2009年9月5日 軽音部室

唯「ん~」

唯「あずにゃんどこ行っちゃったのかなぁ。マジックみたいにいきなりどっかに消えちゃったよ」

唯「かくれんぼなのかな?」

唯「あずにゃんやー、あずにゃーん、降参だよー」

「あ、あのっ!!」

唯「ん?」

「教えてください! 今は何年の何月何日ですか!?」


「はぁ、はぁ……」

唯「あずにゃん!? あーずにゃはーん! もぉー、いつからそこにいたの?」ギュッ

梓「うわっ!?」

唯「探したんだよ? いきなり消えちゃったからびっくりしちゃった!」

梓(懐かしい匂い……)

梓「ん……いきなり? ま、いいか」

バッ

梓「唯先輩、ちょっとすみません!」タタタ…

唯「そっちは物置だよー?」

ガサゴソ…

梓「えっと、えっと」

唯「うわわ! か、勝手に漁ったらまずいよっ」

梓「あった!」ガチャ

唯「うっ、埃臭い……あれ? またそのギター弾くの?」

梓「また……?」

唯「あずにゃんさっきもそのギター弾いてたじゃん。そしたらあずにゃんどっか行っちゃって」

梓「えーっと……ていうか今日はいったい何年の何月何日なんですか!? はやく教えてください!」

唯「え、えっと! 2009年の9月…5日?」

梓「そ、そうですか。じゃあ話しても無駄かな……」

唯「?」

唯「日付がどうかしたの? それにさっきからあずにゃん顔色悪いよ……?」

梓「なんでも……ないです」

梓「唯先輩、いいですか。私がいいって言うまで目を瞑っていてください」

梓「お願いします。絶対に目を開けないでくださいね……」

唯「うーん……わ、わかったよぉ」

唯「あずにゃんまだー?」

梓「まだ!」ピーン、ティーン、ピーン

梓「……さよなら、唯先ぱ――」

唯「ギター弾いてるの? ねぇ、弾いてるとこみたいなぁ……」

唯「あずにゃーん?」

律「唯、そんなとこで何してんの?」

唯「え?」

律「ていうか何で目瞑ってんだよ」

唯「あずにゃんがいいって言うまで開けちゃダメなんだー」

律「梓? 梓もう来てるのか?」

唯「え、そこにいるでしょ?」

律「は? いないけど……」

唯「え!?」パチ

唯「あれれー!? あずにゃんどこー? またかくれんぼー?」

律「……唯、お前そうとう寝ぼけてるな」

唯「ち、違うよ! 本当にあずにゃんが」

律「わかった、わかった。それより澪とムギがもうすぐ来るから隠れて脅かしてやろうぜー」

唯「んー?」



2010年5月7日 軽音部室

澪「あわわわっ」

律「梓が……」

紬「消えちゃった……」

唯「どどどどうしようっ」

ヒュッ

梓「はぁ、はぁ……」

紬「梓ちゃん!?」

梓「ここは何年何月何日!?」

澪「あ、梓?」

梓「何年の! 何月何日ですか!?」

律「に、2010年の5月7日……」

梓「や、やっと戻ってこれた!」

梓「はぁー……」ヘナヘナ、ペタン

唯「あずにゃん急に消えちゃってびっくりしたんだよ!? どうしたの!?」

律「そ、そうだ。澪なんか物凄くパニクってたんだからな!」

澪「お前らもだろ!」

梓「タイムスリップ」

「え?」

梓「タイム、スリップ……してきました」


数分前

律「掃除めんどくちゃい」

澪「こら、サボるな。……そういえば律」

澪「お前、私の机の中に変な落書き書いた紙入れただろ? いきなり見つけてびっくりしたんだぞ!」

律「は? 知らないよ、そんなの」

紬「あら?」

紬「ねぇ、これ見て」

唯「ムギちゃん?」

澪「これは……古いギターみたいだな。物置にあったの?」

紬「うん。奥の方に隠れてて」

ガチャリ

梓「すみません、遅れちゃいま……」

梓「そのギターは!」

「?」

梓「SGですよ! かなり年期が入ってますけど……わぁ」

唯「あずにゃん目が光ってる」

澪「よっぽど良いギターみたいだな」

梓「…弾きたい」

梓「弾いてみても…いいですか!?」

律「どうぞ」

