短編その①
梓「ククク……ここが軽音部……」



梓「クク。機関の命令どおり入部したわけだが」

梓「どうやらあまり修練はしてないようだな……」

梓「だが好都合だ」

梓「私は機関より遣わされし奴らの監視者(インスペクタ-)兼、抹殺者(イレイザー)」

梓「そうそう腕を上げてもらっては掃除に困るのでな……」

梓「今宵は死の満月(デスフルムーン)……私がここへ来てもうそんなに経つか……」

律「おーい、中野さーん! そろそろ練習するぞー」

唯「中野さんもこっちへおいでよー」

澪「中野さーん」


梓「中野さん……か……ククク」

梓「真の我が名は†漆黒の堕天使アズサエル†。しかとその愚鈍な脳に刻んでおくが良い」 


澪「中野さんいつもぼそぼそつぶやいてるな」

紬「せっかく可愛いんだからもっと明るくしたらいいのにね」

ジャカジャン!

澪「ふー、わりとあってたなー」

律「唯もうまくなったじゃん」

唯「えへへー。だって中野さんにいろいろ教わったからねー」

唯「ねー中野さん♪」

梓「フッ。ほんの気の迷いだ……滅びのソナタを奏でることに比べたら造作もない」

唯「でもねぇ、教えるのほんとうまいんだよー」

澪「私もそのうち教えてほしいな」

唯「昨日も個人レッスンしてくれたんだよ」

梓「バッ! 黙れ……褒めても邪悪なるオーラ以外なにもではしないぞ……」

唯「またぼそぼそ言って、もー」

紬「そろそろ中野さんも馴染んできたし、あだ名をつけるのはどうかしら?」

律「おっいいねー」

唯「あーそれ私も思ってたよー」

梓「あだ名か……ふ、偽りの名など闇に侵された空虚な私の心には届きやしない……」

澪「じゃあ私ひとつおもいついた」

紬「なーに?」

澪「なかのっち」

梓「……貴様」

律「うわ、ありきたり」

澪「そ、そうかな……可愛いとおもうけど」

澪「中野さんはどうおもう?」

梓「ぐ……鎮まれ……我が右腕よ、まだそのチカラを開放すべき時ではない」

唯「気に入らないみたいだね」

律「じゃあさ! あずあずは?」

梓「グア! 奴が来る……生来より呪われし邪気眼が奴の波動に呼応している……ドクン」

唯「これも気に入らないんだね」

紬「ならナカニャンってどうかしら。猫みたいなイメージだしぴったりだわ!」

律「どの辺が猫だよ」

梓「……危険だ。貴様ら……私から離れろ……もう誰も失いたくは……」

唯「うーん、おしいって感じだね」

律「唯はなんかある?」

唯「うーん、うーん。 中野梓……なかのあずさ、あずさ、猫、にゃん」

唯「あ!」

唯「あずにゃんってどう?」

梓「静寂の闇に包まれた世界で私は一人羽ばたいた」

梓「天の祈りを受け……いま――世界を駆ける――――」

唯「気に入ったみたいだね あずにゃん」

律「おーし、じゃあそれで。あずにゃんで決まりだ」

紬「あずにゃーん♪」

澪「あ、あずにゃん……なんかいいな」

梓「私をその名で呼んでいいのは、神の国より遣わされし大天使ユイエルのみ……」

梓「ひとたびその名を呼べば……私と対等以上の魔力を持つもの以外は……」 

梓「皆……呪いをうけ生ける屍と化す……覚えておくがいい―――」

澪「なんだかよくわからないけど、これからは普通に梓ってよぶことにするよ」

唯「えぇ~みんなであずにゃんって呼ぼうよ~。あずにゃ~ん♪」

梓「失われし世界の夜明けがやってくる……支配者の滅びの咆哮とともに――」

律「こいつめんどくせぇわ!」



翌日 教室

梓「……」

憂「……ここにいたのか」

梓「なんだ……貴様か」

憂「どうやら奴らとの接触はうまくいったようだな」

梓「ふ。私も命は惜しいからな。穏便に事を運ばせている」

憂「して、黒き猫よ。対象はどうだ」

梓「……思った以上にやる。なかなか隙を見せない」

梓「逆に隙をみせると一瞬で食われる」

憂「ククク……さすがは我が姉上」

憂「そして猫よ。貴様も思った以上に有能なようだな」

梓「敵を知るにはまず己の力量をしれ……」

梓「亡き父の教えだ……」

憂「その父は」

梓「第4次魔空戦争でな。奴、大天使ユイエルによって……葬られた」

梓「だが私は仇討のために組織に入ったわけではない……」

梓「全ての因果を見つけるため。そして本当の自由と誠の世界を手に入れるため」

憂「……」

憂「そうか……貴様が過去を語るなんて珍しいな」

梓「すこし、風が冷たくてな」

梓「それに、この世界の光は私にはまぶしすぎる」

梓「まるで闇のチカラが溶かされていくようだ」

梓「氷のような私のココロもな……」

憂「カーテンしめれば」

梓「……」

梓「……だが……本当に始末していいんだな?」

憂「クク。貴様ごときにやれるものならな」

憂「五体満足で生き帰りたくば」

憂「下手に手は出さず、監視を続けることだ」

梓「……フン。 あんなへらへらした奴、私一人で十分だ」

憂「ならば期待しているぞ……不吉をもたらす黒き猫よ」

梓「フッ……情報屋風情が偉くなったもんだな……」

純(なにこの人たち……)



