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2010年5月8日 軽音部室

シュッ

唯「ただいまー」

紬・梓「!?」

梓「い、いきなり帰ってこないでくださいよ!」

律「ふひー」シュッ

澪「……」シュッ

唯「いやぁ、驚かそうかなって思ってねぇ」

梓「……」

澪「い、いや! 私は止めたんだぞ!?」

紬「まぁ、何事もなくてよかったわ」

律「変なことは何一つしてきてないからな!」

梓「偉そうに言わないでくださいよっ」




2010年5月8日 平沢家

『ドラえもーん!』

『そうだ! タイムマシンを使おう!』

憂「そんなものが本当にあったら便利なのにね」

唯「むふふぅ」

憂「ん?」

唯(それがあるんだなぁ♪ でもみんなには内緒にしろって言われてるから)

憂「どうかした?」

唯「いいえー(ごめんねぇ憂)」

唯「きっとタイムマシン、いつかできると思うよ!」

憂「うふふ、だったらいいなぁ」

唯「憂はタイムマシンがあったら何がしたいの?」

憂「一昨日のスーパーのバーゲンセールに行きたいかも」

唯「えー、そんなもん?」

憂「だめかな?」

唯「過去でも未来でも、どこでも行けるんだよ? もっと色々あるって」

憂「じゃあ未来にいってお姉ちゃんの子どもでも見てこよっかな」クスッ

唯「いるかなぁ」

憂「どうだろうね。きっと可愛いと思うよ」

唯「でも私じゃなくて父親のほうに似てたら?」

憂「それでも可愛いよ」

唯「そっかぁー、よかったぁ」


ガチャリ

唯「ふぁ~……憂とお喋りしてたらもうこんな時間になってたとは」

唯「寝ちゃお、寝ちゃお~!」

唯「あ、でも歯磨きちゃんとしておかないと」

唯「虫歯は無視できない、なんちゃってー……」

ガチャリ

シュッ

?「こ、ここは……」

ガチャリ

唯「よし寝るよー!」

「お休みの前に少しお話させてもらってもいいですか」

唯「……え」

梓「……えっと、こんばんは。唯先輩」

唯「あずにゃーん! あーずにゃーん!」ギュッ

梓「ちょ!?」

唯「寝る前にあずにゃんに抱きつけるとは幸せですなぁ、むふふ」

唯「……あれ」

唯「でもなんであずにゃんが今ここにいんの!?」

梓「気づくの……遅いです」

唯「まさか窓から忍び込んだとか! えー、うっそー!」

梓「勝手に変な想像しないでくださいよ!」

梓「いいですか? 私は未来から来た中野梓です。タイムスリップして」

唯「未来あずにゃん!?」

梓「……」

梓「話、進めてもいいですか?」

唯「あ、ごめん! どうぞどうぞ!」

梓「……まずはどうしてここに私が現れたのかを説明します」

梓「私の時間のタイムマシンはもうガタがきてて、ていうか壊れちゃったというか……まぁ、よくわかってないんですけど」

梓「年月日に場所と時間、それらが指定できずにランダムに跳ばされてしまう状態なんです」

唯「……へぇー」

梓(絶対この人理解してない)

梓「さっき、勝手に申し訳なかったですけど唯先輩の携帯の日付を確認させてもらいました……2010年の5月8日、間違いないですよね?」

唯「もうすぐ9日になるよ」

梓「それはいいから! 間違いないんですよね!?」

唯「えー……うん」

梓「……ここまでたどり着くまで予想外に苦労しませんでしたよ。運よく最初に辿りつた時間がタイムマシンが正常なときでしたから。あとはある程度皆さんがタイムマシンについて知識があった時間に跳んできたんです」

梓(でもおかしいんだよね……あの時間のタイムマシンは確かに正常だったはずなのにどうしてこんな夜に、しかも唯先輩の部屋に来ちゃったのかな)

