紬「例えば梓ちゃんの場合だったら、梓ちゃん自身がしっかりしてるし、ちょっと頼りない人が良いと思うの」

梓「えぇ~……? そんなの私がイヤですよ。私、澪先輩みたいにしっかりしてる人が良いです」

律「確かに梓ってば甘えん坊さんだもんな」

梓「誰が甘えん坊ですか、誰が」

澪「そうくるとやっぱ、しっかりしてる人が良いんだろうけど……」

唯「でも、恋人には自分に無いものを求めるって言うよ?」

梓「む、唯先輩にしては真っ当なことを言いますね……」

澪「でも確かに、互いにしっかりしてるカップルって、何だか息苦しそうだもんな。イメージだけど」

紬「と言うことは、梓ちゃんにピッタリな彼氏さんって、基本的にはズボラだけどキチンとするところでキチンとする、周りから見たら梓ちゃんに頼りきってるように見えるけど見えないところでちゃんと梓ちゃんを支えている人、ってことかな」

律「……そんなヤツいるのか?」

紬「私としては、りっちゃんがそんな感じだと思うし、男の人でもいるんじゃない?」

梓「異議アリ」

律「ん?」

梓「つまり私には、律先輩のような人がお似合いだと?」

律「おい、なんでそんな不服そうなんだよ……」

梓「いえ、別に不服ではありませんけど……ちょっと想像できなくて」

唯「でもあずにゃん、二人きりになったら甘えるタイプだよね?」

梓「にゃっ!? い、いきなり何言いだすんですか! 唯先輩!」

澪(図星か……)

律「ほほぅ……ってことは梓がその彼氏とデートするってことになると、街中では男の方が梓にベタベタするんだけど、互いの家に遊びに行ったら梓から抱きついたりする訳だな」

紬「まぁっ!」キラキラ!

澪「抱き……!」///

梓「そ、そんなことしません! 勝手に妄想しないで下さいっ!」///

唯「でも映画館とかでデートしてると、確実に手を握るタイプだよね、あずにゃん」

紬「なるほど! 映画を観ながら隣の彼氏さんの手を繋ぐタイミングを見計らって、こんな時だけ手を繋がないってどういうことなの、
  とか勝手に思っていて、そして大きな音が鳴ったタイミングで今だ! とばかりに手を伸ばして握りしめ、
  男の人がソレに気付いて梓ちゃんを見るんだけど、梓ちゃんは映画を観てるフリをしながら頬を仄かに赤く染めて
  『きゅ、急に音が鳴って、ビックリしただけだから……』とか言っちゃうのねぇ~……」ウットリ

梓「ムギ先輩! その垂れ流しの妄想はすぐさま止めるべきですっ! っていうか長すぎますっ!」///

律「すごいな……」///

澪「ああ……聞いてるコッチが恥ずかしくなるな……」///

唯「と言うか、リアルに想像出来ちゃうよね……」///

梓「ちょ、ちょっと待ってください! 私そんなことしたことありませんから!
  アレはムギ先輩の妄想です! 見てきたように言ってますけどただの妄想ですっ!
  だから照れるのはおかしいんですっ!」

梓「と、ともかく! 私の話はもう終わりで良いです!
  むしろ、ほら、私としては、唯先輩の彼氏さんって全く想像できません!」

唯「ほぇ?」

律「まぁ、誤魔化しにかかった梓に乗っかってやるとして……」

梓(言い返したら負け言い返したら負け……!)

律「確かに、唯の彼氏って想像できないな」

紬「ってことは唯ちゃんだけ……一生独り身?」

唯「そんなっ!」ガーン!

