かっぽーん!
唯「よ、予想以上に恥ずかしいね、こりは……」
梓「お互い様、です、よ……?」
女の子同士だから、気にすることはないハズなのに。
おっぱいとか、股間とか、そこを見られて恥ずかしがる表情とか、変に意識しちゃう。
梓「唯先輩、ここまで聞こえるくらい息が荒いですよ……?」
髪を洗っていた時はそうでもなかったけど、身体をスポンジでこすっていると、唯先輩の視線がやけに気になっちゃう。
何故かぺったんこな胸も凝視するし、脇の下とかおへその辺りとか、椅子に座ってなかったら大事なところもまじまじと見られていたに違いない。
唯「う、うんっ!? 全然! ほんと! そんなことないよっ!?」
梓「明らさまに嘘じゃないですか! あーん、えっちぃ目で見られながら身体洗うなんて恥ずかしすぎますよぉ!」
……でも。
大好きな唯先輩が、私の身体に興味を持ってくれるのは、正直なところ嬉しい。
ぷーい、なんて明後日の方向を向かれてたら、一緒に入った意味がないっていうか、うん、矛盾した考えなんだけども。
唯「へーぇ。あずにゃんの身体って、こうなんだぁ……ちっちゃくて、触ったらすべすべで気持ちよさそうで……うぷっ」
梓「……ぷぁ、はー……唯先輩?」
唯「うぅ、うん、だいじょぶ、ハナチ出るかと思ったけど、出なかった……うん。つるぺたあずにゃんの可愛い裸、たっぷりじっくりねっちり脳内メモリに記録したから!」
梓「うく……つっ、次は唯先輩の番ですよ! 私だって、唯先輩の裸を隅々まで観察させてもらいますからね!?」
唯「う……うん。いいよ、あずにゃんに、なら」
……そんな返しをされると、妙に恥ずかしくなっちゃうじゃないですか。
梓「じゃ、じゃあ……」
唯「うん……」
ざぱ、と私がボディソープの泡を流し終えたところで、唯先輩もバスタブから上がる。
……見えちゃった。
思わず顔を逸らしつつ、誤魔化すように髪を掴んで絞って、くるくると結ぶ。
唯「あ……はぁ……あずにゃんのおっぱいも、脇も、とっても綺麗だね……?」
梓「なっ、何見てるですか!? 早く身体洗ってくださいよ!?」
無防備なところを見られて、恥ずかしい。
だけど、『綺麗』って言われて、嬉しい。
こんな子供っぽい私の身体を、唯先輩は、誉めてくれた。
とっても恥ずかしいのに、嬉しくて嬉しくて堪らない。
梓「…………」
唯「うん♪ たん♪ うん♪ たん♪」
梓「…………」
綺麗だなあ、唯先輩って。
お肌もそうだし、いつも『食べても太らない』って言ってるだけあって、プロポーションもいいし……。
何このすべすべっぽいお肌。私なんて、少し焼いただけで別人かと間違われちゃうくらい真っ黒になるのに、まさに雪のような白さ。
唯「泡がふわふわたーい……」
梓「いきなり鼻歌変えないでくださいよ!?」
唯「えええ!?」
梓「んもー。折角唯先輩の無意識な鼻歌に聴き惚れてたのに、台なしですよ」
唯「ご、ごめんね、あずにゃん」
申し訳なさそうに、今までに比べて小さくこしこしとスポンジを動かす唯先輩。
何だか、私のせいで萎縮させちゃったみたい。
梓「え、ええと……今の、うんたん、っていうので……嫌じゃなかったら、続けてください」
唯「嫌じゃないけど……ちゃんとした歌じゃなくていいの?」
梓「いいんです」
唯「じゃ、じゃあ……」
こしこし。
唯「うん♪ たん♪ うん♪ たん♪」
うん、ものすごく単純なリズムだけど……唯先輩の声が楽しそうで、聴いてて心地いいっていうか。
無理強いしちゃったかな、って思ったけど、唯先輩も腕とか脇とかおっぱいとかお腹とか脚とか、軽快な感じで洗っていって……。
唯「うん♪ たん♪ うん♪ たん♪」
梓「……ぷくぷくぷく」
はぁ。
どこもかしこも泡だらけ、大事なところも泡だらけ。
最後にシャワーで泡を流すと、それらが全部あらわになって、妙な考えに支配されていた私の頭を灼く感じで。
