澪「なんだ急に」

律「いや、せっかくの年末に軽音部皆が揃ってるんだからさ。ちょっと話したいなぁ、と思って。
  ほら、平日の昼にやってるサイコロトーク的な? もしばな! 的な?」

梓「思っても何も律先輩、受験勉強は良いんですか? 私に聞かないといけないところがあるぐらい切羽詰まってますよね?」

律「時には息抜きも必要だよ? 梓くん」

澪「誰だよ」

梓「というか本当に大丈夫なんですか? まぁ律先輩だけ別の大学に行くんなら別に良いですけど」

律「怖いこと言うなよ」

澪「ああ、例え話ってのはそういうことか」

梓「もし、律先輩だけが別の大学だったら、とかですね」

律「さすがに泣くよ? 私でも泣いちゃうよ?」

唯「でもちょっと面白そうだね!」

律「だろ? 唯は分かってるな~」

紬「確かに今年も始まったばかりだし、そうやって他愛も無い話をするのも良いわね~」

律「おっ、ムギも分かってるな」

澪「……まぁ、二人がそう言うなら、私も特に反対しないよ」

梓「私もです。まぁそもそもこの勉強会だって、律先輩と唯先輩のためのものですしね」

澪「当事者二人が気にしないなら、別に良いさ」

律「なんでそう人の不安を煽るようなことを言うのかねぇ、この二人は」

紬「まあまあ。
  でも、憂ちゃんが用意してくれたお蕎麦を食べた後もずっと勉強してたし、確かにそろそろ息抜きしても良いんじゃない?」

唯「そうだねぇ~。正直私も疲れてきたし」

澪「唯は律のせいで気が抜けただけだろ? さっきまであんなに集中して勉強してたのに」

梓「全く、律先輩のせいですよ。
  もし邪魔しなければ、唯先輩はもっと勉強できてましたよ?」

律「その前に私の集中力が切れたんだよ」

澪「そうか。……ま、もうここまでダベっちゃった時点で、勉強には戻れないか」

律「そうそう。澪ちゃんも分かってきたじゃないの」

澪(と言うか律……お前集中力が切れたんじゃなくて、今日一日巻き込まれて、今はもう律が一人でも勉強できるようになったから退屈そうにしてる梓のためにそんなこと言ってるんだろ……?
  ……全く、素直にそう言えば――いや、梓の場合、素直に言った場合は遠慮するか。
  ……その辺も知ってのこと、か……相変わらずだな、律だけは)

律「という訳で、当初の予定通り“もしもの話”といこうじゃないか!」

梓「でも、“もしもの話”って何をするんですか?」

律「例えば、『もしも自分が男だったとして、軽音部の誰と付き合いたいか』っていうお題だったとしたら、それぞれ誰かを明かして、それぞれの付き合った場合の妄想を明かすんだよ」

紬「も、妄想って……」///

律「なんでそこでムギは頬を赤らめるんだよ……」

紬「だ、だって……」///

唯「おぉ! ちょっと面白そう……!」

律「だろ?」

澪「う~ん……男性だとして、か……」

梓「結構……悩んじゃいますね」

律「そうか?」

梓「む。じゃあまずは律先輩から誰と付き合いたいか言って下さいよ」

律「ええ~? こういうのってさ、一斉に指差すから面白いんじゃん」

紬「確かに!」キラキラ

梓「どうしてムギ先輩はそんなに嬉しそうなんですか……」

紬「でも皆の位置がバラバラだから、人差し指二本じゃ皆を指せないわ……」

梓(しかも皆を指す気だっ!!)

律「んで、皆は誰を指差すか決まったか?」

唯「私は決まってるよ~」

澪「私も……うん、決まったかな」

紬「私も~」

梓「あ、私も、一応決まりました」

律「よっし! それじゃあ『いっせーのーでっ』、で指差すぞ~」

唯澪律紬梓「「「「「いっせーのーでっ」」」」」

バッ



唯→梓

澪→律

律→唯

紬→律

梓→澪




唯「おお~!」

律「見事に皆……」

澪「ああ、バラバラだな……両思いが一つも無い」

紬「複雑に絡み合った人間関係ねっ」キラキラ

梓「だからどうしてムギ先輩はそんなに嬉しそうなんですか……」

梓(って言うか、結局一人しか指差してないし……もしかして指差す前のはツッコミ待ちだったとか?)

