──

某ハンバーガーショップ

律「ガンガン食べてくれ! 今日は先輩の奢りだ!」

純「はあ、どうも」

ハンバーガーをモソモソ食べながら律の様子を伺う。

純「(この人は何を考えてるんだろう……。いきなり家に来たと思ったら遊ぼうぜ!なんて……)」

律「ぷっはぁ! やっぱりハンバーガーにはコーラだよねん」

純「そうですね…(悪い人じゃないのは梓から大体聞いてるし……、女同士だから危なくはないだろうけど……やっぱり気まずいなぁ)」

奢ってもらったシェイクをチューチューと吸引しながら元気そうに振る舞う律の話を適当に相づちを打ちながらやり過ごす。

律「なぁ、純ちゃん」

純「はい?(急に真面目なトーンになった!?)」

律「人と人ってさ、どこから仲が良くなって行くんだろうな……」

純「へ?」

律「わたしは今日純ちゃんと仲良くなりに来たんだ。でもその当人はどこか上の空……!」

純「す、すみません」

律「いや、いいんだ。まあ確かに無理やり仲良くなろうってのが無理な話だもんな。徐々にそうなってければいいなって……、わたしは思ってるから」

純「……(なんだ……いい人じゃん。わたしと仲良くなる為にこんな頑張ってくれるなんて。
梓が律先輩は適当でずぼらでいつも遊んでばっかりとか言うからダメダメな人なのかな?って思ってたのに。拍子抜けした)」

純「すみません! 律先輩!」

いきなり立ち上がり、一礼。

律「ふ?」

それを見たハンバーガーをくわえたままの律がそんな空気の抜けた声を出した。

純「わたし律先輩のこと勘違いしてました! わたしの為にこんなに良くしてくれてるのに何か裏があるんじゃないか~? とか疑ったりしてすみません!」

律「えっ? あ~、いいんだよ! 過ぎたことはりっちゃん気にしない!」

純「律先輩……!」

律「ま、まあ座りなさい。目立つから、ね?」

純「あっ! はい!」

律「まあ和解出来たってことで。これからよろしくね、純ちゃん」

純「はい! よろしくお願いします!」

そうして私達は固い握手を交わした。

律「(計画通り)」

その時、律先輩の目がにわかに光った気がしたのは気のせいだろう。


──

澪「すっごく美味しかったよ憂ちゃん!」

憂「お粗末様でした」

笑顔でそう答える憂ちゃんが誰よりも可愛くて……。

思わず、

澪「憂ちゃんって可愛いな」

なんて口走ってしまった。

憂「えっ?」

澪「あ、えと、その……。私は一人っ子だから。こんな可愛い妹がいるなんて唯が羨ましいなって」

憂「そうなんですか。私は産まれてからずっとお姉ちゃんが一緒にいたから一人っ子の気持ちはわからないですけど……(澪先輩寂しいのかな?)」

澪「だよね! ごめんなこんな話して。次はどこに行こうかな~」

憂「(もし妹がいたらどうなのかな?みたいな感じで私を呼んだ…とかなら)……澪先輩が良かったら、今日は姉妹になりませんか?(気付いてあげないと!)」

澪「え? ええええええええええええ!!!??」

澪「(気まずさをなくす為に遊びに誘ったら姉妹になっちゃった! じゃない何かとんでもないことに……)」

憂「次はどこにいっこか? お姉ちゃん♪」

澪「私が……お姉ちゃん」

家ではずっと一人で小中学校じゃ律しか友達がいなかった私に……妹!?