唯「ふぷぁー! さっぱりしたよ、あずにゃん!」
梓「…………」
唯「あずにゃん?」
梓「は、はひっ!?」
唯「い、一緒にお風呂に入っても……いい、かな?」
もう、入ってるじゃないですか。
お互いに裸を見て、身体を洗ってるところを見て、同性でも恥ずかしいところを見て。
……あ。
梓「はっ、はい。狭いですけど、どうぞっ」
唯「うんっ♪」
唯先輩が、ゆっくりバスタブに脚を入れてくる。
ざぱ、ってお湯が溢れて、何だか申し訳なさそうな表情を浮かべたけど、ふたり分だからしょうがないじゃないですか。
梓「早く入らないと、風邪引きますよ」
唯「う、うん」
唯先輩は意を決したように、私に向かい合って肩まで湯船に浸かった。
足先が触れて、すね、膝、太もも……こすれた部分が、とっても気持ちいい。
唯「ん……んぅ……」
梓「……あの」
唯「なっ、何かなっ!?」
梓「い、いつもの、その……抱っこされてる方が、落ち着くと言いますか……お風呂なんですし、唯先輩が嫌でなければ、その方がリラックス出来るかな、って」
唯「嫌じゃないよ!? ううん、むしろ喜ばしくてハナチ出るかと思ったよ! 出さないけど!」
狭い浴槽の中で、唯先輩が私の背後へ回り込もうとする。
肌同士が、お湯の薄膜を挟んでずるっとこすれて、想像以上に気持ちいい。
やだ、別にこんな副産物を望んでたわけじゃないのに。
……望んでたのは、もっとえっちぃことなんだけども。
唯「え、えっと……じゃあ、抱っこしてもいい、かな?」
梓「は、はいです……どうぞ、お願いします……ぷくぷくぷく」
私の口元は、半分お湯に浸かっている。
自分からおねだりしたのに、恥ずかしすぎて、余計なことを言いそうだから。
唯「ん……あーずにゃーんっ!」
ふにゅう。
梓「んにゃぁ!?」
唯「あ、あずにゃん?」
梓「んにゃ、にゃんでもないです……」
唯先輩に、変なところを触られたわけじゃない。
ただ。
触れ合う肌とか、それがお湯でぬめる感触とか、特に背中に当たる唯先輩のおっぱいのやわらかさが気持ちよくって、変な声が出ちゃっただけ。
唯「あずにゃん、大丈夫? のぼせちゃった?」
梓「いえ……こんなぬるいお湯でのぼせたりしませんよ?」
唯「んじゃ、ええっと……追い炊きスイッチは、これかな?」
ぴっ。
梓「あ」
唯「あ?」
梓「……唯先輩は、熱めの方がいいんですか?」
唯「ううん。あずにゃんがぬるいって言ったから。私はこのくらいで長く入ってる方が好きかなー」
梓「じゃ、じゃあ、そうしましょう」
ぴっ。
唯「……あずにゃん。私と、この格好で、なが~く入ってたいんだ?」
梓「……そう取ってもらって結構です」
ぷくぷくぷく。
後ろを、振り向けない。
唯先輩が、にんまり笑ってそうだから。
唯「ん~……あずにゃんは、裸で抱っこすると、いつもの三倍気持ちいいねぇ♪」
梓「そっ、そう、ですか……」
何か、私は唯先輩のおっぱいが直接触れてる分だけ、三倍どころか十倍も気持ちいい感じですが。
梓「ん……んぅ……んん」
やあらかいです。
唯先輩の胸が、私の背中に押し付けられて、お湯で滑って、とっても気持ちいいです。
それがもう、抱っこされて全身の肌がこすれ合ってるんだから、気持ちよすぎて、もう……。
梓「ふあ……♪」
唯「んー? あずにゃん、どしたの?」
梓「いえ、お風呂って、やっぱり気持ちいなあ……って思ってたんです」
唯「うんうん。お風呂は気持ちいいよねえ」
むにむに、って。
唯先輩は、わざとらしく胸の膨らみを押し付けてきて、私をもっと抱き締めて、お互いの肌のこすれ合う感触を強める。
ズルいです、わかっててするなんて、本当にズルいですよ。
梓「んぅっ、ん、んぁ……♪」
唯「お風呂の中だと、あずにゃんが大人しく抱っこされてくれるし、あずにゃんの感触をじっくりたっぷり直接たんのー出来るし、いいこと尽くめだね♪」