唯「りっちゃんが人気だねぇ~」

梓「確かにそうですね。澪先輩とムギ先輩の二票です」

紬「だってりっちゃんってエスコートが上手いから……」///

澪「なんで照れてるんだよ……」

唯「そういう澪ちゃんはなんでりっちゃんなの?」

澪「いや、それは、その……私以外、律に入れないと思ったからだよ」

梓(素直じゃないなぁ~……)

澪「……何か言いたそうだな、梓」

梓「いえいえ、そんなことはありませんよ?」

唯「これに対してりっちゃん本人の感想は!?」

律「いや、感想って言われても……これはさすがに、ちょっと、予想外って言うか……」///

梓(照れてる……)

律「……何か言いたそうだな、梓」

梓「いえいえ、そんなことはありませんよ?
  っていうか澪先輩も律先輩も、周りの目を気にしすぎです」

唯「でもそこで二人共あずにゃんに目がいくあたり、息がピッタリだよねぇ~」

紬「幼馴染故のってやつね!!」キラキラ

澪律「「違う違う」」

紬「でもそうなると、どうしてりっちゃんは唯ちゃんなの?
  てっきり私としては、澪ちゃんとりっちゃんが両想いだと思ってたんだけど」

律「いやだって、唯と一緒だと楽しそうだし」

唯「りっちゃん!」ダキッ

律「おぉおぉ! 可愛い子よのぅ……」ナデナデ

澪「……それって、私といても楽しくないってことか?」

律「いや、澪といても楽しいことは楽しいんだけど……なぁんて言うのかなぁ……
  いざ私が男になったら、澪ってば歳を取れば取るほど私と疎遠になりそうって言うか……」

唯紬梓「「「あ~……」」」

澪「納得されてる!?」

唯「だって澪ちゃんってば照れ屋さんだし……」

梓「ですよね……なんかこう、中学あたりで周りの男子にからかわれるのが恥ずかしくなって、段々と律先輩と距離を置いていきそうな……」

紬「思春期なのね特有のアレなのね」

律「まぁ、そういう訳で……たぶん、同じ高校に行ってたとしても、示し合わせて、じゃなくて、偶然一緒になって、ってなってそう」

紬「で、人数合わせにとりあえず澪ちゃんを誘って軽音部を作って、
  そっから『昔は仲が良かったけど今はギクシャクしてる幼馴染』っていう関係から段々と昔の幼馴染のような関係になっていって、
  澪ちゃんはりっちゃんにまた昔のように惚れちゃうんだけど、その頃には隣に唯ちゃんがってパターンねっ!?」

梓「え? それってパターンですか?」

唯「でもちょっとリアルだよね」

梓「でもその前に律先輩と疎遠になってたのなら、ベースが弾けて無いんじゃないですか?」

律「ありえるなぁ……」

澪「そ、そんなことない!」

澪「律とだったら私、どんなにからかわれても一緒にいる!
  私が男でも、律が男でも、どっちであってもからかわれても、照れて否定しちゃうかもしれないけど……
  それでも! ずっとずっと一緒にいる! 一緒にベースとドラムやって、今みたいに皆と一緒にいるっ!!」

唯律紬梓「「「「…………」」」」

澪「……はっ!」///


唯「澪ちゃん……一途だねぇ~」

紬「素敵だわっ!」

梓「聞いてるコッチが照れくさくなります……」///

唯「そ、その、これは……その……」///

律「あ、あ~……その、ありが、とう……?」///

澪「うっ……! り、律も! こんな時だけ照れるなっ。
  いつもみたいに、返してくれれば……」///

律「む、無理だって! あんなこと大声で言われたら……」///

澪「…………」///

律「…………」///

紬(ごちそうさまです)

唯(仲良しさんだよねぇ~)

梓(アツアツ過ぎます……)


律「あ、あ~……ごほん。で、唯は梓な訳だが」

紬梓( (誤魔化した) )

唯「うん! やっぱりあずにゃんは可愛いからねっ!」フンス

梓「って、なんですかその理由……」

紬「でも、男の子になったら、って話だから、そういう理由でも間違いじゃないんじゃない?」

梓「む……確かに」

唯「えへへ~」

梓「つまり唯先輩は、女性を外見で判断する人だと」

唯「その言い方だとロクな人間じゃないみたいっ!」ガーン!

