5月

唯(そうは思いながらも気分は重たかった)

唯(就職セミナーなどが増えた。企業の説明会などにも参加した)

唯(得体の知れないなにかを目の前にしたときのような、モヤモヤがいつもあった)



6月

唯(気分は重たくなる一方で、未来に希望を感じなかった)

唯(みんなそう思ってるんだろうな、私は私が嫌いな凡人で俗物だったのだ)

唯(りっちゃんは留年、澪ちゃんムギちゃんは、3年生になってものすごいまじめになっていた)


12月

唯(私は就職活動というものの一切をやめた。そんなことしても楽にはならなかった)

唯(私は凡人であることが悲しかったのかな、時代の流れに逆らってみたかった)

唯(りっちゃんはもう1年留年しそうな感じだ……。それをきいて安心してしまうのはなぜだ)

唯(私は思った。りっちゃんは仲間なのではないかと)

唯(りっちゃんも周りの流れに逆らって生きているのではないかと……)

唯(そんな風に変に仲間意識をもつことも凡人らしく、俗物らしく、私は悲しくなった)

唯(死にたいとまた思ったりした)



2月

唯(シュウカツが忙しいとの理由で実家には帰ってない)

唯(がんばって働いてる憂にあわせる顔がない)

唯(自分が凡人であるということを日々考える)

電話「brrrrrr」

唯(わっ)

唯(電話が鳴ったところ久々にみた……捨てなくて良かった)

唯(あずにゃん?)



唯「もしもし?」


梓『唯先輩、お久しぶりです』

唯「久しぶり」

梓『就活どうですか?』

唯「えーと、だめだめだよー」

梓『でしょうね』

唯「え?」

梓『澪先輩たちにきいてますよ。唯先輩なにもしてないって』

唯「……」

梓『唯先輩、これじゃ本当にだめだめじゃないですか』

梓『どうしてなんてきいたりしませんから、話をきいてください』

唯(他人と真剣に話すのが久々だったため、恐怖を感じた)

唯(汗がだらだらとでてきた。今2月だよ?冬だよ?)

唯(でも電話を切る気にはならなかった)

唯(あずにゃんの声はかわいかった)

梓『唯先輩のしたいことってなんなんですか?』

唯「えーと……」

梓『まあしたいことなってありませんよね。私もないです』

唯「うん……」

梓『後輩にこんな話されるなんてうんざりですよね……すみません』

唯「いや、あずにゃんと久々に話できてうれしいよ」

梓『唯先輩が今までで一番楽しかったことって何ですか?』

唯「えーと、何かな……」

梓『私が一番楽しかったのは放課後ティータイムです』

唯「……」

梓『だから、唯先輩のことほっとけなくて』

梓『ほっとけなかったんです。おせっかいかもしれませんけど』

唯「……」

梓『私、唯先輩が大学に入ってちょっと変わったの他の先輩にきいてたんです』

唯「……」

梓『最初はちょっと大人になったな、とか思ってましたけど、それだけじゃないですよね』

梓『唯先輩、うんざりしてませんか?』

唯「……何に?」

梓『それはわからないです。でもうんざりしてますよね?隠してますよね?』

唯「……」

梓『私、誰にも言いませんよ』

梓『まあ……無理に言えとは言いませんが』

唯「うん……」

梓『私、また放課後ティータイムやりたいなって思って』

唯「!?」

梓『唯先輩、やりませんか?』

梓『これも無理にとは言わないです……すみません……』

唯「謝ることないよ」

梓『はい……』

唯「私ね、みんながサークルで楽しそうにしてるのだったり、

  りっちゃんがバンドに打ち込んだりしてるのがたぶんうらやましかったんだよ」

唯「みんなと違うことをやる自分がちょっと可愛く思えたりしてさ」

唯「自分は特別だと思ってたんだよ、理由もなく」

唯「でも気付いたんだ、そんなのみんな思ってるってさ」

唯「でも憂は思ってないんだよ」

唯「憂がなんであんなによくできてるのかっていうとね、憂は

  自分のこと特別だなんて思わないんだよ」

梓『……』

唯「だから憂はみんなに好かれるんだね、うまくいけないけど」

梓『……』

唯「あずにゃん、私、所詮みんなと同じようなことしか考えてなかったんだ」

唯「凡人だったんだよ」

唯「最初はそれがとても怖かったんだ。馬鹿みたいでしょ?」

梓『そんなこと……』

唯「でも私、今あずにゃんの話しきいてておもったんだ」

唯「私も凡人なら、凡人らしくやればいいんだよ。

  つまり、私は私のやりたいことをやればいいんだよ。」

梓『!?』

唯「放課後ティータイムやってくれるようにみんなに話してみる」

梓『はい!』

唯「でも……みんなに迷惑じゃないかな?やり直せるかな?」

律『そんな心配はないぜ』

唯「!?りっちゃん?」

澪『実はあとは唯だけだったんだ』

唯「澪ちゃんも?」

紬『大丈夫よ、唯ちゃん、やり直せるわ!』

唯「ムギちゃんも!?』

律『今さ、学校の一番近くのマックにいるんだ。くるだろ?』

唯「うん、いく!」

澪『みんな、待ってるからな、唯のこと』

唯「うん!」

紬『急がなくていいからね……電話切られてる!!!!』



5月

唯(今日は新星放課後ティータイムのライブの日です)

唯(まだ憂には言ってないけど、私はフリーターになることにしました)

唯(大学はもうないので今はバイトとスタジオ練習にあけくれています)

唯(私はどうしようもない俗物で、才能もない、ただの平沢唯なのです)

唯(ではそんな平沢唯はどうしたらいいのか?)

唯(そんなの、簡単です。やりたいことをやればいいのです)

唯(でも私はやりたいことがなかったのです)

唯(私はやりたいことを見つけたくて見つけたくてたまらなかったのです)

唯(今、私はまだ、やりたいことを見つけたばかりの状態です)

唯(時間はかかりました。回り道しました)

唯(でも今、全然悪い気分じゃないです)

唯(大学を卒業したら私は働くのです。バイトでも)

唯(やっと見つけた私の気持ちを裏切らないように!)

唯(でも私、気まぐれだから働きたくないって言ってニートになるかもしれません)

唯(そのときはそのときです)

おわり