よくじつのあさ!

唯「おはよう! 清々しい朝! そしてあずにゃん、今日もよろしく!」

梓「おはようございます……はあ」

唯「おりょ? 元気ないね、あずにゃん……もしかして夜中、私が目を覚ます前に、何回もひとりエッチしてたのかにゃ~?」

梓「あの一回だけですよっ! 元気ないのは、その……唯先輩とお風呂入ったら、結局またエッチに雪崩れ込んじゃったせいです……」

 さっとお湯を浴びて流すだけでよかったんだけど、唯先輩がわざわざ背中を洗ってくれたり、湯船の中で後ろから抱っこしてきたり。
 それだけなら安眠出来たかもしれないのに、本格的に唯先輩のスイッチが入っちゃったみたいで……大変だったなあ。
 でも……えへ、えへへ……自分でするより、すっごく気持ちよくしてもらっちゃったなあ。

唯「朝ご飯はなっあにっかなぁ~♪」

 洗顔を済ませ、浴衣から着替えつつ鼻歌を鼻ずさむ唯先輩。
 私と同じくらいしか寝てないのに、この人はどうして元気なんだろう。
 もしかして夜中のエッチの時、私の元気を吸われちゃったのかな。

梓「普通に、ザ・和食って感じの献立だと思いますよ」

唯「そうだね~。むしろそうでないと拍子抜けだよ」

 私も着替えて洗顔、戻ってくると仲居さん達が手早くお布団を片付けているところだった。
 ……へ、変な染みとか、出来てないかどうか確認はしたけど……バレたりしないよね?

女将さん「おはようございます。昨夜はお楽しみでしたね」

梓「んにゃっ!?」

唯「やーん、うふふふふ。お布団ありがとうございました」

女将「あらあら、本当に可愛らしいですこと」

 な、何が!? 誰が!?
 っていうか会話してくださいよ! 意味深な微笑みを交わしてないで!

女将「では、朝食のご用意をいたしますので、少々お待ちを」

唯「はい! よろしくお願いします!」

梓「ううっ……少しくらい恥ずかしがってくださいよぉ……」

 私の呟きをよそに、てきぱきと並べられていく料理。
 白いご飯に焼き鮭、お味噌汁、海苔と卵と小鉢。

唯「ザ・和食だね! あずにゃん!」

梓「そうですね、ええ……」

 わかりましたよ、もう。
 旅の恥はかき捨てですもんね、こうなったらちゃんと腹ごしらえするですよ。

女将「それではごゆっくりどうぞ。ご出立の折には、フロントまでお電話くださいませ」

唯「はーい」

梓「どもです」

唯「んーと……ほっ」

 ぱしゃ。

唯「んじゃ、食べよっか。あずにゃん」

梓「はい」

唯「いっただっきまーす!」

梓「いただきます」

 んぐもぐむぐ……うん、美味しいですね。
 安宿だと、焼き鮭なんかはすっかり冷めたのが出てくるのに、まだ湯気がほこほこですよ。

唯「もぐもぐ……何から何まで美味しいね、すごいねこの旅館」

梓「はい……んぐ、もぐ……ここら辺って、どうも海産物に力を入れてるみたいですが」

 あ、でもお味噌汁の具は豆腐とお揚げ。
 まぁ、朝から丼でアラ汁なんて出てきてもちょっと引きますが。

唯「海産物? んぐ、ずずー……」

梓「はい。昨夜だって、お肉は申し訳程度にしか出てきませんでしたし、昨日のお昼も海鮮丼だったりしたじゃないですか」

唯「そういえば、そうだったねえ……天ぷらも海のものばっかりだったし、美味しかったけど」

梓「お魚苦手な人は、ちょっと厳しいかもって、レポートに一筆書いておいてもらえればと……もぐもぐ」

 うわぁ、この海苔、味付きじゃない……高いやつだ。
 うーん、海苔だけ取っても少し贅沢な気分。

唯「はむっ、もぐもぐ……おひつにお代わりご飯があると、得した気分になれるよね」

梓「はい? いえ、私、朝からお代わりってしない方なので……」

唯「だって、鮭で一杯、卵で二杯。小鉢とお味噌汁で三杯は食べられない?」

梓「んず、ずずー……私はそんなに食べられません。よかったら唯先輩、食べ過ぎない程度にどうぞ」

唯「まーかせて! あ、あずにゃんの分の卵、食べないんだったらもらっていい?」

梓「は、はい……四杯目確定ですか」

唯「大丈夫、ここのお茶碗うちよりちっちゃいから!」

 何ていうか、朝からどんな食欲ですか。
 っていうか、よく入りますね、そんなに。
 っていうか、絶対太りますよね? 太らないハズがないですよね?



でっぱつ!

女将「お泊まりいただきまして、誠にありがとうございました。機会がありましたら、どうぞまたお立ち寄りくださいまし」

唯「いえいえ、こちらこそほんとーにお世話になりました! ご飯もとっても美味しかったし、温泉も気持ちよかったです!」

梓「……私も、その……お世話になりました」

女将「うふふふふ」

 ううっ、そういう含んだような笑い方されると、とっても恥ずかしいんですけど。

唯「あ、そうだ! すみません、シャッターお願いします! 記念写真撮りたいので!」

女将「はい、こちらのボタンでよろしいですか?」

唯「よろしいです!」

梓「ちょ……唯先輩、そんな言い方は失礼ですよっ」

 ……なぁんて、心配して恐縮する私のことなんてお構いなし。
 唯先輩は、私の手を引いて旅館ののれんの前に立つと、背後から覆い被さってくる。

唯「んへ~……あずにゃん、笑顔だよ笑顔っ! あと、ピースピース!」

梓「ん、んもう……普通に恥ずかしいのに、無理言わないでください……」

 それでも、まあ、記念だから。
 ぎゅっと抱き締められながら、ほっぺをむにっとすりつけながら、手をチョキにして前に出す。

女将「いきますよー、アイキャンフラーイ」

唯「アイキャンフラーイ♪」

梓「フラ!?」

 ぱしゃ。

梓「あ」

唯「……どうでした?」

女将「可愛く写ってらっしゃいますよ、ほら」

唯「おお……こりはなかなか」

 い、一体何がどうなって『なかなか』なんです!?
 ちょ、唯先輩、見せてくださいよ!