廊下


唯「あー! あずにゃんだー! あずにゃ~ん」

梓「ユイエル……」

ダキ

梓「ッ!!!?」

唯「んー。あずにゃんおはよう」スリスリ

梓「貴様ァ、衆人環視があるのだぞ……ッ!」

唯「んんー……」スリスリ

梓「よせ……ウグ」

唯「このかすかな血と硝煙の臭い。貴様、やはり使徒か…」

唯「そして上着の下のこの膨らみ。まさか"商売道具"をここへ持ち込んでるとはな」

梓「ナニ!? 離れろォ!!」

バッ

唯「えへへー冗談だよー。いつものあずにゃんの真似してみただけー」

梓「……」

唯「そんな怖い顔しないで。でも怒った顔も可愛いね」

梓「貴様ァ」

憂「おねーちゃん。何してるの?」

唯「ういー。憂もいたんだ」

憂「うん。いまから移動教室だからもう行くね。」

憂「行こ、梓ちゃん」

梓「……あぁ」



憂「……」

梓「……やはりな」



憂「……」

梓「ユイエルがチカラを取り戻し始めている」

憂「……やはりか」

梓「あの戦争で深い傷を負い、記憶と力を失いこの世界へ逃れてきた奴は」

梓「500年の時を経て再び舞い上がろうとしているようだ」

憂「大天使の再誕か……ゾク」

梓「奴ほどのオーラが復活すれば間違いなく世界の均衡(パワーバランス)が崩れる」

梓「また再び悲しみと狂気にまみれた戦争がおきる」

梓「戦争は……罪なき命を奪ってゆく……」

梓「教えてくれ憂。私はあと何回あの子とあの仔犬を殺せばいい」

憂「貴様……そんな過去が」

憂「なら早めに始末してほうがいいのでは?」

梓「いや。あくまでも慎重にだ。とっさの攻撃で本能が目覚めては困る」

梓「確実に始末するには……」

梓「クッ。どうすれば確実に……」

憂「昔、神話として聞いたことがある」

憂「ユイエルは復活する直前に深い眠りにつくそうだ」

憂「それは神の眠り(ゴッドスリープ)ともよばれる」

憂「私は本来、その間彼女を守り通すために神により創造されたレプリジン」

梓「貴様……ならなぜ情報屋をやっている」

憂「疲れたのさ……使命や義務、ヤツらとのかかわりにな」

憂「私も自由という名の風になりたい……」

梓「もし貴様が、刻まれた命に従い、私の前に立塞がるとしたら」

憂「あぁ、そのときは……殺ってくれ」

梓「……覚悟しておこう」

梓「情報感謝するウイエル……」

梓「その眠りを狙えば穏便に……」

梓「終わらしてみせる。私が……全てを!」



2年教室


唯「zzzzz」

律「唯ー。おきろー。放課後だぞー!」

紬「唯ちゃん起きて! 練習行こう?」

澪「だめだめ。そんなんじゃ」

澪「鼻に練り辛子をつめるんだよ」

律「かわいそうだろ」

紬「わぁ楽しそう」 スッ

澪「じょ、冗談だからほんとやめろ!」

梓「眠っている……まさかあれがGS(GOD SLEEP)か?」

