紬「――それじゃあ自分の分のドミノは行き渡った?」

唯「あるよ~」

澪「ああ、大丈夫みたいだ」

律「結構あるんだなぁ」

梓「そんなに大きいものじゃないですけど、これだけあるとちょっと重いですね」

律「ま、ボチボチ始めてみっかー」

唯紬「おおー!」

澪梓「お、おー……」

澪「なんかこう……」

律「いざ始めると……」

澪「無心で作業してしまうな」

律「だな」

唯「おっと、りっちゃん油断大敵だよ! そういう時こそ瑣末なミスが生じるものらしいんだよ!」

梓「そう言ってる傍から唯先輩がミスしてますよ! ここは緑色です」

唯「あれ、そうだっけ~?」

律「でも、そんな梓も最初は綺麗に出来てるけど」

紬「どんどん幅が拡がっていってるわ~」

梓「あ、あれっ?」

澪「律はそもそも幅が広すぎるぞ。それじゃ上手く出来ないだろ」

律「う~ん、こういうチマチマしたの苦手で……」

紬「逆に澪ちゃんは丁寧にやりすぎじゃないかしら」

澪「えっ。そ、そうか?」

唯「澪ちゃん、私達の半分位しか進んでないよ」

澪「本当だ……目の前しか見てなくて気付かなかったな」

梓「たかがドミノみたいに考えてましたけど、結構性格が出ますね」

紬「ふふ~、こうやって皆で楽しんでやりたかったの~」

律「楽しむのはいいけどさ」

紬「え?」

律「ムギも手を動かそうな。全然置いてないじゃないか」

紬「あ……ごめんなさい!」

梓「先は長そうですね……」

唯「あ……くしゃみでそう……」

澪「ば、馬鹿、唯! 抑えろって!」ガバッ

唯「ふぁい……あ~、澪ちゃんのせいでくしゃみでなかったよ~」

澪「それでいいんだよ。唯の事だからダイナミックなくしゃみして、ドミノが倒れるってのが容易に想像できるからな」パタパタパタ

梓「澪先輩! 倒れてますよ、ドミノ!」

澪「えぇ!? うわわわ、またやり直しだぁ……」

唯「ごめんね、澪ちゃん。私がくしゃみでそうになったから」

澪「唯のせいじゃないよ……」

唯「ううん、ごめ……えっくしっ!!」パタパタパタ

梓「唯先輩! 倒れてますよ、ドミノ!!」

唯「あぁ~、御無体な~!」

紬「……」ニコニコ

律「(ムギのやつ、絶対この状況楽しんでるな……)」

澪「ふーっ……やっとさっきまでの状態に戻せたよ」

唯「私も何とか戻せたよ~」

梓「今度は崩さないようにして下さいよ」

唯「だ~いじょうぶだって~」

澪「とにかく完成させて勉強なり練習なりしないとならないんだからな」

梓「そうですよ、これじゃドミノ部じゃないですか。こんなとこ純に見られたらまた変な想像されちゃいますよ」

紬「でもこのペースなら思ったより早くできそうじゃない?」

澪「そうだな……珍しく律も真面目にやってるからな」

律「……」

梓「逆に怖いですけど……私達も見習って作業しましょう」

唯「おっけー! 結構楽しくなってきたよ」

唯「…………」

律「…………」

澪「…………」

紬「…………」

梓「…………」

律「…………りこぴん」

唯澪紬「!」

梓「?」

律「りこぴーん……ぴん!」

唯「ぶふっ!」パタパタパタ

律「りこぴんぴーん!」

澪「やっ、やめろよ……あはははは!」ガシャパタパタ

紬「あははははは!」パタパタパタ

梓「ちょ、ちょっと皆さんどうしたんですか!?」

唯「だって、りっちゃんが~……ぶははっ!」パタパタパタ

梓「ああぁ! こっちのまで倒さないで下さいよ!」

澪紬「あははっははは…………!」パタパタパタ


澪「――と、いうわけで」

律「」

澪「主犯も深く反省をしているようなので、再び作業を開始しようと思います」

唯「こりゃ見事なたんこぶだね」

梓「私と律先輩の一部以外、全部倒れてしまいましたからね……澪先輩じゃなくても怒りますよ」

紬「まあまあ、もう一度皆で頑張りましょう?」

澪「ムギは甘い! そうやって甘やかすから律が調子に乗るんだぞ」

律「いいじゃんかよー。黙ってやってても楽しくないじゃん」

唯「そうだよね~。あ、お茶しながら作業しようか?」

梓「それはそれで二次災害を招きそうな気がしますよ」

澪「とにかく再開するぞ。もう下校時間まで間が無いからな」

唯「あれ、もうそんな時間なんだ~」

律「しっかし、これってこのまま置いていって大丈夫なんかな? 明日来たら全部倒壊は嫌だな」

紬「何か貼り紙でもしておく? 『精密作業中につき注意!』とか」

澪「そうだな……とりあえずそれ位しかできないか」

唯「じゃあケローに貼っておくね」

梓「それまだ置いてあったんですか」

唯「こういうこともあろうかと置いてあったのです!」

澪「持ち帰るのが面倒だっただけだろ」

唯「えへへ~、澪ちゃん鋭いね~」