するりと、唯先輩の手が私の胸元へ滑ってくる。
唯先輩くらいあるならともかく、こんなぺったんこな平原を触って何が面白いんだか。
梓「んふっ、ふぅ……ふぁ、あぁ……」
唯「私に見られてたせいで、ここちゃんと洗ってなかったでしょ、あずにゃん?」
梓「ふぁ……い、そ、そおかも、しれないです……」
嘘。
洗った、洗いました。
唯先輩に凝視されている緊張と興奮で、乳首がぷくってなってるの、覚えてます。
でも、唯先輩が形の上だけでも、もう一度洗ってくれそうな雰囲気だし……。
唯「駄目だよぉ、あずにゃん。今日、体育あったんでしょ? 汗は流しておかないと……ね?」
さすさす、と私のない胸を掌でなで回される。
ないのに、気持ちいのは、何でだろう。
梓「あう、あ、あぅ、唯先輩っ……ちょっ、おっぱい触るの、駄目ぇっ」
唯「うーん? あずにゃんのおっぱいは、どこにあるのかなあ?」
そんな意地悪なことを言いながら、唯先輩は手を動かし続ける。
今まさに触っている場所が、私のおっぱいです。
今後育つかどうか不安で、でも唯先輩への想いは沢山詰まっているんです。
梓「や、唯先輩、えっちぃことしないって、約束っ……したじゃ、ないですかぁっ」
唯「私は、あずにゃんのお肌をマッサージしてるだけだよ? 美容の為だよ?」
梓「だ、だから、そこ、胸、おっぱいっ……なくても、おっぱいなんですっ」
唯「あ……ごめんね、そうだったんだ。悪気はなかったんだよ、許してくれる?」
私の胸から、唯先輩の手が離れていく。
気持ちよさが薄れて、段々と正気が戻ってきた。
梓「……約束、したのに」
唯「うん? 約束って……えっちぃことしない、って? 私、何かエッチなことしたかな?」
梓「う、うぅ……私のおっぱい、触ったじゃないですか……」
唯「……ごめん。本当に、どこがあずにゃんのおっぱいだったかわからないよ」
唯先輩はそう言って、一旦離した指先を再び戻してきた。
そして、探ることもなく、きゅうっと私の左右の乳首を優しくつまむ。
梓「きゃふうんっ!?」
唯「あれ? ごめん、偶然だよ、ここにあずにゃんの乳首があるなんて知らなかったんだよ?」
耳元に聞こえる息遣いが、とても荒い。
私を辱めて楽しんでいるのか、それとも純粋に女の子同士で興奮しているのか。
梓「……わ、私、いじめられるのは嫌です」
唯「うん。私だって、あずにゃんをいじめるなんて、とんでもないよ。とっても可愛いから、つい手が伸びちゃうだけで……ね?」
また、きゅって乳首をつままれる。
そんなに敏感だったつもりはないのに、どうしてだか、唯先輩の手にかかれば私の身体は自分でも驚くくらい大きく跳ねちゃう。
梓「んにゃあああああんっ!?」
唯「んふ……あずにゃん、可愛い……ますます好きになっちゃう」
梓「や、ちょっ……い、嫌ぁ、唯先輩っ、止めてください……嫌、ふああああ、あっ、ああっ!」
唯「……うん。じゃあ、止める」
梓「は、ふぇ……?」
どうして、そんなに、あっさり止めちゃうんですか。
嫌よ嫌よも好きのうち、っていうじゃないですか。
少なくとも……今の『嫌』は、思わず口を突いて出てしまっただけで……。
唯「あずにゃん、言ったもんね。本当に嫌な時はそう言う、って……ごめんね、嫌なことしちゃって」
梓「あ……は、はい……」
唯「私、先に上がってるね。もう充分あったまったし、これ以上あずにゃんとぴっとりくっついてると……本気でエッチしたくなっちゃうから」
梓「は、い……」
今のはエッチなことじゃないんですか。
本気になったら、何をするつもりなんですか。
……っていうか。
唯「ドライヤー借りるね~」
さっさと自分だけ上がっちゃって……私の中途半端に昂ぶった気分は、どうしてくれるんですか、もう。
あずさのへやあげん!
