梓「雨、強くなってきたな……」

梓「……今思えば唯先輩じゃなくって、私が調子良かったんだ」

梓「あずにゃんなんて言われて喜んで」

梓「抱きついてくるのだって唯先輩にとったらただのありふれたスキンシップ」

梓「勝手に期待して勝手に裏切られた気になって勝手に怒って」

梓「最低だ私って…・…」

梓「……早く謝らないと」

梓「口きいてくれるかな……グス」

梓「だめだぁ……なんだか涙がとまらないよ」

梓「雨降っててよかった……こんなとこ見られたくないもんね」

梓「寒い……」

梓「唯先輩はきっとこの先も変わらない」

梓「大学生になっても、大人になってもいつまでもあんな調子だろうな……」

梓「だったら私が変わる。唯先輩に振り向いてもらえる私に」

梓「戻ろう……唯先輩のもとに……」



唯(どこ……あずにゃん……どこ行ったの)

唯「あずにゃん……」

唯(初めての後輩……とっても嬉しかった)

唯(可愛いからって勝手な理由で抱きついても許してくれて)

唯(ちゃんと私のこと理解してくれて、笑ってくれて、怒ってくれて)

唯(なのに私はあずにゃんのことが全然わかってなかった……)

唯(ごめんねあずにゃん……ちゃんと謝るからお願い)

唯「ハァ……ハァ」

唯「どこにいるのあずにゃん!」



梓(唯先輩に釣り合うのはやっぱり天才な人なのかもしれない)

梓(私なんて凡人の凡人)

梓(それでも傍にいたい……だって)

梓(私は唯先輩が大好きだから……)

梓(そんなのおかしいって言われてもいい)

梓(ちゃんと伝えなきゃ)

梓(言わないとわかってもらえないよ。なんでそんな簡単なことが理解できなかったんだろう)

梓(がんばれ私! 今は走るんだ! どしゃぶりでも! 明日が見えなくっても!)


梓「あっ!」

唯「あっ!」


梓「唯先輩……」

唯「あずにゃん……」

梓「びしょびしょですね」

唯「あずにゃんもね」

梓「ゼイゼイいってますね」

唯「あずにゃんこそ!」

梓「……あの」

唯「ごめんなさい!」

梓「あっ、え」

梓「違います! 私が謝るんです!」

梓「本当にすいませんでした!」

唯「どうして?」

唯「私が悪かったんだよ?」

梓「いえ唯先輩は唯先輩でしたから。いいんです」

唯「なにそれ!?」

梓「唯先輩」

唯「はいっ!」

梓「その……実は言いたいことが」

唯「な、なんでしょうか!」

梓「あの……」モゴモゴ

唯「……」

梓「あー、あー。あ、雨やみませんね」

唯「そ、そだねーもうびしょびしょー」

梓「とりあえずどこか屋根あるところに……」

唯「うん」

唯「……ほら。手」

梓「え」

唯「さっき繋ぎそびれたから」

梓「あ……はい、いいですよ」

 ギュ

梓「雨の音すごいですね……」

唯「まさかこんなに振るなんてねー」

梓「神様もクリスマスが嫌いなんでしょうか」

唯「それであずにゃん……言いたいことって?」

梓「あ、その……」

唯「もじもじしちゃって」

梓(言わなきゃ。自分の言葉で。考えなきゃ)

梓(告白の仕方なんて学校じゃ習ってない……)

梓(それでもやらなきゃ!)

