2000年4月28日 軽音部室

ガチャリ

さわ子(過去)「私が一番乗りかぁ」

唯「あのぉ」

さわ子「きゃあ!?」

唯「お、驚かせちゃってごめんね!」

さわ子(上級生? でもこんな人いたっけ?)

さわ子「あの、もしかして軽音部に入部希望とか……?」

唯「えっと、ていうか既に入部してるんだけどね」

さわ子「え? でも……」

唯(な、なんて説明しましょうかぁ……)ウズウズ

さわ子「上級生の方、ですよね? 名前は?」

唯「平沢唯だよー」

唯「そ、そんなことより! あのね!」

唯「それ!」ビシィッ

さわ子「え……?」

さわ子「このギターですか?」

唯「それは……えっとね」

唯「呪いのギターなんだよ!」

さわ子「……はい?」

唯「あ、えっと、えっとぉ……」

唯(勢いで言っちゃったけど変だったかなぁ!)

さわ子「ふふっ」

唯「え?」

さわ子「面白い人ですね。平沢先輩」

唯「あ、よく言われるよ。それ」

さわ子「あはははっ」

さわ子「呪いのギターでも、私にとってはこれはおじさんから譲ってもらった大事なギターなの」

唯「そ、そっかぁ。でもね、それ使っちゃったら大変なことになるんだよ……」

さわ子「大変なこと?」

唯「さわちゃんの友達がね、死んじゃうの」

さわ子「わ、私の?」

さわ子「ていうかさわちゃんって……私のこと知ってるんですか?」

唯「うん。だってさわちゃんは先生でもあって、軽音部の顧問でもあるんだもん」

さわ子「先生? 顧問? あの、人違いじゃ……それに私、まだ学生ですよ」

唯「今はそうだけど、さわちゃんは先生になるの。この学校の音楽の先生」

さわ子「な、なんでそんなこと言えちゃうんですか?」

唯「それは私がみら――――」

唯「なななな、なんでもない! やっぱなんでもないよ!?」

さわ子「えぇー……」

さわ子「ていうか私の友達が死んじゃうっていうのは……」

唯「紀美さん、だっけ。その人が事故で……亡くなっちゃうの」

さわ子「え!? 紀美!?」

さわ子「じょ、冗談でも言っていいことと悪いことがあるわっ!!」

唯「ご、ごめんね! でも本当なのっ、信じてっ」

さわ子「初対面の人をそう簡単に信じられると思えますか!?」

さわ子「おまけにさっきから変なことばかり言うしっ」

唯「へ、変じゃないよぉ……」

さわ子「出ていってください! 」

唯「そういうわけにもいかないの!」

さわ子「出ていって!」

唯(さ、さわちゃんのばかぁ! 全然分かってくれないじゃんっ)

唯「ど、どうしよう……」

Prrr…

さわ子「ん?」

唯「あ、携帯……ちょっとごめんね」ピッ

さわ子(携帯って……なんでそんな……)

唯「はいはい、もしもし?」

さわ子『もしもし、唯ちゃん』

唯「あ、さわちゃーん!」

さわ子(過去)「え?」

唯「あ、そっちのさわちゃんじゃなくて……と、とりあえず気にしないで!」

さわ子(過去)「?」

唯「さわちゃん大変だよ、こっちのさわちゃん私の言うこと全然信じてくれないっ」ヒソヒソ

さわ子『そっか……電話かけて正解だったわ』

律『やっぱりなんとかならないじゃん』

唯「ほんとだよっ」プンスカ

さわ子(過去)(本当になんなのこの人……)

