AM4:00
唯「…………眠れない」
夏休みも最後の日だと言うのに私は眠りにつくことが出来ずにいた。
宿題はちゃんとやったし明日持って行くものはちゃんとカバンに入れた。
まさに準備万端と言える。
最近はそれほど暑くもなく寝苦しいわけでもない……
唯「私不眠症なのかなぁ……」
そう言えばこないだもこんなことがあって夜中にりっちゃんと話したっけ……
唯「よ~し次は澪ちゃんだっ」
いい迷惑と言うのは重々承知していたけど私の手は携帯電話を握りしめパジャマのまま颯爽と外に飛び出して行った
憂「…………」
……
嗚呼~カミサマお願い~二人~だけの~
澪「んん……」
ドリームタイムくだ~さい
澪「誰ぇ……こんな時間にぃ…………」
携帯電話を開いて見るとそこには、
平沢 唯
澪「唯……?一緒に学校行こうとかかな…ってまだ4時じゃないか!もぅ……はい、もしもし」
唯『あっ澪ちゃん起きてた?』
澪「正確に言えば起こされたが正しいぞ唯」
唯『ごめんね……』
澪「で、何かあった?」
唯『うん…ちょっと話がしたいなって…』
澪「話?明日……って言うか今日か。学校じゃ駄目なの?」
唯『どうしても今じゃないと駄目なの!無理……かなぁ??』
澪「う~ん……(あのいつも明るい唯がこんな時間に真剣な声色で話したい……って言うことは…よっぽど何かあったに違いない)わかった。どこで待ち合わせしよっか?」
唯『ありがとう澪ちゃんッ!えっと…、澪ちゃん家の近くの公園まで私が行くよぉ』
澪「大丈夫?」
唯『だいじょぶ!じゃあそうゆうことで』
ガチャン
澪「唯……何かあったのかな。心配だ…。律にもメールしとこう」
AM 4:20
公園
澪「ゆい~待ったか?」
唯「うぅん。私もさっき来たとこ!なんてデートの待ち合わせみたいだね//」
澪「なっ、なにバカなこと言ってるんだ唯は。それで話って?」
唯「うん……実は……」
澪「勉強してない!とか?もっと早く言ってくれれば……」
唯「澪ちゃん失礼だよっ!今年はちゃんと憂に手伝ってもらってやったもんっ!」
澪「憂ちゃんまだ一年生なのに……。じゃあなに?」
唯「え~とね……。澪ちゃんってさ……好きな人とか…いたりするの?」
澪「えぇぅっ!?///」
- キランッ
唯「その反応は…いるんだねっ?」
澪「いっ、いないよ……」
唯「澪ちゃん嘘はドロボーさんの始まりだよ?!さあ!白状しなさい!」ズイズイ
澪「ゆ、ゆい、顔近いよ。……いる…のはいる…よ」
唯「やっぱり!!!誰々?クラスの人とか?!」
澪「あぁもう!こんな話するために呼び出したりしたのか?なら私は帰る!」
唯「あッ、待って澪ちゃん!!!その…話って言うのは……私も好きな人がいて……それで明日告白しようと思ったら眠れなくて……澪ちゃんって可愛いからそうゆう付き合ったりの経験あるのかなって思って」
澪「な、ないよッ!そんな経験……。」
唯「そっかぁ……じゃあ私とおんなじだね♪」
澪「うん……」
唯「澪ちゃんの好きな人の話聞きたいな」
澪「今日学校があるって言うのに……」
唯「ちょっとだけ!」
澪「……わかったよ。ちょっとだけだからな!」
唯「うんうん」
澪「昔からずっと一緒にいてさ……気づいたら…好きになってた」
唯「幼なじみってやつですかい!?」
澪「そうなるかな。いつもはただ明るくてバカで……周りなんか全然見てない感じ」
唯「うんうん」
澪「でも…本当は誰よりもみんなを気にかけて…他人の辛さや寂しさは埋めようとするのに…自分の辛さや寂しさは耐えようとする不器用なやつなんだ…」
唯「あはは、りっちゃんみたいな人だねぇ」
澪「えっ!?」
唯「ん?」
澪「え、いや……唯も…律のことそう思ってるんだなって……」
唯「……ということはまさか澪ちゃんの好きな人ってッ!」
澪「」カアァ////
唯「そ、そうなんだ……。澪ちゃんはりっちゃんが好きなんだ……」
澪「……うん。ずっと昔から……ずっとずっと好きだった。」
唯「昔から……か。それじゃあ勝てないや……」
澪「唯?」
唯「うぅん、何でもない」
澪「……唯、もしかして……唯の好きな人って…」
唯「ち、違うよぉ!私が好きなのはあずにゃんだよ!!!」
澪「あ、梓か。そうか……そう言えば仲いいもんな二人は」
