなり、ムギ先輩は大きな箱を入念に調べ始めました。
あそこに何かあるのかな?

紬「……やっぱり」

梓「何かあったんですか?」

紬「この箱の下からね、わずかだけど風が吹いてくるの」

梓「隠し部屋でしょうか」

紬「たぶん……。どうにか動かせないかしら?」

梓「試してみましょう」

紬「そうね、じゃあ梓ちゃんはそっち持って」

思いのほか箱はすんなり動かすことができました。
箱をどかすとそこにはぽっかりと四角い穴が空いていて、地下に続くハシゴがかけられていました。

紬「地下道だったみたいね。何処に続いているのかしら」

ハシゴを降りるとそこは地下道になっていました。
じめじめしていて、なんだかとても嫌な感じです。早く外に出たい……

梓「さ、先に進んでみましょうか?」

本当は進みたいくないけど

紬「気が進まないけど、行ってみましょう」

梓「は、はい……」

ときどき水滴が垂れてきて、私の頭をちょんと叩きます。
心臓によくないです。

紬「あら、行き止まりみたい」

梓「ムギ先輩、あそこにまたハシゴがありますよ」

紬「……登ってみましょう」


─────

澪「はぁ……はぁ……」

律「澪、大丈夫か?」

澪「ああ、なんとかな」

律「もうあんな無茶するんじゃないぞ」

澪「なんだ、私の心配をしてくれるのか?」

律「そ、そんなんじゃねーやい!」

そう言うとプイとそっぽを向いてしまった。
素直じゃないな、まったく。

澪「なんとかこの部屋まで逃げ込んだはいいものの、ずっとここいいるわけにもいかないな」

律「そうだな、唯と憂ちゃんのこともあるし、急いだほうがいい」

澪「いつ見つかるとも分からないからな……」

そのとき、私たちの真後ろにある箱がガタガタと音を立てて動いた。
そこにはぽっかりと穴が空いていて、そこから顔を出したのは……

紬「りっちゃん、澪ちゃん!」

 「「ムギ!?」」

律「へぇ、この穴は地下道に続いてるのか」

梓「はい、私たちはそれを通ってここまできたんです」

紬「まさか立花のお屋敷続いてるとは思わなかったわ」

澪「2人が無事でよかった。心配してたんだぞ」

律「ああ、澪なんて半べそかいてたしな」

澪「泣いてない!」

律「……ところで何か収穫はあったか?」

紬「ダメね。唯ちゃんも憂ちゃんも向こうのお屋敷には行ってないみたい」

澪「こっちもそうだ。まるで手がかりなし、お手上げ状態」

梓「あの2人は何処へ行ったのでしょうか……」

律「まだ探してないのは村の奥のほうだな」

澪「それなら早くここから出て探しに行こう」

紬「そうね、それがいいわ」


……チリン

律「今鈴の音がしなかったか!?」

梓「ええ、かすかに聞こえましたね。それがどうかしたんですか?」

……チリン

澪「ち、近づいてる!」

紬「どういうことなの?」

チリンと、もう一度鈴の音がしたかと思うと、壁の中からスーっと女の子が出てきました。
真っ赤で綺麗な和服を着た、日本人形みたいな女の子。


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