澪「でも梓の場合、中身も可愛いから見た目だけじゃないんじゃないか?」

律(おっ、復活した)

梓「そ、そんなことないです! おだてたって何も出ませんよっ!」///

唯「いやいや、あずにゃんは本当に中身も可愛いよ~」

紬「そうね、梓ちゃんは可愛いわ」

梓「も、もぅ~……ムギ先輩まで……」カァッ!///

律「本当、梓ちゃんは可愛いわよ~」

梓「あ、律先輩に言われたら落ち着きました」

律「ひどくねっ!?」

律「で、そういう梓は澪か」

梓「澪先輩ならカッコイイですし、私を引っ張ってくれそうですし」

澪「そんな……」テレテレ

律「でも澪って、意外に頼りないところがあるぞ?」

梓「そこを、私がフォローするんです」

律「梓が男なのにフォロー? ってか、基本的に引っ張ってもらう方で良いのか?」

梓「私の場合は年下ですから。
  年下の男の子を引っ張る年上のお姉さん、
  でも時々その弟のように思ってる年下の男の子に助けられちゃうお姉さん、
  って構図です」

唯「あずにゃん、男の子になっても可愛いらしそうだもんね」

澪「なるほど……」

律「ショタっ子か」

紬「良いわねソレ!」キラキラ

梓「ショタとか言わないで下さい!
  っていうかなるほどって何ですか澪先輩!」

律「……っていうかムギ、お前は素に自分が男だってこと忘れてないか?
  さっきの話みたいに、私に引っ張ってもらってどうすんだよ。
  私、ムギの立場から見たら普通に女だぞ?」

紬「同い年なのに女の子に引っ張られる男の子……そんな男の子に、私はなりたいっ!」バーン!

梓「……とんでもなく力強い言葉ですね」

律「ああ……全ての疑問を打ち払うような言葉だったな……」

唯「思わず納得しちゃったよ……」

澪「不思議と説得力があったな……」

紬「えへへ~……一度言ってみたかったの」

唯「……あれ? でも誰も、ムギちゃんを選んで無いよね?」

澪律紬梓「「「「っ!!」」」」


律(しまった……あえてこのままスルーしようとしてたのに、唯のやつ……!)

梓(ちょっと気まずい感じになってしまうことぐらい、察して欲しいです……!)

澪(唯ってばこういうところで天然だな……まぁ、みんな私と一緒でムギのことが嫌いな訳じゃないんだろうけど……)

紬(皆の可愛い姿に夢中で、自分のことなんてアウトオブ眼中だった……!)

唯「…………あれ?」

唯「まぁでも、皆ムギちゃんのこと大好きだもんね」

律「お、おう! 当然だろ?」

紬「じゃあ、どうして誰も私を選んでないの……?」

梓「えっと……それはですね……」

唯「ムギちゃんのこと大好きなんだけど、でもそれを言ったら皆大好きなんだけど……。
  ……ん~……上手く言葉に出来ないなぁ……。……あ! そうそう! 二番さんなんだよっ!」

澪律梓( ( (最悪な言葉を選択した!!)))

紬「二番、さん……?」

唯「そう! 二番さん!
  憂とこの前ドラマ観てて言ってたんだけど、二番目に好きな子のことを二番さんって言うんだって!」

紬「へぇ~……」

澪律( (男女の関係においてその言葉は果てしなく最悪だけどな))

梓「でも、そうですよね」

梓「元々、皆さんの中から一番を決めようっていうこの空気が間違いだったんですよ」

唯「そうだね! そう言えばそうだよ! だって私、皆のことが大好きだもん!
  私が男の子だっとしても、皆とずっとずっと一緒にいたいもんっ!」

律「……ハーレムの主みたいなことを言うんだな、唯は」

澪「でも唯みたいな天然ジゴロって、意外に男になったらあんな感じじゃないか……?」

律「確かにそうかもな……」

梓「という訳でA級戦犯は律先輩ですね」

律「そこまで酷いこと言わなくても良くねっ!?」

律「まぁでも、その辺り考慮してなかった私が悪かったのは事実だしな。
  ごめん、ムギ。不快な思いをさせちまって」

紬「い、良いのよそんなの!
  私自身、唯ちゃんに言われるまで気付いてなかったんだし」

律「そうか? そう言ってくれるなら、助かるよ」

唯「ムギちゃんは天使だなぁ……」

紬「あ、そうだ! それだったら、次は私がお題を出してもいい?」

澪「あれ? それぞれの付き合った場合の妄想とか話すんじゃなかったのか?」

律「まあまあ。盛り上がればそれで良いじゃん。
  で、ムギはどんな“もしもの話”をしたいんだ?」

紬「りっちゃんとはちょっと違うんだけど、『もしも彼氏さんが出来たとして、それぞれどんな人がお似合いか』っていう妄想を聞かせて欲しいの」キラキラ

梓「と言うことは、周りがその人の彼氏としてどんな人がお似合いか、っていうのを話すんですか?」

紬「そういうことよっ!」キラキラ!

澪律( (……ムギ、輝いてるなぁ……))


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