唯「でもどうするの? このままじゃ」

さわ子『唯ちゃん。ちょっとそっちの私と電話代わって』

梓『そ、それって大丈夫なんですか!?』

さわ子『たぶん大丈夫よ。タイムマシンのことさえ言わなければいいんだから』

唯「……んじゃあ、代わるよ? おーい、さわちゃん。電話代わってだって」クイクイ

さわ子(過去)「え、私!? だ、誰からですか……?」

唯「それは出てからのお楽しみ」サ

さわ子(過去)「……も、もしもし」

さわ子『もしもし』

さわ子(過去)「どなたですか……?」

さわ子『山中さわ子よ』

さわ子(過去)「あ、同じ名前……」

さわ子『そりゃそうよ。私はあなた、あなたは私なんだから』

さわ子(過去)「は?」

さわ子『私は未来のあなたよ』

さわ子(過去)「またそんな冗談を……だれ? なんのつもり?」

さわ子『私はね、今桜高の教師やってるのよ。びっくりでしょ?』

さわ子(過去)「……平沢さんから聞きました。それがなんですか」

さわ子『DEATH DEVILは色々あって続かなかったのよねぇ……ちょっと残念だけど』

さわ子(過去)「な、なんでまだ誰にも教えてないバンド名をあなたが!?」

さわ子『ふふふ……(なんかちょっと面白くなってきたかも)』

さわ子『まだ信じられない? 私が未来のあなたなんだってこと』

さわ子(過去)「あ、あたり前ですっ」

さわ子『じゃあ今度は振られた男の数でも言っちゃおうかな~?』

さわ子(過去)「いっ!? や、やめてぇっ」

唯(なんかよくわかんないけど学生さわちゃんが押されてる……!)

