澪「ああ。有意義な練習と話が出来たよ。唯に感謝しないとな。二人きりっていつもと違ってその人に対する思いとか、そういうことを話しやすい気がする」

律「まあ、な」

唯「そうなの?」

紬「?」

梓「得点を(神様、どうかいるのならやっぱり澪先輩を優勝にしないでッ!)」

唯①
律①
紬①

梓「えっ?」

唯「練習してる澪ちゃんとあずにゃん凄い楽しそうだったよ!」

律「先輩と後輩って感じがしたな。梓の考えすぎなところを澪も上手くフォローしてたし」

紬「二人とも可愛かったから1点!」

梓「(なんだ……見透かされてたんだ)」

梓「(そうだ、いつも通りの私でいいんだ。それで気まずくなるなら仕方ない。そうなってから考えよう)」

梓「ちゃんとこれが終わったら練習ですからね!」

唯「やっぱりぃ~?」

律「ぶーぶー」

澪「全くちょっとは後輩を見習ってだなぁ…」

梓「(それに気まずくなるのも、それはそれで悪くない気がする)」

だって、それは相手のことを考えられる瞬間だから。

 唯澪律紬梓
唯\⑧③③③ ⑰
澪⑧\③⑨③ 23
律③③\  
紬③⑨ \ 
梓③③  \


唯「さあいよいよ終盤に差し掛かりました! 次いってみよ~!」

律「次はわたしとムギか」

紬「よろしくね~りっちゃん」


気まずさ選手権!
八回戦!
律紬

律「ムギ、お茶~」

紬「は~い」

律「ふぅ、落ち着くなぁ」

紬「そうね~」

律「……」

紬「……」

律「(あれ? 話すことが見当たらない)」

律「(テレビの話……は見てなさそうだしゲームの話……も知らないだろうし)」

律「(こないだ行ったゲームセンターや駄菓子屋の話でも…いや、それは何か他に話すことがないから出したみたいな感じがしないか私? うーむ…)」

紬「(りっちゃんの髪綺麗~)」

梓『唸ってますね、律先輩』

澪『ムギと律は仲は良いけど趣味というかやってることの共通点は音楽ぐらいしかないんだよな。ムギってゲームとか漫画とかほとんど知らないだろうし』

唯『ムギちゃん漫画読まないんだ! 勿体無い!』

梓『私もそんな読みませんよ。音楽の雑誌はよく読みますけど。後は憂の家に行ったときぐらいです』

唯『憂も結構持ってるよね! トキメキ猫ちゃんとかペットモペットとか面白いよね!』

梓『あ、それは読んでないです』

唯『読みなよ~面白いよ~?』

律「(せっかくだし聞いたことない話でも聞いとこう)そういやムギは中学時代どんなだったんだ?」

紬「中学生の頃? 中学生の頃はフィンランドに住んでたの。お父様の仕事の関係で」

律「フィ、フィンランド……さいですか(ヤバい地雷踏んだ)」

紬「お母様の出身地でもあるの!(りっちゃんが私のこと知りたがってる!)」

律「へ、へぇ~(フィンランドってどこにあったっけ……)」

紬「それでね、住んでたところはヘルシンキ何だけど綺麗なところで毎日お母様とお散歩したり……」

律「(ヘルシンキって言うお菓子あったような……いやないか)」

紬「フィンランドはムーミンが生まれた場所でもあるの」

律「おおっ!」←知ってる人物が出てきて喜んでる人の図

紬「サンタクロースもいるって言われてて凄くいいところよ~」

律「なんかロマンチックだな~」

紬「それでね、それでね、一家に一台サウナが……」

律「ここと全然違うんだな。ムギが住んでた世界って」

紬「えっ…」


梓『(あちゃ~。やっぱりわかってませんね律先輩は。加点です)』


紬「そうね……ちょっと違うかも…」

律「家に執事がいて、フィンランドなんて凄いところに前は住んでて。わたしなんて多分一生経験することがないことをムギは体験してるんだよな」