澪「お、おい。勝手に弾くのはまずいんじゃないか?」

律「いいじゃん。あんなところにしまわれてたぐらいなんだし」

澪「でもっ」

梓「ひ、弾きます!」

唯・紬「わくわく……」

ポーン、ポーン、ピーン

律「やっぱ弦が錆びてんのか良い音じゃねーなぁ」

唯「私、替えの弦余分に持ってるよー」

律「じゃあ替えちゃうか!」

澪「だからそんな勝手に……」

紬「梓ちゃん?」

紬「梓ちゃーん」

澪「どうしたムギ?」

紬「梓ちゃんは…どこにいっちゃったの?」

「……」

「!?」



現在にいたる

澪「タイムスリップなんて……そんなバカな」

律「なぁ」

梓「現に私は過去へいきました!」

紬「でも梓ちゃんそのギター弾いた後、いきなり消えちゃったし」

唯「タイムスリップ……つまりあずにゃんはタイムトラベラーってやつになったんだね!」

梓「うぅ、人が恐い思いしてきたというのにそんな呑気な……」

律「でもギターがタイムマシンっておかしいよ」

唯「えー? かっこいいよぉ」

紬「だったらティーカップ型のタイムマシンとかないかなぁ」

澪「それなら私はだな……」

梓「だめだ……全然信じてくれてない……」

梓「そうだ……そういえば私、過去の唯先輩と一度話したんですよ!」

唯「ほんと!? すっごーい!」

律「そのころの唯、どうだった?」

梓「いや、別に変わりありませんけど……1年前の9月5日の唯先輩にです」

澪「へぇ……」

律「過去に会ったってのなら、もしかして覚えてるとか?」

紬「どう? 唯ちゃん」

唯「んー」

唯「わかんないです」

梓「……」イラッ

澪「他に過去に飛んだっていう証拠は?」

梓「えっと……たぶん、ないかも」

律「ダメじゃん」

梓「そんな余裕なかったんです!」

梓「とにかく元の時間に戻るために悪戦苦闘してたんですからね!?」

紬「どうやって戻ってきたの?」

梓「……話すと長くなりますよ」

梓「まぁ、このギター…タイムマシンでわかってること教えます。それ聞けばだいたい想像つくと思いますから」

梓「……かなり色々と試したので」

梓「いいですか? 最初弾いたとき私が鳴らしたのはここと、ここと、ここ……つまり六弦から四弦を単音弾きしたんです」

梓「実はこれがタイムスリップする鍵」

梓「六弦目で過去に戻る年数…つまり1フレットなら1年、2フレットなら2年」

梓「次に五弦目、これは月数です。ここで戻る月を指定することができます」

澪「つまり1フレットなら1月、5フレットなら5月を指定できるってことか?」

梓「はい。それで間違いないです」

唯「……頭痛い」

律「わ、私も……」

紬「大丈夫?」

澪「その二人は放っておけ、ムギ」

梓「残る四弦。これは日数……これも五弦同様にフレットで日にちを指定します」

唯「あれ?」

紬「唯ちゃんどうしたの?」

唯「このギター、フレットが22フレットまでしかないの」

澪「……あ! そうか!」

唯「フレットで日にちをしてい? するなら22日までしかできないよ?」

梓「それについては私もかなり苦戦しました。ですけど」

梓「22日以降の日にちは…例えば25日を選びたいとします」

梓「その場合、最初に2フレットを弾き、次に四弦の開放弦を弾くんです。その後に5フレット。これで25日を選択、ということになるみたいです」

梓「開放弦は0、あるいは十の位に移行させるものみたいですね」

律「あ、あ……」

唯「りっちゃんの頭から煙が!」

澪「あ、梓! ちょっとストップ!」

律「ふひー……ったく、なにわけわかんない話してんだよぅ!」

梓「そ、そんなこと言われても」

紬「ところで梓ちゃん」

梓「はい?」

紬「時刻は選べないの?」

梓「はい。時刻……と場所は指定できないみたいです。ですので、跳んだ時刻と、場所は元のものと変わりません」

澪「つまり2009年の5月6日の15:00に3年教室に跳びたいとしても、跳ぶ前の時刻が16:00。場所がこの部室だとしたら」