さわ子『じゃあ信じてくれるわね?』

さわ子(過去)「信じる! 信じるからっ!」

さわ子『そう、よかった。じゃあまた唯ちゃんに電話代わって?』

さわ子(過去)「……はい」ス

唯「ほえ?」

さわ子『もしもし唯ちゃん。上手くいったわ。これでだいぶ話は聞いてくれるとは思う』 

唯「ほんとぉ!? さっすがさわちゃん先生~」

さわ子(過去)「あの……」

唯「ん?」

さわ子(過去)「まさか、平沢さんも未来の人だとか……言いませんよね?」

唯「そのまさかです!」

さわ子(過去)(あ、頭痛くなってきた……)フラ

さわ子(過去)「どうやって未来からここに来たんですか。まさかタイムマシンとか?」

唯「それは内緒ー。それ言っちゃダメって言われてるからね」

さわ子(過去)「……じゃあ、なんで未来からわざわざ? 何か用でも?」

唯「そのギターに用事があって来たんだよ」

さわ子(過去)「呪いのギター?」

唯「ああ……それもう忘れてよぉ……」

さわ子(過去)「まさか、このギターをよこせとか言いだすんじゃないでしょうね?」

唯「ううん。ぶっ壊してほしいの」

さわ子(過去)「……」

さわ子(過去)「……は?」

唯「だから――」

さわ子(過去)「ちょ、ちょっと待って! 本当にあなた私をばかにしてるんですか!?」

さわ子『ゆ、唯ちゃん。ちょっともう一度私と電話代わってくれるかしら?』

唯「え? あ、うん。はい、さわちゃん」ス

さわ子(過去)「……もしもし、どういうこと!? 説明して!」

さわ子『あのね、落ち着いて聞きなさい。あのギターについて詳しいことは教えられないけど、とにかく今、私たちの時間で大変なことが起きてしまいそうなの』

さわ子(過去)「あのギターが原因でってこと……?」

さわ子『そう。それにあれをあなたが使うことで紀美が死んでしまうのよ』

さわ子(過去)「また紀美……」

さわ子(過去)「本当、なんですか? にわかには信じがたいですよ」

さわ子『本当よ。ウソじゃない。……とりあえずあのギターを絶対に弾かないで』

さわ子『それだけでも紀美の死は回避できるわ』

さわ子(過去)「だったらわざわざ壊さなくても……」

さわ子『……あれがあると、私の教え子が死ぬのよ。そこにいる唯ちゃんがその1人』

さわ子(過去)「え……」

唯「ん?」ヒョコ

さわ子『あなたがおじさんから譲ってもらったあのギターこそが全ての元凶。あれを壊して二度と使えなくすることで、おそらく唯ちゃんたちの死は回避される』

さわ子(過去)「どうしておじさんから貰ったって……」

さわ子『何度も言わせないで頂戴。とにかく、あとはそこにいる唯ちゃんの言うことをしっかり聞いて。……それじゃあ』ブチッ、ツーツー

さわ子(過去)「え、あ、ちょっ……まだ聞くことが……」

さわ子「はい、電話。返します」

唯「あれ? さわちゃん電話切っちゃったの?」

さわ子「私じゃなくて、向こうの私が切りました……それより」

さわ子「あのギターを壊さなきゃ、あなた死んじゃうんですか?」

唯「んー……まだよくわかってないけど、そうみたいだよ。あはは……」

唯「それ教えてくれたのは未来から来たあずにゃんなんだけどね。あ、あずにゃんっていうのは私たちの後輩の1人で」

さわ子「そこまで聞いてない。……あなた、私の教え子にあたる生徒さんだったんですね」

唯「そだよぉ~。さわちゃんはねぇ、なんだかんだ言っていい先生なんだよ! あ、最近だと彼氏が全然できないって泣いてた」

さわ子「……そういうことは教えなくていいですっ!! それで軽音部の顧問と?」

唯「あんまり顧問らしいことしてないけどね。あ、でもギターすごく上手くて私も色々教えてもらったよぉ。歯ギターとか!」

さわ子(未来の私はいったい何をしているの……!?)

唯「でもね」

さわ子「え?」

唯「みんなさわちゃんのこと大好きだよ」

さわ子「……あ、ありがとう」

さわ子「って、私に言ったんじゃなくて未来の私ですよね……あ、でも私には変わりないのか」

唯「ふふふっ」

さわ子「な、なに?」

唯「さわちゃん若いなぁって。さわちゃんも私たちと同じときがあったんだなって思って」

さわ子「そりゃ、誰だって学生のときはありますよ」

唯「でもなんか変な感じして、えへへ」

さわ子「……ふふっ」

さわ子「それで? 私はなにをすればいいの?」

唯「え?」

さわ子「あなた、何のために未来からやってきたんですか」

唯「あ、そだったね。えっと……」

さわ子「やるなら早くしたほうがいいと思います。もうすぐここに誰か来ちゃうかもしれないし」

唯「そ、そだね! それじゃあ……」

唯(まずギターケースに入ってるおじさんが書いたメモを……)ジィーッ、ガサゴソ

さわ子「?」

唯「あった! えっとこれを……どうしよう?」

さわ子「なんですかそのメモ?」

唯「み、見ちゃダメだよ!」

さわ子「でもそれ……」

唯(ど、どうやって処分しよう……そうだ!)

唯「あむっ」パクッ、ムシャムシャ

さわ子「は!? え、ちょっと!? なに食べてるんですか!」

唯「ほうふふひははいんはほ~(こうするしかないんだよ~)」

ゴクン

唯「はぁ……まずっ」

さわ子「と、とんでもない人……」

唯「よし、メモはこれでおっけー。後は」ガシッ

さわ子「こ、今度はなんですか?」

唯「ちょっとこのギター使わせてもらうねぇ。あ、見られないようにしなきゃダメか」

唯「物置部屋借りるよー!」

さわ子「え? えぇっ?」

さわ子「あ、あのちょっと!」

唯「いい? 今から3分ぐらい経ったらここ開けてギター持っていって」

唯「そしたら何があってもかならずギターぶっ壊しちゃってね! いい? かならずだよっ」

さわ子「壊すのはわかりましたけど……なんでそんな」

唯「それと、私と会ったことは忘れてね!」

さわ子(こんな強烈なキャラ中々忘れられないと思うけど……)

唯「んじゃね! 頼んだよ、学生さわちゃん!」

ガチャリ

さわ子「あ! も、もぉ……なんなのよ……」


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