紬「……」

澪『なんかちょっと気まずいかも』

梓『だからこそ普通に憧れてるムギ先輩の気持ちを律先輩はわかってません! 律先輩だけ加点です!』

唯『一生で一回だけなんだ、あずにゃん』

梓『? なにがですか?』

唯『ペットを飼って良いのは、一生に一度だけだ! ペットモペットのセリフだよ!』

梓『澪先輩はどう思いますか?』

唯『あーん、あずにゃーん!』

紬「……でも、」

律「でも、その代わりわたしには当たり前の生活を、ムギは知らないんだよな。だから何でも興味を持つし楽しそうなんだ」

紬「……うん」

律「わたしもフィンランドに行ったらきっと夢だったの~って言っちゃうかもな」ニシッ

紬「りっちゃん……」

律「だからさ、いっぱいいっぱいここでしか出来ないことやろうな! 次はダーツとかビリヤードとかやろう!」

紬「ありがとう、りっちゃん。私りっちゃんと話せて良かった。ずっと不安だったの……」

律「不安?」

紬「うん。自分の当たり前が周りと違うのが……ずっと怖かったの」

紬「だから知らない間にみんなを傷つけたりしてないかなって……」

律「ムギ……」

紬「だからなるべくみんなとは違うなってことは喋らないようにしたり……。でも、やっぱりわからなくて……何にも知らなくて……だから」

律「違ったっていいだろ」

紬「えっ?」

律「それがムギなんだから。隠すことなんかないと思う。確かにわたしはフィンランドのこととかさっぱりだけどさ……ムギが楽しそうに話してるのを見て何だかこっちまで嬉しくなった!」

紬「りっちゃんも嬉しく…?」

律「うん。だから、さ。不安がることなんてないよ。少なくともここの四人は多少違ったぐらいでムギのことを悪く言うやつなんて絶対いない! わたしが保証するよ!」

律「だからもっと聞かせてくれよ。ムギがどうやってここまで来たのか。遠い世界で見てきたことをわたしにも見せてくれ、なーんて」ニコッ

紬「うんっ……うんっ!」

溶けて行く、私の中で。
ちょっとした不安や、怖いって感じが。

紬「(これがお母様が言ってた本当の友達……)」

フィンランドの海辺での散歩で言っていた。
本当の友達が出来たら、大切にしなさい。そして、自分のことを知ってもらいなさいって。そうしたらきっとあなたのことも大切にしてくれるから、と。
だから、話して行こう。少しづつでもいいから、知ってもらおう、私のことを。

私の、 律「お茶うめぇ~」 大好きな友達に

澪「5分経ったぞ~」

律「お~、ってムギ何泣いてんだ!」

紬「り、りっちゃああん」ギュッ

梓「はい、ムギ先輩。チーン」

紬「」チーン

唯「わたしも聞きたいな! ムギちゃんのこと」

澪「ああ。今度みんなで聞こう」

紬「ズズ、ええ。でもそんな凄い話はないの。お父様がサンタクロースに扮して本物のトナカイにソリを引かせてフィンランド中を駆け回ったとか……」

律「十分凄いわ!」ビシッ

紬「えへ」

梓「確かにいい話でした、が! それと気まずさ得点は違います!」

澪「まあな。序盤は明らかに気まずそうだったし」

律「ちぇ~」

唯「じゃあ得点を!」

唯②
澪②
梓②

澪「まあ無難なとこだな」

梓「最初以外は特にでしたし、これぐらいかなと」

唯「(中盤聞いてなかったからみんなに合わせとこ!)」

 唯澪律紬梓
唯\⑧③③③ ⑰
澪⑧\③⑨③ 23
律③③\⑥  
紬③⑨⑥\ 
梓③③  \


律「さて、次はわたしと梓か(来たか……、来てしまったか)」

梓「はい(いよいよ本丸ですか…)」

律「よし、じゃあ」

バァン!