唯「なんで私は一生独り身なのっ!?」

律「いや、なんていうか……」

澪「梓と違って、唯の隣を歩ける男性像が想像できないって言うか……」

唯「それって私に女としての魅力が無いって事!?」

紬「う~ん……そんなことは無いんだけど……だって唯ちゃん、とっても可愛いし……」

梓「……あぁ~……」

律「ん? どうした、梓」

梓「いえ、自分で話を振っておいてなんですが、唯先輩の彼氏像が出来ない理由が、たった今分かりまして」

唯「本当!?」

澪「で、なんでなんだ?」

梓「おそらくですけど……憂の存在が大きいんじゃないかと……」

澪律紬「「「……あぁ~……」」」


唯「? どういうこと? なんで憂なの?」

澪「なんていうのかな……ほら、唯って、憂ちゃんがいないと何も出来ない印象が強いから……」

律「それにその……なぁんつぅのかねぇ……
  並程度の男じゃあ、憂ちゃんが許してくれなさそうっていうか……」

紬「と言うより、確実にその彼氏さんは憂ちゃんにも気に入られてないといけないわよね……」

梓「って、ことはですよ?
  唯先輩にお似合いの彼氏は、憂にも認められるほどのスペックじゃないといけないってことですよね?」

律「だろうな。しかも、唯を甘やかせるのは憂ちゃんがしてるから、唯に厳しい人じゃないといけない」

澪「でも厳しすぎると、今度は唯がその人を遠ざけてしまう……」

梓「と言うことは……」

澪「しっかりしてて……」

律「でも、唯を甘やかせる訳でもない……」

紬「けれども、厳し過ぎる訳でもない、そんな人……」

梓「……いますか?」

唯「……それってもしかして、和ちゃん?」

澪律紬梓「「「「っ!」」」」

唯「え? えぇ? どうしたの皆? 一斉に私の方見ないでよ……照れちゃ――」

律「それだ!」

唯「――って、へ?」

澪「そうだ、それだよ唯!」

紬「そうね! 唯ちゃんにピッタリなのは、和ちゃんみたいな人よねっ!」

梓「唯先輩のことを分かってて、唯先輩に優しくて、けれども優し過ぎず唯先輩に程良く厳しく出来る人……!」

澪律紬梓「「「「そんなの、和(ちゃん)(先輩)しかいない!!」」」」

唯「……え? ってことは、私にピッタリな彼氏って、和ちゃんみたいな人ってこと?」

澪「いや、もうそれしかないな」

律「そうじゃなかったら唯の彼氏なんてやってられないって」

紬「和ちゃんなら憂ちゃんにも認められるし、むしろ仲良くなるものね」

梓「ですね! 他の人なんて考えられません!」

唯「えぇ~? 私、彼氏には甘えたいんだけどなぁ……こう、あずにゃんにするみたいに」

律「和でも甘えられるだろ?」

唯「………………あれ? そう言えばそうだね」

律「だろ? だったら何も考える必要が無いじゃないか」

唯「そっか! 私、和ちゃんみたいな人と付き合えば良いんだ!
  そしたら甘えられるし、私のことも面倒見てくれるし、万々歳な展開なんだねっ!」

紬「そうよ! 唯ちゃん!」

梓(……ふと思ったんだけど、あんな完璧超人な男の人っているんだろうか……?)

律(っつか、唯みたいなのを面倒見てくれる男の人自体、いるんだろうか……?)

澪(なんだろ……言ってはみたものの、改めて考えると、やっぱり唯の隣に男性が立ってる姿が想像できない……)

紬(なんかもう……唯ちゃんって小動物みたい……)///

澪律梓( ( (と言うか、憂(ちゃん)や和(先輩)の印象が強すぎて、誰か女の人の後を付いて回る姿しか想像できない……)))

唯「和ちゃんみたいな人かぁ~……えへへ~……カッコイイんだろうなぁ……」

澪律梓( ( (……果てしない不安を感じる……)))


唯「じゃあじゃあ、ムギちゃんはどんな彼氏さんがお似合いだと思う?」

紬「私?」

澪「ムギか……」

梓「意外に難しいですね……なんかこう、朧気な姿は思い浮かぶんですけど……」

律「あぁ、分かる分かる。お金持ちの好青年、みたいな姿は思い浮かぶんだよ」

梓「ただそこから先……その好青年の中身とか、具体的な姿ってなると、全然出てきませんね……」

澪「う~ん……でもやっぱり、しっかりしてる人じゃないのか?」

唯「りっちゃんみたいな?」

紬「りっちゃんみたいな!?」

澪「なんでムギがそんなに食いつくんだよ……」

律「っていうか、私みたいなのが本当に良いのか?」

紬「うんうん! だってりっちゃんみたいな人って事は、エスコートがとてつもなく上手ってことでしょ!?」

紬「しかも一緒にいて楽しいし、飽きさせないし、さり気なく私のこと助けてくれそうだし! 申し分ないわっ!」

律「そ、そうか……そこまで褒められると、なんか照れるな……」///

澪「まぁでも、確かに律みたいなのがちょうど良いだろうな。
  日頃ダラダラしてるけど、しっかりしてるところはしっかりしてるし」

律「おい澪。みたいなの、ってのはどういうことだよ」

澪「そのまんまだよ」

唯「嫉妬?」

澪「ち、違うっ!」

梓(あ、図星突かれた時の反応)

