2010年5月4日 女子トイレ

律「―――ます。……?」

律「あれ、みんな?」

律(いない! ってことはまさか……)

「でねー、○○先生ってば」

律「お、おいっ」

「きゃあ! な、なんですか」

律「今日は何年の何月何日!?」

「え……えっと、2010年5月の……4日?」

律「たしかなんだな!?」

「け、携帯で確認すればいいじゃないですか」

律「あ、それもそうか」

パカッ

律「5月7日。ちょっと! 全然違うじゃん」

「は?」

律「なーんだ、何がタイムスリップだよ。梓のやつ適当な……」

律(でもあの時、梓突然消えて、現れてたりしてたよな。わけわかんないぞ)

「あの、もう行っていいですか」

律「ちょっと君の携帯の方を見してくれない? どうも私のおかしいみたいでさ」

「……はい」パカッ

律(こっちは5月4日! どうなってんだ!?)

律「も、もういいよ。ありがとね……それじゃ!」

「なんだったの……?」

タタタ…

律「みんな、みんなに会えば一発だ……!」

律(い、いや! 待って、ストップ!)

律「もし部室の中に私がいたらどうする……」

律「……いや、待てよ」

律(そもそも私って、三日前の私(現在の)と会わないんじゃないか?)

律(過去があるっていうのなら、未来もあるだろ? それなら現在の私たちから見た先にいる未来の私たちもタイムマシンを見つけて使えてるはずだよね?)

律(現在の私をA、未来の私をBとして……Bが5月7日にタイムマシンを使って4日に跳んだとする。つまり今の私と同じ状況だ)

律(Aは5月4日のAだとすると……うん、BはAと会ってない。間違いないはずだ!)

律「いや、でも待てよー。未来の私がかならずしも今の私と同じ行動をとったわけじゃないかもしれないし……え~」

律「ああああ!! 頭が爆発するわっ! もういい、適当にうろつこっと!」


律「そっか、ありがとね」

「ううん。それじゃあ」

律(やっぱり誰に訊いても今日は2010年の5月4日だ)

律(教室の日めくりカレンダーを確かめてもそうだった)

律「これってやっぱり確定、だよな」

律「う……う……」

律「うおー!! やたー!! 私は過去にとんだぞー!!」

律「は、ははは……ほんと、夢みたいだ。えへへ」



3年教室

ガチャリ

律「しっつれいしま~す……」

律「お、誰もいないじゃん。うししっ」

律「とりあえず私が過去に来たという証拠を残す!」

律「ってことで澪ちゅわんの机の上に~。いや、机の中にかな」

律「紙を一枚拝借っと……うーん、何書こう」

律「未来から参上! うーん、違う。タイムトラベラー田井中律! ううーん……」

律「面倒臭いからてきとうに落書き書いちゃえ」カキカキ……

スタスタスタ…

「――でねー、あずにゃんが」

「ふふ、そうなの」

律「だ、誰かくるっ!? わわわわ……」

ガチャリ

唯「あり? だーれもいないやぁ」

和「もうこんな時間だし、下校してるか部活動してるかどっちかでしょ」

和「そういえば今日は軽音部の活動はないの?」

唯「うん。今日はりっちゃんが澪ちゃんから勉強見てもらうからって」

和「ああ、そうなの。ところで忘れ物は? 見つかった?」

唯「うーん、机の奥かなぁ……」

―掃除用具入れの中―

律(……な、なんで隠れたりしたんだ? 私)

律(別にあいつらに会ったって何か悪いことが起きるわけじゃないんだぞ?)

律(まぁ、今さらここから出てきてもおかしいけど……)

唯「あ、そういえば!」

和「ん?」

唯「私、りっちゃんに貸してたんだよ~! 世界史のノート!」

唯「どーりで見つからないわけだ。うんうん」

和「……やれやれ。それじゃあ律のところにいきましょう?」

唯「りっちゃんどこにいるかわかんなぁい」

和「はぁ、電話すればいいだけでしょ?」

唯「あ、そっか!」

律(ははは、やっぱ唯はバカだなぁ~。そんなことも思いつかないなんて)

唯「電話、電話ぁ……っと」ピッ、ピッ…

律(……あれ、ちょっと待てよ)

律(この場合、現在の私と4日の私。どっちに唯の電話がかかるんだ?)