唯「う~ん、もふもふもふ……♪」
梓「……ゆぃせんぱぁい……何してるんですか、私のベッドで」
唯「ふも!? こっ、これは違うんだよ! 私はただ、あずにゃんが毎日寝てるベッドの寝心地を確かめてただけで、別にくんかくんかしてたわけじゃないんだよ!?」
いえ、見た目そのまんまだったんですが。
梓「はあ……まぁ、遅かれ早かれしたんでしょうし、別にいいですけど」
唯「えっ?」
梓「え、って。唯先輩のことですから、一緒に寝ようって言い出すんだろうなあと……」
唯「いいの!? ほんとに!? やったー!」
梓「そ、その……実はですね。折角唯先輩がうちに来てくれたのに、別々に寝るのは寂しいかな、って思ったりするわけで……」
唯「うん、うんっ! 別々は寂しいよ、今夜は一緒に寝ようね! あずにゃーんっ♪」
梓「わわっ、わあ!?」
唯先輩が嬉しそうに駆けてきて、ぱふっ、と私を抱き締める。
いつも通りといえばそうなんだけど、今回はだいぶ感触が違っていた。
梓「ふ……んも、もふぅ……の……のーぶら、ですか?」
唯「うん。あずにゃんに、いーっぱい甘えて欲しくって、ね?」
ごわごわした制服やブラ越しじゃなくて、薄いパジャマの布地一枚。
唯先輩の胸は、とってもやあらかくて、あったかくて、いい匂いがした。
唯「えへへ。あずにゃんの息がくすぐったい」
梓「う、あぅぅ……いきなり抱き着かないでくださいって、いつも言ってるじゃないですかぁ……」
唯「あれ、何か収まりが悪い? 抱っこし直そうか?」
梓「そういう意味じゃありませんよ、もうっ」
ぴったり狙ったように胸の谷間の真ん中に顔がくるように抱きすくめられて、これ以上に収まりのいい抱き方なんてあるんですか?
だから、つまり、これはこれで構いませんし、抱き着くのだっていきなりでなければ……って、何考えてるんだろ、私。
唯「ありり? あずにゃん、顔が赤くなってるよぉ~?」
梓「……お、お風呂上がりだからです。それより、このまま抱っこされてたら暑くて汗だくになっちゃいそうなので、そろそろ放してください」
唯「う、うん……ごめん、あずにゃん」
びくっと驚いたように震えながら、唯先輩が私を解放する。
……今のはちょっと、言い方がキツかったかな?
唯「うー……」
梓「……私、怒ってるわけじゃありませんよ? 抱き着く時、ちゃんと予告するとか、確認するとか……いえ、たまには不意打ちもいいかなと思いますけど……」
唯「あずにゃん?」
梓「要は、時と場所さえわきまえてくれたら、ええ、私も気が済むまで甘えられるっていうか」
唯「……お膝もじもじして、身体くねくねさせて、変なこと考えてるあずにゃんも可愛いねえ~」
梓「……はっ!? いえ、変なことなんかこれっぽっちも考えてませんよ!?」
唯「ふぅーん? へぇ~ぇ? ほぉぉぉぉ?」
いえいえいえ、決して変じゃなかったですよ?
こう、折角抱き着いてもらえるんだから、ゆっくりじっくり幸せな時間を過ごす為の約束ごと……みたいなものですし。
梓「どっ、どうなんですか! わかってくれましたか、唯先輩っ!?」
唯「うん、わかったよ。これからは時々、『今から抱き着くよー』って教えればいいんだね!」
梓「全然わかってないですよね、それ」
今までとあんまり変わってないですし、全くもう唯先輩ってば。
湯上がりだから、ただでさえ身体が火照ってるのに、あんな真似されたら余計に頬が熱くなってきちゃいましたよ。
梓「はー、暑い……唯先輩、何か飲みます? それとも帰りに買ってきたアイス食べます?」
唯「アイス!」
梓「はい」
私はとりあえずジュースでも、っと。
梓「どぞ」
くぴくぴ、と私はよく冷えたぶどうジュースを少しずつ飲む。
……あれ?
やだなあ、お母さんったら。
私がいつも頼んでるやつと違うよこれ、ちょっと味が変……飲めないこともないし、勿体ないから飲むけど。
唯「あずにゃん、ありがとー♪」
唯先輩は、私の手からアイスを受け取ると、夢中になって食べ始めた。
大好物だとは聞いてたけど、アイスの何が唯先輩をここまで変えるんだろう……。
最終更新:2010年12月31日 03:33