放課後、軽音部部室
唯「雪、良く降るね」
律「冬だからな」 もぐもぐ
唯「りっちゃん、よく食べるね」
律「冬だからな」 もぐもぐ
澪「熊か、お前は」
律「食べて、中から暖めてるんだよ」
澪「太っても知らないぞ」
律「そうなれば、暖かくなるんじゃないのか?」
澪「律はそれで良いのか」
律「・・・良くは無いです」 すー
澪「全く」 ぱくぱく
律「お前が食べるのかよ」
紬「結構積もってきたわね」
唯「帰りが大変だな。はぁ」
律「私は好きだけどな。楽しいじゃん、雪が降ると」
唯「りっちゃんは、前世が犬かもね。私は多分、前世が猫なんだよ」 ぐたー
澪「私も寒いのはちょっと」
律「だったら、私が温めてやろうか」
澪「え?」
唯「こうやってー?」 きゅっ
律「おいおい♪」
澪(いやいや。違うから。それ、違うから)
…
梓「済みません、遅れました・・・。何してるんですか」
唯「寒いから、暖ためあってるの。あずにゃんもおいでよ」
梓「嫌ですよ。それより早く、練習を始めましょう」
唯「指が温まるらね」
梓「温まらなかったら?」
唯「春になれば、温かくなるよ」
梓「またそういう事を。ほら、立って下さい」 ぐいっ
唯「あーずにゃん♪」 きゅ
梓「きゃっ」
澪(その手があったかっ) ぽんっ
澪「ほら。律も練習するぞ」
律「まだ良いよ」
澪「春になるまでとか言うなよ。早く立って・・・」
律「しゃーないな」 すたすた
澪(りっちゃん、そこは空気を読もうよ)
律「・・・ムギは平気そうだな」
紬「前も言ったけど、私体温が高いから」
唯「だったらムギちゃんの側で演奏しようっと」 ぺたっ
紬「あらあら♪」
澪「暖房じゃ無いんだぞ」 ぺたっ
梓「何やってるんですか、皆さん」 ぺたっ
律「私は置き去りかよ、おい」
律「者共、散れ散れ。元の位置へ戻れ」
唯「りっちゃんは良いよ。太鼓当番だから、指が痛くならなくて」
律「太鼓って言うな。とにかく動いてれば、温かくなるって」
澪「律の言う通りだ。いつもよりオーバーアクションで演奏するぞ」
唯「澪ちゃんの」
紬「オーバーアクション?」 じー
澪「むぐっ」
律「ワン、ツー。ワンッ、ツッ、スリッ、フォッ」 タンタン、タタタン
澪「こ、このっ」
唯「ふふーん♪」 ぐるんぐるん、ぐるーん
梓「ふふーふーん♪」 ぴょん、ぴょん
紬「ははーん♪」 どたん、ばたん
澪「ぴゅあぴゅあ・・・」 ぼーん♪ぼーん♪
律「結局澪は、全然普通だな。というか、みんな無茶苦茶だな」
唯「動く事に気を取られすぎて、演奏がおろそかになってるんだよ」
律「分かってるなら、改めてくれよ」
律「止めだ、止め。寒くて練習にならん」
澪「仕方ないな。あまり積もってきても困るし、今日は早く帰ろうか」
唯「・・・」 じー
梓「そうですね。・・・唯先輩、どうかしました」
唯「トンちゃんは寒くないのかなと思って」
梓「ああ。水槽はサーモセンサーとヒーターが入ってますからね。夏でも冬でも、同じ温度に保たれてます」
唯「三食昼寝付きで結構良い身分だね、トンちゃんって」
律「バリバリ仕事されても困るけどな」
紬「・・・」 じー
律「今度はムギか。外に何かあるのか?」
紬「雪、雪が降ってる」 きらきらっ
律「まあ、それは私にも分かるんだが」
紬「雪、雪降ってるわよっ」 きらきらっ
律「・・・ちょっと、外で遊ぶか?」
紬「良いの?」 にこっ
澪(こういう押しも大事なのか) ぽんっ
校舎1階 下足箱前
ぴゅー
澪「言うまでも無く寒そうだな」
唯「私は、ぶーくろちゃんがあるからね。あったかあったかだよ」
澪「でも、手袋だけだろ」
唯「これは憂がくれた手袋だから、世界中の何よりも温かいんだよ」 にこっ