澪「……また梓は私に何か言いたそうだな……?」

梓「そんなことありませんって。気にしすぎですよ、澪先輩。
  それじゃあ次の“もしも”の話でも――」

律「いやいやちょっと待てよ。私と澪がまだだろ?」

梓「えっ? 話す必要ってあります?」

澪「……私が来た時、梓に酷いこと言ったからって……こんなところで復讐しなくても……」

梓「あっ、いえ、そんなつもりはありません! ただ、その……ねぇ、唯先輩にムギ先輩?」

唯「そうだねぇ~……あずにゃんの言いたいことは分かるよ」

紬「確かにその通りだもんね。うん、私もそうだと思うわ」

律「なんで三人だけで通じ合ってんだよ! 私と澪を置いてけぼりにするなぁっ!」

梓「置いてけぼりとか、そういうんじゃないですけど……」

唯「だってもう澪ちゃんはりっちゃんみたいな人、りっちゃんは澪ちゃんみたいな人がピッタリだって印象しかないんだもん」

澪律「「なっ……!!」」カァッ///

梓「ちょっ、唯先輩……!」

唯「あれ? 言っちゃダメだった?」

梓「……いえまぁ、確かにその通りですし、いずれ言わないといけないことでしたから良いんですけど……」

澪「わ、私が、律みたいな人とピッタリ!?」
律「わ、私が、澪みたいな人とピッタリ!?」

唯「すごい! 息もピッタリねっ!!」

澪律「「いやいや、そうじゃなくて!!」」

梓「もはや完璧にシンクロしてますね」

唯「ステレオで聞こえてきたね」

紬「やっぱり二人はお似合いのカップルだわぁ~……」ポワポワ

澪律「「~~~~~~~っ!!!!」」

梓「お二人とも、顔が真っ赤ですね……」

唯「可愛いねぇ、二人共」

紬「もう本当に付き合っちゃえば良いのに~」キラキラ

律「と言うか、アレだ! 私率高くねっ!?」

唯「あっ、照れて誤魔化そうとしてる~」

律「くっ……」///

梓「でも、律先輩の言うことも一理ありますね」

紬「私、梓ちゃん、そして澪ちゃん。三人もピッタリな彼氏さんがりっちゃんみたいな人ってことになってるわね」

唯「りっちゃんったら女たらしなんだから~」

律「そ、そんなことないぞ! っていうか、皆が私のことを選びすぎなんだっ!」

唯「そうかなぁ~?」

律「そうだって! とりあえず律を選んどけば大丈夫だろ、みたいな感じじゃん」

紬「そんなことないわ!」

澪「わ、私だって! そんなこと無いに決まってる!
  むしろ律みたいな人じゃないとイヤだっ!」///

梓「私はまぁ、正直どうでも良いです」

律「そこは律先輩じゃないとイヤだって言うべきところだろぉっ!」

梓「知りませんよ、そんなお約束」

律「ま、梓に関しては、私たちがピッタリなんじゃないかってのを勝手に推しただけだしな……」

紬「でも私と澪ちゃんは違うわ!」

律「そんな豪語されてもなぁ……反応に困るだけだって」

梓「それだけ律先輩がイケメンってことですね」

律「いや、メンズじゃねぇし」

唯「りっちゃんの女たらし~」

律「唯はソレしか言えないのか!?」

唯「あっ、そうだ。どうせだったら、告白の練習しようよっ」

律「は?」

澪「告白の?」

紬「練習?」

梓「ですか?」

唯「そう。さっき話した私たちの理想の男の人に告白する練習!」

澪「……私たちが告白するのか?」

唯「そう!」

律「される立場って可能性は無いのか?」

唯「二の足を踏んでたらあっさりと他人に取られる……それが恋だよ、りっちゃん」

梓「誰ですか、ソレ」

紬「でもおもしろそうねぇ~」

律「そうか?」

澪「と言うか、私と律の場合、理想の相手がそれぞれなんだけど……」///

梓「そもそも“もしもの話”って趣旨からズレてますよね」

唯「そんなことないよ! あずにゃん!
  だってコレは、もし好きな人が出来て告白することになったらどう言うか、ってことなんだよっ」

律「それは、さすがにちょっと無理矢理すぎないか……?」

唯「え~? みんな話さないの~?」

紬「私はお話したいわ~」

唯「賛成派はムギちゃんだけ?」

澪「いやだって、恥ずかしいし……」

律「確かにな。ちょっと恥ずかしいな」

梓「ですよね……」

紬「そんな!」

律「うおっ!」

紬「皆でこのお話しましょっ! 私、皆の理想の相手に対する告白を聞きたいっ!」

澪「ムギがこんなに必死になるなんて……」

梓(そこまでして皆さんが照れるところを見たいんですか……)

紬「当然よ!」

律「えっ? 何が?」

梓(乙女電波……)


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