梓「16:00のまま、場所も部室のままですね」

唯「本当に頭痛いー、なんか複雑だよぉ」

律「唯は私の仲間だからな」

唯「ぶー!」

澪「過去への行き方はわかったよ。でもそれからどうやって梓は元の時間に戻ってこれたんだ?」

梓「あぁ、忘れてた……それはですね」

梓「六弦とは逆に一弦で年数を指定するんです。2009年に跳んで2010年に戻りたいってときは一弦の1フレットを弾いて…後は五、四弦をさっき言った通りに」

梓「って感じです。残った二、三弦は使わないみたいですね。まだよく分からないけど」

紬「……なんだか」

澪「まだ半分信じられないな」

唯「そうかなぁ?」

梓「まぁ、私自身も信じられないぐらいですよ……正直」

律「ならもっかいタイムスリップしてくりゃいいんじゃね?」

梓「いや! 絶対いやです!!」

律「何もそこまで」

梓「律先輩は何も体験してないからそんなこと言えるんです! 私、私、本当に……ううっ」

律「わ、悪かったよ…」

梓「あんな恐ろしい目、二度と遭いたくないです……」

律「てなわけでタイムスリップしてみたい人! はーい!」

唯「はいはい!」

紬「私も~」

澪「ちょっと怖いけど……はい」

梓「恐ろしいって言ったばっかりでしょうが!?」

律「だーって、タイムマシンだぜ? 使うっきゃないっしょ」

紬「私、憧れてたの~」

梓「そんな……」

唯「でもこれで実際過去に行くことができたらさっきあずにゃんが言ったことも証明されるんだよ?」

梓「それは……まぁ」

律「なら文句ないな。よし、ここはくじ引きで決めよう!」

唯・澪・紬「乗った!」

梓「……」

律「はーい! 私で決定!」

唯「ずるいよりっちゃん! ズルしたでしょー」

澪「そうだ、そうだ!」

律「してませーん。不正はなかったでーす」

律「てなわけで……よっ、と」

ス…

律「どれどれー、えっと…」

梓「ちょ、ちょっとストップ!」

律「なんだよ?」

梓「言い忘れてましたけど、跳んだ先の時間は過去です。つまりまだこのギターは物置の奥底……」

律「戻ってくるときは一々奥から取り出さなきゃいけないのか!? 面倒だなぁ……」

澪「……ん? そういえば行った先の過去にもう一人の律がいたりするのかな」

唯「どういうこと?」

澪「つまり今の…現在の律がこれから過去へいくんだろ? そしたらその時間にいた過去律はどうなる?」

唯「……ああ、そっか! どうなの? あずにゃん」

梓「えっと、わかりません…私は過去の私と一度も会ったり、見かけたりしませんでした」

梓「もしかしたら偶然会うことがなかっただけかもしれないし、いないのかもしれません」

律「いないなんてことありえんのかぁ?」

紬「ん……ありえないとは思うけど、過去へ行った現在をA、過去のをBとして、AはBとしての存在に置き換えられちゃうのかしら?」

唯「つまりBは消えちゃうってこと? なんかおっかない……」

律「……あー! ぐだぐだ言っててもしょうがないって! さっさとやるぞ!」

澪「待って、一応跳ぶ先を部室にするのは止そう」

律「なんでさ」

澪「もし部室に私たちがいたらどうするんだ。特にもう一人の律が」

澪「いきなり部室に現れてみろよ。パニックになる」

律「あ、あー……なるほど」

梓「そういうことを配慮して、私もできるだけ部室からはタイムスリップをしませんでした。トイレとか学校裏からとか」

唯「それじゃあトイレでやってみようよ~」

律「ん、そだな」



女子トイレ

律「……」

律「なんか緊張してきた」

澪「見てる方もな……」

梓「くれぐれも行動に気をつけてください。。過去で何かとんでもないことしちゃったら゛今゛が変わっちゃうかもしれません」

律「お、おう……」

律「それじゃあ」

ピーン、ピーン、ティーン

律「行ってき――――」

「……」

唯「ぎゃー! りっちゃんが消えたよー!?」

澪「律ー!?」


2