澪「全く……さ、とにかくできるとこまでやろう」

唯律紬梓「おおー!!」


梓「――あんなキモチ♪ こんなキモチ♪ 受け取った幸せなキモチ~♪」

梓「っと、部室到着。ドミノは……っと」

梓「うん、無事」

梓「結局日曜まで掛かっちゃったなぁ」

梓「律先輩のせいで土曜日まで皆で頑張るハメになったし」

梓「さすがに今日は皆さんには受験勉強を優先してもらうようにしたけど」

梓「もう少しで完成だし、トンちゃんのお世話もあるから私だけで丁度いいよね」

梓「唯先輩と律先輩の担当分が遅れてるから、そこを埋めるだけで完成かな」

梓「これでよしっ、と。途中の仕掛けで不具合が出ない限り上手く行くでしょ」

梓「あ、トンちゃんのごはん忘れてた。今あげるね」

梓「トンちゃんの水槽付近にもドミノがあるから倒さないように注意しないと」

梓「ぶつかって全部倒しちゃうなんて唯先輩でもやらないよ」

梓「……とはいえ……水槽付近に多く設置されてて……限界まで手を伸ばさないと届かない……」

梓「何とか届きそうだけど……この片足上げたままの体勢は……維持しきれないよ……」プルプル

梓「よし、届いた……後はトンちゃんのごはん入れるだけ……よしっ!」

梓「そして足を静かに戻して……」

梓「もう、少し……あっ」

梓「足は戻せたけど、水槽付近のドミノにちょっと触れちゃって斜めになってる」

梓「あれを直すには……また手を伸ばすしかないのか……」

梓「何か棒みたいなものでもあれば」

梓「ざっと見渡してもそれっぽいのなんて……むったん」

梓「――よっ……もうちょっと右に……よしっ、修正完了」

梓「後はぶつけないようにそーっと……戻して……ばっちり」

梓「うん、完璧。さすがにぶつけて倒すなんて初歩的なミスはしないよ」ドンッ

パタパタパタパタパタパタ……

梓「ああああああああ!!!」

梓「は、早く止めないと! えいっ!」

梓「ふー……何とか被害を最小限で抑えられた……」

梓「ギターはゆっくり置かないとね」

梓「そーっと寝かせて……これでよし」コトン

パタパタパタパタパタパタ……

梓「Oh、no……」

梓「まさか、かかとが引っ掛かるなんて誰が思ったでしょうか……」

梓「ドミノが倒れる音が止んだ」

梓「あんまり見たくないけど、振り返って確認を……」

梓「おおぉ……」

梓「うぅ……先輩方、綺麗にHTTのロゴマークが浮かび上がりましたよ……」

梓「どうしよう」

梓「このままじゃ吊るし上げだよ。一番楽しみにしてたムギ先輩なんか卒倒しちゃうかもしれない!」

梓「かといって今から元に戻すなんてできそうにもないし」

梓「こうなったら応急処置しかない! 毎日ピタゴラスイッチを録画してる私ならできるはず」

梓「ここをこうやって……これを通して設置して……最後にあれでお茶を濁す、と――――」


……

澪「――昨日気になってあの後梓に連絡したんだけどさ」

律「ふんふん」

澪「メール、返ってこないんだ」

唯「私も憂に聞いたんだけど、今日あずにゃん学校来てないみたい」

紬「梓ちゃん、どうしたんだろう」

律「案外ドミノが完成しなくて、部室に篭ってたりしてなー」

紬「さすがにそれは無いと思うけど……」

唯「あれ? なんか部室の扉に貼り紙があるよ?」

澪「本当だ」

律「何々~? 『お疲れ様です、先輩方。私はちょっとヨーロッパの方に修行に行ってくるんでしばらく留守にします』」

唯「どういうこと?」

澪「何だかさっぱりだな。修行?」

紬「とりあえず部室に入りましょう?」

律「そうだな。おい、梓居るのかー?」カチャパタパタパタ

唯「あっ、ドミノが設置されてた!」

澪「でもこれ……私達が設置してたやつとは全然違うぞ」

紬「けど、何か凄い仕掛けだわぁ」

律「お、おう。ドミノが倒れた先にビー玉があって……」

澪「そのビー玉が色んな仕掛けを上ったり下りたり」

唯「落下するよ!」

紬「振り子みたいなものがあって、それを支えていた留め具にビー玉が命中した!」

律「ってことは、その振り子が回転して」

澪「台の上に置いてあった半開きの電子レンジを閉めるようになってたのか」

唯「電子レンジが動き出したよ。何か入ってるね」

チーン!

律「温め完了したみたいだ……開けるぞ」

澪「こ、これは……!?」

紬「ピザ?」

唯「あ、この箱」

唯律澪紬『ドミノピザ!!』


紬「わぁ~、これがドミノピザなのね~」

唯「あずにゃんも粋な計らいをするね~」

律「いや、そうじゃないだろ……一体どういうことだ?」

澪「おい律、部室の隅に大量のドミノがあるぞ……」

紬「ということは」

唯「あずにゃんがドミノ倒壊させたってことかな?」

律「な、な、な、中野~~~!!!」





おしまい!