憂「映画にする? それとも……澪さん?」

澪「えっ?!」

憂「やっぱり迷惑でしたか…?」

澪「そんなことないよ! ただちょっとびっくりして」

憂「そうですか(良かったぁ。間違ってたら恥ずかしい子だったよぉ)」

澪「じゃ、じゃあ映画に行こっか」

憂「うん! お姉ちゃん」

澪「(何だかよくわかんない展開になったけど……唯が羨ましい!!!)」


──

和「迷ったわ……」

梓「えええええっ!?」

しばらく歩き、ついて行った挙げ句、開口一番のセリフがそれだった。

和「ごめんなさい。行きたい店があったのだけれど……。また間違っちゃったみたいね」

梓「またって前にも迷ったことがあるんですか?」

和「三回に一回はたどり着けるのだけど……変ね」

梓「それって着かない確率の方が高いんじゃ…」

和「仕方ないわね。そこら辺の喫茶店にでも入りましょうか」

梓「……いえ、和先輩が行こうとした店に行きましょう! せっかくお勧めな店に連れてってくれてたのに途中で諦めるのは勿体無いです!」

和「まあお勧めと言えばお勧めなんだけれど……。でもここがどこかすらわからない中でたどり着くなんて……一体その頃には何時になるか」

梓「店の名前は知ってるんですよね?」

和「ええ。シャルディベって名前の喫茶店だったかしら」

梓「じゃあ大丈夫です! ちょっと待っててください!」

和「?」

近くのコンビニへ入ると暇をもて余している店員を掴まえる。

梓「すみません、この近くにシャルディベって言う喫茶店ありませんか?」

店員「あ~ちょっと待ってくださいね(道聞く客ほどウザいもんはねぇわ……)」

店員「こっから真っ直ぐ行って突き当たりを左のその先二つ目の信号を左で見えてくると思いますよ」

梓「そうですか! ありがとうございます!」

店員「い、いや! 店員の義務ッスから!」←今顔見た人の図

梓「わかりましたよ店の場所! 行きましょう!」

和「コンビニで地図でも買って来たの? 悪いからお金半分払うわ」

梓「え? いや道を聞いて来ただけですけど。そもそも地図に店の名前載ってませんし」

和「コンビニって店の場所まで教えてくれるの? 凄いわね……」

梓「(まさか知らなかった? 和先輩って意外と……)」

和「じゃあ行きましょうか、梓ちゃん」

梓「ああっ! そっちじゃないですよ和先輩! こっちこっち!(和先輩って意外と抜けてる?!)」


──

ゲームセンター

律「とぅぅぅりゃあああああ」

純「なんのぉぉぉっ!!!」

律「やるなぁ!? ここまでついて来られたのは純ちゃんが初めてだ!」

純「そっちこそやりますね! 梓なら今頃コースアウトしてますよ!」

今二人がやっているのは、
激突! カーチェイス!
というカーレースもののゲームだ。クリアするまでに何台クラッシュさせられるかという速さよりも悪どさが求められる斬新さが売りらしい。

今はもう残り律カー(黄色のヤン車)と純カー(茶色のジープ)しか残っていない。
クラッシュさせた数も10づつと同数だ。

律「クラッシュさせた数も同数なら先にゴールした方が勝ち……ならばわたしは先に行かせてもらう!」

そう言って一層アクセルを強く踏み込む律。

純「速度の遅いヤン車でこの純ジープにかなうとでも思ってるんですか!?」

純もそれにつられる様にアクセルを踏んだ。

律「(かかった!)」

前を行く律カーのブレーキランプが点灯。

純「(こんなところでブレーキ!? 正気ですか!?)」

体が反応し、すぐさまブレーキを踏む純。

律「はっはっは! 悪いな!」

純「しまった!」

律がブレーキをしたのは一瞬だけだが、純は律より長くブレーキをした分減速した為にスピードの立ち上がりの差がそのまま距離となる。

律「これが地元テクよ!」

純「地元全く関係ないじゃないですか! でも……!」

純は素早く左のアイテムボタンを押すとジープの後ろからロケットブースターの様なものが出現し、噴射。

律「なにいいいい!?」

純「切り札は最後までとっておくものですよ、先輩!」

グングンと差を詰めてくる純カー。

律「(まずいっ! このままじゃゴールにつく前に抜かれる!)」

純「もらったああ!!!」

律「させええん!!!」

ハンドルをうねる様に左にきると律カーが純カーに激突!

純「なにいいい!?」

そのまま純カーはクラッシュ、しかし律カーも純カーにぶつかられた衝撃で横転、クラッシュとなった。

律「いやー良い勝負だった」

純「どこがですか! どう考えてもさっきのはわたしの勝ちですよ!」

律「純ちゃん、これはクラッシュゲームだ! クラッシュさせたもん勝ちなんだよ!」

純「くっ……! 確かにそうですけど」

律「じゃあ次はあれで勝負しようぜ!」

律が指したのは太鼓の鉄人。

純「どう考えてもドラムやってる律先輩が有利じゃないですか!?」

律「バレたか」

純「じゃああっちにしましょう」

純が指したのはベースマニア。

律「そっちこそ卑怯だぞー!! ベースやってんの知ってんだからな!」

純「なら両方で勝負なら文句ないでしょう!?」

律「望むところだああ!!!」


デデデデデデデデッデデデデデデン♪

50コンボー

律「うっひゃっひゃっひゃ」

純「そりゃっそりゃ」

スカッ、スカッ、


ベーベーベーベーベーベーベン♪

COOLッ!