律(私の携帯はこの通り、タイムスリップしても無事に動いてるし……)

律(てかそもそも! 4日の私って本当にこの時間にいるのか? 私が同じ時間に二人ってのがそもそもおかしいし……やっぱ、ムギがさっき言ってたみたいに現在の私は過去の私に置き換えられてたりとか……え? えぇ?)

唯「りっちゃんにかけるよー」

和「別に宣言しなくていいわよ」

律(うっ、うわー! うわぁー!! どうなんだこれ!? どうなっちゃうんだ!? うわわわわ!?)

唯「あ、もしもし? りっちゃーん?」

律(……あ)

唯「うん、そう。世界史のノート。えー? まだ書き写してない? もぉ~」

唯「それじゃあ明日でいいよぉ……。うんちゃんと返してねー。ばいばーい」

和「それじゃ、帰りましょうか」

唯「ん」

ガチャリ……ガチャ、バタッ

律「唯……ちゃんと私と会話してた」

律(世界史のノート……そういえば4日にそんな電話が唯から来た覚えが)

律「ということはこの時間に私は二人、いちゃうわけなんだ……あ、あはは」

律「そうだ、たしかこの日は澪と市民図書館に……そりゃ、学校で会わないわけだ」

律「てかなにパニクってんだよ私……ふぅ」

律「も、もうあの二人行ったよな?」

律「……よし、もういない」

律「にしてもタイムスリップした証拠がこんな落書き一枚だけってのはなんか――ん?」

――「お前、私の机の中に変な落書き書いたルーズリーフ入れただろ? いきなり見つけてびっくりしたんだぞ!」

律「!!」

律「まさか、これのことか!」

律「ということは……やっぱり未来の私も同じ行動をとってたんだ!」

律「いや、私が同じ行動してるのかな? んー……ま、いっか」

律「さてと。色々と楽しんだことだし。そろそろ……」

Prrr、Prrr…

律「うわわ!?」

律「な、なんだ電話か。驚かせんなよなぁ……ん」

律「電話!?」

律「だ、誰から……唯!? え、でっ、でも……!」

律「……ごくりっ」

ピッ

律「も、もしもし……」

『りっちゃーん!』

律「あ、ああ……」

『繋がったのか!?』『うそ!』

律(え?)

『えええ、えっと! 確認します! あ、あなたは2010年5月7日から4日にとんだりっちゃんですか?』

律「そ、それじゃあ……まさかそっちは5月7日の……?」

『きゃー! 本当に繋がってるわー!』『す、すごいよ! すっごぉ~い!』

律「お、おい?」

澪『そうだよ! 5月7日の私達だよ! 律!』

律「マジかっ!?」

梓『大マジです! これってすごいことですよ!?』

律「でも何だって電話なんか……」

唯『物は試しって言うじゃん? それだよ!』

紬『ほとんど唯ちゃんの思いつきでなの。りっちゃんに電話したらどうなるのかって』

梓『私がタイムスリップしたときは携帯を部室に置いたままでしたので、これについては何もわからなかったんですけど……びっくりですよ』

律「そういえば携帯置きっぱなしだったな。……あ、そういえば!」

律「澪、お前の机の中に入ってた落書き、やっぱり私の仕業だったぞ!」

澪『なっ、やっぱり……』

律「でも私であって私じゃないんだ! 未来の私なんだよ!」

澪『……は?』

律「つまりだな――――」

澪『なるほど』

律「な? すごくない!?」

唯『りっちゃんの悪戯もたまには役に立つね』

梓『ですね』

律「おいおいっ」

紬『りっちゃん。心配だし、そろそろ戻ってきて』

澪『うん。何があるかわかったもんじゃないしな……』

律「大丈夫。ちょうど今帰るところだったよ」

梓『帰り方は、覚えてますよね?』

律「うん。それじゃそろそろ切るぞ」

梓『はい。それじゃあくれぐれも気をつけて』

ピッ

軽音部室

ガチャリ…

律「いない。よしっ」

律「たしかあのギターは……お、見っけ!」

律「あとは帰るだけかぁ、無事に帰れるかな。大丈夫かなぁ」

律「なんかやり残したことってあるっけ……」

律「……」

律(そういえば、もし私が未来の私と違った行動をここでとっちゃったらどうなるんだろ)

律「たとえば……トンちゃんを水槽から出しておくとか、窓ガラス破ってみるとか」

律「この二つは現在の時間じゃ起きていないことだから……」

律「あれ、なんか私って頭良かったのかな。すっげぇ面白いこと考えてると思うんだけど」

律「……そうだなぁ、試しに一つやってみよっか?」

.>>43
やっちゃう? やらないで帰っちゃう?