唯「そうそう!だから明日あずにゃんに告白しようかなって……。でもあずにゃんは澪ちゃんの方が好きかな……いっつも澪ちゃんにべったりだし…私はいつも抱きつくから嫌われてるかな、エヘヘ…」
澪「そんなことないと思うよ。梓も唯のこと好きだと私は思う。」
唯「そ、そうかな…」
澪「私も応援するよ!唯」
唯「ありがとう…澪ちゃん。」
「こんな夜更けに面白そうな話してるじゃん」
唯澪「!?」
律「よっ!お二人さん」
唯「りっちゃぁん!」
澪「律!どうしてここに?」
律「澪がメールして来たんだろ~?唯から電話があって相談に乗ることになった。唯、真面目に悩んでたみたいだから何か心当たりがあったら教えてってさ。」
澪「でもまさか起きてるなんて……」
律「夏休みの宿題の追い込み最中だったから……実は今まで一睡もしてなかったりする」
唯「じゃあこんな所に来ないで早く寝ないと…」
律「そうも言ってられないさ。また唯が夜中出歩いてるって聞いたら居てもたってもいられなくてさ」
澪「!?」
唯「…………」
澪「また……って?」
律「前にも呼び出されてさぁ~唯に。なっ唯?」
唯「……知らない」
律「えっ…?」
唯「ご、ごめんね澪ちゃん。こんな時間に呼び出したりして。私…帰るね。二人ともまた明日学校でね」
澪「待って!唯!もしかして唯はやっぱり…」
唯「勘違いしないで…っ」
澪「……唯」
律「何々?ひょっとして私お邪魔だったかしらん?じゃあ私は帰るから二人で仲良く話したらいいじゃん」
澪「律!そんな言い方……」
唯「……りっちゃんなんて呼んでないもん…」
律「(ムカッ)あ~あ~わかったよ!私が悪ぅございました!けっ!帰ればいいんだろ帰れば……」
唯「…………」
すれ違い様、
唯「……ゴメン」
律「……?」
澪「律……ごめん。唯もちゃんと謝って」
唯「…………」
澪「唯!」
律「もういいよ。相思相愛の二人を邪魔するわけにもいかないからな。でもちゃんと…部活には来るんだぞ…じゃあな」トボトボ
澪「唯……なんであんな言い方…」
唯「澪ちゃんは……りっちゃんのこと好きなんでしょ…?なら……私は嫌いにならなきゃ…」
澪「唯……やっぱり…」
唯「…………」
……
律「何なんだよ……前はあんなに二人で話したじゃん……」
イライラする…
律「私のこと好きって言ってたじゃん……」
なら何で今日は呼ばれなかったの?
律「……そっか、やっぱり唯は澪のことが好きなんだ。なんだ……そっか」
AM5:00
そろそろ明るくなってくる頃なのに、私の心は一向に明るくなる気配がなかった
律「バカみたい……唯がいるって知って…また役に立ちたくて…笑顔が見たくて…息切らせながら走って来た私が……」
涙を拭いすぎて、パーカーの裾がずぶ濡れになっていた……
……
澪「……唯。唯は勘違いしてるよ」
唯「えっ……」
澪「私は確かに律が好きだ。でも、唯も大好きだ。」
唯「……」
澪「そんな二人に喧嘩してもらいたくもないし、私が律を好きだからって唯が律を嫌いになることはないんだよ」
唯「で……も゛…」
澪「唯。」ギュッ
唯「澪……ちゃん?」
澪「律は今……凄い悲しんでると思うよ。大好きな唯にあんなこと言われて、きっと今泣いてるよ。律のそうゆうモロいところ、知ってるだろ?」
唯「うん……」
澪「そして今、律を慰めてやれるのは……唯しかいない。わかるよね?」
唯「うん……っ」
澪「私のことはいいから、行ってあげて。私の大好きな二人が、両方泣いてる姿なんて見たくないから」
唯「みお゛……ち゛ゃん……ごめんなさい……ごめんなさい……」
澪「いいんだ。でも…律を諦めたってわけじゃないんだぞ?そこを勘違いしたらダメだ」
唯「うん……っ……うん……っ」
澪「さ、行ってあげて。律が帰ってしまわない内に」
唯「うん!!!」
そうして唯は駆けて行く、大好きなあの人の元へ
澪「とは言っても……あの律の反応を見たらどっちが好きかなんてわかりきってるけど…さ」
告白する前にふられちゃったな……
澪「一人になったら……泣いても……いいよね?」
私は帰る前にこの涙を処理しておかないと。大丈夫、今なら好きなだけ泣ける
だって私を迎えに来る人は…いないんだから
……
律「今~富とか~名誉ならば~いらないから~唯をく~ださ~い……なんてな。」
っちゃん……
律「はあ……」
りっちゃん…
律「今日顔合わせづらいな……」
りっちゃん…!