女将「では、駅までお送りいたします。道中、お気を付けてどうぞ」

唯「はーい。ありがとうございました!」

梓「ううっ……あ、ありがとうございました……」

 色々問い詰めたり撮り直したいとか思うんだけど、電車の時間が迫っていた。
 いいや、うん、こういう時って割とまともに写ってることが多いし。



しんかんせん!

唯「また駅弁買えなかったよ……」

梓「乗り遅れたら元も子もないですよね」

唯「ううっ、お願いだよあずにゃん。車内販売のお姉さんが来たら必ず呼び止めておくれ」

梓「え?」

唯「何かね、朝ご飯一杯食べたせいか、何だか眠くなってきて……」

 いえ、まさか、そんな。

梓「そっ、そうだ唯先輩! 私、実は寝不足だから帰りは寝ようと思ってたんです! あー眠い! おやすみなさいっ」

 一気にまくし立てて、ぱふっ、と唯先輩の胸に顔を埋める。
 ……手すりが邪魔だなあ、って思って、先に上げておくべきだったと思いつつ、寝たふりをしながらぐいっと。

唯「……あずにゃん?」

梓「……すー、すー……」

唯「……まぁ、買えなくてもいっか。一緒に寝よ、あずにゃん」

梓「ん……すーすー……すー」

唯「さすがに身体を斜めにしてまでおっぱいに顔を押し付けるのは、無理な姿勢だと思うよ?」

 ええ、もう早くもキツいなあって思ってたところなんです。

梓「……こお、でもいいですか?」

唯「うん、いいよ。窮屈そうだけどね」

梓「いえ、そんなことないです。私ちっちゃいですから」

 丸まって、唯先輩のお膝の上に頭を乗せて、目をつむる。
 ……うん。割と、悪くない寝心地です。

唯「ふぁ……おやすみ、あずにゃん」

 唯先輩は、私の肩と頭に手を置いて、優しくなでてくれて。
 何か、猛烈に眠かったわけじゃないのに……段々、眠く……。

梓「おやすみ、なさい……」

 ぐっすりと眠って、私が先に起きた頃に丁度車内販売が回ってきて。
 お昼もお腹を空かせることなく、私達は無事に家に帰り着いたのでした。



そのご!

唯「旅館の前で記念撮影した写真を持ってきたよ、ムギちゃん!」

紬「えっ? 写真は撮らないハズじゃあ……レポートはもう書いてもらったし……」

唯「あずにゃんがね、ムギちゃんのお陰で素敵な旅行が出来たから、一枚だけあげてもいいって!」

梓「……ま、まあ、そういうわけです……あ、USBメモリは返してくださいね」

 照れ臭いけど、ムギ先輩のお陰なのは間違いないし、心ばかりのお礼というか。
 勿論、私がチェックしてUSBメモリに一枚だけコピーして、ですけど。

紬「あらら、まあまあ♪ 私、後輩に不器用ながらも気を遣われるのが夢だったの~♪」

梓「どんなピンポイントで歪んだ夢ですかっ!?」

紬「うふふ。ありがとう、梓ちゃん。このUSBメモリ、うちの家宝にするわね~」

梓「それ1個しか持ってないんで、写真コピーしたら返してくださいってば」

 さり気なく宝物にされるところだった、危ない危ない。

唯「そんでね、次のデートはいつにしようか話し合ってるところなんだけどー」

紬「むっ!? ふむふむ、是非私にも相談して欲しいわね!」

唯「こないだはムギちゃんに甘えすぎだったから、今度は近場でどうかなあって」

紬「気にしなくていいのに……丸二日拘束されるモニターアルバイトの日当だと思ってくれれば、妥当なラインだったんじゃないかしら?」

梓「ええとですね、頻繁に旅行に行くというのも何ですし……ちょろっと出かけてうちに帰って、一緒にごろごろするとか、そういうのもいいなあと」

紬「ふむふむ! 念の為、そのごろごろの内容を詳しく聞かせてもらえないかしら!」

唯「ええとね、私があずにゃんを抱っこして座ってね、何となくそーゆー気分だったらあずにゃんの身体を触っ」

梓「ちょおおおおおっと! 唯先輩!?」

紬「ふむふむふむ! ちなみに、梓ちゃんがそーゆー気分の時は!?」

唯「うぅん、それがまた可愛いんだよぉ。ほっぺすりすりって甘えてきて、おっぱ」

梓「わ、わーわー! わああ! も、もう用は済みましたから! 帰りましょう、唯先輩!」

唯「えぇー」

 どうしてそうナチュラルに何でもかんでもバラしちゃおうとするんですか、貴女は。

紬「ふぷっ……お、おっぱ?」

梓「ムギ先輩は少しハナチを自重することを覚えてください」

 はあ。
 やっぱり油断のならない女狐ですね、ムギ先輩は。
 何ていうか……私と唯先輩の仲に強引に踏み込んでこないのはいいんだけど、それでも前途多難な予感がしますよ、んもう。

~おしまい!~