唯「……もしかして、あずにゃん。とんでもなく危ないことしてたってこと?」

梓「はい。かなりの賭けだったと思います。でもそれぐらいの覚悟は……」

ギュッ

唯「よかったぁ……あずにゃんが無事でよかったぁ……」

梓「また抱きつく……もぉ、唯先輩は変わりませんね……」

唯「でも」

唯「そこまでしてタイムスリップしてやりたかったことって何なの?」

梓「……はい」

梓「そもそも、私は未来の私と言ってもそう遠くに存在する中野梓じゃないんです」

梓「2010年5月24日から来ました」

唯「あれ、ほんとにそこまで遠くないかも」

梓「ここからが重要です。ていうか……これから私が話すこと、信じてくれますか」

唯「あずにゃんがここまで来てウソつくはずないもん。信じるよぉ」

梓「……ありがとうございます」

梓「唯先輩。それに、律先輩に澪先輩、ムギ先輩は……」

梓「5月22日に……4人ともそれぞれ死んでしまいます」

唯「はい?」

唯・梓「……」

梓「唯先ぱ――」

唯「またまたぁ~あずにゃんったら冗談キツいんだからぁ~」

梓「冗談じゃありませんっ!!!!」ドンッ

唯「!」

梓「……信じてください」

唯「う、うん……」

梓「このままじゃ、先輩方は死んでしまうんです。死因は……もう覚えてません」

唯「覚えてないって?」

梓「何度も何度も救おうと22日にタイムスリップして皆さんの様々な死に方を見てきましたから……」

唯「うげっ……」

梓「22日に死ぬことはもう決まった運命みたいなものなんです。だから救いようもない」

唯「じゃ、じゃあ私たちこのまま死んじゃうのを待ってることしかできないの!?」

梓「そうさせないために私がわざわざ苦労してタイムスリップしてきたんですよ。唯先輩」

唯「あ……そっか! じゃあ方法があるんだね!」

梓「ええ。ただ成功するかはわかりませんけど」

唯「ダメじゃん!」

梓「それしか方法がないから仕方がないでしょう!? グダグダ言わないでっ」

唯「ううっ……」

梓「とにかく、やっとこの話をまともに話すことができる時間の先輩に会えたんです。もうやってもらうしかありません」

唯「い、今すぐ?」

梓「ううん。明日、先輩方にまとめてもう一度この話をしてからです。さすがに唯先輩だけに任せるのは不安だから」

唯(このあずにゃん、いつにもましてビシビシ言ってくるよぉ……)

梓「……ごめんなさい。急に色々言われたって混乱しちゃいますよね」

唯「まぁ、よくわかんないけど」

唯「あずにゃんが一生懸命私たちのために頑張ってくれてるんだもん! だったら先輩としてちゃんとそれに応えなきゃ」

梓「唯先輩……」

唯「そういえばみんなに会って大丈夫なの? 未来のあずにゃんが」

梓「タイムマシンのことをこちらの皆さんは既に知ってることだし、大丈夫だとは思いますけど」

梓「ていうか今さらそんなこと気にしてられないし……というかこうして唯先輩に会っちゃってるし」

唯「あ」

梓「心配することはありません。もちろんこの時間の私と会うことになるのも覚悟してます」

梓「私ならきっと大丈夫なはず……はず」

唯「自信ないのぉ?」

梓「うーん……」

梓「ところで、私しばらくこの家に寝泊まりしても構わないでしょうか?」

梓「このままじゃ帰るにも帰れなくて……」

唯「うん! いいよ! ていうか大歓迎!」

梓「あ、ありがとうございます!」

唯「でも憂に見つかると色々面倒かなぁ」

梓「見つからないようなところで寝ればいいんです。例えばクローゼットの中とか」

唯「そんなのあずにゃんがかわいそうだよ……いい。一緒に寝よう? 憂に見つかったら私がなんとかしてあげるし、憂だって話せばわかってくれるよ」

梓「まぁ、それはそうかも……ていうか一緒に?」

梓「同じベッドの上で……並んで寝るってことですか?」

唯「あったりめーよ!」


梓(けっきょく)