唯「りっちゃあああああん!!!!!!」
律「唯!?ってうわっ!」
唯「りっちゃんりっちゃんりっちゃんりっちゃん…っ」ギュッギュッギュッ
律「な、なんだよ一体……」
唯「嘘ついてごめんなさいドロボーさんでごめんなさい……!私……りっちゃんのこと……大好き」
律「唯……」
唯「今日呼ばなかったのは……嫌われたくなかったから…鬱陶し奴とか…思われたくなくて……」
律「バーロー……唯のこと、いつだって考えてるんだから。鬱陶しいわけないだろ……」ギュッ
唯「りっちゃん…りっちゃあああん」
律「大好きだよ、唯」
AM5:30
唯「明るく…なって来たね」
律「そだな…。」
唯「今日学校あるのにこんなことしてるなんてね」テヘヘ
律「全く~唯の夢遊病はいつ治るのやら」
唯「二回出歩いただけで夢遊病って!」
律「はっはは。でも危ないから次は必ず私を呼ぶんだぞ?」
唯「うん♪わぁかった♪」
律「えへへ///このこのぉ」
唯「あっ~やったな~えいえい///」
律「こ、こら///そんなひっつくのは反則っ…」
こうして彼女達の夜更けは過ぎて行く…
……
澪「あ~泣いた泣いた…さて…帰ってもうちょっと寝ようかな」
紬「あら?澪ちゃん?」
澪「む、むぎぃ?!ななななんでっ?」
紬「ちょっと早く目が覚めて。犬のシューベルトの散歩をしてたの。やっぱり今日から学校だと思うと緊張しちゃって…澪ちゃんは?」
澪「わ、私は……あ、朝のジョギングだよ!ほら!ウェア着てるでしょ?」
紬「……雨、降ったみたいね」
澪「雨?私が外に出てる時は降ってなかったけど……」
紬「澪ちゃん、良かったら今から一緒に散歩しましょう」
澪「えっ…」
紬「私なんかじゃ……雨宿りさえさせてあげられないかしら…?」
澪「むぎ……。うん、一緒に行こう」
むぎ、ありがとう
……
律「ふ~全く唯のやつなかなか返してくれないからな~参った参った」
聡「おかえり姉ちゃん」
律「ってさとしぃーっ!?お前なんで起きて(ry」
聡「玄関が開く音がしたからこうして張ってたのさ」
律「ぐぬぅ……」
聡「映画、また行こうねお姉ちゃん♪」
律「………とほほ」
……
唯「そろ~りそろり」
憂「お姉ちゃん…」
唯「う、憂!起きてたんだ…」
憂「お姉ちゃんが出ていってからずっと待ってたの…」
唯「ごめんね憂…心配かけたよね…」
憂「なんで…私に何も話してくれないの?」
唯「憂に心配かけたくなくて……」
憂「お姉ちゃんは……私のこと信じてないの?嫌いなの?私はお姉ちゃんのこと…誰よりも信じてるのに…。」
唯「憂…」
憂「心配かけるからって黙ってたら……何も話せないよ?お姉ちゃんのこと…わからなくなっちゃう…そんなのやだよ……」
唯「ごめんね憂…。次からはちゃんと憂に相談するから…」
憂「うん……」
唯「ほんの1時間45分の間に色々あったな……今日から学校だ。頑張らないと」
でももうちょっとだけ……寝よう
唯「もう外明るい~」
やっぱり眠れない夜は好きだ。
色々あって、それは必ずしも良いことばかりじゃないけど、普段見ているものが違う角度から見られる気がする。
涼しい朝の風が頬を撫でる……
唯「おやすみ……」
学校があるのも忘れ、私は再び眠りについた
寝苦しい夜はもうなくなりつつあり、これからはこんな夜を体験することもなくなるだろう
ただ覚えておいてほしい、物語は常に……光が当たる方だけに起きるわけではないのだと
END
最終更新:2009年12月26日 03:26