梓「そうかもしれませんね」 くすっ
校舎前
ぴゅー、ぴゅー
唯「さ、寒い。は、早く校舎へ、校舎へ戻らないと」
律「いや。言ってる事が全然違うし」
梓「でもやっぱり、寒いですよね」 ぶるぶる
澪「少し動けば、どうにかなると思うんだが」
律「……ムギ、なんだそれ」
紬「うふふ♪」 こぽこぽ
紬「みなさん、どうぞー」
律「ホットチョコレートか。さすがムギ、気が効くぜ」
澪「白い雪と黒いホットチョコレート。・・・うん、なんだか歌詞が書けそうだ」
唯「甘くて温かくて。なんだか、エネルギー注入って気がするよ」
梓「それに寒い中で雪を見ながら飲むと、格別美味しいですねっ」
紬「うふふ♪」
……
紬「じゃ、雪合戦しようか♪」
律「随分飛躍するな。大体どうやって?適当にやり合うのか、チーム分けするのか」
唯「それなら私は、あずにゃんとムギちゃんで。みんなで力を合わせて頑張ろー」
紬「おー」
梓「お、おー」
律「だったら澪は、私とペアか」
澪(わっしょい、わっしょい。唯ちゃんわっしょい♪)
紬「まずは作戦タイムを設けましょうー♪」
律「やる気だな、この野郎。澪ー、本気出すぞ」
澪「人数で負けてるんだけどな」
律「そこは私と澪の、愛の絆でカバーするんだよ」
澪「愛の、絆?」
律「そんな事はともかくさ。さっさと玉を作って、回転良く・・・」
澪(やっぱり愛だよな、愛。愛って良いよなー、愛って。あー、いーなっ♪)
紬「さてと。私達は、役割分担をしましょうか」
梓「というと?」
紬「唯ちゃんが雪を丸めて、梓ちゃんがそれを運ぶ。で、私が投げる」
唯「3人で一斉に投げた方が良くない?」
梓「・・・いえ。これはかつて織田弾正忠が武田四郎勝頼を打ち破った、長篠の合戦。
つまりは火縄銃三段撃ちに着目した戦法ですか」
紬「うふふ♪」 にやり
唯「だが、この通説には疑問が残る」
梓「三段撃ちは、最近の学説において否定されてるって事ですか?」
唯「違うよ。ぶーくろちゃんは毛糸だから、雪を握ると濡れてくるんだよ」
梓「それは確かに困りますね。というか私達も、素手ですし」
紬「大丈夫。こういう事もあろうかと、スキー用のグローブを持って来てるの」
唯「・・・5人分あるね。りっちゃん達にも持ってこうよ」
紬「唯ちゃんは、本当に優しいわね♪」
梓「それか、何も考えて無いかですね」
唯「もう、あずにゃんったら」
紬、梓「あはは」
律「さみーし、つめてーし。私達は、春まで見つからないってオチじゃないだろうな」
唯「済みませーん。お届け物でーす」
澪「唯。・・・グローブ?」
唯「これがあれば、あったかあったかだよ。ぶーくろちゃん程ではないけどね」
律「敵に塩を送るだ?ああ?」
澪「私は借りるぞ。ありがとう、唯」
律「・・・まあ信玄も、塩はもらったらしいからな」
唯「ふふふ。敵から塩をもらうとは、信玄破れたりっ」 びしっ
律「いや。色々間違ってるし」
5分後
律「よーし、そろそろ始めるぞ。覚悟は良いか-」
唯「それは私達の台詞だよ」
律「言ったなー。澪、投げて投げて投げまくれ」
澪「あ、ああ。え、えいっ」 へろへろー
律「・・・まあ、なんだ。お前は私の後ろから投げてろよ」
澪「え、どうして」
律「雪が当たったら大変だろ」 にこっ
澪(待ってました、その笑顔っ)
唯「ほい、ほい」
梓「はい、はい」
紬「えい、えいっ」 ぐぉんっ、ぐぉんっ
律「距離があるんだし、良く見てれば避けられ」・・・
ひゅんっ
澪「し、新幹線?」
律「リ、リニアじゃなくて?」
ひゅんっ、ひゅんっ
澪「律ーっ」
律「澪ーっ」
どすんっ、どすんっ
最終更新:2010年12月25日 03:45