梓「スゥ」

唯「……」

梓「唯先輩。実は前前から私」

唯「……」

梓「唯先輩のことが好きでした」

梓「だから今日も唯先輩と買い物にいけてすごく嬉しかったです。楽しかったです」

梓「嘘じゃありません。はじめて会って、抱きつかれて、あだ名をつけられて」

唯「……」

梓「そのときからずっとずっと好きでした」

梓「大好きです」

梓「唯先輩みたいないい匂いの人、生まれて初めて出会いました」

梓「だから唯先輩。こんな私でよければお付き合いしてください」

唯「……そっかぁ」

唯「むむむ」

梓「……」

唯「きれいな目だねあずにゃん」

梓「……あいがとうございます」

唯「突き刺さっちゃうようなまなざしだよ」

唯「……ごめんね」

梓「……ぁ」

梓「……はい、謝らないでください」

唯「ううんまだ。聞いて」

梓「今は……キツイです」

唯「違うの!」


唯「あずにゃんに告白させちゃってごめんね?」

唯「私もね、ずっと変わらなきゃって思ってたんだ」

唯「いつまでもこのままじゃいけないなって!」

唯「妄想だけじゃなくてね?」

唯「ありがとうあずにゃんのおかげだよ」

唯「私一歩ふみだせるよ。あずにゃんには先越されちゃったけどね」

唯「だから……ほんとにありがとう。大好き」

唯「大好きだよあずにゃん」

梓「唯先輩……」

梓「あっ……ぁ……う」

梓「どうして……」

唯「え?」

梓「唯先輩は和先輩といるとドキドキするって言ってたじゃないですか」

梓「なのにどうして……もしかして同情ですか」

唯「アハハ」

梓「笑わないでくださいよぉ……」

唯「あずにゃん焼きもちやいてたんだね。可愛い」

梓「ち、ちがいます! ……ちがいます」

唯「和ちゃんやさわちゃんといるとね、いつ怒られるかわからないからハラハラするって意味だったんだよ」

梓「え……?」

唯「勘違いさん」コツン

梓「ぁ……そ、そうなんだ……」

梓「うわああ」ダッ

唯「ちょっと! あずにゃんどこいくの!? また!?」

梓「は、恥ずかしいです。今きっと顔が真っ赤です! 見られたくないんです!」

ギュ

唯「だめだよ今度は逃さない」

梓「離してください! 嫌です!」

唯「嘘ばっかり」

唯「あずにゃん今さっき私のこと大好きーって言ったじゃん」

梓「そ、それは」

唯「矛盾だらけだね?」

梓「私は素直じゃないんです……」

唯「そっか、それはそれはよく頑張ったね」

梓「唯先輩のくせに馬鹿にしないでください……」

唯「濡れててもあずにゃん暖かいね」

唯「あったかあったか」

梓「そりゃああんだけ走って、あんだけ緊張して……」

唯「ふふ。私のために走ってくれたんだよね」

梓「はい……」

唯「私もあずにゃんの為に走ったよ」

梓「唯先輩のために走りました……」

唯「私、あずにゃんのためならなんでもできるよ?」

唯「あずにゃんも私のためになんでもできる?」

梓「はい……唯先輩がいてくれたら……どうにでもなるような気がしました」

唯「ありがとう」

唯「こんな後輩に出会えて幸せだよ」

唯「ううん。これからは後輩じゃなくて恋人だね?」

梓「う……そうなりますかね」

唯「こっちみて? ほら顔」

梓「……恥ずかしいです」

唯「だーめ」グイッ

梓「唯しぇんぱい……」

唯「あずにゃん泣き虫ー」

梓「雨のせいです! いい年して泣いてなんか……グス」

梓「うわあああああん」

唯「よしよし」

梓「唯先輩ぃ唯先輩ぃい」

唯「いい子いい子」

梓「私、嬉しいです」

唯「うん」

梓「幸せです」

唯「うん」

梓「ずっとこのまま抱きしめていてほしいです」

唯「それはだめ!」

梓「えっ」

唯「風邪引いちゃうよ?」

唯「さ、今度こそ帰ろ?」

唯「まだまだクリスマスは終わらないよ?」

梓「……! うぅ……ヒグ」


……

律「はぁ。やっと見つけたぞ」

澪「なんだぁアイツらみせつけてくれちゃって」

憂「ハァ……ハァどうして泣きながら抱き合ってるの」

紬「恋に定まった道なんてないのよ」

紬「そう、女の子同士でもいいの」

紬「この先二人にはいろいろ試練があるでしょう」

紬「だけど雑草をふみしめてでも進まなきゃならないの」

紬「これはただのスタートラインでしかないのだから」

紬「がんばってね」

律「何いってんだムギ」

澪「なんだかいい歌がつくれそうだなぁ」


『うええええんあずにゃーん!』

『唯先輩ぃいいい うえええん』


澪「でも…・…これ以上は歌詞にできないな」


梓「あれ、先輩方」

律「あちゃー見つかったかー」

澪「よ! 梓」

紬「これ、タオル。使ってね」

憂「お姉ちゃん風邪ひくまえに早く!」

和「ほらもたもたしない」

唯「みんなー私ね!」

律「あぁわかってるって」

澪「おめでとう」

憂「梓ちゃん。こんなお姉ちゃんだけどよろしくね?」

梓「う……うん///」

紬「がんばってね唯ちゃん、梓ちゃん」

唯「ありがとう!」

和「ほんとにあんたってば……」


唯「よし! いまから精一杯クリスマスをたのしもう!」

梓「はい!」

律「お、いいな!」

澪「ばーか、律」

憂「パーティしないんですか? 一応ケーキ買ってますけど」

紬「ふふ、そうね。じゃあ私はお呼ばれしちゃおうかな」

和「私もいいかしら暇だし」

澪「お、おいお前ら…………じゃ、じゃあ私も!」

梓「え、なら私も……」

憂「梓ちゃん」

唯「ぶー。あずにゃーん」

梓「あっ、ごっごめんなさい。つい」

唯「ふふふー。いいよ、クリスマスはウチでパーティね。その代わり」


唯「イヴはあずにゃんと二人きりで過ごしたいな」



おしまいです