梓「いや、あんな鼻ちょうちん膨らましながらとは考えにくい」

梓「とにかく悲哀のフィールド(部室)へ先に赴くか」

梓「私はこう見えても気が短くてな……」

梓「悠長に眠りなど待ちはしない」

梓「隙を見て……殺る!」



部室

梓「……来る……奴らのオーラが迫ってくる」

梓「もうじき終わる……この長きにわたる戦争に終止符がうたれるのだ」

梓「父上……見ていますか?」

梓「いまこの汚れた手で、私は彼女をうちます」

梓「どうか聖なる魂の御下へ……」

唯「あずにゃーん」 ダキッ

梓「のわっ!」

梓「私に気配を悟られず一瞬で背後まで移動しただと!?」

澪「中野さ……梓が一人でぶつぶつ言ってる間にな」

唯「あずにゃーん待たしてごめんねー」スリスリ

梓「よ、よせ。闇と光のオーラが混じり合うと対消滅効果が……」

唯「うーんあずにゃんいい匂いするよー」

梓「ヤメロ……ヤメロ」

唯「ほんとにいいにおいー」


唯「数多もの罪なき人々の聖血と、邪悪なる波動にまみれしその身のな……」


梓「ッ!!」

唯「最近憂におしえてもらったんだー」

唯「こういえばあずにゃんが喜ぶってね」

律「よかったなー梓。ごっこ遊びができて」

梓「……ユイエ、えっと」

梓「あの……唯先輩」

唯「ん?どうしたの ア ズ サ エ ル」

梓「!!?///」

紬「わぁー。よかったわねぇアズサエルちゃん」

澪「おいおい冷酷で残忍な漆黒の堕天使ともあろうものが赤面するなよー」

律「いやいやきっと冷徹をきどりつつも人間味のあるキャラ設定なんだってば」

梓「やめろ……ヤメロ……」

唯「んー?どうしたのアズサエル。悠久なる時に支配された暗黒の力開放しちゃう?」

律「どーせまたその包帯グルグルの右腕がうずいてんだろアズサエル?」

梓「うぅ……うぇえ」

澪「どうしたアズサエル? みんなノってやってんだぞ漆黒の堕天使アズサエル」

紬「私、黒の雷撃(クロノス)に身を焦がされるのが夢だったのー」

唯「ずるーい。私も空と大地の狭間より生まれし獄炎で焼き尽くされたいよ」

梓「んはぁ……///」

梓「み、みなさん! さぁ、さっそく練習しましょう!」

梓「あ、その前にお茶でしたねっ! わたし机ふいちゃいますねっ!!」

澪「……! そうだな 私食器運ぶよ」

紬「いまお茶いれるわね~」

唯「ククク……アズサエルいまさら本性を隠したところで……」

律「いや、お前はもういいしっ!」

梓「……///」

紬「梓ちゃんは可愛いわねぇ」


こうして私の黒歴史は終わったのであった。



お し ま い


憂「クク……これが終わりの始まりとは奴はまだ知らない……」

純(私もこんな時期あったなぁ……)



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