純「たのし~ッ!」

律「え~とこれがこっちで……あーーーッ! 指吊ったあああッ!」

BAD


律「はあ……はあ……」

純「はあ……はあ……」

律「やるな、純ちゃん」

純「律先輩こそ」


──

澪「えっと、ここかな」

暗闇の中何とか席までたどり着き一安心。

憂「楽しみだねお姉ちゃん」

澪「そ、そうだね」

自然と振る舞ってくれる憂ちゃんには未だに慣れないけど……。

澪「(お姉ちゃんか……。悪くないかも)」

憂「お姉ちゃんポップコーン食べる?」

澪「う、うんっ!」

澪「(幸せだ~)」

憂「あ、始まるよ~」

私達の選んだ映画、それは。

『わんちゃん大冒険』

タイトル通り可愛いもの系の映画だ。

澪「(憂ちゃんも可愛いの好きなんだな。律だったら痒くなるとか言われそうな映画のタイトルなのに。意外と気が合うのかも)」

映画が進むにつれ犬のヌペが段々弱っていく。

憂「ヌペ……」

目頭を押さえながら小さな声で頑張れ! 頑張れ!と呟く憂ちゃんを私は、

澪「(憂ちゃん頑張れ! 頑張れ!)」

と応援していた。


とうとう冒険の半ばに倒れてしまったヌペ。

憂「ああっ」

澪「(ああっ! 憂ちゃんが悲しそうじゃないか! 頑張れヌペ!)」

私の想いが届いたのかヌペは気力を振り絞り、また立ち上がった!

憂「良かった……」

澪「(良かった……憂ちゃんが元気になって)」



いよいよフィナーレ。

綺麗な湖にたどり着いたヌペ、その畔には優しそうな女の子が立っていた。
優しく微笑む彼女と一緒にヌペは天に登って行く。

そう、この冒険はヌペの夢だったのだ。
街中で捨てられたヌペは最後に幸せな夢を見て天国へ行った……。

憂「ヌペぇ……」

ぐすぐすと泣く憂ちゃん。

澪「憂ちゃん……」

私も一人だったら大泣きだったろう。でも今は、今日だけは姉なのだ、この子の。
ならばしっかりしなくては、そんな想いが私を強くしたのかもしれない。

澪「よしよし」

憂「」グスグス

いつもは見ないスタッフロールをバックに、私はいつまでも憂ちゃんの頭を撫でていた。


──

和「ようやくたどり着いたわね……」

梓「何が二つ目の信号を左ですかあの店員! 思いっきり三つ目じゃないですか! 騙されました! 文句言って来てやるです!」

和「まあまあ。ついたんだからいいじゃない。」

梓「和先輩がそう言うなら……」

和「じゃあ入りましょうか」
梓「はい」

ガチャ

梓「……ガチャ?」

ガチャガチャ

和「……」
梓「……」
そこにはこうあった。【本日定休日】
梓「お休み……みたいですね」

和「……」
梓「(ダメだ最高に気まずい)」

和「ちょっと待っててね、梓ちゃん。開けさせて来るから」

そう言って裏口に回ろうとする和先輩を全力で止めに入ったのだった。

和「はあ……」

結局手短の喫茶店に入った頃にはお昼、と言うよりは夕方、に近い時間帯となっていた。

和先輩の落ち込み具合も日の傾きのと同じ様にどんどん沈んで行っている……、みたい。

梓「和先輩は悪くないです! たまたまお店がお休みだっただけで……」

和「いえ、何回も行ったことがある私が定休日を覚えていないのが悪いのよ…。ごめんね梓ちゃん。お詫びと言うか元々奢るつもりだったけど奢るわ」

梓「そんなっ! 誘ったのは私からですし私が出します!」

和「いーえ、ここは譲れないわ。ここまでしといて奢られたりしたら生徒会の、ううん、全世界の先輩の名折れだわ!」

梓「は、はあ(何か変なところは意地っぱりだなぁ)」

私はナポリタン、和先輩はミックスサンドを頼みとりあえずは水で空腹を満たす。

和「そう言えばお昼食べてなかったんだよね私達。今梓ちゃんがナポリタン注文してから思い出したわ」

梓「私もです。ケーキセットを頼もうかなって思ったんですが何か違うぞ? お腹減ってるぞ? みたいになって、ああ、そう言えばってなりました」

お互い軽く微笑みながら楽しい会話を続ける。

和「後で頼んでいいわよ。ケーキセット」

梓「はい。お代は自分で出しますけど」

和「なかなか頑固ね梓ちゃんも」

梓「和先輩こそ」

そうしてまた、二人は微笑んだ。


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