※帰る


律「いやいや、きっとみんな心配してるはずだ。今日のところは帰ろう」

律「あ、今日じゃなくて一昨日か~なんつって」

律「……」

律「さっさと帰るか。なんか寂しくなってきたよ」

律「えっと、5月の7日だから……」

ポーン、ポーン、ピーン

律「こ――――」



2010年5月7日 軽音部室

律「――うかな?」

澪「律!?」

律「うおっ」

唯「りっちゃんいつのまに!」

紬「び、びっくりしたぁ」

梓「ほんとにいきなり消えたり、現れたりなんですね……」

唯「りっちゃんおかえりー」

律「お、おう……」

紬「どうだった? 初めてのタイムトラベル」

律「どうもこうも、なんて言うかな……」

梓「変な感じ?」

律「うん」

澪「曖昧な……」

唯「よし、それじゃあ次は私が……」

澪「待った、唯。今日はもう遅いしやめておこう」

唯「えー! りっちゃんばっかずるいっ」

梓「どっちにせよ、今の時間で過去へ行ってもやることないと思いますよ?」

唯「色々あるよ。色々」

律「はい、例えば」

唯「……そうだなぁ」

澪「その時点でやっぱり何も考えてなかったじゃないか!」

唯「いやぁ、うふふ」

紬「うーん」

梓「ムギ先輩? どうかしました?」

紬「あのね、あのタイムマシン……できればもう使わない方がいいんじゃないかなって」

梓「え、どうして」

紬「これって面白いけど、まだまだわからないことだらけでしょ?」

梓「だから使うのは危ない?」

紬「簡潔に言っちゃうと……そうなるね」

澪「たしかに、ムギの言うことにも一理あるよ」

律「じゃあこれしまっちゃうのか? そんなの宝の持ち腐れだろ~」

唯「うんうん!」

紬「でも何かあってからじゃ遅いと思うの」

梓「まぁ、そうですね……下手に使って大変な事になっちゃったら……」

唯「多数決!」

「?」

唯「多数決で決めよう! それなら恨みっこなしで文句なしだよ」

澪「そうだな。私は唯に賛成」

紬・梓「私も」

律「えー……わかったよ。じゃあそうしよう」

唯「それでは! この紙に使う、使わないどっちか書いてください!」ス

律(私はもちろん、使う……っと)

紬(使わない、使わない。みんなの安全第一だもの)

唯(使う一択~)

澪(ムギの話を聞いたらなんか不安になっちゃったし……使わない、と)

梓(私は……どうしよう?)

.>>49
使ってたい? やっぱり使わない方がいい?

※使う。ただし危険なことは絶対にしない。


梓(少し興味でてきたし……うんっ)

唯「それじゃあみんな書けたねー? いっせーので見せるよ。せー……のっ!」

サッ

澪「唯が使う、ムギが使わない、律が使う、梓が使う、私が使わない……ということで」

律「使うにけってー!」

唯「パチパチパチ~」

澪「梓がそっち側だったとは……」

梓「す、少し気になっちゃって。ごめんなさい、澪先輩!」

澪「いや、文句なしなんだから別にいいって」

紬「でもどうする?」

「ん?」

紬「ただ過去に戻ったってやることは特にないし」

律「なんかはあるだろー? ……うーん、たぶん」

紬「今まで自分が起こしたミスを回避するように仕向けるとか?」

律「おぉ、それいいな!」

梓「そんなのずるいですよ!」

律「でも使い道としてはそうなんじゃないかぁ?」

唯「昔の私たちを見てくるとかは!? うーんとちっちゃい頃の!」

律「それ、面白そう!」

澪「でもそれだともしかしたらタイムマシンがその時間になかったりするんじゃないかな」

澪「このタイムマシンはいつから存在したのかわからないし」

澪「これと一緒にタイムスリップできるんじゃないんだろ? だったらこの時間に戻ってくることができないかもしれない」

「うーん……」


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