和「律!!! 体育館の申請用紙出してって行ったでしょ! ライブ出来なくなるわよ!?」

警察がガサ入れする時こんな感じだろうといった様子で和が突入してくる。

律「すみましぇぇんっ!!! 今から書きます!!!」

和「全く、三年連続とは恐れいったわ」

律「ごめんなさいごめんなさい! ちゃちゃ~と書いてくるから先やっててくれ!」

そう言い残し、律と和は消えていった。


澪「怒る間もなく出ていったな」

唯「どうしよう、先にやっててって言っても審査員が足りないよ?」

「話は聞かせてもらったわ!!!」

紬「そ、その声は!」

さわ子「りっちゃんから話は聞かせてもらったわ! りっちゃんの代わりに審査するわ! というかこんな楽しそうなことしてるのに教えてくれないなんて酷いっ!」

澪「何と言うか自分でも何でこんなことしてるのかわからない状態で…」

梓「顧問なら遊んでるのを怒ってくださいよ」

さわ子「さあ始めましょう! 次は誰と誰!?」

紬「私と梓ちゃんね!」

梓「はい。よろしくです。ムギ先輩」


気まずさ選手権!
九回戦!
梓紬

紬「梓ちゃん、トンちゃんに餌あげましょう」

梓「そうですね。今日はこの選手権のせいであげる暇もなかったですし」

紬「えいっ」パラパラ

梓「ごめんねトンちゃん。お腹減ったよね」

トン「(一番気まずいのは俺だっつーの!)」パクパク

紬「食べてるわね~」

梓「はい」

紬「来年も再来年もこうして軽音部を守ってくれるのね~トンちゃんは」

梓「あっ」

紬「ん? どうかしたの?」

梓「いえ…、そう言えばトンちゃんは私が卒業したら……どうなるんだろうって…思って」

紬「きっと梓ちゃんの後輩がしっかり飼ってくれるんじゃないかしら」

梓「そうです…かね」

紬「そしたらこの先ずっと先の軽音部もトンちゃんは見ていくのかしら……。私達のこと覚えてくれてるかしら?」

梓「(ずっと先の軽音部……)」

瞳を閉じる、少しだけ私はそれを想像してみることにした。

──

私が桜が丘高等学校を卒業してから5年、まさか戻って来ることになるなんて思わなかったな。

梓「もうこの学校で私のことを知ってるのはさわ子先生とトンちゃんだけ、か。トンちゃん、元気にしてるかな?」

音楽準備室

梓「懐かしいな、あの時ここでムギ先輩とトンちゃんがどうなるかって話したっけ」

ゆっくりとドアを開けると、そこには荒れ果てた荒野が広がっていた。

梓「えっ?」

様々な楽器が置かれている、もはや物置としてしか機能してないと思われる部屋の隅に……。

プカァ~……。

梓「!!?」

──

梓「ダメーーーッ!」

紬「あ、梓ちゃん?」

梓「あっ、すみません! ちょっと考え事を…」

紬「ふふ、トンちゃんのこと?」

梓「はい。やっぱり私が卒業する時になったら家で飼おうと思います」

紬「それは未来の後輩さんは残念ね」

梓「でも……、やっぱり心配なんです。私がいなくなってもしっかり世話してくれるのか……。もし軽音部がなくなって……、誰も飼えないからって川に放流されて…」

【危険亀発見!?】

梓「みたいなことになったら私っ!」

紬「梓ちゃんはほんとにトンちゃん思いね」

紬「そんな梓ちゃんを見てきっとみんなトンちゃん思いになると思うわ」

梓「…なってくれますかね?」

紬「ええ。きっと」

梓「(そんな保証ないけれど……、ムギ先輩が言うと本当にそうなる気がするから不思議だな。トンちゃんを大事にしてくれそうな優しい子が軽音部に入ってくれたらいいな)」

梓「じゃあトンちゃんは殿堂入りですね。軽音部の」

紬「そうね~」

さわ子「もう一人の殿堂入りを忘れてないかしら!?」ダダンッ

澪「確かにさわ子先生は殿堂入りしてるな……ある意味」

唯「五分経ったよ~」


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