梓(こうなっちゃうか……)

唯「あずにゃーん、すりすり~」

梓「い、いい加減寝てくださいよぉ……」

唯「もちょっと、もちょっとー」

梓「むぅ……」

唯「……ね、あずにゃん」

梓「え?」

唯「今まで寂しい思いさせちゃってごめんね」

梓「そんな……別に……。ていうかこっちの時間の唯先輩は関係ないじゃないですか……」

唯「まぁ、それはそうなんだけど……」

唯「あずにゃんは私たちのためにいっぱい頑張ってくれたんだよね。私、よくわかんないけどほんとに嬉しいんだよ?」

梓「……」

唯「ぜったい、ぜったいのぜったい。私は、ううん、私たちは」

梓「……」

唯「あずにゃんを一人ぼっちになんかさせないから、安心して」

梓「……」

梓「あの」

唯「うん?」

梓「……抱きしめて、唯先輩」

唯「うん」ギュッ



2010年5月9日

憂「お姉ちゃーん、朝だよ。起きて」

唯「ん、んー……」

憂「ほら、遅刻したら大変だよ?」

唯「あずにゃ……あーずにゃん…………はっ!」

唯「う、憂!」

憂「え?」

唯(もしかして、あずにゃん見つかっちゃったかな)

唯「ねぇ、憂。あずにゃん」

憂「うん?」

憂「梓ちゃんがどうかした?」

唯「え、あ……あれ?」ガサ

唯(なにこのメモ?)

―やっぱり憂にバレて色々説明するのも面倒だと思うので、さきに外に出ていますね。どこかで時間を潰そうと思います―

唯「ありゃ」

憂「なに? そのメモ」

唯「な、なんでもない!」

唯「それより朝ご飯食べようよぉ。私、お腹ぺこぺこ!」

憂「そうだね。じゃ、早く起きてきてね」

唯「はーい」



2010年5月9日 教室

唯(未来あずにゃん、どこ行ってるのかなぁ)

紬「唯ちゃん?」

唯「ほえ?」

紬「あの、タイムマシンはこれからどうなっちゃうんだろねって」

唯「そうだねぇ……ムギちゃんはどうなってほしいの?」

紬「誰かの幸せのために使えたらなー……なんて」

紬「本当のこと言っちゃえば、全然わかんない」

唯「私もかな、えへへ」

紬「ふふっ」

紬「タイムマシンって……誰が作ったのかしら?」

唯「へ?」

澪「唯、ムギ、おはよう」

律「二人でなに話してたー?」

唯「おはよー。えっと、なに話してたんだっけ」

紬「別に大した話じゃないわ」

律「そう? そういやさ、さっき梓に会ったの。あ、学校の外でな」

紬「えっと、それが?」

律「うん。とりあえず声かけたんだけどさ、私と澪の姿見た瞬間すんごい嬉しそうにして」

澪「ふふ、可愛かったな」

唯「まさか!」

律「ん?」

唯「あ、なんでもないっ」

律「んでんで、今度は放課後大事な話があるから覚悟しててくださいって、すんごい真面目な顔して言ってきたのよ」

紬「大事な話……何かしらぁ」

澪「最近部活真面目にしてないから、梓怒ってるのかな」

唯「そ、そんなことないと思う!」

澪「そう?」

律「どうだかなぁ。とりあえずその後梓どっかに走ってっちゃって……あいつ、学校サボる気なのかね」

紬「梓ちゃんはそんなことする子だとは思わないけれど」

律「まぁねぇ……なんだったんだろ、梓のやつ」

唯(たぶんそのあずにゃんって未来あずにゃんだよね……?)


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