純「私さ、憂のこと大好きなんだよね」

梓「……えっ」

純「何? その驚き方」

梓「……本気?」

純「本気も本気。大本気だよ」

純「あの小動物みたいな顔もさ、もー、全部舐めちゃいたいって程に可愛いじゃん?」

純「無邪気さとか、そういうの、全部ひっくるめて好きなんだよね」

少しばかり間をおいて。

純「実はさ、今度……憂に告白するつもりなんだ」

梓「…………そう、なんだ」

純「まあ、駄目だったら駄目で、折り合いはつけるつもりだけどさ」

純「あー、どうしよう。今から緊張してきた」

純「中学時代からなんだよね。憂のこと好きなの。三年以上も片思い」

梓「……あのさ」

純「ん?」

梓「告白しない方が、いいと思うよ?」

純「なして?」

梓「だって、女の子同士なんて、おかしいよ」

純「ううん。愛に隔たりはないんだよ」

梓「だとしてもさ」

純「駄目駄目。最初っから後ろ向きな思考でいたら、成功するものも成功しないよ!」

梓「…………」

純「とにかく、私は告白するんだ」

純「たとえ、叶わない恋であってもね」

梓(……純らしい)

梓(…………格好いいな)

梓(ひたむきで、前向きで、行動力がある――)

梓(私の憧れの、純)

梓(何としてでも、憂に告白するのはやめてほしいのに)

梓(私意外の女の人に、たなびかないでほしいのに)

***********************************

純「私、お正月に告白することに決めたんだ」

梓「何で、お正月? クリスマスの方がいいんじゃない?」

純「12/25って中途半端じゃん。一月一日の方が、何かピシッとしているもの」

梓「ふぅん」

梓(変わった感覚だなあ)

純「それにさ」

梓「それに?」

純「初日の出を見ながらの告白って、何かロマンティックじゃない?」

梓「まあ、ね」

純「神様に見守られながらの告白。うん、イケる!」

梓(テンションが、いつもに増して高い……)

純「ねえ、梓。お正月、私に付いてきてくれない?」

梓「――え?」

純「何か、私一人じゃ心細いしさ。もしもふられた時にさ、支えになってほしいから、ね」

梓「…………」

純「駄目?」

梓(ああ、そんな上目遣いで見られると)

梓(断れなくなってしまうではないか)

梓「……いいよ」

梓(ああ、私の元から純がどっかに行ってしまうのを、見ろというのか)

梓(……純が)

梓(……純が、振られることを私は願っている)

純「ありがとう。梓」

梓(私に感謝しないでくれ)

梓(だって私は、純の不幸を喜んでいる)

***********************************

12/25

prrrr  prrrr

ガチャッ

純「もしもし?」

梓「もしもし? 私、梓。あのさ、純」

純「何?」

梓「……あのさ、夜の街歩かない?」

純「今から?」

梓「うん」

純「うーん、まあ、いいけど。どこで待ち合わせする?」

梓「駅前」

純「うん。わかった、そこで待っててね」

梓「うん」

ガチャン、ツー、ツー

駅前

純「お待たせ」

梓「早いね」

純「そう?」

梓「うん」

純「じゃあ、行こう? 夜の散歩」

梓「うん」

純「周りカップルだらけ」

梓「目に毒だね」

純「本当ね」

梓「……あのさ」

純「なに?」

梓「本当に、憂に告白するの?」

純「――うん」

梓「あれだよ。ふられたりとかしたらさ、冬休み明け、学校で顔を合わすの気まずいよ?」

純「かもね」

梓「やっぱり、やめといた方が」

純「でもさ、心の中にある、モヤモヤっていうの? そういうのがさ、爆発しそうなんだよ。伝えたいことを言葉にしたいって、叫んでるんだ」

梓「何、それ」

純「恋心?」

純「憂のこと見るたびに思うのよね、憂ともっと一緒にいたいって、さ」

純「憂のことしか考えられなくなって、憂の瞳に吸いいるみたいに魅かれていっちゃってね」

梓(……ああ)

梓(純の気持ちは本物なんだ)

梓(悔しいけど……認めなきゃいけない)

梓(私は――ここまで純を、魅了することはできない)

純「外見だけじゃなく、内面も優しい子だしさ」

純「守ってあげたいなって、思えるんだよね」

梓「そっか……」

梓(せめて、私が出来るのは……純を手助けすることではないだろうか?)

梓「ねえ、正月のいつ告白するの?」

純「早朝。神社で」

梓「初日の出を見ながら?」

純「そう!」

純「お正月になったら、携帯に電話するから、来てね」

梓「うん……」

梓(ああ、駄目だ。まだ、純が憂に振られてほしい、とか思っている」

梓(そんなんじゃ、だめだ)

梓(せめて、彼女の幸せを――……)


……

1/1

憂「おはよう。純ちゃん」

純「ああ、おはよう。憂」

憂「何? いきなり初日の出を見ようだなんて」

純「いやあ、そんな気分だったんでね」

憂「梓ちゃんは?」

純「あ、あ、梓は眠いから行かないって」

憂「そっか……」

純「あ、あのさ」

憂「うん?」

純「あの――そのー」

憂「どうしたの? 純ちゃん」

純「あの――ああっ! ほら、太陽の先っちょ!」

憂「え? どこどこ?」

純「ほら、あそこだって!」

憂「あ、見えた! ああ、初日の出だぁ……」

純(――違う違う! 初日の出が目的じゃない!)

純「あ、あのさ!」

憂「なに?」

純「私、は、えーと、その」

憂「私は?」

純「わ、私は、う、いの――」

憂「ゴメン、聞こえなかった。もう一回言って」

純「私は――憂のことが好きなんだ!」

憂「…………え?」

純「わ、私は……憂が、好き」

憂「それって、つまり……」

純「……うん、……告白」

憂「………………」

純「…………返事、は?」

憂「ごめん、ね」

純「……………………そっか………………」

憂「あの、でも、これからも、友達として――」

純「………………うん」

憂「あ、それよりさ、初日の出見ようよ、ほら!」

純「うん……」

純(ああ、何で、太陽がぼやけて見えるんだろう)

純(……ああ、そうか)

純(心にちくちくと刺さるような痛み――これが、失恋か)

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梓「……純?」

純「何? 梓」

梓「ハンカチ貸そうか?」

純「はは、泣いてるわけでもないのに。いらないよ」

梓「そう……」

純「憂は、もう帰った? よね?」

梓「うん、もういないよ」

純「そっか」

梓「ねえ――初詣行かない?」

純「え?」

梓「早いうちに行った方が、混まないでしょ?」

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さい銭箱に十円ずつ入れて、二人は両手を合わせた。

純「梓、何お願いしたの?」

梓「秘密。純は?」

純「決まってるよ。次こそうまく行きますように、だよ」

梓「懲りないね」

純「めげない、負けない、諦めないがモットーだからね」

梓「ふぅん。――ああ、そうだ。お守り買わない?」


お守り売り場

純「そう言えば、何のお守り買うの?」

梓「うーん、買うっていうか、プレゼントするんだけど」

純「誰に?」

梓は純を指差した。

純「え? 私の?」

梓「うん、待っててね、買ってくるから」


数十秒後

梓「お待たせ」

純「何? 何のお守り?」

梓「決まってるじゃん」

梓は笑んだ。

梓「恋愛成就のお守りだよ」
                              終わり